２０２４年早春、まだ肌寒いソウル、仁川で日本統治時代の建物を巡る　４．大韓帝国の歴史と反植民地闘争

2024/03/14 - 2024/03/14

韓国旅行最終日。自由に使える時間は午前中のみ。近くて、歩いて回れる所に絞って散策することにした。大韓帝国の外交の場であった徳寿宮の惇徳殿、日本統治時代に朝鮮出身のマラソン選手の生涯を辿る孫基禎記念館、日本の植民地支配の歴史を伝える世界で唯一の博物館という植民地歴史博物館を中心にソウル市内を巡った。
３月１４日（木）ホテルをチェックアウトして南大門を横に見ながら、明洞に向かう。明洞芸術劇場、旧朝鮮商業銀行鍾路支店を見て、前日行った徳寿宮で見逃した惇徳殿を見学。旧京城裁判所、旧培材学堂東校舎、大韓イエス教長老会平安教会を見て、ソウル駅に沿って南にある孫基禎体育公園に向かう。公園内にある孫基禎記念館を見学。さらに南に進んで植民地歴史博物館を見学し、空港鉄道ソウル駅に向かう。空港鉄道で仁川国際空港に向かう。空港で昼食を済ませて一路大阪へ。

エリア ソウル(韓国)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 4.5
• ホテル: 4.0
• グルメ: 4.0
• 交通: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 1万円 - 3万円
• 交通手段: 鉄道 徒歩 飛行機
• 航空会社: ピーチ航空
• 旅行の手配内容: 個別手配

３月１４日（木）ホテルで朝食を済ませ、チェックアウトして散策を開始。ソウル駅の向かいにある延世大学校セブランスビルのスターバックスの近くに石碑が建っていた。「３・１独立運動紀念址：セブランス病院　１９１９年３・１独立運動のためにキリスト教の指導者が集まって議論した場所」と記されている。

明洞に行く途中に崇礼門がある。朝鮮初代太祖が１３９８年に一度完成し１４４７年に改築した。漢陽の南側の正門として通称南大門と呼ばれていた。石段の中央にはアーチ型の門を形成する石壇があり、現存する韓国の城門建築のなかで最古の木造建築で、最大規模のもの。１９５２年に韓国国宝第1号に指定された。２００８年の火災で焼失し、２０１３年に復元し一般公開された。時間が早かったの中に入れず。

崇礼門 (南大門) 建造物

明洞に向かう途中にレトロな感じの建物があった。カフェ・ガベドというカフェチェーンの店で、珈琲島という意味。１９１０年代に建てられた韓洋折衷式の２階建ての商店ビルをリニューアルしたもの。もともと歴史的にも価値のある建物の所有主である興国生命保険が復元したもので、店内は木造の柱や昔の痕跡があちこちに残っており、当時の南大門周辺の写真なども飾らている。

新世界百貨店の隣にある旧朝鮮貯蓄銀行本店がある。日本統治時代の１９３５年に竣工した。銀行建築として初の鉄筋の構造で、外壁には花崗岩が使用された。１９５８年に第一銀行本店となり、２００５年にスタンダードチャータード銀行明洞支店となった。この時は工事中だった。

旧朝鮮貯蓄銀行本店 建造物

スタンダードチャータード銀行明洞支店と道路を挟んで向かいに歴史を感じさせる建物があったので写真に収めた。後で、旧東京火災保険株式会社京城支店であることが分かった 。設計は銀座の旧服部時計店や第一生命館、横浜のホテルニューグランドを手がけた渡辺仁によるもので１９３３年に竣工した。現在は韓国銀行別館として使用されている。

ミョンドンギルを西に進むと旧明治座がある。日本統治時代の１９３６年に竣工し、映画館として開館した。１９４６年に国際劇場、翌年ソウル市が買収し市公館となった。１９５７年に大韓民国が買収し明洞芸術会館、１９６２年に明洞国立劇場と改称した。２００９年に公演専用劇場として明洞芸術劇場が再開館した。昔のままのルネッサンス調の外観と現代式に改装した内部構造をもつ５階建て。

明洞芸術劇場 博物館・美術館・ギャラリー

明洞芸術劇場の前の道路に２０２１年に明洞観光特区会場標識が設置されていた。生涯明洞発展のために努力した故キム・チャンファン初代明洞特区会長の一周忌を迎えて「明洞を輝かさせた人」の看板を設置した。

ミョンドンギルを西に行くと写真の建物が見えた。ソウル南大門警察署明洞派出所の建物で古いものではないようだ。

地下鉄鐘閣駅の南に少し行くと旧朝鮮商業銀行鍾路支店がある。「この建物は１９０９年度に支部が金融関連機関の集会所として使うために建てた」と説明している。１８９９年に初の民族資本による大韓天一銀行が設立され、後に経営権が日本人の手に渡り、１９１１年に朝鮮商業銀行と改称。火災により１９１５年に復旧された。現在はウリ銀行鍾路支店になっている。

