2016/11/16 - 2016/11/16
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わになのかさん
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「イタリアはいいぞー」
モニタに向かって作業していたテオが椅子ごと振り返って言った。どうやら僕とトムが旅行の話をしていたのを聞いていたらしい。ヘッドフォンをして背を向けていたので、てっきり集中しているのかと思っていた。禿げ上がった頭からそのヘッドフォンをおもむろに首にずらしながら、キャスター付きの椅子を動かして僕らの方へ来る。丸くどっしりとした大きな体と眼鏡がいかにも博士然とした雰囲気だが、彼の仕事はシステムアドミニストレータである。
「食べ物は旨いし、ワインも上等だ。しかも暖かいしな。いや、待て、今はもう11月だから、さすがに暖かくはないか。まあ、でもここよりは暖かい。」
「イタリアははじめてだからさ、楽しみなんだ。」僕が言うと、
「そりゃあ、なおさらいい。しかし、イタリア人には要注意だ。あいつらは基本的に女のことばっかりだからな。あとは歌うたっときゃなんとかなると思っとる。仕事しないんだよ。」
テオは両手を上にあげる。お手上げという意味だろう。トムがおもしろそうに口をはさむ。
「まあ、南の方はそういう傾向にある。暖かいとそんなにがんばらなくても生きていけるからな。長い歴史の中でそういう性格になっちまうんだろうさ。」
あいかわらず辛辣だが、彼の言ったことは、ある意味一つの真理をついている気がした。まあ詳しく知らないから適当なことは言えない。でも、それはそれで素敵ではないか。おおらかな環境で育ちたいものである。オランダだって、日本に比べれば十分そうなのだけど。オランダって日本より北だよね?
「とはいえ、イタリアはいい。」
テオがにっこりと笑う。
「俺は二か月くらい、ゆっくりと滞在するのを薦めるがね」
「そんなわけにはいかないよ。でも、そんなに好きなんだね。イタリア語は?向こうで過ごすときどうするの?」
「そんなもんはなんとかなるさ。なんたって、イタリア語で覚えておかないといけないのは2つだけだ。まず一つはヴォーノ。」
テオはひとさし指を頬にあてたあと、その指を僕に向け、ついでに親指を立てた。
「そして、マフィアだ」
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- 乳幼児連れ家族旅行
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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朝はやはり寒い。冬の訪れを予感させる冷たく澄んだ空気。見上げた大聖堂の上空高くに飛行機雲がくっきり見えた。
二日目はフィレンチェから郊外へ出かけることにしていた。トスカーナでも有名な街の一つ、シエナへ向かう。 -
フィレンチェの中央駅から少し歩いたところに、中長距離バスのターミナルがある。出発はそこから。待合所でチケットを買って、バスを待つ。シエナ以外にもさまざまな行き先が電光掲示板に示される。こういったローカルな移動手段はいつもわくわくする。ほんとうに次の目的地まで行けるだろうかと少しドキドキしたり、聞いたことのある場所を掲示板に見つけて、ああ、あのバスに乗れば、そんなとこにも行けるのかと次の旅に思いをはせてみたり。昔、はじめてヨーロッパを旅したころの気持ちがよみがえる。
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バスは定刻から少し遅れて出発。二階の一番前の席に座ることができた。
イタリアは運転が荒いと聞いていたが、バスの運転も、周囲の車の運転も、そうでもない。後で聞いた話だが、北イタリアはそんなに荒くはないらしい。本当に怖いのは南イタリアだとか。
フィレンチェからシエナまでは約50Km。車で普通に走れば45分くらいだろうけれど、いくつか停留所を経由するため、のんびりとした行程。妻と娘と息子は全員眠ってしまった。到着には一時間半ほどかかった。 -
シエナの街が特徴的なのは、建築物の壁が、すべて赤みがかった茶褐色で統一されていること。この色をシエナ色というらしい。一番、素晴らしかった景色は、バスから街の外観が見えたときなのだが、一瞬だったので写真におさめることができなかった。不覚。
まずは、中央広場であるカンポ広場へ歩みを進める。 -
この広場は塔のある建物を中心に扇型になっており、しかもすり鉢状に傾斜している。ちょうど扇の中心が一番低くなる形だ。娘が何度も登って下ってを繰り返していた。こけて泣くことにならないか心配だ。
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カンポ広場から離れて路地を歩けば、趣のある街並みが広がっている。煤けた壁は古い印象を与えるが、ぼろいイメージはない。これが石造りと木造との違いかもしれない。
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イチオシ
暗褐色の建物が密集する街の外側に、糸杉の立ち並ぶトスカーナ地方の風景が覗く。
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ちょうどランチ時だったので、地元のトラットリアへ入った。デキャンタで供される赤ワイン。ハウスワインを、と頼めば、手ごろな値段でその店の味にあったワインが出されるのがイタリアだ。
