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<br /><br /><br /> 今からおよそ10年程前の話である。 関東の半農半漁の寒村で農作業に従事している古くからの友人を訪ねた時、とても印象に残る話を聞いた。それは私の琴線に触れ、深く記憶の底に刻み込まれた。こんな事が現実に起こるのかと、思うような話だった。<br />    それはこんな話だった。<br /><br /><br />夕刻時、一匹の蛇が友人の自宅の農家の離れの建物の軒先に絡み付くように留まったまま動かない。私の友人と彼の18歳になる息子Yはその軒先の下で深刻な立ち話をしていた。最初に蛇の存在に気付いたのは彼の息子だった。<br /><br />「あんな所に蛇が、、、」息子の呟きに、指差す方を見上げると、普段は決して木に登ったりしないはずのシマヘビが軒下の鴨井に絡みついている。まるで二人の会話を聞いているかのように、動かない状態のままじっとしている。<br />刹那、友人も息子Yも同時に思ったと云う。<もしや、あの蛇は、、、>と、、、<br /> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br /><br />息子の親友Hの突然の訃報の連絡をHの実家から受けたのは、その日の午後だった。自動車の単独事故だった。<br /><br />東海地方の大手の自動車関連産業に就職した息子の親友Hからゴールデンウイークには帰郷するから逢おうと云う連絡を息子Yが受けたのは訃報の連絡が有った前日だったという。高校を卒業後、僅か就職して一年目のことだった。<br /><br />故に知らせを受けた時の息子に取っては信じられない思いで一杯だった。<br />前日、あんなに元気に電話で話したのに何故、、、<br /><br />中学時代、しばらくの間、登校拒否気味になった息子のYを毎朝、自宅まで迎えに来てくれたHだった。通学路から外れているにも関わらず、毎朝のように立ち寄ってくれるHに父親である私の友人は心底、有り難い思いと感謝の気持ちで一杯だったという。<br /><br />苛められ気味のYをいつも庇ったり、助けたりしたのもHだった。高校時代には、地元に格闘技道場が出来ると、HはYを誘って早速、入会した。何処に行くにも何をするにも彼等は何時も一緒だった。<br /><br />やがて高校を卒業し地元の最大手の葬儀社に就職した息子Yが4月の研修期間を終え、最初の仕事として現場に出ることになったのが、親友Hの葬儀になるとは運命の皮肉としか言いようがない。<br /><br />葬儀の日程は二人が逢うはずだったゴールデンウイークになった。<br />友人は息子が親友の遺体と対面することになる運命の皮肉を呪ったと云う。<br /><br />私もその顛末を友人から聞いた時は、胸を衝かれて思わず絶句したものである。ちょっと聞いたことの無いような、とても考えられないような話だった。<br /><br />歳若く、夭逝したHの葬儀には数多くの友人が参列したという。その中でYは感情を表に出す事もなく、無表情で黙々と上司の指示に従って作業に従事している様をみて、通夜に参列していた友人は、あの泣き虫で甘えん坊だった息子がと云う思いで、その立ち振る舞い振りに胸が痛くなったという。そして息子なりに親友として精一杯に見送ってあげる事が手向けになるという気持ちが垣間見えたと云う。<br /><br />通夜が終わり、翌日の葬儀も終え、遅くなって帰宅しすっかり憔悴したきった様子で食事も摂らず、自室に籠ってしまった息子の部屋からは、嗚咽するような、すすり泣く様な声から、今まで堪えていたものが外れたが如く、号泣する声に変わり、それは何時までも何時までも止まなかった。<br /><br /> 友人曰く、 息子よ、泣きたいだけ泣きなさい、、という思いで一杯だったという。<br />

化身…こんな事が、、、

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2003/02/06 - 2003/02/07

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kio

kioさん




 今からおよそ10年程前の話である。 関東の半農半漁の寒村で農作業に従事している古くからの友人を訪ねた時、とても印象に残る話を聞いた。それは私の琴線に触れ、深く記憶の底に刻み込まれた。こんな事が現実に起こるのかと、思うような話だった。
    それはこんな話だった。


夕刻時、一匹の蛇が友人の自宅の農家の離れの建物の軒先に絡み付くように留まったまま動かない。私の友人と彼の18歳になる息子Yはその軒先の下で深刻な立ち話をしていた。最初に蛇の存在に気付いたのは彼の息子だった。

「あんな所に蛇が、、、」息子の呟きに、指差す方を見上げると、普段は決して木に登ったりしないはずのシマヘビが軒下の鴨井に絡みついている。まるで二人の会話を聞いているかのように、動かない状態のままじっとしている。
刹那、友人も息子Yも同時に思ったと云う。<もしや、あの蛇は、、、>と、、、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

息子の親友Hの突然の訃報の連絡をHの実家から受けたのは、その日の午後だった。自動車の単独事故だった。

東海地方の大手の自動車関連産業に就職した息子の親友Hからゴールデンウイークには帰郷するから逢おうと云う連絡を息子Yが受けたのは訃報の連絡が有った前日だったという。高校を卒業後、僅か就職して一年目のことだった。

