万代シティバスまつり2018

2018/09/23 - 2018/09/23

今年も新潟交通主催による、新潟のバスの日イベント「万代シティバスまつり」が開催されました。
参加事業者は、 本年より越後交通グループが展示車両に加わり、5社11台のバスが、ガルベストン通りを始めとする万代シティ周辺に並びました。
バスファンとしては、やはり「古いバス」に注目というわけで、そのなかでも、個人的に特に気に入っている一押し車両、新潟交通観光バス潟東営業所、車番「G1201-M」車両について、お伝えします。
当日は、時間限定にて、エンジン始動や、方向幕回転などの粋なサービスもあり、大の人気者でした。何故か、このバスの周りだけが、時間がゆっくり流れていたように感じました。

エリア 新潟

三菱ふそう エアロスターK 長尺 1991年式
登録番号 新潟22 か 1201
社番 G1201-M
新潟交通観光バス 潟東営業所

全体的に、柔らかい表情のこのバス、割と関東近県である、ここ新潟で、現役で活躍している姿を見られるのは、嬉しい限りです。
他メーカーの最新型よりも、ふそうの旧型車の方が遥かによく走る、と言われるほどに、ドライバーから圧倒的な支持を得てきた、三菱ふそうブランドです。
車体の大きさを感じさせない、より「乗用車」らしい、粘り強く、滑らかな加速と巡航性能は、高性能な観光、高速バスはもとより、この当時の路線車も同様で、乗っている側としても安心感があると同時に、実に気持ちのいいものです。

現在、三菱ふそうトラック・バス製のバス車体を専門に製造する、三菱ふそうバス製造(MBM)が、呉羽ボディという社名だった頃の最終モデルです。
95年に三菱ふそうバス製造となり、フロントウィンドウ下部への安全窓の設置に始まり、ボディ全体のスタイルも直線的になるなど、細かな変更はありましたが、このフロントのデザインは、90年代終わりまで受け継がれていました。

中古部品としてファンに大人気の方向幕、LED化が急速に進み、実用例はかなり貴重な存在となってきました。
旧形車両であっても、搭載機器類は更新されることが多いので、今日まで、LED化されなかったこの車両はラッキーだったと言えるでしょう。

直線的で見るからに軽快な雰囲気の近代的なバスはもちろんカッコいいけど、この丸み帯びた、優しく柔らかいイメージは何とも「可愛い」です。

側面下部のラッピング広告が、ノスタルジックな雰囲気をより盛り上げています。

バス旅気分で、窓を開けて手を振ったり、窓にひじをのせて寛いでいる人もおり、このバスの雰囲気にピッタリ、とても癒される光景でした。
かつて鉄道車両でも、この「ラッチ窓」が主流でしたが、これも近年、急激に減少してしまいました。

新潟交通の路線バスは、後ドア乗車なので、側面方向幕は後ドア付近にあります。側面方向幕を採用する場合、基本的に、乗車側のドアから確認しやすい場所に設置するのが基本です。
このように、後輪より後ろにドアが設置されている仕様も、とても貴重な存在になっています。

方向幕とは別に、サボ(案内板)受けも装着されているのが特徴で、側面方向幕とは別に、主な経由地や行き先を表記したサボを、ここに差し込みます。

後ドア左の出入口表示、インターホンマイク

後ドア(乗車ドア)付近
交通系ICカード読み取り器、整理券発行器
(小田原機器製)

ここからは、車内の事になりますが、このバスを通して、路線バスについて深く、マニアックな部分を知ってほしいと思い、綴らせていただきました。是非、お付き合い下さい。
前述したように、このバスの場合、行先表示こそ方向幕が維持されましたが、各種路線バス機器類は、時代に合わせて更新されてきており、サービス面、安全面では、しっかり近代化が図られています。

車内、座席の様子

内装そのものは、ほぼデビュー当時のまま維持されており、大切に扱われていることがわかります。

運転席全景

ハンドル、メーター

5速MT
フィンガー・コントロール・トランスミッション

運転席左下部に埋込取付された音声合成放送装置 本体 クラリオン製
バスネタのときは度々、登場していますが、この機器は、案内放送を流すだけでなく、各種表示器、運賃収受関係機器など、路線バス機器類を一括制御する中央装置です。この機器に、一営業所の全路線の放送、並びに各機器をコントロールする信号などのデータがインプットされています。

運転席右側
系統設定器
(液晶画面とテンキーで構成された黒い機器)
運転席操作盤
(赤い大きなボタンの付いたスイッチ)
陰になってしまいましたが、系統設定器の下の位置に、インターホンアンプ本体があります。
上記三点、全てクラリオン製

前述の音声合成放送装置を設定、操作するための機器類がここに集約されています。実質、路線バスシステム全体をここでコントロールします。
運行中、最も操作するのは、運転席操作盤で、この赤いボタンを押すたびに、一停留所先に進みます。

運転席メーターパネル左側に設置
整理券発行機操作盤(上)小田原機器製
運賃・停名表示器設定器(下)レシップ製

前述のように、これらの機器は基本的に音声合成放送装置からの信号に連動するため、通常、個別に設定、操作することはありません。

運賃、停名表示器
(レシップ製)

このタイプの運賃表示器も生産は終了し、液晶モニターによる「デジタルサイネージ」が主流となりつつあります。

運転席後部、無線機、バスロケ車上装着など

降車告知チャイム部
(レシップ製)

安全運行をサポートする、矢崎計器のデジタルタコグラフ
運転速度、エンジン回転数、急ブレーキ操作などの運転操作の状態、実車、休憩、回送など勤務の状態、一般道、自動車専用道、高速道などの道路種別が、時間とともに細かく記録されます。
タコメーターは、運送会社のトラックや法人タクシーなどにも装着が義務付けられています。速度超過の許容範囲など、最終的な評価の基準は、各事業者の判断に委ねられますが、大幅な速度超過の常態化など、管理体制が著しく緩いと、重大事故発生時に、事業者としてより厳しく罰せられ、事業を継続すること自体が難しい事態に陥ります。
大型貨物のようなリミッタ装着のないバスやタクシー、ハイヤーなどでも、頑なに一定速度を維持して走る光景を目にしますが、決して運転手さんが個人的にマイペースなわけではなく、このような管理体制のもと、指命と生活をかけて走っています。なので、一般ドライバーも、強引に追い越したり、煽ったりせず、思いやりをもって安全運転に協力しましょう。

運転席後部の広告板には、この車両のプロフィールが貼られていました。

長年、私たちバスファンを楽しませてくれたこのバス、新潟には今でも健在と、安心させてくれたこのバスも、とうとう今年で、その役目を終えるそうで、やはり、残念な限りです。
後ろ姿がどこか寂しげに思えてしまいますが、バスまつりでも大人気でしたので、きっと喜んでいたことでしょう。
最後に・・・やはり、引退後の去就が心配です。