2005/07/13 - 2005/07/13
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フルリーナさん
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ハカの南西に位置するアラゴン王室ゆかりのぺニャ修道院を訪れました。
解説は、鈴木孝壽氏の著書『スペインロマネスクの道・グレゴリオ聖歌の世界』(筑摩書房)を参考にさせていただいております。
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サン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院はハカの南西約30キロほどに位置します。
麓には小さなサンタ・クルス・デラ・セロスの村がありとても静かな美しい自然に囲まれています。 -
サンタ・クルス・デ・ラ・セロス村
ここからペーニャへの坂道を登っていきます。
つい見落としがちですが、ここにも素晴らしいロマネスクの教会があります。
サンタ・クルス村はとってもかわいらしい村。 -
こんな素敵な宿もありました。
この村に泊まりたかった・・・とちょっと後悔。
ハカもとっても素敵なのですが、やっぱりこんな小さな村のほうに心が惹かれます。 -
サンタ・クルス村の聖マリア教会。
10世紀ごろベネディクト会女子修道院として建てられ、11世紀にラミロ一世の娘サンチャ王女が、修道院に入りこの修道院長になったそうです。
ハカの大聖堂と同じようなクリスムと二頭のライオンで飾られた入り口の扉を持っています。 -
セロス村を過ぎ坂道をどんどん登っていきます。
展望が開け、ピレネーの山並みが広がります。 -
この辺には鷹がたくさん生息しています。
巣から悠然と大空に舞いあがる鷹の姿が印象的でした。 -
九十九折の道をあがっていくと、サン・ファンデ・ラペーニャ修道院ヶあります。
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この修道院は、このように自然にできた洞穴の中に作られています。
この修道院ができたいきさつにはいろいろな伝説がありますが、おそらくその始まりは隠修士たちの修行場であったと思われます。
9世紀にはこの岩山のパノ山の名をとった、パノ山洗礼者ヨハネ修道院として、アラゴン地方のキリスト教布教の基地となりました。 -
1025年にサンチョ大王よりクリュニー会に奉献されて、名をサン・ファンデ・ラ・ペーニャと改めました。
ここはフランスとの国境近くソンポルト峠に近い位置にあり、ヨーロッパキリスト教世界との接点の最先端にありました。
1028年には聖ベネディクトゥスの修道会則が導入され、1071年、ここに残存する西ゴート、あるいはモサラベ典礼を完全に払拭して、スペインで初めてローマ典礼が執行されるようになりました。
グレゴリオ聖歌が響き、ロマネスク芸術の数々がペーニャからアラゴン、ナバラへと広がっていきました。
この役割の重要性に対し、時のローマ法王は、この修道院の持つ所有権と数々の特権を永代のものと認め、アラゴン王室も、毎年四旬節にはこの修道院内で過ごす誓約を立て、さらにラミロ一世自身、彼の家族とともにここに葬られました(現在、墓は移転されている)。 -
それでは修道院内に入ってみましょう。
この日は、気温が38度もあり、うだるような暑さだったのですが、一歩聖堂内に入ると、ひんやりととても心地よい温度でした。 -
入り口から階段を下ります。
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この修道院は9世紀に創設され、11世紀にはクリュニー派の改革運動に従い、この最初の建物の上に新たな聖堂が建てられました。
これは下の階にあるこの修道院の最古のモサラベ様式の礼拝堂(9C)。
3つの内陣祭室があります。
この内陣祭室は、独特な特徴を持っているそうです。
特に祭室の唯一の装飾、ドームの中に描かれている半円形アーチは、実際にくぐるアーチではなく装飾として描かれています(ブラインドアーチ)。 -
アーチに描かれた文様
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壁に描かれた絵
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アラゴン王朝の墓地があった部屋を出て、回廊へ向かいます。
壁にいろいろな十字架が描かれています。 -
この十字架の上の花の花びらは4枚、下の花びらは8枚です。
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前のものと似ていますが、花のデザインがちょっと違いますね。
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こんな風に半円のアーチのなかに描かれています。
この半円アーチと上の直線は市松模様です。 -
この市松模様はアラゴン地方でよく使われている模様だそうです。
そういえば、ハカの大聖堂でもこの模様を見ました。 -
読めそうで読めない・・・。
どなたか解読してくださる方、いらっしゃらないかな? -
十字架。
次の写真の華やかなモサラベ調の彫刻の下にあります。 -
Chapel of san victorian
アラゴンゴシックの特徴をよく現している15世紀のチャペル部分。 -
チャペル門右部分
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イエスは「わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。人がわたしにつながっており、わたしもその人につながっておれば、その人は豊かに実を結ぶ
」(ヨハネ15:5)と言われました。
そのためぶどうはキリスト教美術や教会に古くから使われています。
ここにもぶどうのモチーフがあります。 -
回廊部分を修道院の外から見たところです。
この中央部分に回廊があります。 -
この岩に守られるようにしてたたずむ美しい回廊は12世紀のものです。
