2014/10/05 - 2014/10/06
2位(同エリア16件中)
のまどさん
ばりなすろー(Ballinasloe)という町はゴルウェー=ダブリン間鉄道の沿線にある町です。「浅瀬の町」を意味し、町の郊外に二つの川が合流するので古くから交流地点となっていました。
そんな地の利から18世紀に馬市が行われるようになり、現在も毎年10月初めに1週間ほど開催されるので見学しました。馬市にはアイルランド各地から出店者や訪問者が集まるので、この国の姿が俯瞰できた気がしました。
この旅行記の裏テーマは馬と拳、十字架です。
4トラに当地のエリア追加を却下されたのでアスローンを選択します。登録基準とは何なのでしょうか。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
PR
-
今朝の鍾乳洞での1.5ユーロ割引に味を占めて、バスに乗る際運転手に「学生料金が適用されるか判断に任せるよ」と言ってみましたが、残念ながら正規料金でした(←わきまえろ、中年)。
-
バスはバレンと呼ばれる岩地の真ん中を走ります。カーブと揺れが続く。
実はアイルランドに着いて以来、珍しく連夜の睡眠不足。無意識に一人旅に不安を感じているのか、興奮しているのか、それともこれから先の「試練」に緊張しているのか。 -
血の気が引いて指先が震えてきた。バレンの壮大な景色を見ても深呼吸してもめまいが止まらない。
後ろのホビットのような老夫婦にビニール袋をもらう。 -
幸いにも私の降りる停留所はすぐだった。運転手に「バスを汚さなくてよかった」と言うと(←完全にウザい客)「なに、気にすることはないさ」、と。
迎えは既に来ていた。知っている顔を見て安心した。 -
ここら辺でそろそろ、もったえぶってきた「訳」をお話しましょう。
今回一人旅になったのは私の旅と人生の伴侶(順不同)ウワバミちゃんがパスポートを更新できなかったからです(←大文字にしたい)。本人はベルギーのIDカードで里帰りができると思っていたのですが、私が発つ2日前にダメなことが分かりました。
パスポート更新手続が面倒とか事情が色々とあるのですが、冷たい言い方をすれば期限内に更新を怠っていたことは旅行者失格です。
旅先で人と会えば旅行のいきさつを必ずきかれますよね。方々で尾びれ背びれ付けて上述の話をしたところ、かなりの反響がありました。イニシュイールで会ったアメリカ人からは「その話最高」と絶賛されました。
写真の出所↓
http://www.irishorigins.ie/citizen.html -
私を迎えに来たのはウワバミ弟。バス停近くのカキのレストラン、モランズに行く手はずなんだけど、
「おら、カキさ食わねえだ」(以下こんな感じで方言を再現します)
と一蹴。こうなることは分かっておりました。この一族に予定なんてあってないようなもの。 -
ということでウワバミ実家に到着。
「おめさの濡れた靴、ここで乾かせ」と指示を受け、暖炉の上に愛用の登山靴を置いたところ、翌日には乾きました。
田舎だからガスが通っておらず、暖炉を炊いて暖を取ります。燃料はピートもしくは泥炭で、所有の湿地から定期的に掘り出して乾燥させます。 -
ウワバミちゃんが子どもの頃、お家のお手伝いは「泥炭掘り」だったそうです。この国ならではでしょう。
薪と一緒に燃やすと火の持ちが良くなります。 -
総勢16人の一家団欒。ここまで遠路遥々運んできたチャコレートとおもちゃを配給すると私のバックパックは一気に軽くなりました。
ちょっと役に立つ(かもしれない)アイルランド英語④
ラブリー(lovely)
贈り物をしたり料理を振る舞った際の賛辞です。アイルランドでは初対面の挨拶で「Nice to meet you」よりも「Lovely to meet you」と言われる方が多いです。空港でパスポートを見せた時などにThank youの代わりにラブリーと言われますが、これはどうも慣れない。
しかし、シュールだわ。ウワバミちゃん本人抜きでウワバミ家の人々と会食なんて。 -
軽食後出かけます。以前から行ってみたかったバリナスローの馬市。その前に荘厳な美しさで有名な教会に立ち寄ります。
聖マイケル教会。完成は1846年。じゃがいも飢饉の時には工事が中断されました。 -
最近のヨーロッパ旅行記には必ずと言っていいほど宗教の話を書いていますが、今回も例外にもれずに書かせていただきます。
北アイルランドの問題について、とあるトラベラーさんが「宗教から解放されればこの問題は解決される」という主旨を書いていて印象に残りました。極論としてはうなずけますが、実質的に無宗教がマジョリティの日本人だからこそ抱ける発想だと思います。 -
イチオシ
回廊と天井の梁が威厳を放っています。
