羽田発の全日空機は早朝にフランクフルトに到着し、サンクトペテルブルク行きのルフトハンザ機への乗り継ぎ時間は7時間ある。寒波が訪れたばかりで気温は氷点下、積雪もあるがもちろん空港でまったりしているわけにはいかない。フランクフルトから手軽に行ける世界遺産や主要観光地はほとんど訪れてしまったが、今回はフランクフルトの衛星都市の一つ、オッフェンバッハを訪れることにした。<br /><br />この小さな街の唯一の見所は、ナポレオンのカバンや、欧州一の美女とうたわれたオーストリア皇妃エリーザベト（愛称シシー）の靴など貴重な展示がある皮革博物館である。最寄駅はSー8及びSー9のLedermeseum駅で、空港から直通電車でわずか20分ほどで行ける。しかし開館時間は10時であり、時間を持て余してしまうためにあえて遠回りをして、DBの中央駅で降りて少々街を散策して歩いた。中央駅から10分ほど歩いた所に市庁舎があり立ち寄ったが、いわゆる中世ドイツの旧市街の建物とは程遠い、何の変哲もない近代的な建築物だ。雪道を滑らないようにゆっくりゆっくり歩いて時間調整をして、ちょうど10時に目的地の皮革博物館に到着した。<br /><br />皮革博物館は1829年に建設された歴史的な建物で、皮革博物館としては世界最大規模であるという。3階建で皮革の主要なコレクションは2階にあり、3階は民族博物館となっている。まずレセプションで8ユーロ払ってチケットを購入、ナポレオンのカバンとシシーの靴の場所を聞いて内部を見学した。我々にとって歴史の教科書や偉人伝の中の登場人物の、手垢の染み付いたカバンや人間味溢れる靴や衣類が身近な所で見ることができるのがヨーロッパの凄いところだ。<br /><br />ナポレオン（1769ー1821）は勿論かつての敵国フランスの英雄だ。しかし旧態依然とした社会を打破し、新時代を切り開いた英雄としてドイツでも人気は高い。かのベートーヴェンが第3交響曲を彼に献呈しようとしたが、帝位についた彼に失望し、表紙を破り捨てたという逸話は名高い。一時にせよ、かの楽聖が憧れたほどの人物が、「ナポレオン、皇帝にして国王」と書かれた緑色のカバンを抱えて遠征していた姿が眼前に浮かんでくる。一方の絶世の美女、シシー（1837-1898）の履いていたという靴の展示も興味深い。自由奔放に生きた女性の代表として、ヨーロッパ宮廷一といわれた美貌に加え、身長172cm、ウエスト50cmで体重は50kgと自らの美貌を維持するために生涯を捧げた、と言われ、小説やミュージカルでも未だ全世界の人気は衰えることはない。この小さな靴を履いて王宮を闊歩していた姿もまた眼前にありありと浮かんでくる。<br /><br />この他にもナポレオンの正妻となったマリー・ルイーズの靴、軍服やボクシングやサッカーの有名選手が使用した革製品などの展示にも興味を惹かれる。また3階の民族博物館には世界の特徴ある民族文化、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸と並んで、アジアの国々の様々な物品が展示されている。日本の浮世絵、草履、着物や、鎧兜などがコンパクトに展示されている。フランクフルト空港で4時間以上の乗り継ぎ時間があるようであれば、お勧めのスポットである。

皮革製品の街オッフェンバッハ : 皮革博物館でナポレオンのカバンや皇妃シシーの靴を見る

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2016/01/17 - 2016/01/17

76位(同エリア545件中)

#美術館・博物館

ハンクさん

羽田発の全日空機は早朝にフランクフルトに到着し、サンクトペテルブルク行きのルフトハンザ機への乗り継ぎ時間は7時間ある。寒波が訪れたばかりで気温は氷点下、積雪もあるがもちろん空港でまったりしているわけにはいかない。フランクフルトから手軽に行ける世界遺産や主要観光地はほとんど訪れてしまったが、今回はフランクフルトの衛星都市の一つ、オッフェンバッハを訪れることにした。

この小さな街の唯一の見所は、ナポレオンのカバンや、欧州一の美女とうたわれたオーストリア皇妃エリーザベト（愛称シシー）の靴など貴重な展示がある皮革博物館である。最寄駅はSー8及びSー9のLedermeseum駅で、空港から直通電車でわずか20分ほどで行ける。しかし開館時間は10時であり、時間を持て余してしまうためにあえて遠回りをして、DBの中央駅で降りて少々街を散策して歩いた。中央駅から10分ほど歩いた所に市庁舎があり立ち寄ったが、いわゆる中世ドイツの旧市街の建物とは程遠い、何の変哲もない近代的な建築物だ。雪道を滑らないようにゆっくりゆっくり歩いて時間調整をして、ちょうど10時に目的地の皮革博物館に到着した。

皮革博物館は1829年に建設された歴史的な建物で、皮革博物館としては世界最大規模であるという。3階建で皮革の主要なコレクションは2階にあり、3階は民族博物館となっている。まずレセプションで8ユーロ払ってチケットを購入、ナポレオンのカバンとシシーの靴の場所を聞いて内部を見学した。我々にとって歴史の教科書や偉人伝の中の登場人物の、手垢の染み付いたカバンや人間味溢れる靴や衣類が身近な所で見ることができるのがヨーロッパの凄いところだ。

ナポレオン（1769ー1821）は勿論かつての敵国フランスの英雄だ。しかし旧態依然とした社会を打破し、新時代を切り開いた英雄としてドイツでも人気は高い。かのベートーヴェンが第3交響曲を彼に献呈しようとしたが、帝位についた彼に失望し、表紙を破り捨てたという逸話は名高い。一時にせよ、かの楽聖が憧れたほどの人物が、「ナポレオン、皇帝にして国王」と書かれた緑色のカバンを抱えて遠征していた姿が眼前に浮かんでくる。一方の絶世の美女、シシー（1837-1898）の履いていたという靴の展示も興味深い。自由奔放に生きた女性の代表として、ヨーロッパ宮廷一といわれた美貌に加え、身長172cm、ウエスト50cmで体重は50kgと自らの美貌を維持するために生涯を捧げた、と言われ、小説やミュージカルでも未だ全世界の人気は衰えることはない。この小さな靴を履いて王宮を闊歩していた姿もまた眼前にありありと浮かんでくる。

この他にもナポレオンの正妻となったマリー・ルイーズの靴、軍服やボクシングやサッカーの有名選手が使用した革製品などの展示にも興味を惹かれる。また3階の民族博物館には世界の特徴ある民族文化、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸と並んで、アジアの国々の様々な物品が展示されている。日本の浮世絵、草履、着物や、鎧兜などがコンパクトに展示されている。フランクフルト空港で4時間以上の乗り継ぎ時間があるようであれば、お勧めのスポットである。