ウリ銀行鍾路支店から北に行って地下鉄鐘閣駅の交差点に写真の左の鍾路タワーが見える。ソウル都心部の一等地に建つ全面ガラス張りのデザインの３３階建ての高層ビル。最上階を雲のように見せるトップクラウド工法を取り入れ、最上階は空に浮かんでいるかのように３つの柱で支えられている。１９９９年に完成し、鐘路のランドマークタワーとなっている。

鍾路タワー 現代・近代建築

昨日、徳寿宮に行ったが見逃した惇徳殿を見るために再度訪問。石造殿とともに徳寿宮を代表する近代建築。大韓帝国最後の皇帝純宗の戴冠式が１９０７年に挙行された徳寿宮内の近代建築である惇徳殿が１００年ぶりに再建された。西洋式の２階建ての建物で、赤い壁に青い窓枠がエキゾチックな近代西洋式建築である。

徳寿宮 城・宮殿

入口を入ると１階の常設展示場には大型メディアアートが展示されている。高宗が進めようとして、即位４０周年行事の稱慶禮式を祝う様子が映像で流れている。行事はコレラの流行で中止されたが、鮮やかな映像資料で朝鮮末期の歴史や当時の外交状況を知ることができる。

徳寿宮 城・宮殿

文化財庁は２０１７年の発掘調査で発見されたタイルやレンガなどの遺物、遺構や考証写真をもとに２０１８年に再建の設計をした。２０１９年に工事を開始し、２０２２年１１月に完成。２０２３年９月に一般公開した。１階には発掘時に見つかったさまざまな色と模様のタイルが飾られいる。廊下をガラス張りにして当時の基礎部分が見えるようにしている。

徳寿宮 城・宮殿

さらに奥に行くと、応接室がある。応接室には「惇徳殿の歴史と未来」というテーマで、大韓帝国の歴史や外交活動に関する内容が展示されている。

徳寿宮 城・宮殿

さらに奥に行くと２階への階段がある。上がると、図書室がある。大韓帝国の外交史の記録を保管しているアーカイブ館。来館者が歴史に関連する本を見ながら休憩できるように座席が置かれている。各種図書と映像資料を集めている。隣には屋外テラスがあり、前庭と石造館、その背後にソウルの街を眺めることができる。

徳寿宮 城・宮殿

２階には常設展示室があり、「大韓帝国の外交」というテーマで５つ部屋に分かれて展示している。１８７６年に日朝修好条規を締結して以降、米国、イギリスなど複数の国と外交関係を結んだ過程と、主要な事件を解説している。激動の時代を生きた大韓帝国の外交官として、写真左端の李漢應とその隣の朴定陽の人生と活動にもスポットを当てている。

徳寿宮 城・宮殿

惇徳殿を出て石造殿と渡り廊下で繋がっている旧李王家美術館新館がある。中村與資平の設計で、１９３８年に竣工、開館された。花崗岩が使われた正面玄関の柱と大壁が特徴の新古典主義建築の石造建物。１９７３年から１９８６年までは国立現代美術館となり、１９９８年に徳寿宮美術館として復活した。現在は国立現代美術館徳寿宮館となり 、この時は写真のように工事をしていた。

国立現代美術館分館 徳寿宮美術館 (石造殿別館 ) 博物館・美術館・ギャラリー

徳寿宮から南に少し行くと旧京城裁判所がある。朝鮮末期に漢城裁判所があった平理院の場所に１９２８年に建てられた。１９９５年に日本の最高裁判所にあたる大法院として使われていた。建築物の正面だけを残して新築された建物で、レトロとモダンがうまく組み合わさった空間で、さまざまな展示会が開かれている。２００２年にソウル市立美術館となっている。

ソウル市立美術館 博物館・美術館・ギャラリー

ソウル市立美術館の近くに旧培材学堂東校舎がある。１９１６年に建てられた。１８８５年にアメリカ系メソジスト宣教師アペンゼラーによって設立された韓国初の西洋式近代中等教育機関。韓国の近代教育の歴史を知ることができる。「培材」は｢優秀な人材を育て学ぶ家」という意味で、高宗によって名付けられたそうだ。現在は培材学堂歴史博物館になっている。

国鉄ソウル駅の北側に写真の大韓イエス教長老会平安教会がある。１９５１年に朝鮮戦争で北朝鮮出身の避難民が集まり、釜山避難地で初礼拝し平壌教会が始まった。復興したソウルに教会を設立して、１９５６年に平安教会と呼ぶようになった。１９６７年、現在の場所に赤レンガの本堂を新築した。鐘閣銅板が礼拝堂に重厚な雰囲気を醸し出している。ソウル未来遺産に登録されている。

国鉄ソウル駅の西側にある孫基禎体育公園に入って、しばらく歩くと孫基禎の銅像がある。孫基禎は、日本統治時代の１９１２年に新義州で生まれ、１９３６年のベルリンオリンピックで、アジア地域出身者として初めて男子マラソンで金メダリを獲得し、同胞の南昇龍も銅メダルを獲得した。大韓民国建国後、孫基禎は韓国籍になり、韓国の陸上チームのコーチや陸連会長を務めた。

