2016/04/06 - 2016/04/13
27位(同エリア300件中)
ままさん
世界三大美術館の一つといわれるプラド美術館は、スペイン王家が収集したコレクションを「王立美術館」として公開したのが始まりです。
所蔵品の中でもプラド美術館が誇る三大巨匠のベラスケス、ゴヤ、エル・グレコの絵画がみどころで必見!
が、しかーし!館内での写真撮影は一切禁止となっていました。。。
さて、よく人は「ベラスケスの絵画は素晴らしい」というけど…
私は「ウィーン美術史博物館」を訪れた時、ベラスケスの絵画にそれほど興味は湧かなかったんです。興味が湧かなかったというより、ベラスケスの偉大さと画力の凄まじさが解からなかったんです。
今回「ラス・メニーナス」を観て、この絵画は、テーマや登場人物とともにその場がきちんと計算され、実際にこの絵の前に立ち観ると不思議な世界に引き込まれてしまうんです…。「ベラスケスってすごい画家だったんだ…」と感嘆すると同時に… もう一度ベラスケスの絵をゆっくり観てゆっくり感動したいと思いました。
この絵を前にした人は、きっとベラスケスの技術に驚かされることでしょう。
○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○*:.。..。.。o○
- 旅行の満足度
- 5.0
-
レティーロ公園からプラド美術館を目指します。フェリペ4世道路を歩いて行くと
壮麗な建物が見えてきましたプラド美術館です。 -
入り口でセキュリティチェック(荷物のX線検査と金属探知器)を受けて入ってきました。
さて今回、プラド美術館が誇る三大巨匠のベラスケス、ゴヤ、エル・グレコの中、ベラスケスの「ラス・メニーナス」をゆっくり観ることにしました。 -
「黒衣のフェリペ四世」1626-1628年 ディエゴ・ベラスケス wikipedia掲載画像
ベラスケスは、フェリペ4世をモデルにハプスブルク家特有の長いアゴと肉厚の唇を在りのままに描きました。
フェリペ4世はこの絵を王としての威厳に満ち溢れている肖像画だと絶賛し「ベラスケス以外の画家に自分の肖像は描かせない!」と高く評価しました。 -
「バッカスの戴冠(酔払いたち)」1628-1629年 ディエゴ・ベラスケス wikipedia掲載画像
酒を楽しむ陽気な男たちの姿が描かれています。
ベラスケスは王族を描くのと同じように丁寧な筆使いで庶民を描いています。
男たちはまるで酒の輪に加われと誘っているような表情です。
葡萄の葉で作られた冠を頂くスペイン兵、授けているのは酒の神バッカスです。
この絵のモチーフは神話の世界…。しかし登場人物は現実の庶民をモデルに描いたかのように生き生きとしています。
庶民も王族もそして神々をも区別することなくベラスケスの一環した思いが感じられる作品です。 -
「ブレダの開城(長槍)」1634-1635年 ディエゴ・ベラスケス wikipedia掲載画像
オランダ南部の都市ブレダをスペイン軍が包囲し陥落させた時の絵です。
画家は勝者と敗者を独特の視線で描きました。敗れたオランダ軍の槍はバラバラに傾いているのに対し勝者のスペイン軍の28本の槍は整然と並んでいます
画家は槍の対比で軍事力と統率力に優れたスペイン軍の偉大さを表現しました。
鋭い槍が背景に視線を導くのは、青く霞んだ遠くの景色。ここにレオナルド・ダ・ヴィンチが考案した空気遠近法が用いられています。
そして、たなびく煙は戦闘が終わったばかりということを表しています。
ベラスケスはリアリティを追求すると同時に人間的なドラマも描きこみました。
勝利したスペインの王は馬から降り、敗れたオランダ将軍に歩み寄り廃軍の将を労わっています。
これこそ、ベラスケスが人々を対等に描く画家だったということの表れなのです。 -
「道化師ファン・カラバーサス」1639年以前 ディエゴ・ベラスケス wikipedia掲載画像
カラバーサスとはひょうたんという意味です。持ち前の機転を利かし王族たちを楽しませた道化師たちは宮廷内の人気者でした。
しかし、ベラスケスが描くまで彼等が単独で描かれることはありませんでした。
道化師の人格を尊重し照れ笑いする一瞬の表情を描いています。ベラスケスは宮廷で共に働く仲間を描く時も王族を描く時と変わらない心で描きました。