確かにカトリック教会は未だに多くのスキャンダルを抱えている。一部の聖職者による児童虐待は今に至るまで世界中で発覚し、またアイルランドでは今年6月にカトリックの産院施設(60年代に閉鎖)の敷地内で乳幼児の死体が800体も見つかるという事件があった。 -
未婚の母など社会規範を逸脱すると判断された女性に対する教会の冷遇は映画『マグダレンの祈り』で有名になりましたが、あらすじを読んだ所冒頭から残酷物語なので私自身は見ていません。
見るとすれば子供と生き別れになった女性の人生をユーモアを交えて描いた『あなたを抱きしめるまで』の方をお勧めします。 -
これらの出来事に抗議して教会に行かなくなった人も多数いますが、それでもアイルランド人はポーランド人と並んで最も信仰厚いカトリック教徒であることに変わりありません。
教会という組織はともかく一般市民の信仰心は無垢です(無垢ということが恐ろしいこともあるが)。高齢者、障害者、子供、外国人などの社会的弱者に人々が優しいのは宗教倫理が根底にあるからだと思います。
カリスマ俳優ダニエル・デイ・ルイス主演の『マイ・レフトフット』は障害者の家族愛を描いた感動作品です。 -
ちょっと重い感じになってきたのでジョークを引用して和らげましょう。英国人文芸評論家テリー・イーグルトン著『とびきり可笑しなアイルランド百科』によると、「イエス・キリストはアイルランドでは二番目に人気のある人物である。ちなみに最も人気者なのはU2のボノ。」あ、1990年代の話です。
-
この教会のステンドグラス、凝っています。1924年にアイルランドの芸術家がデザインしました。どれだけ信者から寄付金を集めたのでしょうか。
-
さて、馬市に行きます。ヨーロッパで一番古いと謳っています(と言っても18世紀らしいです)。ちなみに世界一はどこか調べましたが、出てきません。中東辺りだと思いますが、記録がないのでしょう。
-
「ウェルカム」
-
先ほどの聖マイケル教会を背にした銅像。
-
こちらはプロテスタントの聖ジョン教会です。
出店する人のトレーラーが多数駐車しています。 -
イチオシ
だいぶ引いたところから。
競りではなく馬主と一対一で交渉して買う仕組みになっています。買い手は競争馬としてではなく、遊園地や観光地などの娯楽用や個人所有になるようです。
アイルランドは競争馬の名産地です。アイルランド出身で北海道で競走馬の牧場を経営するハリー・スウィーニー氏について紹介したいと思います。この方のすごいところは、
①農地収得、日本中央競馬会の馬主資格取得は日本人でも難しいのに外国人として初めて成し遂げたこと
②経営している牧場の名前は「パカパカファーム」
③日本では単身で働き、妻と4人の子どもがいるアイルランドと年間13往復している -
馬具もたくさんも売られています。
-
馬車は売り物なのか展示品なのかそれとも乗り物なのか分かりません。
馬車① -
馬車②
-
馬車③
-
中央の蛍光ジャンパーを着た二人は動物愛護団体の職員で動物の扱いを監視しているようです。
-
こちらのジャンパーは警察官で、ポスター配りの女の子に話しかけられています。
ちょっと役に立つ(かもしれない)アイルランド英語⑤
ガルディ(Gardi)
アイルランドでは警察をポリスではなく、ガルディと呼びます。アイルランド語ですが、Gardaが単数形なので、ラテン語由来だと思います。 -
こちらのガルディは馬に乗ってパトロール。ヨーロッパにはわりと騎乗警察がいて、常々馬に乗るメリットは何か考えますが、
-
視界が良いのでしょう。携帯で通話している運転手を捕獲しました。
-
馬市の中で上質な馬は障害物競争に出ます。人が多いので、
-
丘の上から見るのがいいです。
-
上位3等は表彰されます。馬市の期間は毎日この催しがあります。
-
馬市の様子を遠くから眺めると見ごたえあります。でもヒッチコック似の「ガイド」曰く、昔は隙間がないほど人と馬で溢れていたようです。今でも馬の後ろを恐々通らざるを得ないのに、当時は蹴られた人が多数いたのではないでしょうか。
-
馬の他にも色々な動物が売られていました。
ケリーの羊。毛並みがきれいでした。 -
家禽類や小動物、
-
ロバも。
-
動物の他にも色々な屋台が出ています。海藻の屋台を発見。
私「これは海藻ですか?」
店主「そうだ。スシにどうだ」
私「スシには不向きです」
店主「じゃあ、アイルランド製精力剤だ」
私「…」
効能はともかく、海藻サラダは久しく食べていないので買って帰ればよかったです。 -
イチオシ
通りの一角では地元の子どもたちが伝統的なダンスを踊っていました。タップダンスのような踊りで、リバーダンスはこれをショー用にアレンジしたものです。90度まで足が上がり、かなり躍動感があります。演奏するのも子供たちで、この風景は気に入りました。
-
