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サンクトペテルブルク滞在中の週末、フランス人の旧友の誘いを受けて、オーストリア第2の都市グラーツを訪れることにした。言語学の天才で、英独仏西伊語などを使い分けるこの旧友から、「燃え尽きてしまって仕事をすべて止めて、静養している」というFacebookのメッセージを受け取って、少々心配になったからである。ウィーンまではオーストリア航空の直行便で2時間強、その夜のムジークフェラインザールのウィーン交響楽団の演奏会と、完成した新ウィーン中央駅、翌日午前中に訪れたスロヴェニアのマリボルについては既に旅行記に書いた。<br /><br />グラーツを訪れるのは初めて、ウィーンの南西約150kmにある。シュタイアーマルク州の州都で人口は約25万人、自動車産業など工業都市のイメージが強いが、旧市街はグラーツ歴史地区としてユネスコ世界遺産に登録されている。オーストリアの誇るレールジェットも途中、山岳鉄道として、その急カーブと高低差で名高い世界遺産のゼメリング鉄道を通過するためスピードが出せず、150kmほどの距離に2時間半強の時間を要する。<br /><br />街の歴史は古く、古代ローマ帝国の時代に設けられた砦がグラーツの起源であるという。13世紀に都市特権を得て、中世後期よりハプスブルク家の支配下におかれた。1586年にグラーツ大学が創設され、ケプラーなど著名な学者が教壇に立った。その街並みは「建築の宝石箱」と呼ばれる。ゴシック・ルネサンス・バロック、そして現代建築まで、さまざまな時代の質の高い建築物が、華麗な装飾の保存状態も良く、狭い旧市街の中に調和を保って現役の建物として機能している。幸い戦争の被害は少なく、ほぼ街の原型をとどめている。<br /><br />さて、午前中にマリボルを訪れ、再び国境を越え、3時にグラーツ中央駅に到着した。駅前から、様々な花が咲き誇る市民公園を歩いて、ムーア川を渡り旧市街に入る。メインストリートのヘレン通り沿いの歴史地区を歩き、ホーフガッセから王宮などを撮影して歩いた。そして約束の観光案内所で旧友と合流して旧友宅を訪問、その後ムーア川に沿って快適な散歩道を散策、最後に巨大ナマコと呼ばれている近未来的建築であるクンストハウス博物館(2003年完成、コリン・フルニエの設計)、ムーアインゼルを見て歩いた。<br /><br />旧友とは久々にゆっくり話すことができた。幸い精神的疲労は快方に向かっているそうで、近く言語学の仕事も再開すると聞き一安心した。ボルドー出身のフランス人であるが、グラーツが気に入って家を購入し永住するつもりだという。EU圏内の移動であればパスポートは要らない、とは言え、フランス人がドイツ語圏に順応して住み着く、というケースは多くはないと思う。天才的な語学力を発揮してバリバリ仕事をしていただけに、十分休養して、復活して欲しいものだ。<br /><br />蛇足であるが、小生にとってグラーツは、オーストリアの誇る大指揮者カール・ベーム(1894−1981)の生誕の地として忘れられない。ベームが亡くなって早30年以上が過ぎてしまった。残念ながら本番を聴くチャンスは逃してしまったが、ウィーンフィルの名誉指揮者として日本では絶大な人気を誇った。その日本における映像と、録音は常に座右にある。非常に厳格な音楽家として、またスタジオ録音とライヴ録音の差が大きいことで知られる。つまり、本番で燃焼するタイプの指揮者と言えるのかもしれない。彼のライヴ録音のシューベルトのグレート、ベートーヴェンの第7、スタジオ録音ではあるがモーツァルトのレクイエムなど、未だに彼の右に出る指揮者はいないと思っている。