「と、ネットで読んだのね。また知ったかぶりだ。」
「まあ、、せっかくだから何を飲んだら良いのか調べようと思って。にわか勉強したんだよ。ハウスワインってなんか銘柄なしの安いワインというイメージだったけど、ちがうんだね。まあ、サイ〇でしか見たことないんだけど。しかも飲んだことないんだけど」
「普段は安いワインを飲んでる人が何言ってんのさ。いつもスーパーの一番下の段のやつ取ってるじゃん」
「あれ、安いんだよ。1Lで2ユーロくらいなんだぜ?」
「日本のペットボトル焼酎みたいなイメージかしら?」 -
イチオシ
トスカーナ地方で良く食べられているというパスタ、"ピチ"。ここシエナが本場だそうだ。もっちりとした食感の太麺で、これがソースとよく絡んで旨い。バシルソースとトマトソースの2皿を頼んだが、どちらも美味しかった。これはどこかでピチを探して買って帰らねば。
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食べ終わったのを見計らって、デザートを聞かれるが、お腹がいっぱいだったので遠慮した。それならば、と食後酒が運ばれてきた。お会計は済んでいるので、これはサービスと思われるが、酒瓶ごと供されたのでとまどう。え?これ何杯飲んでも良いのだろうか?しかも数種類ある。チキンの僕はとりあえずアマレットを一杯だけ飲んで終わった。そう何杯も飲めやしないが、全種類飲んでみても良かったかもしれない。こういうときにびびってしまうので、損をしている気がする。
ちなみに娘にはチュッパチャプスのタワーがきた。これは。。一本だけだよな。 -
お腹もいっぱいになったところで街歩きを再開する。
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雑貨屋さんも冷やかしてまわる。ドイツにはないセンスのものがちらほら見つかっておもしろい。イタリアのクリスマスケーキ、パネトーネの焼き型を発見。妻が購入を真剣に悩む。
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シエナ大聖堂の前を通る。美しい教会だが、フィレンチェのドゥオーモを見たあとだと迫力はそれほどない。迫力と言えば、街角で見かけたでかいピザ生地の迫力の方がすごかった。
「めちゃくちゃ不謹慎なこと言ってるわね」
「いやあ、うちの教会への思い入れはこんなもんだよね」
「いや、私を一緒にしてほしくないけど?!」
暗くならないうちにと、早めにバスに乗ってフィレンチェへの帰途についた。しかし、道路工事と、退勤ラッシュの相乗効果につかまり、バスはフィレンチェを前に遅々として進まず。バス車内も異様に熱く、息苦しく、気分が悪くなってしまった。結局二時間を大幅に超えてかかり、到着するころには外は暗くなっていた。 -
涼しい夜風に当たると、気分は良くなった。同時にお腹もすいてきた。そこで中央市場に行くことにした。市場には大きなフードコートがあったのを妻が覚えていたからだ。夕食時で席はほとんど埋まっていたため、いくつかテイクアウトしてホテルに帰ることにした。ピザは本格的な窯で焼いてくれた。初のイタリアピザだ。デザートにはティラミスを。
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パニーニのカウンター。これでもかと、こぼれんばかりに具がはさまれたサンドウィッチ。これはディスプレイだけじゃない。本当にこのボリュームで作ってくれる。ホテルに持って帰ったので熱々とはいかなかったが、このパニーニ一つで十分に満足できる量、そして美味さ。もちろん、ピザもうまかったので、娘と取り合って食べた。
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腹いっぱい食べたあとは、シャワーを浴びて、娘と息子はすぐに寝入ってしまった。慣れないバス移動で疲れたのだろう。
「うーん、おいしー!」
余分に買っていたスイーツをにこにこと食べる妻の向かいの椅子に腰をおろし、僕はスーパーで購入したビールを開けて、瓶のまま一口あおった。
以前、日本で通った英会話教室で、アメリカから来た先生が、日本にきてサ〇ウェイの具の少なさに衝撃を受けたと話していたけれど、そうなるのもうなづける。諸外国に比べて日本の飲食店のケチさは異常だ。それだけ材料費の消費をおさえて利益をねん出しないと経営競争に負けるのだろうけれど。。それは乳製品や肉類の物価が高いのだろうか?いや、そうだとしても、少なくとも野菜はヨーロッパとそれほど変わる印象はない。そもそも店の数が多すぎるのではないか。しかし、店の数を減らせば雇用の機会がそれだけ減って困るのか?やはり日本は人口が多すぎるのが問題なのか?夜も眠らず経済活動を続けないと本当に国は衰退するのか?
結局、どうしてヨーロッパの国々はこの規模の経済活動で国が維持できるのだろうか、というところに考えがいき、いつも答えがでない。
まあ、そんなことを考えるほど、今は気分が良いということ。やめやめ。イタリア人のように歌って、女性に見とれて(妻だ)、人生を楽しもう。
ビールのラベルに描かれた小粋な紳士もそう言っているようだった。ん?紳士じゃない。もしかしてあなたは。。
マフィアか?
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