さて、馬市で私が見たかったのは移動民族。自身のハンドルネームにしているくらいなので世界各地の移動民族にはとても関心があります。アイルランドの移動民族はトラベラーと呼ばれていますが、4トラでこの呼称を使うと語弊があるので、以下ジプシーとします。
ジプシーは伝統的にこのような馬車で移動生活をしていました。 -
今ではトレーラーに代わり、町外れの空き地に集落を構えて半定住しているようです。こちらは冒頭バレンの居住区。
ジプシーはアイルランド人とは異なる民族で、例えばウワバミちゃん曰く男性ははげないそうです。彼らはマイノリティで一般のアイルランド人と婚姻関係を持つことは少ないようです。 -
昔は鍋釜を作って生計を立てていましたが、今は生活の糧が少なく、一般のアイルランド人は社会保障をむさぼっていると思っている人が多いです。
-
占い業は生き残っていて、馬市に何台かトレーラーを見ました。占い師に料金をきいたところ20ユーロとの回答。遠慮しましたが、良く考えたらこの手の占いは日本でも2000円くらいしたかもしれません。
-
ジプシーは親が子供の結婚相手を決めるようです。婚礼もトレーラー一台に匹敵する長さのウェディングドレスを着たりとかなり変わっています。そして10代半ばで出産する女性も多くいるとか。
バリナスローの馬市はジプシーの女性にとってはハレの日で(成人式みたいな?)、普段はできないおめかしをして人前に出られます。 -
ガイドが「あんなに肌さ出して、寒くねえんだべか」とまっとうな指摘をしていました。
女性のジプシーは派手な格好をしているので分かりますが、男性については一般のアイルランド人と見分けが付きません。 -
たむろするジプシーの若者。右手奥の方の青年がカメラに気づいて親指を立てています。この後で「撮影するなら50ユーロ払いな」と言われました。別のグループの女性の写真を撮った時も指を差されました。
ジプシーは血が上りやすいようで、馬市の期間中ケンカを防ぐために彼らの入店を拒むパブが多いそうです。アイルランドはオリンピックの馬術競技とボクシングでメダルに期待が掛かりますが、ジプシーの多くがボクシングに従事しています。ロンドン五輪の男子バンタム級銀メダリストのジョン・ジョー・ネヴィンが一例です(←知っている人います?)。 -
この方はガイドがお金を払ったので笑顔で撮影に応じてくれました。でも、顔つきと表情からしてルーマニアあたり出身のロマだと思います。ロマはインドから渡ってきた民族と言う見方が強いですが、アイルランドのジプシーのルーツは不明です。
移動民族の多くは記録がないのでミステリアスです。
現在先進国では安定した生活をしにくいことから定住民族と共生が難しくなっています。今まで見た中で唯一幸せそうに思えたのはモロッコの遊牧民です。
何だか泥臭い旅行記になってしまったので、次は少し明るいトーンを出せたらと思います。
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (4)
-
- jijidarumaさん 2014/11/25 15:20:52
- ばりなすろー(Ballinasloe)
- のまどさん
こんにちは。
ばりなすろー(Ballinasloe)は意外とアイルラントの中央なのですね。
町の紋章はさすがに馬市を象徴する馬が入っていました。
かつて私共は特別な民をジプシーと呼んでいましたが、今は差別語でロマを使うようになったと言います。ややこしいですね。
トラベラーとアイルランドなどでは呼ぶと初めて知りましたが、世界には知らない民も多いのだと思いましたよ。
jijidaruma
- のまどさん からの返信 2014/11/25 21:12:59
- RE: ばりなすろー(Ballinasloe)
- jijidarumaさん、こんにちは。
毎度コメントいただき、ありがとうございます。
> ばりなすろー(Ballinasloe)は意外とアイルラントの中央なのですね。
首都ダブリンと観光名所の多い西部の間にあるので、アクセスはわりといいと思います。地名は日本語の発音で通じるので平仮名で書いてみました。
> かつて私共は特別な民をジプシーと呼んでいましたが、今は差別語でロマを使うようになったと言います。ややこしいですね。
呼称については悩みました。他に鋳掛屋を意味するTinkersとも呼ばれていますが、不器用にいじるという意味もあるので問題になると思いました。おっしゃる通りジプシーは差別用語とみなされますが、占い師の看板にある通り自称なのでこれを採用しようと決めました。
寒くなってきましたが、旅行前にあと1冊書きたいと思います。
-
- captainfutureさん 2014/11/25 00:29:27
- アイルランド、何だか空の色からも独特な雰囲気が伝わってきました!