この迫力ある岩の天井部分から、目を外に向けると、みずみずしい緑と風景が目に飛び込んできます。
静かな静かな心地よい空間です。 -
回廊から見た外の風景はこんな感じです。
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この修道院は1809年に破壊されてしまいましたが、この回廊と柱頭彫刻は当時の面影を伝えています。
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スペインの強い日差しと、ロマネスクの暗い空間が織り成す光と影が強烈な印象として心に迫ります。
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聖堂部分の柱頭彫刻
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柱は1本の円柱と2本の円柱でできています。
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柱の上にはアーチが載っています。
ここにもアラゴン地方に多く見られる市松模様のラインが入っています。 -
柱頭装飾は作風の異なる二つの石工のグループによるものとされています。
そのひとつは、11・12世紀の建築物に共通した典型的なロマネスク様式で、白色の石に優雅に緻密に彫刻されています。
もうひとつはこの写真と次の写真の彫刻の作者のものです。
この旧約やイエスの生涯の柱頭彫刻は白色の意志に彫刻した作者とは別人で、大きな目を持つ穏やかな顔が印象的です。
これらは赤みのある石に彫刻され、ロマネスクの彫刻では例外的に沢山の空白スペースを持っています。
この作風のものは、アラゴン地方の多くの教会堂の彫刻に見られ「サン・ファン・デ・ラ・ペーニャの工匠」の作品として知られています。
これはイエスのエルサレム入場。
これも赤みのある柔らかな石に彫刻されています。 -
これは最後の晩餐の柱頭彫刻です。
私は、ロマネスクは今回訪れるまで、イタリアで少し見たことがあるだけで、特別興味があったわけでありませんでした。
でも、今回、オロロンやハカ、ペーニャやアラゴン地方の小さな村々のロマネスク教会を訪れてロマネスクの魅力が少しわかったような気がしました。
ロマネスクの暗い空間は、思ったよりずっと心地よい空間でした。
アーチの天井は曲線がとても優しい感じで、窓から差し込む光は柔らかく、なんとも心癒される空間でした。
今までの暗黒の中世・・といった先入観を払拭されました。
グロテスクだなあと思っていた彫刻も、実物はとっても生き生きとしていて、素朴な力強よさにあふれていました。
ロマネスクは自然の中の風景にとってもマッチしてました。
ゴシックのような華やかさではなく、素朴な柔らかい曲線だからでしょうか。
ピレネーの壮大な自然の中にひっそりとたたずむロマネスクの教会はまだまだ、数え切れないほどあります。
この後にもアインサなどのロマネスク教会を少しご紹介するつもりです。
いつか、またピレネーのロマネスクを訪ねてみたいです。
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この旅行記へのコメント (4)
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- katanさん 2011/11/06 17:00:35
- ロマネスクいいですよね♪
- フルリーナさん
こんにちは。先日は、京都旅行記への投票ありがとうございました!お礼が遅くなってしまって、すみません。
今日はロマネスク好きの血が騒いでしまい、アラゴンロマネスク旅行記を拝見しています。
ロマネスク式の聖堂の、柱の彫刻などはとても素朴で、時々「?」と思うようなものも登場しますが、よく見ているとコミカルでユニークなものが多く、ゴシック様式よりも気になるようになりました。
ロマネスクというと、天井が低く、暗いイメージはありますが、回廊の影に入って中庭などを眺めたり、中で静かに黙想するにはぴったりですね。静謐な空間というか。
また、続きも拝見させていただきます♪
katan
- フルリーナさん からの返信 2011/11/06 17:20:12
- RE: ロマネスクいいですよね♪
- katanさん
ありがとうございます。
ピレネーの山間の古いロマネスク様式の教会、とっても癒されました。
アラバスタ―の窓から差し込む光がとってもやわらかで。
ほんとに>黙想するにはぴったりの静謐なる空間って感じです!
特に脱水症状でも起こしそうな、暑い夏の日でしたので、
直射日光から、ひんやりした石の空間にはいると、すっごい気持ちよかったです。
もう動きたくない〜。ここに泊まりたい〜っていうくらい(笑)。
ロマネスクの彫刻はよく見ていくと、ユニークでちょっとユーモラスで楽しいですよね!
おこの修道院はとても感動した場所だったので、投票とコメントいただいてうれしかったです♪
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- night-train298さん 2005/10/16 12:03:22
- わぁ、健脚!
- サンタ・クルス村から歩いてラ・ぺー二ャに登ったのですか?
ずっと坂ですよね。車もけっこう通りませんでしたか?すごい!
ラ・ペーニャの全貌って、写真では表現できないのが残念ですよね。
あの、大きな岩をいただいた修道院の迫力・・・。
岩の下のお水が湧いているさまは、ちょっとルルドを連想してしまいました。
- フルリーナさん からの返信 2005/10/16 13:56:22
- RE: わぁ、健脚!・・・・いえいえ、車でです〜。
- いえいえ、うちは熟熟女さんたち連れなので、タクシーでです。
あそこ、歩いて上るのは大変ですよね。
でも、途中、景色のいいところで止まってくれたので、鷹とか景色とか見れました。
ペーニャはすごい迫力でした。
いろいろ教えてくれてありがとうね!
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