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「日本史の中で一番好きな時代は?」<br /><br />と問われたら、真っ先に挙げるのが明治時代。それも、『坂の上の雲』の影響が非常に大きい。様々な紆余曲折があるとはいえ、始めて身分の高低なく『国家』というものを意識始め、これまでも国と国との交渉ごとはあろうとも、それでも一部の国との間だけにすぎず、広く遍く『国際』というものを意識し始めた時代は無かったと思う。<br />明治維新を遂げ、僅か数十年で近代国家の仲間入りを果たした日本。その急激な成長劇の中を、日清戦争〜日露戦争を主軸とした舞台で生きた人物を描いているのが、『坂の上の雲』である。彼らの、日本が世界に肩を並べるために費やした努力の数々が主に描かれているところであるが、そんな彼らを支える、『明治時代』という気質が好きになった。完全とはいかないまでも、それまでの抑圧から解放され、自由を謳歌する一方で、不慣れなよちよち歩きの赤ん坊が、大海原に向かって泳ぎだす。大きな危険を冒す可能性がありながらも、どこかワクワクさせる高揚感がある時代と感じた。<br /><br />そんな『坂の上の雲』の中で、最も興味を引いた人物が、竹田市出身の軍神、『広瀬武夫』だ。ドラマで藤本隆宏さんが演じたから、というのもあるけれど、大きさと真っ直ぐさを兼ね備えた男の生涯に惹かれたところが大きい。『坂の上の雲』を読破後、独自に彼の本を読み始めたくらいだ。<br />そんな、彼が生まれ育ったところはどんなところだろう、と思いを馳せながら、大分空港に到着。大分駅を経て、竹田市に向かった。<br />実は、今回の竹田市は、市街地を写真に収めながら歩くというのと他に、絶対に見たいと焦がれていたイベント『竹楽』がある。それは、日も暮れた夜にならないと始まらない。<br /><br />史跡好きとしては、竹田に到着したらやはり訪れずにはいられないのが、岡城址。標高325mの天神山の山頂に築かれた山城でありながら、その規模は大きく、特に崖のように急峻で且つ規模の大きな石垣は、その威容だけでも息を呑むのに、当時の、こんな場所にこれだけの石垣が作れる、という技術力の高さに感嘆せずにはいられない。<br />岡城は桜の名所として知られているが、紅葉も実に見事である。若干時期が早かったようであるが、特に西中仕切跡が素晴らしかった。ここは、外部へ迫立つ石垣の特に美しいところでもあり、紅葉の美しさも相成って一層美しさが際立っていたように思える。<br />そして、本丸跡には、幼年時代をここで過ごした滝廉太郎の像がある。23歳と言うあまりにも若くして亡くなった廉太郎。100年近く経過した今でも歌い続けられている曲を世に出すほど、己の生命を燃焼し尽したのだろうか。彼の代表作である『荒城の月』のモチーフは諸説あるが、この岡城が有力な候補として挙げられている。<br /><br />史跡そのものの広さもあるが、史跡やそれを取り囲む自然の、季節の美しさもあり、2時間近くもここに滞在してしまった。本来であれば後悔するところだ、これだけの美しさを誇る城跡だ。これだけ時間を掛けてしまう魅力に溢れている。ただ、岡城を下りた時、まだ午後も少し時間が経過したばかりなのに、陽に傾きが出てきているところが、晩秋の訪れを感じさせるとともに、少々急ぎ足で街中を歩きたい、という気持ちを駆り立てられてしまう。<br /><br /><br />竹田市は、京都や札幌に比べればだいぶ小規模ではあるものの、それでも格子状に入り組んでいる道は、しばしば訪れる人を迷わせる。だが、折角来たのだから、そういった『迷う』というのも旅のだいご味。色々な場所を行ったり来たりして、その街の雰囲気を味わってみる。<br />竹田市は、その市の名前に冠するように、竹の産地として有名で、竹細工を売っている土産物店が多い。さらに、『竹楽』に使う灯籠用の竹が、街中に並ぶ。もっとも、『竹楽』は一部の社寺や特定の会場等で実施されるものと思っていたが、おびただしい数の灯籠用の竹が街中に立っているあたり、特定の施設の祭りではなく、町全体を挙げての祭りだということを、ここに来て初めて知る。しかし、そのせいもあってか、一部の施設は早々に開業時間を切り上げ、中には立ち入ることも制限されてしまう場所もあるため、注意が必要だ。<br /><br />そして、この旅の目的の一つである広瀬神社にも立ち寄った。竹田市の戦没者を合祀する神社であり、軍神・広瀬武夫を主祭神としている、比較的新しい神社だ。広瀬武夫の無骨なまでの人生とは別に、神社境内には、穏やかな空気に包まれていた。<br /><br /><br />日も暮れ、徐々に街から明るさが遠のいた時、『竹楽』のイベントが始まる、住人の手によって竹の灯籠の中のロウソクに火がともされる。勿論、まだ明るさを残す自分であれば、それはただの小さな光に過ぎない。やがて陽の光がなくなった時、文字通りこの世のものかと思えるほどの幻想的な空間が現れる。<br /><br />東京に住む人間にとって、大分なんて、それも竹田市なんて、仕事でもない限りそうやすやすと来れるところじゃない。ましてや、このイベントのために毎年のように日程を調整するとなると、至難の業である。たとえ来ることが出来たところで、雨が降って中止になるかもしれない。<br />僕が何かに憑りつかれるように撮影する時、それは、もうこの光景には二度と会えないかもしれないことの覚悟と恐怖を込めてでもある。これだけの、息を呑むような光景は、一生に一度出会えるかどうかにもかかっているかもしれない。目で見たものを頭の記憶に、感じたものを心の奥底にしまっておくだけでも物足りない。全てを切り取りたいと思わんばかりに、撮影の限りを尽くした。<br />特に、広瀬神社の境内へ登る階段、上を見上げると、丁度階段の真上に、月が煌々と照らされていた。この日が平日だということをこれ程感謝したことはない。もし土日祝日だったら、撮影スポットに近づくことすら出来なかっただろうから。<br /><br />そんな竹楽のイベントの中で、観音寺は正に見せ場と言う意味では美しかったが、『場の美しさ』を表現していたのは、まぎれもなく『キリシタン洞窟礼拝堂』だったと思う。<br />ここ竹田でも、豊臣秀吉によるキリスト教の弾圧によって大勢のキリスト教信者が隠れるように住んでいた。その傍らで、自分たちの信じる信仰を頑なに守り続けていた。その面影を残すのが、洞窟礼拝堂。町のはずれに、まるで俗世から隠れるように、ひっそりと今でもそこにある。神を湛える重厚感のある音楽が、ささやくように流れる中で、闇の中を揺らめくロウソクの灯りを見ながら、当時の苦しい世の中を懸命に生き抜いてきた人を思いはせずにはいられなかった。<br /><br />一通り撮影も終り、冷たい風に冷え切った身体を温めるため、出店で温かい食べ物を頬張り、どこからか流れる音楽に耳を傾けながら、深まる秋の夜長を楽しむ。最高とも言える贅沢な夜の過ごし方が、ここにあった。

