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土佐清水市の足摺岬は、世界ジオパークに登録されている高知県東部の室戸岬とは対照的に、海岸は落差のある断崖となっていて、荒々しい波が打ち寄せているため、海上や、太古は海上だった海岸近くの陸に海蝕洞や洞門が多い。<br />中でも特異なのは、まず、足摺半島の付け根の東側、以布利(いぶり)港南方にある、藩政時代まで遍路道として利用されていた海蝕洞。地元でもこの洞が遍路道に利用されていたことを知る者は殆どいないが、元禄3年(1690)に刊行された「四国遍礼功徳記」に記載されている。<br /><br />更に足摺岬背後の山中には昭和18年に造営された海軍呉警備隊のレーダー基地があり、複数のレーダーの台座基礎や戦闘指揮所の基礎、機銃陣地跡、トーチカ、素掘り隧道跡等が残っている。尚、戦時中は敵国用語の使用が禁止されていたため、海軍ではレーダーのことを電波探信儀、陸軍では電波哨戒機と呼んでいた。<br />足摺岬は四国最南端ということもあり、四国最大級の陸海軍のレーダーが複数設置されていた。<br /><br />足摺岬西の松尾地区の松尾漁港南西部には、昭和の南海地震で海底が隆起し、開口部が海上に露になった海蝕洞「海老宿(えびやど)」がある。この前には歩行者橋が架かっているため、洞を俯瞰することもできるが、兎に角、漁港とは思えないほど海がきれいで、その澄み切ったエメラルドグリーンを見ていると、スキューバをしたくなる方もいるだろう。また、その手前の陸上には、開口部が二つある洞窟もある。<br /><br />[探訪コース]<br />まずは以布利バス停横の洞窟を見学してから、国道391号から東に折れる。以布利郵便局南東に遍路道として利用されていた海蝕洞が開口している。名称は付いていないようなので「天満洞」と仮称したい。今でも生活路として現役。長さは20mほどか。海蝕洞を出た先の十字路を左折すると現代の遍路道に出る。この遍路道は一旦浜を歩いてから山中に入るようになっているが、その入口には地蔵群がある。<br /><br />次のレーダー基地跡は、国道の桃の木橋を渡った先の四差路を右折して林道足摺線を上る。扉のあるフェンス東側の保安林の看板横から山中に入ると、3分ほどで巨大な六角形のレーダー台座基礎が現れる。<br />扉の先のY字路の北側の平地は兵舎跡で、便槽跡や水槽、横穴壕が残る。Y字路から北西に下って行くと、発電所跡と貯水池跡がある。<br />足摺林道に戻って先に進み、緩い左カーブから山手に上がって行くと素掘り壕、戦闘指揮所跡があり、その先の三叉路を前方左に上がって行って尾根に乗ると、塹壕を伴った地下トーチカや半地下トーチカ、機銃陣地跡(直径3メートルほどの擂鉢状窪みと銃弾置き場あり)がある。<br />その尾根の西直下の踏み跡を登って行くと、何らかのコンクリート構造物や素掘り隧道跡があり、尾根の頂上にはもう一つのレーダー台座基礎がある。<br /><br />松尾漁港へ移動すると、西側の道を南下すれば、開口部が二つある洞窟があり、道の終点の雁木の先に海老宿が開口している。入口上の木の根が垂れているが、これは恐らく南海地震時に上部の土砂が崩落し、根が露になったものと思われる。<br />機会があれば来年にでも、陸軍のレーダー基地や海軍の水上特攻基地跡の旅行記を投稿したい。

足摺半島の海と陸の洞窟と海軍レーダー基地

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2015/11/11 - 2015/11/11

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マローズ

マローズさん

土佐清水市の足摺岬は、世界ジオパークに登録されている高知県東部の室戸岬とは対照的に、海岸は落差のある断崖となっていて、荒々しい波が打ち寄せているため、海上や、太古は海上だった海岸近くの陸に海蝕洞や洞門が多い。
中でも特異なのは、まず、足摺半島の付け根の東側、以布利(いぶり)港南方にある、藩政時代まで遍路道として利用されていた海蝕洞。地元でもこの洞が遍路道に利用されていたことを知る者は殆どいないが、元禄3年(1690)に刊行された「四国遍礼功徳記」に記載されている。

更に足摺岬背後の山中には昭和18年に造営された海軍呉警備隊のレーダー基地があり、複数のレーダーの台座基礎や戦闘指揮所の基礎、機銃陣地跡、トーチカ、素掘り隧道跡等が残っている。尚、戦時中は敵国用語の使用が禁止されていたため、海軍ではレーダーのことを電波探信儀、陸軍では電波哨戒機と呼んでいた。
足摺岬は四国最南端ということもあり、四国最大級の陸海軍のレーダーが複数設置されていた。