オーストリアの世界遺産No.5 : 旧友の住むグラーツの歴史地区を歩く

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2015/04/18 - 2015/04/19

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ハンク

ハンクさん

サンクトペテルブルク滞在中の週末、フランス人の旧友の誘いを受けて、オーストリア第2の都市グラーツを訪れることにした。言語学の天才で、英独仏西伊語などを使い分けるこの旧友から、「燃え尽きてしまって仕事をすべて止めて、静養している」というFacebookのメッセージを受け取って、少々心配になったからである。ウィーンまではオーストリア航空の直行便で2時間強、その夜のムジークフェラインザールのウィーン交響楽団の演奏会と、完成した新ウィーン中央駅、翌日午前中に訪れたスロヴェニアのマリボルについては既に旅行記に書いた。

グラーツを訪れるのは初めて、ウィーンの南西約150kmにある。シュタイアーマルク州の州都で人口は約25万人、自動車産業など工業都市のイメージが強いが、旧市街はグラーツ歴史地区としてユネスコ世界遺産に登録されている。オーストリアの誇るレールジェットも途中、山岳鉄道として、その急カーブと高低差で名高い世界遺産のゼメリング鉄道を通過するためスピードが出せず、150kmほどの距離に2時間半強の時間を要する。

街の歴史は古く、古代ローマ帝国の時代に設けられた砦がグラーツの起源であるという。13世紀に都市特権を得て、中世後期よりハプスブルク家の支配下におかれた。1586年にグラーツ大学が創設され、ケプラーなど著名な学者が教壇に立った。その街並みは「建築の宝石箱」と呼ばれる。ゴシック・ルネサンス・バロック、そして現代建築まで、さまざまな時代の質の高い建築物が、華麗な装飾の保存状態も良く、狭い旧市街の中に調和を保って現役の建物として機能している。幸い戦争の被害は少なく、ほぼ街の原型をとどめている。

さて、午前中にマリボルを訪れ、再び国境を越え、3時にグラーツ中央駅に到着した。駅前から、様々な花が咲き誇る市民公園を歩いて、ムーア川を渡り旧市街に入る。メインストリートのヘレン通り沿いの歴史地区を歩き、ホーフガッセから王宮などを撮影して歩いた。そして約束の観光案内所で旧友と合流して旧友宅を訪問、その後ムーア川に沿って快適な散歩道を散策、最後に巨大ナマコと呼ばれている近未来的建築であるクンストハウス博物館(2003年完成、コリン・フルニエの設計)、ムーアインゼルを見て歩いた。

旧友とは久々にゆっくり話すことができた。幸い精神的疲労は快方に向かっているそうで、近く言語学の仕事も再開すると聞き一安心した。ボルドー出身のフランス人であるが、グラーツが気に入って家を購入し永住するつもりだという。EU圏内の移動であればパスポートは要らない、とは言え、フランス人がドイツ語圏に順応して住み着く、というケースは多くはないと思う。天才的な語学力を発揮してバリバリ仕事をしていただけに、十分休養して、復活して欲しいものだ。

蛇足であるが、小生にとってグラーツは、オーストリアの誇る大指揮者カール・ベーム(1894−1981)の生誕の地として忘れられない。ベームが亡くなって早30年以上が過ぎてしまった。残念ながら本番を聴くチャンスは逃してしまったが、ウィーンフィルの名誉指揮者として日本では絶大な人気を誇った。その日本における映像と、録音は常に座右にある。非常に厳格な音楽家として、またスタジオ録音とライヴ録音の差が大きいことで知られる。つまり、本番で燃焼するタイプの指揮者と言えるのかもしれない。彼のライヴ録音のシューベルトのグレート、ベートーヴェンの第7、スタジオ録音ではあるがモーツァルトのレクイエムなど、未だに彼の右に出る指揮者はいないと思っている。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
グルメ
4.0
交通
4.5
同行者
友人
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配

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  • ウィーン中央駅で出発を待つグラーツ行きレールジェット