さらに進むと孫基禎記念館がある。赤レンガの趣きある記念館は、孫基禎が１９３２年にスカウトされて１９歳で入学した養正高等普通学校の建物を改築したもの。生誕１００周年の２０１２年に開館した。入口近くには孫基禎の巨大な首像がある。１９０５年の設立された養正義塾が１９１３年に養正高等普通学校になった。首像から少し離れた所に「養正中等学校校址」の石碑が建っている。

館内には孫基禎の幼年期から五輪優勝までと、オリンピックで孫選手の快挙を報道した朝鮮の新聞「東亜日報」が胸の日の丸が塗りつぶした写真を掲載した「日章旗抹消事件」から晩年までを紹介する構成になっている。当時の朝鮮総督府の警務局によって記者は逮捕され、同紙は無期停刊処分になった。孫選手は帰国してからも警察官が張り付き、歓迎会も大半は中止になった。

写真は孫基禎選手の月桂冠の実物。受賞された金メダルとも展示されている。戦後、１９４６年８月２０日、ベルリン五輪１０周年の祝賀会がソウルの徳寿宮で催され、独立運動家の李承晩や金九、米軍関係者などから祝福の言葉を受けた。１９８８年のソウルオリンピックでは聖火リレーランナーを務め、２００２年に９０歳で亡くなった。

孫基禎体育公園を出て、南に２０分程歩いて小高い丘を上ると植民地歴史博物館がある。NGOの民族問題研究所と市民歴史館建設委員会が植民地主義の清算と東アジアの平和を実現するための活動の拠点の必要から植民地歴史博物館を建設した。日本帝国主義による朝鮮侵略、植民地支配の実態、反人道的な犯罪の真相を究明し、被害者の尊厳を回復するために日韓でともに行動することを目指している。

館内に入ると、日本統治時代に抗日闘争を率いた独立運動家洪範図の胸像が置かれている。旧満州で起きた日本軍との戦闘を勝利に導いた抗日武装軍の英雄だったが、当時のソ連の共産主義勢力と手を結んだ経歴があるとして、北朝鮮への強硬姿勢を強調する尹錫悦政権は陸軍士官学校内にある胸像の移転を決定した。独立運動の顕彰団体や歴史学者が強く反発している。

第１ゾーン「日帝はなぜ朝鮮を侵略したのか」をテーマに「１９世紀は野蛮の時代であった。…日帝は、素早く西欧の帝国主義を倣い、大陸を侵略する道を選んだ。『明治維新』を通じて軍事力を増強させた日帝は、アイヌモシリや琉球を強制的に占領し、領土を広げた。さらに台湾や朝鮮を侵略し、植民地支配に足場を築いた」と説明している。

第２ゾーン「日帝の侵略戦争、朝鮮人に何が起こったか」をテーマに「日帝は、中国への侵略を全面化する中で、自国のみならず、植民地朝鮮や台湾までも侵略戦争を遂行するため総動員体制に組み込んでいった。すべての朝鮮人を対象に、軍隊組織のような動員体制を朝鮮全土に配置した。思想統制を強化し、一切の抵抗を弾圧し、朝鮮人の民族アイデンティティを破壊する皇民化政策を推進」と説明している。

第３ゾーン「同じ時代、違う人生―親日と抗日」をテーマに「植民地朝鮮は巨大な監獄であった。…ある人は民族共同体の悲惨な現実から目をそらして、個人の出世や成功のために親日の道を歩んだり、権力にひれ伏して侵略戦争に積極的に加担した。…一方で、日帝に立ち向かい、国を取り戻し、人間としての尊厳を守るために、命をかけて闘った人々もいた」と説明している。

第４ゾーン「過去を乗り越える力、いま、私たちは何をするべきか」をテーマに「１９４５年８月１５日、解放を迎えた。しかし、朝鮮半島は、米ソが北緯３８度線を境に分割占領し、冷戦の最前線となってしまった。…冷戦や反共、近代化や経済理論に立ちふさがれ、過去の清算は遅々として進まなかった。その被害は全て民衆が受けることになった。朝鮮半島は、いまも終わらない２０世紀の苦痛の中にいる」と説明。

チョンバロを北に１０分程歩くと空港鉄道ソウル駅に到着。駅に入って、エスカレーターで地下３階まで行き、フロアを左手に進むと一般列車の切符売り場と案内センターがある。T-moneyで改札を通過して、ホームに向かう。午後１２時２２分発の列車で仁川国際空港に向かう。

空港鉄道 A'REX 鉄道系（地下鉄・モノレールなど）

午後１時２２分に仁川国際空港第一ターミナルに到着。搭乗券の発券を済ませて、モノレールで出発ロビーに向かう。出国手続きはパスポート読み取り機と顔認証だけで簡単に終わる。出発までレストランで昼食。「ソンス バンサン」というレストランは入口に設置したタッチパネルで注文できる。トッポギとプルコギを注文し、１３５００ウォンだった。店内のパネルに食券の番号が出たら料理を取りに行く。

仁川国際空港 (ICN) 空港

仁川国際空港第一ターミナルを午後３時２５分発のピーチで大阪に向かう。午後５時７分に関西国際空港第二ターミナルに到着。

関西国際空港第二ターミナル 空港