浅井・湖北・高月旅行記(ブログ) 一覧に戻る
滋賀県は,古くから観音菩薩像が比較的多い土地柄です。中でも滋賀県長浜市の高月や木之本から北にかけては特に根強いようです。ここにある己高山にはかつて鶏足寺とよばれる天台宗の大寺院があったそうで,そこの本尊が十一面観音であったことや,観音菩薩が水を司る仏であったこと,湖北一体から北陸の白山一体にかけて数々の伝説を残す泰澄上人が観音菩薩と縁があったことなど説は様々ですが,いずれにせよこの地方では古くから観音様を大切にしてきました。戦国時代に一向宗(浄土真宗)の流入,領主浅井家に関わる戦などでこの地方の多くの寺院は荒廃してしまいましたが,集落の人々の手で観音菩薩像をはじめとする多くの仏像は,時には川に入れたり,土に埋めたりして隠して守ってきました。今では,往時ほどの大きな寺院はほとんどありませんが,集落ごとにあるお堂で大切にされています。<br />普段は,集落の人たちの手で管理されていることもあり,事前予約がなければおまいりできないものが多いのですが,年に一回,今年は10月14日に「観音の里 ふるさとまつり」として一斉に御開帳されます。今回は,このお祭りに参加してこの地域の観音様をはじめとしたたくさんの仏像をおまいりしてきました。多くのお堂で写真を撮らせていただけるのですが,できれば実際に観るのが一番だと思うので,基本的にはお堂の写真だけです。

観音の里 ふるさとまつり 2018

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2018/10/14 - 2018/10/14

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とある和菓子好き

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滋賀県は,古くから観音菩薩像が比較的多い土地柄です。中でも滋賀県長浜市の高月や木之本から北にかけては特に根強いようです。ここにある己高山にはかつて鶏足寺とよばれる天台宗の大寺院があったそうで,そこの本尊が十一面観音であったことや,観音菩薩が水を司る仏であったこと,湖北一体から北陸の白山一体にかけて数々の伝説を残す泰澄上人が観音菩薩と縁があったことなど説は様々ですが,いずれにせよこの地方では古くから観音様を大切にしてきました。戦国時代に一向宗(浄土真宗)の流入,領主浅井家に関わる戦などでこの地方の多くの寺院は荒廃してしまいましたが,集落の人々の手で観音菩薩像をはじめとする多くの仏像は,時には川に入れたり,土に埋めたりして隠して守ってきました。今では,往時ほどの大きな寺院はほとんどありませんが,集落ごとにあるお堂で大切にされています。
普段は,集落の人たちの手で管理されていることもあり,事前予約がなければおまいりできないものが多いのですが,年に一回,今年は10月14日に「観音の里 ふるさとまつり」として一斉に御開帳されます。今回は,このお祭りに参加してこの地域の観音様をはじめとしたたくさんの仏像をおまいりしてきました。多くのお堂で写真を撮らせていただけるのですが,できれば実際に観るのが一番だと思うので,基本的にはお堂の写真だけです。

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  • 西野薬師堂・正妙寺<br /><br />西野薬師堂には,重文指定をされている十一面観音菩薩像と薬師如来立像があります。流石,重文指定されているだけあって,非常にきれいな仏様です。全体的にふくよかな印象です。謂れによると,伝教大師最澄が刻んだものだということですが,ふくよかながら洗練された印象で京都や奈良の仏像にも通じるものがあります。以前いった己高閣・世代閣にあった仏様と同じような印象を受けます。その際,確か京都や奈良の仏師あるいは造仏所のものではないかと教えてもらったことがあります。推測ではありますが,同じように京都や奈良から伝えられたものかもしれません。<br />同じ境内にもう一つお堂があります。そのお堂の中に正妙寺といって付近の山の中腹にあるところから日本唯一の千手千足観音がこちらに遷座されています。これも必見の仏様です。時期的には江戸時代のものですが,千手だけでなく,千足!そして,穏やかな表情の多い観音様にあって,まさかの憤怒相,小さいお像ですが個性あふれるものです。何だか不思議と笑顔にしてくれるそんな仏様です。

