ユダヤ自治州州都ビロビジャン紀行

2005/04/30 - 2005/04/30

ハバロフスクから、シベリア鉄道で２時間位の所に、ロシア連邦ユダヤ自治州州都ビロビジャンがあります。かつての帝政ロシア時代から、ユダヤ人に対する差別は、酷いものでした。ときどきポグロム（集団虐殺）も、ありました。スターリンは、シベリアと満州国（当時）の国境を接するところに、ユダヤ人の国を、作りました。ビロビジャンは、素晴らしい所だというプロパガンダを流して。差別に苦しむ西部ロシアや、ウクライナのユダヤ人たちは、希望に満ちて、ユダヤ自治州にやってきました。しかし聞くのと、見るのでは大違いでした。湿地帯で、蚊が多く、大変な苦労が待ち受けていました。まず私は、ビロビジャンの郷土資料館を訪れました。そこには、ビロビジャンへの移住を奨励する、プロパガンダ入りのポスターが、たくさん掲示されています。この後、私はユダヤ人の家庭訪問をしました。

エリア ロシア

シベリア鉄道のビロビジャン駅です

ビラ川沿いにある丘の上に、テレビ塔が建っています。この丘を、シオンの丘に見たてる人もいます。

湿地帯なので、高い建物は、無理なようです

ソ連時代の、ハンマーと鎌が。寒々とした町です。

寂しい町みたいです。

今も健在な、レーニンさん。共産党時代を、懐かしく思うお年寄りたちです。あの時代は、安心、安全だった。

新しく出来たシナゴーグです。

すぐ隣のシナゴーグです。

郷土博物館の入口にある、ユダヤ自治州のシンボルの虎です。

ユダヤ教の儀式に使うものです。

私たちのところのコルホーズにおいで

ビロビジャンに、最初に入植した人たちの写真です。「ビロビジャンは、いい所だから、こっちへおいで」、

「希望に満ちた毎日よ」

１９３６年

「この町は、自分たちが、作るんだ」

「暮らしやすいわよ」

「赤ちゃんも産まれたわ、幸せよ」

「汗を流すのも、楽しいよ」
このような、会話が、聞こえてきそうです。
でも、実際は湿地で、蚊が多く、開拓には、不向きな場所でした。スターリンは、ここへ、邪魔者のユダヤ人を、押し込めるつもりだったのです。
人間は、弱いものです。現在の状況から、逃れられるなら、こういった甘い誘いに、いとも簡単にのってしまうのです。
あの日本から、海を挟んでの、お隣のお隣の国の、帰還事業もそうではないでしょうか。
今まで、私たちには、関係のないことだと、信じていましたが。でも、そうじゃないのでは。日本という国が、住みにくかったのでは。勿論、ポグロムはありませんでしたけどね。
これから、ユダヤ人の家庭訪問です。ビロビジャンでの、苦労話が、出てくるのでしょうか。

母なる祖国
１９４１年６月２２日
ヒトラーによるソ連への奇襲攻撃、バルバロッサ作戦始動

ナチス・ドイツとの大祖国戦争

第二次大戦後は、ユダヤ人をユダヤ自治州に、さらに強制移住

１９９０年
ユダヤ語の授業

ユダヤ人の家庭に、訪問いたしました。家主は、ユダヤ人で、１９４０年にウクライナのキエフから、ビロビジャンにやって来ました。いい所だと、聞かされて。でも、来たらびっくりで、大変だったようです。騙されたと。
でも、たとえ騙されたとしても、ビロビジャンに来て、結果的には良かったのではないかと、思えるのです。
なぜなら、１９４１年６月２２日、ドイツ軍はソ連領内に、侵攻しました。ソ連軍は、敗退を続け、ドイツ軍は、キエフを占領しました。このあと、ナチスの特別行動隊が、キエフに住むユダヤ人を、郊外のバービーヤール（姥の谷、という意味）に集め、皆殺しにしたからです。もしキエフに残っていたら、同じ運命だったかも知れません。そう考えると、強運の持ち主のように思えるのです。

若いお母さんで、娘さんです。
ソ連崩壊の時期に、ロシアからイスラエルに移住したのですが、再びビロビジャンに戻ってきたようです。

こちらは、上のお母さんのお子さんです。

おばあちゃんとお母さんが、作ってくれた、お祭りの時に出される、ユダヤ料理です。
マスの皮を丁寧にはぎます。マスは骨を除いて、マスの身とお野菜を、ミックスして調理します。これを、お皿にのせ、この上から、ゆでたマスの皮を、再び置くという手の込んだお料理です。

ユダヤ料理らしく、種なしパンが出ました。
ビロビジャンですが、ハバロフスクと違って、建物自体は、これっと言って、見るべきものが、あるわけではありません。郷土資料館を見て、ユダヤ人の家庭訪問をして、美味しいユダヤ料理を食べながら、生きてこられたという強運を、祝ってくるといいかなあと思うのです。