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【前泊、広島へ】<br />11月16日(金)、1ヶ月もたたないのに、またオランダ、アムステルダム・スキポール空港にいます。まさか30年ぶりに訪れたアムステルダム空港に1ヶ月以内に再び立ち寄るとは夢にも思いませんでした。今回はいつものプライベートの旅行でもなく、仕事でもありません。ボランティアとして頼まれたのです。報酬はありませんが、飛行機代とホテル代は出ます。と言っても、2泊4日の旅ですが・・・<br /><br />普段から、公益財団法人AFS日本協会の博多支部長として、主に福岡にやって来る高校留学生の世話をしています。ボランティアです。私自身、40年前にAFS奨学生としてアメリカへ1年間高校留学しています。今回はスイスから1年間の予定で広島に留学している女子高生が、右ひざの靭帯を痛め手術・リハビリのため早期帰国になり、車イスでしか移動できないので、シャペロン(付き添い)が必要ということで、私に依頼がありました。幸か不幸か、付き添いは医療者でなくてもいいという保険会社の判断ですから、医師の私には報酬は出ず、ボランティアです。でも、実際は医療搬送(medical repatriation)に近いので、私にとっては貴重な体験となります。<br /><br />もう少し詳しく書くと、留学生は3月に来日し、来年2月まで滞在の予定でした。ところが数週間前、体育の授業で平均台から着地した時に、右膝を痛め、地元の整形外科医の診断で右前十字靭帯完全断裂と判明しました。すぐに急がない手術とはいえ、来年2月まで待つには長過ぎ、手術や術後リハビリを考慮すると母国へ帰って治療した方がいいと判断されたようです。<br /><br />せっかく医師の私が同行するのですから、事前に主治医に電話します。1週間ギプス固定後、松葉杖 (crutches) で少しは歩ける状態のようです。少しだけなら右足に荷重をかけてもいい程度のようです。移動中の注意事項を尋ねると、万が一痛んだ時は、通常の鎮痛剤(もちろん医療用)で十分ということと、血栓を起こしやすいので「エコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症)」には気を付ける程度でした。こういう時、「空飛ぶドクター」である私の「カバン」には色々な病院処方薬が準備されていますが、もちろん鎮痛剤も2種類ほど入っています。医師の私がわざわざ同行することに主治医はビックリしていました。AFSの面目躍如です。<br /><br />前日夕方、福岡在住の私は広島へ向かいました。翌朝のフライトに備えるためです。ボランティア団体のAFSとはいえ、保険からお金が出るので駅前のホテルを予約してもらっていました。でも、広島支部員から自分の家に泊まってくれとの申し出がありました。広島空港は駅から少し遠いと知っていたのと、翌朝のことを考えると、関係者のお宅に世話になった方がスムーズだろうとも思い、お言葉に甘えることにしました。しかも、そのお宅は東広島市で空港には近いということです。典型的な農家のお宅でしたが、大分の田舎で生まれ育った私にはむしろ懐かしい家のつくりでした。後で知ったのですが、留学生のお母さんは日本人で東京出身です。ですから、日本の都会は知っているので、ちょうど日本の田舎に留学したのは貴重な体験になったでしょう。夕食は当然の如く広島名物、お好み焼きを御馳走になりました。<br /><br /><br />【車イスでの移動】<br />当日、朝食を済ませて支部員の車で広島空港へ向かいます。ところが、いきなりハプニングです。携帯電話での連絡によると、予定していた成田便が落雷事故にて欠航だと言うのです。もともと保険会社の手配が不十分で、移動が大変なのに、羽田空港経由で成田まで移動になっていたのを土壇場で変更させたのでした。<br /><br />ともかく、広島空港へ行くしかありません。車イスに乗っているスイス人留学生と初対面です。回りには、ホストファミリーはじめAFS留学関係者が何人も見送りに来ています。けがのため予定より短くなったとはいえ、半年間以上の留学です。前日知ったようにハーフらしい顔ですが、体格がやたらいいのには困りました。170cm、70kgだそうです。瞬間的に頭をよぎったのは、彼女が小柄なら、いざとなったら私が持ち上げたりして手伝おうと思っていたのが、無理だということです。