竹の灯りが織りなす幻想 - 竹楽

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2013/11/15 - 2013/11/15

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Cyber

Cyberさん

「日本史の中で一番好きな時代は?」

と問われたら、真っ先に挙げるのが明治時代。それも、『坂の上の雲』の影響が非常に大きい。様々な紆余曲折があるとはいえ、始めて身分の高低なく『国家』というものを意識始め、これまでも国と国との交渉ごとはあろうとも、それでも一部の国との間だけにすぎず、広く遍く『国際』というものを意識し始めた時代は無かったと思う。
明治維新を遂げ、僅か数十年で近代国家の仲間入りを果たした日本。その急激な成長劇の中を、日清戦争〜日露戦争を主軸とした舞台で生きた人物を描いているのが、『坂の上の雲』である。彼らの、日本が世界に肩を並べるために費やした努力の数々が主に描かれているところであるが、そんな彼らを支える、『明治時代』という気質が好きになった。完全とはいかないまでも、それまでの抑圧から解放され、自由を謳歌する一方で、不慣れなよちよち歩きの赤ん坊が、大海原に向かって泳ぎだす。大きな危険を冒す可能性がありながらも、どこかワクワクさせる高揚感がある時代と感じた。

そんな『坂の上の雲』の中で、最も興味を引いた人物が、竹田市出身の軍神、『広瀬武夫』だ。ドラマで藤本隆宏さんが演じたから、というのもあるけれど、大きさと真っ直ぐさを兼ね備えた男の生涯に惹かれたところが大きい。『坂の上の雲』を読破後、独自に彼の本を読み始めたくらいだ。
そんな、彼が生まれ育ったところはどんなところだろう、と思いを馳せながら、大分空港に到着。大分駅を経て、竹田市に向かった。
実は、今回の竹田市は、市街地を写真に収めながら歩くというのと他に、絶対に見たいと焦がれていたイベント『竹楽』がある。それは、日も暮れた夜にならないと始まらない。