- こんにちは。
ご無沙汰しております!
行きのバスでは大変でしたね。お疲れ様でした。
アイルランドのパスポート、初めて拝見しました。
ご主人が当地の方とは素敵です。
紙はハープでしょうか。小さい頃、集めていたコインにアイルランドのがあって、それとデザインが同じだったことを思い出してしまいました。
>所有の湿地から定期的に掘り出して乾燥させます。
スゴイですね!
お住まいが、少し郊外というのも現地ならではの習慣も残っていそうで、こちらもまた素敵です。
ケリーの羊、僕の知っている羊の顔と全然違っていて驚きました。こんなに綺麗で上品な感じの羊もいるんですね。
ところで写真がキレイだなあと思って拡大してみると、やはり一眼レフカメラだったんですね。実はちょうど、一眼レフに挑戦してみようと思っていたところです。のまどさんみたいに使いこなせるよう練習しなければ。
今回もなかなか一旅行者では知ることのできない、現地にご親戚がいる方ならではのお話が盛りだくさんで興味深く拝見しました。
続編も楽しみにしています♪
- のまどさん からの返信 2014/11/25 21:02:04
- RE: アイルランド、何だか空の色からも独特な雰囲気が伝わってきました!
- captainfutureさん、こんにちは。
お立ち寄りの上、温かいコメントをいただきありがとうございます。細かい所まで見ていただいて光栄です。
アイルランドは英国と似ていますが、気候風土が独特です。結構スピリチュアルかもしれません。
> 紙はハープでしょうか。小さい頃、集めていたコインにアイルランドのがあって、それとデザインが同じだったことを思い出してしまいました。
おっしゃる通り国のシンボル、アイリッシュハープはライアンエアの機体、ギネスの缶など色々な物に見られます。統一通貨ユーロの裏は各国でデザインできるのですが、アイルランドはもちろんハープです。ポンド時代のコインをお持ちなんですね。今やなき通貨ですので、どうぞお大事に保管下さい。
> ケリーの羊、僕の知っている羊の顔と全然違っていて驚きました。こんなに綺麗で上品な感じの羊もいるんですね。
調べてみたらこの品種はウェールズが原産のようです。とても良く手入れされている羊のようで、毛並みが輝いていました。
>
> 。実はちょうど、一眼レフに挑戦してみようと思っていたところです。のまどさんみたいに使いこなせるよう練習しなければ。
いや、とても使いこなせるというレベルには達していませんよ。他のトラベラーさんの写真を見て勉強させてもらっています。
カメラ業界はコンパクトカメラが不振な分、一眼レフに力を入れると思うので、お買い時かもしれません。重くて扱いも容易ではありませんが、一度持ってしまうと手放せなくなります。自然風景などは特に立体感が違います。
captainfutureさんが一眼レフでモスクや民族衣装を着た市民を撮った写真、拝見するのを楽しみにしています。
アイルランドについては日頃から入れ知恵されているため、切れない縁があるのでまたもや一風変わった旅行記になっております。あと1冊続きますので、また是非遊びに来て下さい。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
アスローン(アイルランド) の人気ホテル
アイルランドで使うWi-Fiはレンタルしましたか?
フォートラベル GLOBAL WiFiなら
アイルランド最安
509円/日~
- 空港で受取・返却可能
- お得なポイントがたまる
4
46