サンクトペテルブルク旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 大学生にとって春休みというものは非常に長い。2月にもなれば、もう授業はほとんどない。そうなると、短期留学の絶好のチャンスとなる。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、……。往々にして、英語圏の国は人気であると同時に一般的である。<br /><br /> しかし私が選んだのは、ほかでもないロシアであった。友人たちからは驚かれたが、第二外国語でロシア語を修め、サーモンとバレエをこよなく愛する私にとって、ロシアという国は魅力の塊でしかなかった。<br /><br /> こうして私は、通っていたJICロシア語講座からの「サンクトペテルブルク短期研修」のお知らせに飛びついたのである。申し込んでからは、ビザ申請や保険の加入、研修先の学校のプレイスメントテストなどであっという間に時間が過ぎ、いよいよ出発の日がやって来た。<br /><br /><br /> 日本からサンクトペテルブルクまでの直行便はないので、ロシア航空を使うとモスクワを経由して行かなければならない。日本からモスクワまでのフライト時間は約9時間。モスクワからペテルブルクまでは1時間半。乗り継ぎの待ち時間も含めると、出発してからだいたい14時間程度でペテルブルクに降り立つことが出来る。<br /><br /> 私のロシア奮闘記は、1日目にしてすでに始まっていた。笑顔のない空港職員による入国手続き、乗り継ぎ便のゲート変更、lost baggage、……。結局ステイ先に着いたのは日付を超えた真夜中の1時頃であった。これほどまでにロシア語しか通じないとは、これは大変な国に来てしまったな……というのが正直な1日目の感想であった。<br /><br /><br /> さて、それからの日々は怒涛のように過ぎていった。研修先の学校は外国人のためのロシア語学校であり、様々な国の出身の生徒たちがいた。中国、フランス、ドイツ、イタリア、……。もちろん、他の日本人留学生もいた。偶然にも日本人留学生はみな大学生だったので、すぐに仲良くなることができた。<br /><br /> 学校の1日は朝の9時30分から始まり、昼過ぎには授業が終わった。放課後には、観光ツアーや伝統工芸体験、歌、料理などの課外プログラムがあり、充実していた。授業と課外プログラムの間の昼休みには、私は他の日本人留学生とともに近所の食堂(СТОЛОВАЯ)に行き、安くて美味しいランチを食べながら、授業のことやステイ先のことについてあれこれ語り合った。<br />授業はというと、もちろん基本的にロシア語で行われるのだが、外国人のためのロシア語学校であったので、困っていたり、理解していなかったりすると先生が英語で説明してくださった。<br />2週間の現地生活の中でも特に最初の3日間はかなり苦しんだ。何せ、自分自身がわかっている「つもり」であったからだ。<br /><br />しかし、単語がとっさに出てこない、語尾の変化に気が付けない、格変化がこんがらがる、……。当初は、放課後の宿題が3時間かけても完璧に出来たと言い切れなかった。出来ない自分が悔しくて、何度も教科書とノートを見直した。こんなに勉強したのは大学受験期以来、いやそれ以上に勉強したと思う。これらの日々は、大学生になって何となく日々を過ごしがちだった私にとって、すごく重要で価値あるものとなった。こんなにも毎日考え、真剣に授業を聴き、向上心をもって過ごしたことは、人生で初めだったかもしれない。おかげさまで、日ごとに宿泊先のホストファミリーとも会話できるようになっていったし、お店などに行っても少しづつ自らの意志を伝えることが出来るようになっていった。<br /><br />   <br /> 2週間の滞在では授業以外にも様々な経験をした。初めの1週間はエルミタージュ美術館に行ったり、伝統工芸や歌のレッスンを受けたりして様々なロシア文化に触れた。エルミタージュは想像していた以上の広さで、とても一度で回り切ることが出来なかった。全てを見られなかったのが心残りであるが、また行きたいという強い動機となっているのでかえって良かったと思っている。<br /><br /> それから、忘れてはいけないのがマリインスキー劇場でのバレエ鑑賞だ。本場の「白鳥の湖」は(全幕ではなくヴァリエーションだったが)やはり美しく、感動した。ただ、終演の時間が遅く、バスも近くからは乗ることが出来なかったので、タクシーに乗らなければならなかったのは非常に緊張した瞬間であった。<br /><br /> 日本語を学んでいるロシア人学生たちと交流できたのも非常に良い思い出だ。クンストカメラを見学してから、ネフスキー通りをぶらついたりした。彼女たちと途中のカフェで食べたブリヌイは格別に美味しかった。実は今も彼女らと連絡を取っており、秋には日本で会う約束もしている。彼女たちは非常に勉強熱心で、日本語も上手だからとても楽しみだ。<br /><br /><br /> 2週間という時間はあっという間に過ぎていき、わたしは日に日にサンクトペテルブルクを離れるのを寂しいと感じるようになっていた。1日目の自分に聞かせたらきっと驚くだろうが、私はすっかりロシアという国に魅了されていたのである。アメリカ人的な愛想の良さは決してないが、こちらがロシア語を話すか理解しているとみれば、他のロシア人と同じように扱ってくれる。<br /><br /> 日本はもう真夏の暑さだが、最近はなんだかステイ先で毎日ごちそうになった温かいスープが恋しく思えてならない。今回の留学は、これから人生をあと80年生きるとしても、非常に貴重で、二度とないほどに充実した日々であったと思い出せるだろう。