史跡好きとしては、竹田に到着したらやはり訪れずにはいられないのが、岡城址。標高325mの天神山の山頂に築かれた山城でありながら、その規模は大きく、特に崖のように急峻で且つ規模の大きな石垣は、その威容だけでも息を呑むのに、当時の、こんな場所にこれだけの石垣が作れる、という技術力の高さに感嘆せずにはいられない。
岡城は桜の名所として知られているが、紅葉も実に見事である。若干時期が早かったようであるが、特に西中仕切跡が素晴らしかった。ここは、外部へ迫立つ石垣の特に美しいところでもあり、紅葉の美しさも相成って一層美しさが際立っていたように思える。
そして、本丸跡には、幼年時代をここで過ごした滝廉太郎の像がある。23歳と言うあまりにも若くして亡くなった廉太郎。100年近く経過した今でも歌い続けられている曲を世に出すほど、己の生命を燃焼し尽したのだろうか。彼の代表作である『荒城の月』のモチーフは諸説あるが、この岡城が有力な候補として挙げられている。

史跡そのものの広さもあるが、史跡やそれを取り囲む自然の、季節の美しさもあり、2時間近くもここに滞在してしまった。本来であれば後悔するところだ、これだけの美しさを誇る城跡だ。これだけ時間を掛けてしまう魅力に溢れている。ただ、岡城を下りた時、まだ午後も少し時間が経過したばかりなのに、陽に傾きが出てきているところが、晩秋の訪れを感じさせるとともに、少々急ぎ足で街中を歩きたい、という気持ちを駆り立てられてしまう。


竹田市は、京都や札幌に比べればだいぶ小規模ではあるものの、それでも格子状に入り組んでいる道は、しばしば訪れる人を迷わせる。だが、折角来たのだから、そういった『迷う』というのも旅のだいご味。色々な場所を行ったり来たりして、その街の雰囲気を味わってみる。
竹田市は、その市の名前に冠するように、竹の産地として有名で、竹細工を売っている土産物店が多い。さらに、『竹楽』に使う灯籠用の竹が、街中に並ぶ。もっとも、『竹楽』は一部の社寺や特定の会場等で実施されるものと思っていたが、おびただしい数の灯籠用の竹が街中に立っているあたり、特定の施設の祭りではなく、町全体を挙げての祭りだということを、ここに来て初めて知る。しかし、そのせいもあってか、一部の施設は早々に開業時間を切り上げ、中には立ち入ることも制限されてしまう場所もあるため、注意が必要だ。

そして、この旅の目的の一つである広瀬神社にも立ち寄った。竹田市の戦没者を合祀する神社であり、軍神・広瀬武夫を主祭神としている、比較的新しい神社だ。広瀬武夫の無骨なまでの人生とは別に、神社境内には、穏やかな空気に包まれていた。


日も暮れ、徐々に街から明るさが遠のいた時、『竹楽』のイベントが始まる、住人の手によって竹の灯籠の中のロウソクに火がともされる。勿論、まだ明るさを残す自分であれば、それはただの小さな光に過ぎない。やがて陽の光がなくなった時、文字通りこの世のものかと思えるほどの幻想的な空間が現れる。

東京に住む人間にとって、大分なんて、それも竹田市なんて、仕事でもない限りそうやすやすと来れるところじゃない。ましてや、このイベントのために毎年のように日程を調整するとなると、至難の業である。たとえ来ることが出来たところで、雨が降って中止になるかもしれない。
僕が何かに憑りつかれるように撮影する時、それは、もうこの光景には二度と会えないかもしれないことの覚悟と恐怖を込めてでもある。これだけの、息を呑むような光景は、一生に一度出会えるかどうかにもかかっているかもしれない。目で見たものを頭の記憶に、感じたものを心の奥底にしまっておくだけでも物足りない。全てを切り取りたいと思わんばかりに、撮影の限りを尽くした。
特に、広瀬神社の境内へ登る階段、上を見上げると、丁度階段の真上に、月が煌々と照らされていた。この日が平日だということをこれ程感謝したことはない。もし土日祝日だったら、撮影スポットに近づくことすら出来なかっただろうから。

そんな竹楽のイベントの中で、観音寺は正に見せ場と言う意味では美しかったが、『場の美しさ』を表現していたのは、まぎれもなく『キリシタン洞窟礼拝堂』だったと思う。
ここ竹田でも、豊臣秀吉によるキリスト教の弾圧によって大勢のキリスト教信者が隠れるように住んでいた。その傍らで、自分たちの信じる信仰を頑なに守り続けていた。その面影を残すのが、洞窟礼拝堂。町のはずれに、まるで俗世から隠れるように、ひっそりと今でもそこにある。神を湛える重厚感のある音楽が、ささやくように流れる中で、闇の中を揺らめくロウソクの灯りを見ながら、当時の苦しい世の中を懸命に生き抜いてきた人を思いはせずにはいられなかった。

一通り撮影も終り、冷たい風に冷え切った身体を温めるため、出店で温かい食べ物を頬張り、どこからか流れる音楽に耳を傾けながら、深まる秋の夜長を楽しむ。最高とも言える贅沢な夜の過ごし方が、ここにあった。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
3.5
グルメ
3.0
ショッピング
3.5
交通
3.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円 - 3万円
交通手段
ANAグループ JRローカル
旅行の手配内容
個別手配

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