寝台特急「北斗星」で行く東京

2015/01/19 - 2015/01/20

さて、久しぶりに旅に出ました！
内容が多いので、まずは寝台特急「北斗星」について。
ご存知の方も多いかと思いますが、北斗星は2015年3月14日をもって定期運行を終了しました。僕は今回の乗車が7回目になるのだけれど、やはり夜行列車で過ごす時間というのは格別。車両の老朽化や北海道新幹線の絡みもあって廃止はやむを得ないようですが、残念でなりません。
今回は札幌17:12発、上野に明朝10:05着となる上り列車に乗車。寝台の種別はB寝台(開放)、B寝台(コンパート)、1人用B個室ソロ、2人用B個室デュエット、2人用A個室ツインデラックス、1/2人用A個室ロイヤルの6種類がありますが、今回は「デュエット」をチョイス。札幌から上野までの運賃・料金は1人あたり27,980円と、気軽に空を飛べる昨今からしてみれば酔狂な価格設定かもしれませんが、この値段には代えがたい愉しみがあると僕は思います。

札幌を発車するや、始めの1時間そこらは旅のスタートに心躍るひと時。ようやく落ち着いて弁当を広げるのが東室蘭あたりで、車窓を流れる街明かりに乾杯しているうちにはや函館。札幌上野間の乗車時間は17時間ですが、意外なほど退屈している暇など無いのです。
ところで、北斗星には食堂車があるけれど、ディナータイムに供されているのは8,500円とプレミアムな価格設定のフルコースのみ。これが、21時以降はパブタイムとして、アルコールや軽食、パスタ、ビーフシチューなどの洋食も予約なしで味わえるひと時となります。
パブタイムの食堂車で優雅なひと時を過ごしているうちに、列車は青函トンネルを抜け、青森に到着します。さて、そろそろ布団に入ろうかな。しかし、そうそう寝つけるものでもありません。個室の照明を落とし、この旅のために作ったiPodのプレイリスト「Night Crusing」を聴きながら、真っ暗な車窓を眺めます。時折、田圃のあぜ道のようなところに、蛍光灯の外灯がポツリと立っているのが見え、それはすぐに車窓の彼方に消えてゆくのでした。こんな情景を見るたび、幼い頃からずっと思うのは、「生まれ変わってもあの外灯にだけはなりたくない」と、言うことです。きっと、すごく寂しいのだろうな、と。
いつのまにやら眠りに落ち、目が覚めるとどうやら福島県あたりを走っているようです。こうして僕らがうつらうつらとしているこの瞬間も、運転士さんや車掌さんをはじめ、多くの人がこの列車の運行に関わっているのです。日本の鉄道が持つ、そうしたチームプレイは、世界に誇るべきものだ。などと呪文のように唱えながら、また瞼を閉じてしまいます。
ふたたび目が覚めたのは宇都宮の少し手前。食堂車のモーニング営業の放送が流れ、乗客が我先にと食堂車を目指します。朝食は先着順で1,700円くらいだった筈。僕は持参したおにぎりで済ませました。やがて、通過する駅のホームは通勤客で溢れるようになると、東京まではあと僅か。大宮を発車し、京浜東北線の電車と併走。荒川を渡り、赤羽の駅を通過し、東京都に入りました。
札幌から東京まで1200km。その途中の街の表情を知らないというのは、元来おかしな話です。車窓には文化や歴史、風俗が映し出されています。家の形ひとつとっても、トタン屋根から瓦屋根に。マンサード型から寄棟造りに。他にも、松の木の生え方だとか、墓地に卒塔婆があったりだとか、団地の屋上にスプートニクがあったりだとか、そういう「1200kmぶんの変化」をこの目で見て、ようやく終着駅に辿り着こうとしているのです。
定刻10:05。北斗星は上野駅13番線にすべりこみます。「うえのーうえのーうえのー」いまやなかなか聞くことのない、独特の終着駅のアナウンスに迎えられ、17時間の旅を終えます。いやしかし、目的地に着いた今からが旅の始まりでもあるのです。憎いなぁ。ちょっと疲れたけれど、重いザックを背負って、東京の街に繰り出すとしましょう。

エリア 東京

• 旅行の満足度: 5.0
• 交通: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦
• 一人あたり費用: 3万円 - 5万円
• 交通手段: JR特急
• 旅行の手配内容: 個別手配

2人用B個室デュエット。これがいちばん落ち着ける部屋です。

昭和40年代に造られた客車。レトロなサインがたくさんあります。

盛況だったパブタイムの食堂車。

予約制のシャワールーム。

上野駅13番線に到着した北斗星。