    ウィーン中央駅で出発を待つグラーツ行きレールジェット

  • レールジェットの内部

    レールジェットの内部

  • レールジェットの内部のレストラン

    レールジェットの内部のレストラン

  • グラーツ中央駅のファサード

    グラーツ中央駅のファサード

  • 市民公園の花壇のチューリップ

    市民公園の花壇のチューリップ

  • 市民公園では八重桜によく似た花が満開

    市民公園では八重桜によく似た花が満開

  • ハウプト広場のヨハン大公の像

    ハウプト広場のヨハン大公の像

  • 堂々たる市庁舎のファサード

    堂々たる市庁舎のファサード

  • グラーツのメインストリート ヘレン通りのトラム

    グラーツのメインストリート ヘレン通りのトラム

  • グラーツのメインストリート ヘレン通り

    グラーツのメインストリート ヘレン通り

  • ヘレン通りのカフェ

    ヘレン通りのカフェ

  • ヘレン通りに面する州庁舎

    ヘレン通りに面する州庁舎

  • ヘレン通りのトラム

    ヘレン通りのトラム

  • ヘレン通りに面する建物

    ヘレン通りに面する建物

  • ヘレン通りに面する観光案内所のファサード

    ヘレン通りに面する観光案内所のファサード

  • 州庁舎の中庭の建物

    州庁舎の中庭の建物

  • 州庁舎の中庭の建物

    州庁舎の中庭の建物

  • グラーツ市教区教会

    グラーツ市教区教会

  • ヤコミニ広場のモニュメント

    ヤコミニ広場のモニュメント

  • ヤコミニ広場の花壇のチューリップ

    ヤコミニ広場の花壇のチューリップ

  • ヤコミニ広場のモニュメント

    ヤコミニ広場のモニュメント

  • 市教区教会の塔とヘレン通りの街並み

    市教区教会の塔とヘレン通りの街並み

  • ヘレン通りのトラム

    ヘレン通りのトラム

  • ヤコミニ広場でチョコレートを配る女子

    ヤコミニ広場でチョコレートを配る女子

  • ヘルツォークホーフの壁画

    ヘルツォークホーフの壁画

  • ヘルツォークホーフの中庭

    ヘルツォークホーフの中庭

  • ルエッグハウスの化粧漆喰で装飾されたファサード

    ルエッグハウスの化粧漆喰で装飾されたファサード

  • ルエッグハウスの中庭

    ルエッグハウスの中庭

  • ヘレン通りから分岐するシュポアガッセ

    ヘレン通りから分岐するシュポアガッセ

  • シュポアガッセのエンターテイナー

    シュポアガッセのエンターテイナー

  • シュポアガッセの街並み

    シュポアガッセの街並み

  • ドイツ騎士団の中庭

    ドイツ騎士団の中庭

  • シュティーゲンキルヒェ(階段教会)

    シュティーゲンキルヒェ(階段教会)

  • シュティーゲンキルヒェ(階段教会)のファサード

    シュティーゲンキルヒェ(階段教会)のファサード

  • ザウラウ宮殿のファサード

    ザウラウ宮殿のファサード

  • 宮廷御用達のパン屋、エーデッガー・タックス

    宮廷御用達のパン屋、エーデッガー・タックス

  • フランシスコ1世の像

    フランシスコ1世の像

  • 劇場のファサード

    劇場のファサード

  • 聖堂のファサード

    聖堂のファサード

  • マゾレウム(霊廟)

    マゾレウム(霊廟)

  • 聖堂の装飾

    聖堂の装飾

  • アカデミッシェ・ギムナジウム

    アカデミッシェ・ギムナジウム

  • クンストハウス・グラーツ、2003年に建設された博物館、コリン・フルニエの設計

    クンストハウス・グラーツ、2003年に建設された博物館、コリン・フルニエの設計

  • ムーア川に浮かぶ島、ムーアインゼル、カフェと半円型劇場が入る

    ムーア川に浮かぶ島、ムーアインゼル、カフェと半円型劇場が入る

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