神々はなぜこの地を選んだのか？ ～ 九州半周旅２日目午後編

2019/12/20 - 2019/12/23

日本創生を辿る一人旅の２日目。神々の降り立った地を巡っていこう。

高天原伝説について私には昔から一つの疑問があった。
「なぜあんな辺鄙な場所を降臨の地に選んだのか？」

今の都市から遠いという意味ではない。決して肥沃な土地ではない。大きな川もない。海も遠い。平らな所なんてないのだ。そんな土地を太古の人々がわざわざ生活の場に選ぶか？
確かに風光明媚で神秘的な場所だ。それゆえ、後世の人間が権威付けに後付けで選んだ場所ではないのか。太古の昔、人なんか住んでいなかったに違いない。

さあ、そんな疑問に答えが出るのか。神話の里を巡ってみた。


12月20日　羽田→宮崎空港　美々津、鵜戸神社、馬の背柱状節理、高千穂夜神楽
12月21日　高千穂峡、あまてらす鉄道、櫛蜀神社、天岩戸神社、内牧温泉
12月22日　阿蘇山、御船恐竜博物館、三角西港、熊本
12月23日　熊本、霧島、宮崎→羽田空港

エリア 高千穂・五ヶ瀬(宮崎)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: レンタカー JALグループ

さあ午後は神々の足跡を辿る聖地巡りだ。今風にはパワースポットツアーってところ。
あまてらす鉄道からまず車で移動したのは槵觸（くしふる）神社。日本書紀に天孫降臨の峯として伝えられる。

くしふる神社 寺・神社・教会

御神体は槵觸の峰そのものだったので長く社はなかったのだが、17世紀末にここ槵觸神社が建立されたとのこと。

くしふる神社 寺・神社・教会

高千穂の神社としては若い方だ。

くしふる神社 寺・神社・教会

彫り物が見事な社殿。

くしふる神社 寺・神社・教会

槵觸神社から歩いて10分ほどの所に高千穂碑がある。ただの真新しい石碑だった。

天孫降臨の地とされている槵觸峰を仰ぐ場所ということから、ここに石碑が立てられた。パワースポットがあるとしたら、ここと言うよりこの山一帯だ。

ここも歩いて5分ほど。神武天皇の兄弟神（四皇子）誕生の地、四皇子峰。
台地に小さな祠があった。

ここは神社云々ではなく土地そのものが聖地であり山そのものが御神体なので、豪華な社殿や思わせぶりな施設はない。それだけに神話の概要でも知って訪れれば、何物かを感じ取れるはず。

ここから天岩戸神社を目指す。
途中、あまてらす鉄道から見えた段々畑を通過する。

日本だなぁ。

10分ほど走ると天岩戸神社に到着。入口では天照大神がお迎え。
ずいぶんとバタくさいと言うか、ヴィクトリアンな天照大神だな。そしてこの手の彫刻アルアルだが、おっぱいだけがテカテカに光っている。スケベオヤジの仕業かと思いきや、母乳の出がよくなるおまじないだそうな。

天岩戸神社には東宮と西宮がある。どちらを先に参拝すべきというルールはないようだ。とりあえず西宮の駐車場に車を停めてキョロキョロしていると、目の前をかわいい巫女さんが通過した。
これは神様のお導きに違いない！
迷わず後を追った（別にストーカーではない）。

何のことはない。巫女さんは門前町の郵便局に行くだけだった。
おれは郵便局に一緒に入る訳にもいかず、しょ～がないのでそのまま歩く・・・
すると赤い欄干の天岩戸橋に出た。天鈿女命も微笑んでいる。お～これでいいのか。

橋を渡るとすぐに東宮に出た。西宮は天岩戸が御神体、東宮は天岩戸から出てきた天照大神がお住まいになった場所だ。

その東宮はひっそりとした趣き。お札などの売店も西宮にあるので、ここには誰もいない。それが逆にいい。

天岩戸神社 寺・神社・教会

境内の見事に枝分かれした杉の木。

東宮参拝を終え西宮に向かう。

天岩戸神社 寺・神社・教会

すると、さっき通った門前町の家々にお面が掲げられていた。
あれぇ、さっきはまるで気が付かなかったけどなぁ。
（アンタ巫女サンシカ見テイナカッタデショ～ガ！）

1軒残らずだよ。観光客向けの商店だけでなく、いわゆるしもた屋も。
八百万の神オールスターズだ。

さすがだねぇなどと感心しているうちに、東宮の鳥居に到着。

天岩戸神社 寺・神社・教会

手水場で手口を注ぎ、

天岩戸神社 寺・神社・教会

まずは本殿にお参り。皇祖を祀る神社なので伊勢神宮と同じ形式だ。
東宮の御神体は天岩戸そのもの。そしてその天岩戸を拝見できるツアー（と言っていいのか）が１時間ごとに行われる。
これは参加しない訳にいかない。

