【復刻版】アメリカ横断日記　11　粉雪とオリンピックと教会～Salt　Lake　City～

1999/08/20 - 1999/08/21

1999年7月、生まれて初めての海外一人旅。当時は都内の某私立大学の政治学科の学生でした。

デジカメやSNS、スマホなんてなかった時代ですが、何気に旅行記を自作のHPにアップしていました。1999年に独学でhtml勉強して、個人的に開設したジオシティーズのホームページですが、2019年3月をもってサービス終了で閉鎖になります。現在移転先を検討中ですが、一部をフォートラの写真付旅行記として復刻版として再作成します。誤字脱字等は修正し、表現も一部改めますが、なるべく当時のままの文章でと思っています。写真は、APSフィルムで撮った当時の写真をデジカメで撮影しています。

当時は英語も怪しかったし、情報もあまりなかったですが、二週間の国際ボランティアキャンプを含んでの約一ヵ月半、人生で初めての大冒険でした。航空券の買い方もよくわからなくて、授業の合間を縫ってHISに何度も行きました。あと今考えると、この時にマイレージカード作成しておけばよかったかと。

今改めて文章を振り返ると、初めての事だらけで新鮮に感じて興奮している状況がわかります。ちなみに当時は、旅行中にノートに旅行記を書いて、帰国後に書き写してWEBにUPするスタイルでした。あと、タイトル結構凝っていたかも。^^



はじめに

これは、僕が１９９９年７月１８日から８月２９日までのおよそ６週間、一人でアメリカへ行ったときの記録です。２週間ほどの国際ヴォランティアキャンプに参加したあと（国際ヴォランティアキャンプについては別のところに書く予定です）アメリカ最北東端のＭａｉｎｅ州から西海岸のＳａｎ　ＦｒａｎｃｉｓｃｏまでＧｒｅｙｈｏｕｎｄ　Ｂｕｓ（アメリカのほぼ全土を網羅する長距離バス）を使って旅したときの記録です。初めての海外一人旅でいろいろ大変なことがありましたが、自分なりにいい経験にもなったし、得たものは大きかったと思います。　



アメリカ横断日記ＩＮＤＥＸ

第一幕


第一章 旅立ちの唄
　　　　　　　　　　
～Narita，Boston～
　　　　　　　　
第二章 大瀑布を前にただ立ち尽くすのみ

～Niagara　Falls～
　　　　　　　　　
第三章 自由の国、憧れの都
　　　　　　
～New　York～
　　　　　　　　　　
第四章 合衆国誕生の地
　　　　　　　　
～Philadelphia～
　　　　　　　　　
第五章 桜の枝と白亜の殿堂
　　　　　　
～Washington　D.C～
　　　　　　　　
第六章 フロリダの太陽とそよ風を浴びて

～Miami，Key　west～
　　　　　　　　
第七章 異国の街角でふと酔いしれて
　　
～New　Orleans～
　　　　　　　
第八章 月までも続く道
　　　　　　　
～Houston～
　　　　　　　　　　　　　　
第九章 歴史を変えた一発の銃弾
　　　　
～Dallas～
　　　　　　　　　　　　　　　
第十章 標高1マイルの街角で
　　　　　
～Denver～
　　　　　　　　　　　　　　　
第二幕　


第一章 粉雪とオリンピックと教会
　　
　 　～Salt　Lake　City～
　　　　　　　　　　　　　
第二章 荒野の不夜城
　　　　　　　　
　　　　 ～Las　Vegas～
　　　　　　　　　　　
第三章 偉大なる大自然の芸術
　　　　
　　　　 ～Ground　Canyon～
　　　　　　　　　　
第四章 映画の都の熱き情熱
　　　　　
　　　　 ～Los　Angeles，Hollywood～
　　　　　
第五章 麗しき動植物の楽園
　　　　　
　　　　 ～Yosemite　National　Park～
　　　　　　
第六章 あの橋の彼方に
　　　　　　　
　　　　 ～San　Francisco～

エリア ソルトレイクシティ(アメリカ)

８月２０日（金）

今日は丸一日移動日。旅を続けるにあたって、こういう日も一日あっていいかなと思えた。何より日本ではあまり見られない景色を味わえるのは、時間があるときだけだし。

Denverからロッキー山脈を越えてSaltLakeCityまで、長い道のりである。DenverのDowntownを離れ、バスは西へと進む。いくら大型バスとはいえ少し苦しそうだ。標高があがるに連れ、針葉樹が見られなくなり、さらに峠を越える。ようやく一段落ついたようで、広大な大地が広がる。ライトグリーンのいかにも高山植物といった感じの低木や、草原が広がる。遥か彼方にはまた大地がさらに広がる。そしてどこまでも続く一本道を登ったり降りたり、右や左に曲がったりしながら、大平原を駆け抜けていく。時々バスは名もなき小さな町に止まる。本当に隣町まで１００マイル近くもあるんではなかろうかと思えた。