サンクトペテルブルグ留学記 遠い隣国での挑戦

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2019/03/03 - 2019/03/17

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 大学生にとって春休みというものは非常に長い。2月にもなれば、もう授業はほとんどない。そうなると、短期留学の絶好のチャンスとなる。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、……。往々にして、英語圏の国は人気であると同時に一般的である。

 しかし私が選んだのは、ほかでもないロシアであった。友人たちからは驚かれたが、第二外国語でロシア語を修め、サーモンとバレエをこよなく愛する私にとって、ロシアという国は魅力の塊でしかなかった。

 こうして私は、通っていたJICロシア語講座からの「サンクトペテルブルク短期研修」のお知らせに飛びついたのである。申し込んでからは、ビザ申請や保険の加入、研修先の学校のプレイスメントテストなどであっという間に時間が過ぎ、いよいよ出発の日がやって来た。


 日本からサンクトペテルブルクまでの直行便はないので、ロシア航空を使うとモスクワを経由して行かなければならない。日本からモスクワまでのフライト時間は約9時間。モスクワからペテルブルクまでは1時間半。乗り継ぎの待ち時間も含めると、出発してからだいたい14時間程度でペテルブルクに降り立つことが出来る。

 私のロシア奮闘記は、1日目にしてすでに始まっていた。笑顔のない空港職員による入国手続き、乗り継ぎ便のゲート変更、lost baggage、……。結局ステイ先に着いたのは日付を超えた真夜中の1時頃であった。これほどまでにロシア語しか通じないとは、これは大変な国に来てしまったな……というのが正直な1日目の感想であった。


 さて、それからの日々は怒涛のように過ぎていった。研修先の学校は外国人のためのロシア語学校であり、様々な国の出身の生徒たちがいた。中国、フランス、ドイツ、イタリア、……。もちろん、他の日本人留学生もいた。偶然にも日本人留学生はみな大学生だったので、すぐに仲良くなることができた。

 学校の1日は朝の9時30分から始まり、昼過ぎには授業が終わった。放課後には、観光ツアーや伝統工芸体験、歌、料理などの課外プログラムがあり、充実していた。授業と課外プログラムの間の昼休みには、私は他の日本人留学生とともに近所の食堂(СТОЛОВАЯ)に行き、安くて美味しいランチを食べながら、授業のことやステイ先のことについてあれこれ語り合った。
授業はというと、もちろん基本的にロシア語で行われるのだが、外国人のためのロシア語学校であったので、困っていたり、理解していなかったりすると先生が英語で説明してくださった。
2週間の現地生活の中でも特に最初の3日間はかなり苦しんだ。何せ、自分自身がわかっている「つもり」であったからだ。

しかし、単語がとっさに出てこない、語尾の変化に気が付けない、格変化がこんがらがる、……。当初は、放課後の宿題が3時間かけても完璧に出来たと言い切れなかった。出来ない自分が悔しくて、何度も教科書とノートを見直した。こんなに勉強したのは大学受験期以来、いやそれ以上に勉強したと思う。これらの日々は、大学生になって何となく日々を過ごしがちだった私にとって、すごく重要で価値あるものとなった。こんなにも毎日考え、真剣に授業を聴き、向上心をもって過ごしたことは、人生で初めだったかもしれない。おかげさまで、日ごとに宿泊先のホストファミリーとも会話できるようになっていったし、お店などに行っても少しづつ自らの意志を伝えることが出来るようになっていった。

  
 2週間の滞在では授業以外にも様々な経験をした。初めの1週間はエルミタージュ美術館に行ったり、伝統工芸や歌のレッスンを受けたりして様々なロシア文化に触れた。エルミタージュは想像していた以上の広さで、とても一度で回り切ることが出来なかった。全てを見られなかったのが心残りであるが、また行きたいという強い動機となっているのでかえって良かったと思っている。

 それから、忘れてはいけないのがマリインスキー劇場でのバレエ鑑賞だ。本場の「白鳥の湖」は(全幕ではなくヴァリエーションだったが)やはり美しく、感動した。ただ、終演の時間が遅く、バスも近くからは乗ることが出来なかったので、タクシーに乗らなければならなかったのは非常に緊張した瞬間であった。

 日本語を学んでいるロシア人学生たちと交流できたのも非常に良い思い出だ。クンストカメラを見学してから、ネフスキー通りをぶらついたりした。彼女たちと途中のカフェで食べたブリヌイは格別に美味しかった。実は今も彼女らと連絡を取っており、秋には日本で会う約束もしている。彼女たちは非常に勉強熱心で、日本語も上手だからとても楽しみだ。


 2週間という時間はあっという間に過ぎていき、わたしは日に日にサンクトペテルブルクを離れるのを寂しいと感じるようになっていた。1日目の自分に聞かせたらきっと驚くだろうが、私はすっかりロシアという国に魅了されていたのである。アメリカ人的な愛想の良さは決してないが、こちらがロシア語を話すか理解しているとみれば、他のロシア人と同じように扱ってくれる。

 日本はもう真夏の暑さだが、最近はなんだかステイ先で毎日ごちそうになった温かいスープが恋しく思えてならない。今回の留学は、これから人生をあと80年生きるとしても、非常に貴重で、二度とないほどに充実した日々であったと思い出せるだろう。

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