天岩戸神社 寺・神社・教会

社務所前に集合して、宮司さんの案内で一般人立ち入り禁止の聖域に入っていく。この右手の門からだ。そしてここから先は撮影禁止。
当然ここから先の写真は聖域のものではなく、本殿のものです。あしからず。

天岩戸神社 寺・神社・教会

天岩戸はこの本殿の真裏、岩戸川の対岸の絶壁の中腹にあった。縦に避けたような洞穴で、奥行き9ｍとのこと。周りに草木が生い茂っていてよく見えないが、聖域なので神職であっても岩戸には近づけず木々も繁るに任せているとのこと。
ドローンなんかで撮影するなよ。祟りがあるぞ。

天岩戸神社 寺・神社・教会

宮司さんは天岩戸伝説だけでなく、高天原に関するいろいろな事を説明してくれた。15分ほどで聖域を出た。ツアーは無料なのだが、お心づけがあればこちらの箱へとの案内が。
誰も入れようとしない！２０人もいるのに何て奴らだ。と思いながら財布を探ると･･･万札しかない！さすがに1万円のお心づけは厳しいので、社務所でお札を授かった時に「釣りはいらねぇよ。」とニヒルに言ってやった。

天岩戸神社 寺・神社・教会

すると奥からさっきの巫女さんがニコニコしながらお礼のお茶パックをくれた（ほらぁご縁があったじゃん）。天岩戸は見なきゃ損だよ。

で、次なる目的地は天安河原。パワースポットというよりインスタ映えスポットとなっている。

岩戸川の渓谷沿いを10分ほど歩くと、

大きな洞穴に鳥居がしつらえてある。
昨日の鵜戸神社よりも大きいな。

天安河原 自然・景勝地

その洞穴もさることながら、ここの売り（？）は無数の石積み。どうやらほんの50年ほど前に、どこかの誰かが始めた事らしい。「無数」と言っていい数だが、ざっと概算したら、5000～10000個はある。

天安河原 自然・景勝地

石積みは祈りを込めながら3・5・7段のいずれかで積むと願いが叶うと言う。私も１つ追加しておいた。

天安河原 自然・景勝地

天照大神が天岩戸にお隠れになった時、八百万の神々がここで相談をしたという。
「ど～するよ、オバハン拗ねて隠れちまったよ。」
「小うるさいのがいなくなるのはいいけど、こう暗くっちゃ飯も食えねぇ。」
（オイオイ、ソンナ事ハ言ワナイダロウガ）

天安河原 自然・景勝地

で、天鈿女と手力雄命の活躍で無事、天照大神は外界に戻りめでたしめでたり、というお馴染みの一席。

天安河原 自然・景勝地

ここではそんな無礼な事は考えませんでしたよ。真摯に日本創生を思っていた。
「本当に日本の皇祖たちはここで暮らしていたのか？」

天安河原 自然・景勝地

そしてその疑問はここで解消する。天岩戸神社に付属する徴古館。係員もいない小さな博物館。入場料はお賽銭箱に200円を入れて、勝手に入る。

徴古館 美術館・博物館

天岩戸神社にまつわる古文書でも展示しているのかと思いきや、展示物のほとんどは石器・縄文時代の出土品だった。
日本人の祖先たちは間違いなくこの地で暮らしていたのだ。

徴古館 美術館・博物館

ここは農耕に適した地ではない。狩りならできるだろう。現にここに展示されているのは鏃や石斧といった狩猟に使われる道具がほとんどだった。
その後、日本は農耕を学び田畑を持つのだが、そうなると高千穂は決して住みやすい土地ではない。確かに壺などの土器も出土しているのだが、人々はより平地に移動したのではないか。その後、記憶としての高千穂、幽玄で神秘な風景を残す高千穂を天孫降臨の地と定めたのではないか。

徴古館 美術館・博物館

手力雄命、あんた本当のことを知っているんでしょ。教えてよ。
これまであまり興味はなかったのだが、これを機にもう少し本を読もうかな。

天岩戸神社 寺・神社・教会

さてそろそろ日も傾いた。今日の宿は阿蘇内牧温泉だ。車で1時間半、ひとっ飛びだぜ。
と走っていると、なんとも奇怪なものが目に飛び込んできた。なに、これ？
人もいなければ看板もない。巨大な秘密基地のような木造建造物。大きな木を取り囲むように木造の建造物がうねっている。かなり古く傷んでいる。

で、調べましたよ。「高森ツリーハウス」という打ち捨てられた施設らしい。元々は中央の巨木がこの地域の御神木で、それを補強するためにツリーハウスを作ったと言われているが。今じゃハウスの方が御神木に寄りかかっている。
廃墟マニアの方、一度いかが？

もう周囲は阿蘇の雰囲気だ。今日はよく歩いたなぁ。内牧温泉でゆっくり湯につかろう。

おまけ。
内牧温泉街のすし屋の玄関で子タヌキが餌をもらっている。車の往来もおおいまるっきりの街中だよ。俺が2mくらいまで近づいても全然平気。

内牧温泉 温泉