Utah州に入ると、赤茶色の台地が目立ってくる。ひたすら高原を走っていく。やがて下り坂に入り、次第に針葉樹が見られる。遥か彼方に見える光がだんだん近づき、そして到着。とてもきれいな街である。少し前にハリケーンが襲って大量の被害が出たそうであるが、街は荒れた雰囲気はまるでない。ヨーロッパ調の小さな美しい街である。雨が降っていたがY．Hまで歩いていくことにした。この街の夜はぜんぜん怖くない。女性が一人歩いても大丈夫そうである。つい最近１９９６年オリンピックが開催されたAtlantaで暴動があったばかりだが、この街は大丈夫だろう。そう考えながら歩いていく。なんか中国人っぽいオーナーが人を見下した態度をとっているようで、感じが悪かった。

だんだん日程調整が難しくなってきた。そしてついに今日、日本人に一人も会わなかった。

８月２１日（土）

予定を変更して、今日丸一日SaltLakeCityの観光に当てることにした。何としても２００２年オリンピック開催地を開催前に見ておきたかったからだ。この街はモルモン教と一般的に呼ばれるキリスト教の一種の分派の総本山がある土地として知られる。１８４７年７月、迫害から逃れてきて、Utahの荒野にたどり着いたビリガムヤング率いるモルモン教徒が入植したことにこの地の歴史が始まる。もともとモルモン教徒は勤勉で、青少年の非行が少ないといわれている。宗教都市でもあるので、この街の住民の大半は宗教関係者であると思う。この町の治安のよさは、その街並みの美しさが人の心を穏やかにすることもあるだろうが、モルモン教そのものの性質も否めないだろう。荒野であり冬が厳しいのは確かであろうが、少し郊外に出かければ、雪質のいい雪山に恵まれているのも確かであろう。オリンピック期間中も暴動が起き、つい最近も暴動が起こったどこかの都市とは大違いである。JOCの体質の腐敗が進んでいるのは確かであろうが、何とか成功してほしいものだと思った。

SaltLakeTempleという総本山に行く。映画“Legacy”を見る。モルモン今日初期の迫害と苦難の歴史を、主人公の女性の視点から、恋物語も混ぜて、それをおばあちゃんになった主人公が孫に語るという大作である。その後シスターがテンプル内を案内してくれることに。シスターサカモトという方が案内してくれることになった。彼女は僕と同じ神奈川県の出身で、僕と同じように周囲を山で囲まれた土地で育ち、また歳も近かったと思う。なんとも修行のためにここで１年半の間ヴォランティアを行っているそうである。もう一人韓国からのシスターの方も一緒に案内してくれた。世界各地からこの土地に修行にきているシスターが大勢いるそうである。自分と歳が近そうな人が多く、ひとつの生き方を発見したような気になる。別れる時に韓国の娘が日本語を話したので驚いた。

「アンニョン何とか、えっと何だっけ。」

「そうだ、アンニョンハシムニカ。」

彼女はちょっとうれしそうに微笑む。

もっといろいろ勉強しなくっちゃ。そう心に思う。

初めてGreyLineTourに参加する。いわゆる「はとバスツアー」みたいなもので、Grey　Houndとは違う会社である。国際免許を持ってきていないので、公共交通機関のない場所に行くにはうってつけの方法だ。それにガイドの案内を聞いていると、リスニング力強化になるかななんて。やはりはとバス、年配の人が多い、それも裕福そうな。隣の席に座ったスイス人のクリスと仲良くなった。彼は５ヶ国語を話せるそうである。ドイツ語、フランス語、ロマンシュ語、英語、スペイン語の５ヶ国語である。なんとも凄い。まずはGreatSaltLakeに行き、クルージングを楽しむ。海より塩分濃度が高いため、泳ぎが苦手な人でも浮くらしい。湖面にはShrimpが戯れる。荒野のオアシスのようである。

その後CopperMineに行く。深さ800m幅4kmもある巨大な大穴は、100年近くもの間銅を掘り出した賜物である。いかにここの銅山が開発され、この工場がどれほど環境を考慮してきたかが展示されていた。

クリスと一緒に日本食を食べる。彼の舌には特別においしくは感じなかったようではあるが、僕にとってはやはり日本人は日本食かなと思えた。なぜか彼は「たまごっち」のことを知っていて、いかにそれがブームになり重宝され、いかにそれが衰退していったかで話が盛り上がった。

夏の夕べにテンプルでコンサートを楽しむ。演奏もよかったが、それ以上にパフォーマンスが楽しかった。女性の4人で演奏したが、途中で演奏がうまくいかないとメンバーのうちの一人を縛りだしたり、それでもやはりうまくいかなくて、やっぱり4人力を合わせたほうがいいんじゃないかって、最後には4人で協力して演奏をする。そんな感じのパフォーマンスを、なかなかお茶目に演じてくれた。決してSMチックだったわけではない。

ダイヤを確かめに行ったバスディーポで、KeyWestであった関西弁の青年に再会。なんとも彼はこれからRenoに行ってギャンブルを少ししてから、カリフォルニアのアパートに戻り帰国するそうである。これまでの旅の経過を語りあう。そして別れの握手。少し切なかった…。