    西野薬師堂・正妙寺

    西野薬師堂には,重文指定をされている十一面観音菩薩像と薬師如来立像があります。流石,重文指定されているだけあって,非常にきれいな仏様です。全体的にふくよかな印象です。謂れによると,伝教大師最澄が刻んだものだということですが,ふくよかながら洗練された印象で京都や奈良の仏像にも通じるものがあります。以前いった己高閣・世代閣にあった仏様と同じような印象を受けます。その際,確か京都や奈良の仏師あるいは造仏所のものではないかと教えてもらったことがあります。推測ではありますが,同じように京都や奈良から伝えられたものかもしれません。
    同じ境内にもう一つお堂があります。そのお堂の中に正妙寺といって付近の山の中腹にあるところから日本唯一の千手千足観音がこちらに遷座されています。これも必見の仏様です。時期的には江戸時代のものですが,千手だけでなく,千足!そして,穏やかな表情の多い観音様にあって,まさかの憤怒相,小さいお像ですが個性あふれるものです。何だか不思議と笑顔にしてくれるそんな仏様です。

  • 松尾寺<br /><br />”まつおじ”ではなく,”しょうびじ”と読みます。さらにお堂自体は写真のお堂からさらに石段を登ったさきにあります。こちらも伝教大師最澄の作といわれる観音菩薩像があります。小さいながらも丁寧に彫られています。他にも不動明王,毘沙門天,伝教大師,慈覚大師の像もあります。眺望もよい場所にあるので,そういう面でもいいところです。

    松尾寺

    ”まつおじ”ではなく,”しょうびじ”と読みます。さらにお堂自体は写真のお堂からさらに石段を登ったさきにあります。こちらも伝教大師最澄の作といわれる観音菩薩像があります。小さいながらも丁寧に彫られています。他にも不動明王,毘沙門天,伝教大師,慈覚大師の像もあります。眺望もよい場所にあるので,そういう面でもいいところです。

  • 片山観音堂<br /><br />片山神社の中腹にあるお堂です。かつての神仏習合の名残でしょうか。ここのお堂はこの祭りの日のみ開扉するそうです。この祭りに来た際にはぜひおまいりしないといけないお堂の一つでしょう。<br />年に1回しか開かないこともあり,ここの十一面観音は小さいながらも彩色がよく残っています。また,琵琶湖のほとりにあるためか,琵琶湖の方を向いてお立ちになっています。お堂が斜面にあることもあり,竹生島を望む風光明媚なところにあります。

    片山観音堂

    片山神社の中腹にあるお堂です。かつての神仏習合の名残でしょうか。ここのお堂はこの祭りの日のみ開扉するそうです。この祭りに来た際にはぜひおまいりしないといけないお堂の一つでしょう。
    年に1回しか開かないこともあり,ここの十一面観音は小さいながらも彩色がよく残っています。また,琵琶湖のほとりにあるためか,琵琶湖の方を向いてお立ちになっています。お堂が斜面にあることもあり,竹生島を望む風光明媚なところにあります。

  • 乃伎多神社(東阿閉観音堂)<br /><br />8月24日の祭りとこの日しか開扉しない観音堂です。今年初参加のようで,来年度以降の開扉があるかは不明です。ここには薬師如来,聖観音,毘沙門天2体の計4体がまつられています。西野薬師堂と比較するとお仏像の顔つきは明らかに異なり,いわゆる地方仏とよばれる素朴な感じのものです。ただ,小さいながらもきれいに整備のされた境内からここが地域の人たちによって大切にされていることが伝わりますし,地方仏には地方仏の味というのでしょうか。独特の感じがあるのでこれまたすばらしいものだと思います。<br /><br />また,お堂の写真を撮り忘れてしまったのですが,歩いて5分ほどのところに竹蓮寺というところもあります。ここは観音様として信仰されていたのですが,調査の結果かなり珍しい「宝冠阿弥陀仏」だと判明した見事なお像があります。そちらもぜひおまいりしたいところです。2018年のふるさとまつりのポスターになっているお仏像はこちらのものです。