この絵もベラスケスの人間性が強く感じられる一枚です。 -
「ラス・メニーナス」1656年頃= ディエゴ・ベラスケス wikipedia掲載画像
さて、やっとベラスケスの代表作ともいえる「ラス・メニーナス」の前にきました゚。+☆+。゚
先ずは近寄って観ると、思ったより薄塗りで下地の明るい茶系がそこかしこにのぞいて荒く感じます。だけど、一歩一歩遠ざかって観ると…精密画にみえてくるんです。不思議です。何度試しても遠ざかると…途中から人物の一人一人がその場所から浮き出てくるんです。
318mx276mの大きなカンバスの舞台は王宮に設けられたベラスケスのアトリエ。
大きなカンバスの前に立つのはベラスケス本人、中央には5歳くらいのマルガリータ王女、そして彼女に傅く女官たち。。。
鏡は奥の壁に掛けられそこに映っているのはフェリペ4世と王妃マリアーネ・デ・アウストリア。
この絵は誰の視点で描かれているのか…? そしてベラスケスはカンバスに何を描いているのか…?
謎が謎を呼ぶラス・メニーナス!世界三大名画の傑作が今、目の前にあります*゚。+☆+。゚ -
ベラスケスがこの絵に仕掛けた大いなる謎 *゚。+☆+。゚
ラス・メニーナスはベラスケスが国王夫妻の肖像画を描いている時に、王女マルガリータがアトリエに遊びに来た絵なのか…? -
いやいや、そうではなく…
ベラスケスが描いているのはマルガリータと女官たちで、その制作の様子を国王夫妻が見に来た瞬間を描いた絵なのか…?
おそらく、こちらの説が支持されています。
何故ならアトリエに国王夫妻が訪れたのを気付いたため女官が腰をかがめて挨拶をしているのはではないか…と推されています。
また国王夫妻の肖像画も残されていません。。。
観る者に様々な空想を抱かせるという点でも「ラス・メニーナス」は、いつまでたっても見飽きることがない類まれな名画なのかも。。。*゚。+☆+。゚ -
17世紀の華麗なる空気を今に伝える「ラス・メニーナス」
王女マルガリータに女官が小さな壷を差し出しています。
スペインで伝統的に使われているこの壷には或る意味が込められているといわれています。
皇太子を亡くし跡継ぎに恵まれなかったフェリペ4世、王の心情を察したベラスケスが、マルガリータ王女の健やかな成長を願い生命の象徴である水が入った壷を女官に持たせたと言われいます。 -
ベラスケスの胸にある赤い十字架は誇り高きサンティアゴ騎士団の紋章です。ベラスケスは騎士の称号を手に入れるほどの異例の出世を遂げました。
この十字架はベラスケスの死後、フェリペ4世が別の画家に描かせたという説があります。最近のX線技法で調べたら、どうやら後で足された跡があるようです。
また女官の衣服の質感。艶があり絵画とは思えないほどの技術です*゚。+☆+。゚ -
そして、この絵画にはベラスケスの細やかな心使いが随所に感じられます。
例えば…天井下の壁に掲げられた絵の一枚はルーベンスの作品だと言われています。尊敬する先輩から多くを学んだベラスケスは敬意と親愛の情を込め、彼の作品をラス・メニーナスの中に描きました*゚。+☆+。゚ -
何気ない日常をスナップ写真のように捉えた点も…まるで印象派の先取り *゚。+☆
王族も女官も道化師も同じ宮廷に暮らす人物として対等にありのままに描かれています。
また、奥の階段にいる王妃の執事の大きさから、この部屋はかなりの奥行きと広さを感じます。この奥行きが絵の前に立つと吸い込まれていきそうな不思議な感覚になるんです。
そして、画面右上の窓から差し込むやわらかな光、部屋のそこかしこを照らし出し様々な陰影を生んでいます。リアリズムの追求がもたらした光と影。それが絵画に独特の空気感をだしています。
近くで観ると荒いタッチなのに、少しづつ遠ざかると一人一人の人物が浮き出てくるのは、この光と影のせいだったんです。。。*゚。+☆+。゚
最後にベラスケスの優しさの一つとして…
王妃マリアーナ・デ・アウストリアはフェリペ4世が44歳の時向い入れた二番目の妻、当時王妃は14歳、年の差が違うのを嫌ったためか夫婦が並んだ肖像画は存在しません。。。
鏡に映った二人の姿がこの世でたった一枚の国王夫妻の肖像です。
