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モスクワバレエオリンピック観戦記

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1997/06/15 - 1997/06/15

1705位(同エリア1835件中)

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 6月15日早朝、久しぶりにモスクワへ着く。今年3月に1年の留学を終えて以来3ヶ月ぶりになる。たった3ヶ月モスクワを離れていただけだったのに、9月のモスクワ生誕850年祭に向けての準備が急ピッチで進んでいるせいか、変わったところが多くて驚いた。お店や建物の修復がそこらじゅうでピークを迎えている。しかし今回私がここへ来たのはロシア人の働きぶりを見に来たのではない。私、バレエマニアは、モスクワ国際バレエコンクールを見に来たのである。今年で第8回目を迎えるこのコンクールは、昔から旧ソ連の精鋭達が集まって来る国隊的にレベルの高いコンクールであることと、4年に1回開催されるということでバレエのオリンピックとも呼ばれている。このコンクールで賞を受けて世界的に有名になったダンサーは数多くいるのだ。この由緒あるコンクール、本来ならボリショイ劇場で行われるべきはずが、何と今回は…お金がない!!という理由でボリショイ劇場が借りられず、すぐそばにあるボリショイの第二劇場であるオペレッタ劇場と、開会・閉会式はクレムリンの劇場で開催されることになった。何ともお粗末である。憧れのボリショイの劇場で踊りたい…という参加者もいただろうに。老朽化が進むボリショイ劇場は数年がかりの本格的な大修理が必要なのに、資金不足でいまだ取り掛かれていない。首都、天下のボリショイでこの有様とはロシア政府の財政難はよほど深刻なのだろう。

 私がこのコンクールを前期試験の直前にわざわざ見に来ようと思ったのは、もちろんバレエが好きだからなのだが、今回は私の友達の日本人の女の子が2人とロシア人の男の子1人が出場することになったからだ。コンクールは一次、二次(準決選)、三次(決選)からなっていて男女それぞれソロ、デュエット部門で1位から3位、それにグランプリが与えられる。グランプリ受賞者が出るのは希で、過去7回で2人しか出ていない。今回の出場者、ボリショイのニコライ・ツィスカリーゼやマリインスキー劇場のアンドレイ・バタロフはすでに主役を務める主要ダンサーの一人である。そんなダンサーの舞台が見られるというだけでもはるばるモスクワまで来たかいがあったというものだ。

 バレエのコンクールがフィギアスケートや新体操などのスポーツと違うのはそれが一つのステップにすぎないということだ。コンクールに出ることによって、他の出場者の演技を見たり、舞台経験を積むことで学ぶことは多くある。コンクールは競技なのでしばしば技術にばかり目がいきがちである。賞をもらえば有名にもなるし、重要な役も回ってくるようになるだろう。でも賞を取ったからといって、バレリーナ、ダンサーとして成功できるかといえぱそうでもない。賞をとってもバレリーナとしては今一つ伸びないということもよくあるのだ。やはりバレエは芸術、演じてなんぼの世界なのだ。バレエは言葉のない舞台芸術である。それでもバレエを見ると、ダンサーの動きやポーズに見とれたり、物語のある作品だとそのお話自体に感動したり、言葉がないからこそ世界中どこへ行っても同じ感動を受けることができる。しかしコンクールとなったらそんな悠長なことは言っていられない。どんな小さなミスでも経験豊富な審査員達が目を光らせているのだ。普段から踊り慣れているプロのダソサーでもコンクール独特の緊張感から失敗してしまったり、実力があってもたまたま調子が悪かったりすると審査員達は容赦なく減点していくのだ。そんな中、白分の持つ実力を最大に発揮するには、人並み外れた心臓と精神力が必要になってくる。そうして勝ち抜いてきた人が決選まで進むことができる。しかし悲しいかな、このコンクールで入賞するには技術、演技力は勿論だが、多少のコネもいるらしい。まああまりにひどい人が入賞することはないのだが…。

 今回は第4回、1981年以来のグランプリ受賞者が出た。3人目になる。この栄誉を受けたのは、前出のバタロフである。彼はすでにパリ、名古屋、ハンガリー、ロシアのペルミでの国際コンクールで賞を取っている。彼のアクロバットと呼ぶに相応しい跳躍と止まるところを知らない回転はモスクワの観客と審査員をも驚嘆させた。この興奮があるからコンクールは面白い。私の友人のロシア人は残念ながら決選には進めなかったのだが、日本人の女の子は二人とも決選まで勝ち進み特別賞を受けた。一人はボリショイバレエ学校に留学中で、もう一人はモスクワ音楽劇場バレエ団で踊っているプロのバレリーナだ。今、ネスカフェのCMでお馴染みの熊川哲也をはじめ、日本人ダンサーは世界各地で花を咲かせている。どこのコンクールでも入賞者には日本人の名前を見つけることができる。ロシア各地にも同じようにたくさんの日本人留学生やダンサーがいる。ダンサーとして日本人がロシアで働くことは難しい。給料が低いことはまあ大目にみても、実力があっても外国人ということであまり役が与えられなかったりすることもある。それでも働けるということはまだいいほうなのである。今、モスクワの舞台で見られる日本人の姿の中には、お稽古事の延長のバレエと違って、本場ロシアで素晴らしい教師達の下で学ぶことはお金に代えられないものなのだ。やはりクラッシックバレエにおいてはロシアが世界のトップレベルにいることは間違いない。

 私が特にロシアのバレエに惹かれるのは、彼らの踊りが音楽的であるところだ。技術以上のものが彼らには流れている。それは伝統あるバレエ学校での教育の成果かもしれないし、芸術の宝庫であるこの国で生まれ育ったロシア人特有のものかもしれない。私は1年間の留学中に数えきれない程の舞台を見た。フランスやイギリス、世界にはほかにもすぐれたバレエ団はいくつもあるだろうけれど、ロシア程劇場と公演回数の多い国はないと思う。モスクワだけでも軽く6を越えるバレエ団があって、毎日のように公演があって見たいものが重なって泣く泣く一方を諦めることも少なくない。

 バレエと音楽は切っても切り離せないものである。ロシアではバレエ学校の一年生からピアニストの生演奏でレッスンするのだ。日本にはそういう一貫したシステムもまだないし、チャイコフスキーのように優れた作曲家だっていなかった。日本のバレエは伝統あるフランスやロシアからみればまだまだひよっ子のようなものだけれど、今そういう先輩の国々へ散らばって活躍する人達がその国の良いところを学びとって、いつか日本独自の舞台が作れるようになったら素晴らしいと思う。そのために、私達観客も本物を見る目を養っておきたいものだ。10月には、今年オープンした日本で初めての国立劇場が一回目のシーズンを迎える。9、10月にはロシアからボリショイバレエ団、モスクワ音楽劇場バレエ団が、11月から12月にかけてはペテルブルグからマリインスキーバレエ団(旧キーロフバレエ)が来日公演にやって来る。その外にもたくさんの公演が日本で目自押しなのだ。その気になれば日本にいてもその素晴らしい舞台は見られるのである。(ちょっと料金は高いのだが...)私はいちバレエファンとして、一人一人が心にゆとりを持って、日本の日常生活にもっと芸術が根付いていけばと思っている。

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