    乃伎多神社(東阿閉観音堂)

    8月24日の祭りとこの日しか開扉しない観音堂です。今年初参加のようで,来年度以降の開扉があるかは不明です。ここには薬師如来,聖観音,毘沙門天2体の計4体がまつられています。西野薬師堂と比較するとお仏像の顔つきは明らかに異なり,いわゆる地方仏とよばれる素朴な感じのものです。ただ,小さいながらもきれいに整備のされた境内からここが地域の人たちによって大切にされていることが伝わりますし,地方仏には地方仏の味というのでしょうか。独特の感じがあるのでこれまたすばらしいものだと思います。

    また,お堂の写真を撮り忘れてしまったのですが,歩いて5分ほどのところに竹蓮寺というところもあります。ここは観音様として信仰されていたのですが,調査の結果かなり珍しい「宝冠阿弥陀仏」だと判明した見事なお像があります。そちらもぜひおまいりしたいところです。2018年のふるさとまつりのポスターになっているお仏像はこちらのものです。

  • 光明寺<br /><br />こちらは通常であれば33年に一度の御開帳になる秘仏があります。しかし,近年はふるさとまつりに協賛し,まつりの日には開扉していただけるようになりました。秘仏ゆえに保存状態が極めてよいようでとてもきれいに残っています。ここは千手観音なのですが,一見するとおじ様のようなお顔立ちですが,秘仏ゆえの良好な保存状態も相まって威厳のようなものも感じます。境内の隣には農機具の資料館もありますので,あわせておまいりしたいところです。

    光明寺

    こちらは通常であれば33年に一度の御開帳になる秘仏があります。しかし,近年はふるさとまつりに協賛し,まつりの日には開扉していただけるようになりました。秘仏ゆえに保存状態が極めてよいようでとてもきれいに残っています。ここは千手観音なのですが,一見するとおじ様のようなお顔立ちですが,秘仏ゆえの良好な保存状態も相まって威厳のようなものも感じます。境内の隣には農機具の資料館もありますので,あわせておまいりしたいところです。

  • 赤後寺<br /><br />鳥居があり,そこには「日吉神社」という額がありますが,この神社の石段を上ると赤後寺のお堂があります。ここには重文指定を受けた千手観音と聖観音の2体の仏像があります。争乱の時に川に沈めて守った結果手を失ってしまったいわゆる「破損仏」なのですが,西野薬師堂のものと同様明らかに京都や奈良の影響を受けた仏様です。古くは痛い痛しい姿を集落外の人にお見せするべきではないとして一般に公開されてはなかったようですが,今では厄を転じてくれるありがたい観音様「転利(コロリ)観音」としても広く知られるようになりました。ふるさとまつりでも人気の高いお仏像です。

    赤後寺

    鳥居があり,そこには「日吉神社」という額がありますが,この神社の石段を上ると赤後寺のお堂があります。ここには重文指定を受けた千手観音と聖観音の2体の仏像があります。争乱の時に川に沈めて守った結果手を失ってしまったいわゆる「破損仏」なのですが,西野薬師堂のものと同様明らかに京都や奈良の影響を受けた仏様です。古くは痛い痛しい姿を集落外の人にお見せするべきではないとして一般に公開されてはなかったようですが,今では厄を転じてくれるありがたい観音様「転利(コロリ)観音」としても広く知られるようになりました。ふるさとまつりでも人気の高いお仏像です。