ベラスケスは国王の歳を感じさせぬよう自然の状況で夫婦を描き名画の中に夫妻の肖像画を残しました。*゚。+☆+
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16世紀レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、17世紀オランダの巨匠レンブランドが描いた「夜警」…。これらの名作と肩を並べる三大名画の一つ「ラス・メニーナス」17世紀宮廷画家として活躍したベラスケスが描いた最高傑作がここプラド美術館にありました。
20世紀スペインの巨匠ピカソはラス・メニーナスを基に実に58点を描きました。が、しかしベラスケスの画力に圧倒され「この絵を超えることはできない」と匙を投げたそうです。
そして、フランス印象派の巨匠ルノワールも「ベラスケスの黒の使い方は素晴らしい」と溜息をもらし、更に印象派の父マネは「ベラスケスは画家の中の画家である」と最大級の賛辞を贈りました。
ベラスケスの作品は200年後に登場する印象派の画家たちに多大な影響を与えていたのです。
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ところで、旅行を通して美術館巡りをしたりして「美術」に興味を持ちました。
他にも、歴史に触れたりして歴史に興味を持ちました。。
ベティーままにとっての旅行とは、知らないことを知ることの楽しさのような気がします。
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この旅行記へのコメント (7)
-
- mistralさん 2017/08/02 13:28:47
- ベラスケス。
- ベティーままさん
初めまして。
先日はモスクワの旅行記へのお立ち寄り、
投票もありがとうございました。
「ラス・メニーナス」の旅行記、拝読致しました。
いつかプラド美術館を訪れたおりに
この絵に仕組まれた登場人物の仕組の解説を読み
素晴らしい事を考えるのね!ベラスケスって、と
驚いたことを思い出しました。
でも今回、国王夫妻がお二人で登場しているのは
この絵しかないという事を、初めて知りました。
さすがベラスケスですね〜
旅に出ると、未知との遭遇が必ずありますね。
歴史だったり、現地の人だったり、芸術だったり、
様々ですが
そんな触れ合いを通して、一度きりの人生
充実した思いが強まります。
今後ともどうぞよろしくお願い致しますね。
mistral
- ままさん からの返信 2017/08/05 11:23:30
- RE: ベラスケス。
mistraさん、初めまして
mistralって素敵なお名前♪フランスに吹く地方風ですよね。
「見事な...」の意味もあるそうですよ。゚☆。゚
> 先日はモスクワの旅行記へのお立ち寄り、
> 投票もありがとうございました。
来月、サンクト・ペテルブルクへ行くので探索中でした(笑)
エルミタージュ美術館楽しく拝見させていただきました。
> でも今回、国王夫妻がお二人で登場しているのは
> この絵しかないという事を、初めて知りました。
> さすがベラスケスですね〜
王妃とフェリペ4世とは歳の差が30歳もあったので
フェリペ4世は一緒に並んでる肖像画を描かせなかったみたいなのね
いつの世も年齢を重ねた姿は残したくないんですねぇ(笑)
> 旅に出ると、未知との遭遇が必ずありますね。
> 歴史だったり、現地の人だったり、芸術だったり、
> 様々ですが
> そんな触れ合いを通して、一度きりの人生
> 充実した思いが強まります。
本当にそうですよね
mistralさんにとって旅行とはの本からの引用
大好きです!! 思わず うんうんうんうん!って納得!納得!でした。
こちらこそ これからの宜しくお願いしますね
★ベティーままより
- mistralさん からの返信 2017/08/06 09:17:40
- RE: RE: ベラスケス。
- ベティーままさん
おはようございます。
> 来月、サンクト・ペテルブルクへ行くので探索中でした(笑)
> エルミタージュ美術館楽しく拝見させていただきました。
そうでしたか!