足摺岬西の松尾地区の松尾漁港南西部には、昭和の南海地震で海底が隆起し、開口部が海上に露になった海蝕洞「海老宿(えびやど)」がある。この前には歩行者橋が架かっているため、洞を俯瞰することもできるが、兎に角、漁港とは思えないほど海がきれいで、その澄み切ったエメラルドグリーンを見ていると、スキューバをしたくなる方もいるだろう。また、その手前の陸上には、開口部が二つある洞窟もある。

[探訪コース]
まずは以布利バス停横の洞窟を見学してから、国道391号から東に折れる。以布利郵便局南東に遍路道として利用されていた海蝕洞が開口している。名称は付いていないようなので「天満洞」と仮称したい。今でも生活路として現役。長さは20mほどか。海蝕洞を出た先の十字路を左折すると現代の遍路道に出る。この遍路道は一旦浜を歩いてから山中に入るようになっているが、その入口には地蔵群がある。

次のレーダー基地跡は、国道の桃の木橋を渡った先の四差路を右折して林道足摺線を上る。扉のあるフェンス東側の保安林の看板横から山中に入ると、3分ほどで巨大な六角形のレーダー台座基礎が現れる。
扉の先のY字路の北側の平地は兵舎跡で、便槽跡や水槽、横穴壕が残る。Y字路から北西に下って行くと、発電所跡と貯水池跡がある。
足摺林道に戻って先に進み、緩い左カーブから山手に上がって行くと素掘り壕、戦闘指揮所跡があり、その先の三叉路を前方左に上がって行って尾根に乗ると、塹壕を伴った地下トーチカや半地下トーチカ、機銃陣地跡(直径3メートルほどの擂鉢状窪みと銃弾置き場あり)がある。
その尾根の西直下の踏み跡を登って行くと、何らかのコンクリート構造物や素掘り隧道跡があり、尾根の頂上にはもう一つのレーダー台座基礎がある。

松尾漁港へ移動すると、西側の道を南下すれば、開口部が二つある洞窟があり、道の終点の雁木の先に海老宿が開口している。入口上の木の根が垂れているが、これは恐らく南海地震時に上部の土砂が崩落し、根が露になったものと思われる。
機会があれば来年にでも、陸軍のレーダー基地や海軍の水上特攻基地跡の旅行記を投稿したい。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
交通
3.0
交通手段
自家用車

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  • 以布利バス停横の洞窟

    以布利バス停横の洞窟

  • 以布利の洞窟最奥部には五輪塔が祭られている。

    以布利の洞窟最奥部には五輪塔が祭られている。

  • 天満洞

    天満洞

  • 砂浜の遍路道より

    砂浜の遍路道より

  • 遍路道の石仏群

    遍路道の石仏群

  • 下部のレーダー基礎

    下部のレーダー基礎

  • 兵舎の水槽跡

    兵舎の水槽跡

  • 発電所跡。ディーゼル発電機を設置していた。

    発電所跡。ディーゼル発電機を設置していた。

  • 戦闘指揮所の基礎

    戦闘指揮所の基礎

  • 半地下のトーチカ

    半地下のトーチカ

  • 土砂が中に雪崩れ込んでいる海軍の半地下トーチカ

    土砂が中に雪崩れ込んでいる海軍の半地下トーチカ

  • 海軍機銃陣地。奥のコンクリートの四角い枠は銃弾置き場。

    海軍機銃陣地。奥のコンクリートの四角い枠は銃弾置き場。

  • 尾根にある使途不明の構造物。似たような物が山口県周防大島の海軍高角砲陣地跡にもあったような記憶がある。

    尾根にある使途不明の構造物。似たような物が山口県周防大島の海軍高角砲陣地跡にもあったような記憶がある。

  • 尾根を貫く素掘り隧道

    尾根を貫く素掘り隧道

  • 上部のレーダー基礎

    上部のレーダー基礎

  • 海老宿手前にある、二個の入口がある洞窟。

    海老宿手前にある、二個の入口がある洞窟。

  • 海老宿の手前にある洞窟内

    海老宿の手前にある洞窟内

  • 海老宿入口に架かる小崎橋

    海老宿入口に架かる小崎橋

  • 海老宿近くにフグが

    海老宿近くにフグが

  • 小崎橋から俯瞰する海老宿入口

    小崎橋から俯瞰する海老宿入口

  • 春分の日と秋分の日にだけ神秘的な太陽光線が現れるトオルマの洞門。<br />おおどトンボ公園西側から山道を下って行くと木の間越しに見える。

    春分の日と秋分の日にだけ神秘的な太陽光線が現れるトオルマの洞門。
    おおどトンボ公園西側から山道を下って行くと木の間越しに見える。

  • あしずり自動車東のおおどトンボ公園内に「トオルマの夕日」の案内板が建っている。

    あしずり自動車東のおおどトンボ公園内に「トオルマの夕日」の案内板が建っている。

  • 四万十町の水車亭のイルミネーション

    四万十町の水車亭のイルミネーション

  • イルカと亀のイルミ

    イルカと亀のイルミ

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