  • 柏原阿弥陀堂<br /><br />野神とよばれる御神木である巨大なケヤキの木が目印のお堂です。こちらには小さいながらも丁寧な彫りの阿弥陀仏,薬師三尊像,そして,まるでフィギュアのように愛らしい十二神将像があります。いずれの仏様もすらっとしたお姿でお顔立ちも凛々しいものです。国宝の向源寺十一面観音のある渡岸寺観音堂のすぐ裏手にあり,今までそちらには何度か行ったのですが,ほど近くにこんなすばらしい仏様がおられるとはふるさとまつりに行くまで知りませんでした。また機会があれば,ぜひ見たいと思うそんな仏様です。<br />

    柏原阿弥陀堂

    野神とよばれる御神木である巨大なケヤキの木が目印のお堂です。こちらには小さいながらも丁寧な彫りの阿弥陀仏,薬師三尊像,そして,まるでフィギュアのように愛らしい十二神将像があります。いずれの仏様もすらっとしたお姿でお顔立ちも凛々しいものです。国宝の向源寺十一面観音のある渡岸寺観音堂のすぐ裏手にあり,今までそちらには何度か行ったのですが,ほど近くにこんなすばらしい仏様がおられるとはふるさとまつりに行くまで知りませんでした。また機会があれば,ぜひ見たいと思うそんな仏様です。

  • 他にも高月観音の里歴史民俗資料館で横山神社の馬頭観音像,浄光寺の十一面観音像と脇侍としては菩薩の上の存在である如来の阿弥陀・薬師がつくという珍しい形態の三尊像なども見ることができました。<br /><br />1500円で巡回バスのフリーパスを買えば,拝観料込で回れるのもいいところです。…けれども,文化財好きとしては大切な仏様を見せてもらう以上,数百円でも志納を払おうと考えるのですが,今回のふるさとまつりでは新たな試みとして22のお堂で観音様の紹介をカードにしたものを200円で販売しておられたのでこちらを購入することで志納のかわりになればと思い購入しました。いいしくみだと思います。志納だと「お気持ち」ということでいくらにするか迷いがちですし,バス代に拝観料が入っているのでどうしようかも迷いがちだったのですが,これだとカードを集める感覚でしたし,200円という手ごろさな価格で買いやすかったです。お堂にも参拝者にも,それぞれにメリットのある制度だと思うので,次行ったときもこれがあれば志納の代わりに購入しようと思います。<br /><br />いずれにせよ,地域の温かさや信仰にふれるよい機会になりました。また一つ滋賀の奥深さに触れたような気がします。来年もぜひ行きたいものです。来年は10月20日(日)ということですので,今から休みがとれるようにしておきたいと思います!<br />

    他にも高月観音の里歴史民俗資料館で横山神社の馬頭観音像,浄光寺の十一面観音像と脇侍としては菩薩の上の存在である如来の阿弥陀・薬師がつくという珍しい形態の三尊像なども見ることができました。

    1500円で巡回バスのフリーパスを買えば,拝観料込で回れるのもいいところです。…けれども,文化財好きとしては大切な仏様を見せてもらう以上,数百円でも志納を払おうと考えるのですが,今回のふるさとまつりでは新たな試みとして22のお堂で観音様の紹介をカードにしたものを200円で販売しておられたのでこちらを購入することで志納のかわりになればと思い購入しました。いいしくみだと思います。志納だと「お気持ち」ということでいくらにするか迷いがちですし,バス代に拝観料が入っているのでどうしようかも迷いがちだったのですが,これだとカードを集める感覚でしたし,200円という手ごろさな価格で買いやすかったです。お堂にも参拝者にも,それぞれにメリットのある制度だと思うので,次行ったときもこれがあれば志納の代わりに購入しようと思います。

    いずれにせよ,地域の温かさや信仰にふれるよい機会になりました。また一つ滋賀の奥深さに触れたような気がします。来年もぜひ行きたいものです。来年は10月20日(日)ということですので,今から休みがとれるようにしておきたいと思います!

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