<br /><br />早目に出発していたからいいのですが、07:55発予定の成田便から少し早い<br />07:35発の羽田便へ変更になりました。みんなとお別れして、いよいよ私と彼女での出発です。車イスは全日空が準備した空港用のものです。もちろん、優先搭乗で、他の客より先に乗り込みます。そのまま、駐機場の飛行機へ行き、搭乗橋入り口で機内専用の幅の狭い車イスに乗り換えると私は思っていました。2年前に、末期がん患者さんをエスコートしてのメンフィスへの旅行の経験があるからです。ところが、今回の車イスは何と外側のタイヤだけを外せる(二重タイヤ)ので乗り換える必要がないのです。そうすることにより、機内の狭い通路を通過できる幅になるのでした。但し、飛行機を手配した保険会社の勝手な判断でプレミアムクラスを確保してくれていないので、機種変更になり、前方の座席が確保できず、よりによってかなり後方の座席でした。車イス対応のお客さんは、移動距離を短くスムーズにするため、前方の座席が常識なのですが・・・<br /><br />最初の予定では、病院の松葉杖を広島空港で返却することになっていました。それを聞いた私が松葉杖を買い取って、持参するよう指示しました。全行程をイメージすればわかりますが、機内へは車イスで移動できても、国際線の機内ではトイレに行く必要もあり、またスイスに着いてもすぐに病院へ直行するわけではないので、松葉杖が必要だからです。ともかく、こんなに長い松葉杖は初めて見ました。彼女の身長が高いからです。<br /><br />機内では、羽田空港から成田空港へどうして移動しようかと考えていました。乗換えのない空港間のリムジンバスが一番よさそうですが、普通の狭い階段を4段くらい登らないといけません。どう考えても、JRや私鉄で乗り継ぐのは大変です。最悪、タクシーで行くしかないかと覚悟を決めていました。いくらかかるか想像もつきませんが、こういう時のために現金も珍しく余裕を持って準備しています。<br /><br />いろいろ考えているうちに羽田空港に到着しました。降りる時は、車イスは最後で他の乗客が全て降りてからになります。今度は機内専用車イス(aisle wheelchair)で機外に出て、そこでより大きな空港内車イスに乗り換えます。応援のために、AFS職員が羽田空港で待っていてくれています。しかし、移動の心配は杞憂で、さすが全日空、すでに成田空港まで移動のためにタクシーを手配してくれていました。おかげで、AFS職員の手助けも必要なく、私が個人的に新聞だけ買ってきてもらいました。時間に余裕があったからいいのですが、事故でもあったのか大渋滞で、羽田空港からしばらくタクシーはほとんど動きませんでした。成田空港では全日空の職員が待っていて、タクシーの支払いもしてくれました。余裕を持って眺めていると、さすがに 25,500 円もするようでした。<br /><br />もちろん、車イスも準備されています。ここでも、別のAFS職員が手伝いに来てくれています。行先はスイスのバーゼルでもちろん直行便はありません。まずKLMオランダ航空でアムステルダムまで、そして乗り継ぎ、エールフランス航空でバーゼルです。同じ skyteam グループで、同じ会社扱いです。保険会社の手配はかなりいい加減で、ビジネスクラスは当然でいいのですが、2階建てジャンボ機・ボーイング747の2階席を予約していたらしいのです。幸い、手伝いに来てくれたAFS職員がしっかりしていたので、そのことにすぐに気付き、1階席のビジネスクラス席に変更してくれていました。ですから、カウンターの手続きもスムーズです。20kgちょうどの留学生のカバンをバーゼルまでチェックインします。さすがスイス人、制限重量(先ほどの国内線)ぎりぎりです。国際線はビジネスクラスなので、たぶんもう少し重量に余裕があるはずですが。トンボ返りの私は預ける大きな荷物もありません。だいたい、いつも身軽ですが。<br /><br />14時40分のフライトですから、たっぷり時間があり、ビジネスクラスの特権でゆっくりエールフランスのラウンジを使えます。飲み物、軽食、スナック菓子があり、フランスらしくシャレた椅子でゆったり過ごします。もちろん、私が留学生の飲み物やスナックは取って来てあげます。留学生とは、当然の如く日本語で話します。かなり上手です。