ご予定日がだんだん近づいていますね!
サンクト・ペテルブルク
とても素敵な街でした。
何度でも訪問したいところです。
ご帰国後の旅行記アップ
楽しみにしておりますね。
mistral
-
- ムロろ~んさん 2017/01/07 21:27:02
- 写真撮影禁止でも私がする方法(^_-)-☆
- ベティーままさん
こんばんは、ムロろ〜んです。
プラドへ行かれた旅行記を拝見しました。
私も美術に詳しくはないのですが、見るのって好きです。
写真撮影禁止の所って結構ありますよね。
私もそんな時は絵葉書を買っていくんです。お土産屋さんで販売されているので、そこで買うようにしています。
そっちの方がきれいでいいんですよね(^_-)-☆。
それをスキャナーで取り込んで、旅行記にアップしています。
思い出深いのもそのまま同じですし、美術館側にも「素晴らしいものを見せて下さってありがとうございます」といったメッセージにもなるかなと。
ホントに素晴らしい作品ですよね。
ムロろ〜ん(-人-)
- ままさん からの返信 2017/01/28 19:17:16
- RE: 写真撮影禁止でも私がする方法(^_-)-☆
- ムロたん、こんばんは
> 私も美術に詳しくはないのですが、見るのって好きです。
> 写真撮影禁止の所って結構ありますよね。
> 私もそんな時は絵葉書を買っていくんです。お土産屋さんで販売されているので、そこで買うようにしています。
なるほどー。今までちっともそれに気づきませんでした( ;∀;)
これからは、私もお土産屋さんで購入しま〜す♪
ムロたん、ナイスアドバイスありがとう(pq´v`*)
それより、ムロたん ムロショット!いつも思うけど
あれは、ムロたんの人柄と相方の可愛さだよね (笑)
あんなにCAさんやパーサーの皆さんが快く写真を撮ってくださるなんて…
この〜!ムロたんの幸せ者〜(((o(*゚▽゚*)o)))
これからも楽しい旅行記 期待してま〜す♪
★ベティーままより
-
- ニコニコさん 2017/01/03 17:21:38
- 私も大好きな「ラス・メニーナス」
- ベティーままさん
ベラスケスの絵画の解説、有難うございます。
私もそれほど気にしていなかったベラスケスなのに
「ラス・メニーナス」をゆっくり堪能してからは
他の作品にもとても興味を持つようになり、
ベラスケスが大好きになりました。
ベティーままさんの分り易い解説、勉強になりました。
ウイーン美術史美術館に所蔵されている青い服のマルガリータ王女が
大のお気に入りです^^
ニコニコ
- ままさん からの返信 2017/01/28 18:51:21
- RE: 私も大好きな「ラス・メニーナス」
- ニコニコさん こんばんは
ご無沙汰してます
そしてまた折角掲示板に書き込みくださったのに
返信が遅れて…ごめんなさいです
ところで、世界一周旅行から帰国して半年くらいが過ぎたのかしら?
そろそろ旅行に行きたくて ウズウズしていませんか?
マドリッドでの入院、大変でしたね。
きっとご主人様のことを頼もしく感じたことだと推察してま〜す(^_-)-☆
わたしも世界一周したいけど時間とお金がないので…
小刻みに行きたいところに行く旅行に専念します(๑˃̵ᴗ˂̵)
ニコニコさんの旅行記続編 楽しみにしてますね
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪楽しみにしています♪
★ベティーままより
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