故に知らせを受けた時の息子に取っては信じられない思いで一杯だった。
前日、あんなに元気に電話で話したのに何故、、、

中学時代、しばらくの間、登校拒否気味になった息子のYを毎朝、自宅まで迎えに来てくれたHだった。通学路から外れているにも関わらず、毎朝のように立ち寄ってくれるHに父親である私の友人は心底、有り難い思いと感謝の気持ちで一杯だったという。

苛められ気味のYをいつも庇ったり、助けたりしたのもHだった。高校時代には、地元に格闘技道場が出来ると、HはYを誘って早速、入会した。何処に行くにも何をするにも彼等は何時も一緒だった。

やがて高校を卒業し地元の最大手の葬儀社に就職した息子Yが4月の研修期間を終え、最初の仕事として現場に出ることになったのが、親友Hの葬儀になるとは運命の皮肉としか言いようがない。

葬儀の日程は二人が逢うはずだったゴールデンウイークになった。
友人は息子が親友の遺体と対面することになる運命の皮肉を呪ったと云う。

私もその顛末を友人から聞いた時は、胸を衝かれて思わず絶句したものである。ちょっと聞いたことの無いような、とても考えられないような話だった。

歳若く、夭逝したHの葬儀には数多くの友人が参列したという。その中でYは感情を表に出す事もなく、無表情で黙々と上司の指示に従って作業に従事している様をみて、通夜に参列していた友人は、あの泣き虫で甘えん坊だった息子がと云う思いで、その立ち振る舞い振りに胸が痛くなったという。そして息子なりに親友として精一杯に見送ってあげる事が手向けになるという気持ちが垣間見えたと云う。

通夜が終わり、翌日の葬儀も終え、遅くなって帰宅しすっかり憔悴したきった様子で食事も摂らず、自室に籠ってしまった息子の部屋からは、嗚咽するような、すすり泣く様な声から、今まで堪えていたものが外れたが如く、号泣する声に変わり、それは何時までも何時までも止まなかった。

 友人曰く、 息子よ、泣きたいだけ泣きなさい、、という思いで一杯だったという。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • がりさん 2013/08/23 00:15:43
    上質な短編小説のような
    kioさん、こんばんは!

    この作品もkioさんらしい、上質な短編小説を思わせるような作品ですね。
    本当に心の琴線に触れる、不思議な話…。
    これがフィクションではなく、実際にあった話というのがまた。。

    こういう運命のようなことって本当にあるんですね。
    そして化身として現れた蛇…。

    それにしても、kioさんは本当にいくつもの不思議な、そして魅力的なエピソードをお持ちですね。
    旅先での不思議な話も多いし、印象的な出会いも多い。
    なにかそういうものを引き寄せる力が、kioさんにはあるのかも!?


    ところで今日の藤圭子さんの訃報、沢木ファンにとってはけっこう驚きでしたね。。
    沢木さんのところにもコメントの依頼がかなり来ているのでは?と推測。
    でもたぶん沢木さんは何もコメントを発することはないような気がします。

    深夜特急の旅の終わりに、パリの空港で藤さんに出会うエピソードはけっこう好きなので、なんだか複雑な気分ですね〜。

    あと、kioさんをフォローに追加させて頂きました!
    これからも素敵なお話、楽しみにしています〜。

    kio

    kioさん からの返信 2013/08/23 21:57:21
    RE: 上質な短編小説のような
    がりさん こんばんわ

    いつもながらの私の旅行記から、とてつもなく遠く離れた妙な小文に
    書き込み&投票頂き、ありがとうございます。

    > この作品もkioさんらしい、上質な短編小説を思わせるような作品ですね。
    > 本当に心の琴線に触れる、不思議な話…。
    > これがフィクションではなく、実際にあった話というのがまた。。

    それは余りにも恐れ多い過分がお言葉ですよん( ^)o(^ )

    > こういう運命のようなことって本当にあるんですね。
    > そして化身として現れた蛇…。


    ちょっと前に、文章に書いた友人に息子は元気にしてるかと電話で
    尋ねた事があります。息子さんは月命日が近づくと、亡くなった親友の
    墓参りに出掛ける事を続けているそうですよ。


    > 旅先での不思議な話も多いし、印象的な出会いも多い。
    > なにかそういうものを引き寄せる力が、kioさんにはあるのかも!?


    印象に残った事や深く記憶に残ったエピソードしか書かないから、
    そんな風に思えるのでしょう。


    > 深夜特急の旅の終わりに、パリの空港で藤さんに出会うエピソードはけっこう好きなので、なんだか複雑な気分ですね〜。

    それ、沢木さんのエッセイで私も読んでいます。
    後年、何かのインタビューか取材で沢木さんが藤圭子さんと
    逢った際、昔、パリの空港でこんなエピソードを記憶していません?と
    問うと、藤圭子さんが {ええっ!! あの時の!?}といった
    感じで思い出すという、、話ですね。

    沢木さんは藤圭子を取材したにもかかわらず、
    何故か、作品として発表していませんね、



    > あと、kioさんをフォローに追加させて頂きました!
    > これからも素敵なお話、楽しみにしています〜。

    フォローありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします。

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