1997/09/01 - 1997/12/01
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JIC旅行センターさん
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◆ロシア人の名前を作るの巻◆
9月から始まった日本語の授業も、もうすぐ3ヵ月が過ぎようとしています。ひらがな、カタカナ、簡単なあいさつを中心とした基本を終え、10月半ばから、教科書をもとに勉強を始めました。
先日は“こそあど言葉”を勉強しました。特に「こ」と「そ」の違いは難しいので、説明のプリントにはイラストを添え、手書きの絵パネルも作り、さらに教室での実演などを通して、理屈ではなく感覚に訴えられるように努力しました。中には、プリントに描かれている顔に“ひげ”や鼻毛を書く、小学生のような生徒もいましたが、ともかく、基本の原則だけは分かってもらえたようです。しかし、原則は分かっても、すぐに自由に使いこなすのは難しいものです。全員で答えるときはスラスラ言えても、一人ずつ答える時になると、緊張も手伝って、うっかりミスをしてしまいます。女子学生は比較的早くマスターしてしまうのですが、男子学生は頭では理解していても、なかなか答えられません。アカデミーの1年生は、女子学生の方が権力が強い(?)ので、間違った男子は、「違うわよ。“あのかた”でしょ。あんた、まだわかんないの?頭大丈夫?」という容赦ない叱咤をあびています。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
1年生は、ほとんど17歳で、まだシュコーレ(中学校)を卒業したばかりです。まあまあ素直で授業の出席率はいいのですが、とにかく賑やかで、時には騒ぎを静めるのに苦労しています。ハシが転がってもおかしい年頃なのか、一度笑い始めると自分でも押さえきれないようです。
特に日本語の何げない発音が、ロシア語のいろいろな単語の発音に、たまに合致すると、もう笑って笑って収拾がつかなくなります。例えば、「伊勢海老」などの「エビ」という発音は、ロシア語のとんでもない単語を想起させるので要注意、ということは、以前本で読んだので、なるべくこの単語は使わないよう用心していました(極力、イカやカニで間に合わせていました)。しかし、月曜日、火曜日などの「ヨウビ」という言葉もこの「エビ」と同じになってしまうということを、私はここにきて初めて知りました。特に「土曜日」はこの動詞の完了体の命令形になるそうで、それはもう、大変なことになってしまうそうです。
先週も、学生たちは、ビジネスマン(日本語的な発音の)の「ビジ」という音が、英語のbitchという発音に似ていると言って笑い転げました。その逞しく突飛な創造力に敬意を表しつつも、なかなか進まない授業を何とか引き締めていかねば、と悪戦苦闘する毎日です。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ある時、1年2組のローマ君が質問に来ました。「僕の名前は漢字でどう書くのですか?」別の日本語の先生も言っていたのですが、こちらの人々は、自分の名前を漢字にあてはめ(あくまでも当て字ですが)、それがどんな意味になるのかとても知りたがるようです。以前に知り合いのエレーナ・サバロバさんという女性に、「絵麗菜・砂波露庭」という漢字を書いて意味を説明したら、「一枚の美しい風景画のようね」と、とても感激してくれました。
それでローマ君の名前も漢字にしてみようと考えたのですが、これが以外と難しかったのです。「老馬」ではあんまりだし、「露魔」では露出魔で、「路魔」では通り魔のようです。結局、「露馬」に決定しました。これはあくまでも「ロシアの馬」ではなく、「露(朝露など)を浴びながら森を走る馬」という意味です。ノートに、走る馬のイラストまで書きながら説明したら、一応気に入ってくれたようでした。けれど同僚の日本語教師は「アハハハ、これは日本人が見たら、10人中9人が絶対に“ロシアの馬”だと思いますよ」と言います。
次の授業で、早速ローマ君は自分の漢字を黒板に書いて披露しました。馬の字の下の「てんてん」がひとつ足らなかったのですが、他の学生の興味もかったらしく「私も!僕も!」と口々に頼まれてしまいました。
意味にこだわらなければ、簡単に思いつきますが、あまり変な漢字にして、将来知り合った日本人に見せて笑われたら気の毒です。特に女子学生はなるべく綺麗で夢のある漢字にしようと心掛けました。真理亜(マリア)や由梨杏(ユリア)や、織雅(オリガ)という名前は比較的簡単で、バリエーションもいろいろあって楽しかったのですが、州辺都羅奈(スベトラーナ)などは、「術虎穴」では今ひとつで、ずいぶん悩みました。紗洒(サーシャ)、寺詠若(ジェーニャ)、桜麗舎(オレーシャ)も苦しまぎれです。こんな当て字の名前を並べて書くと、まるで暴走族の名簿のようにも思えます。
男子の名前は概して困難で、出仁崇(デニス)、琵田里(ビターリー)など、常用漢字にはおさまらぬ漢字が続出しました。競芸(セルゲイ)は、私の作品の中では、ちょっとしゃれていて上出来だと最初は思ったのですが、よく考えると「ギャンブル好きの芸人」という感じもします。
苦心の甲斐あって、完成した名前を学生たちは喜んでくれたようです。それ以後、英語の先生や、秘書のお姉さんたちにまで「私の名前も!」と頼まれるようになりました。名前占いか何かだと思っているようです。しかし、どうやら私には名付けのセンスはあまり無いようです。どなたかすてきな名前を思いついたら教えていただけないでしょうか。
(JICインフォメーション 第89号 より転載)
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