もともと、母親から日本語を習っていて、スイスでも勉強していたらしいので、ほぼ完璧です。広島に来た当初は広島弁がわからなかっただけのようです。<br /><br />いくら車イス対応とはいえ、出発の1時間も前にKLM空港職員が迎えにやって来ます。どうも、国際線で二階建てのジャンボ機なのに、駐機場でも建物に横付けできず、普通の乗客はバスで移動してタラップ(階段)を歩いて上がる滑走路の端に待機しているタイプのようです。どうするのかと興味津々でみていると、特殊なトラック様の車が用意されます。後部がリフトになっていて、車イスと私も一緒にリフトで車内に乗り込みます。特殊車でジャンボ機まで着きますが、どう見ても乗降口はこの車よりはるか高い所にあります。同じく、どうするのか好奇心たっぷりで待っていると、何と今度は運転席近くの前部がエレベーターのようにどんどん高く上がって行きます。乗降口の高さに合わせたところで、隙間を埋めるための板をカバーして、後は車イスを押して機内に乗り込みます。なるほど! 感心しました。何とかなるものです。席は入り口近くの最前部のビジネスクラスです。機内の移動は松葉杖ですから、もちろん機内に持ち込んでいます。<br /><br />乗ってしまえば、病人と一緒とはいえ楽なものです。約10時間のフライトですが、留学生は一度しかトイレに行きません。もちろん、松葉杖で移動ですから自分で歩けますが、私がトイレの外で松葉杖を持って待っていました。主治医から聞いていたように、エコノミークラス症候群には気を付けないと、つまり血栓症を起こしやすいので、むしろトイレに頻回に行ったり、動くように言おうかとも思いました。でも、途中で自主的に足の体操を始めたので、様子をみるだけですませました。<br /><br />実は、7月にアメリカへ行った時の日航機でのビジネスクラスでの食事が最高だったので、期待していました。しかも、その時はマイレージを使った(つまり無料)プレミアムエコノミー席だったのが、勝手にアップグレードしてもらえてのビジネスクラスでした。非常にラッキーでした。<br /><br />ところが、期待は見事に裏切られました。最初にCA(客室乗務員)がメニューを聞きに来た時に、どうも日本食を選んで欲しそうでした。たぶん、日本人客が少なかったので、和食が余り、洋食が足りなくなりそうだったのでしょう。でも、チキンなら洋食はあると確かに言ったはずでした。でも、一皿目に前菜風のが来ました。でも、何故か漬物がついています。二皿目、確かにチキン料理が来ました。あまりおいしくもありません。でも、何故か味噌汁がついています。でも、待てども待てども御飯は出てきません。パンだけ何回も持って来ます。最悪です。どうも悪気はなさそうですが、オランダ人のCAで和食の基本もわかってないのでしょう。オランダも料理に関してはレベルの低い国ですから仕方がありません。<br /><br />でも、もう一人のCAは留学生のところにやって来て、親身になって話を聞き、自分も十字靭帯を切ったことがあるけど、今はどうもなくほとんど機能が回復したと慰めてくれていました。珍しく予定より10分早く出発したせいもあるのか、予定より30分も早く18時10分にはアムステルダム・スキポール空港へ着きました。私にとっては10月21日以来で、まだ一ヶ月もたっていません。<br /><br />もちろん、他の客が降りてからの最後ですが、松葉杖で出口まで行き、待機している車イスに留学生を乗せます。予想通り、外国の車イスですからかなり大きいサイズです。でも感心したのは、患側(右側)のやや伸ばしたままの脚をサポートする器具がついていることです。今までの車イスは、曲げて足置きで安定していた反対側、健側(左側)の脚と違い、患側はやや伸びたままで、宙に浮いてやや不安定で、万が一引っかけたら大事になると心配していましたが、これなら安定するし安心です。最初の待合室で待つように言われ、CAなどはバイバイと先に行ってしまい、我々二人だけでぽつんと待たされました。ほんの10〜15分でしょうが、こういう時は不安なものです。万が一、誰も来なかったら、誰に言えばいいのだとか考えていました。<br /><br />ようやく、空港職員が来てくれました。電気自動車でやって来ます。我々二人は後部座席に後ろ向きに座らされます。車イスは目の前に固定されています。広い空港内を移動します。かなりスピードも出ます。途中でずっと待たされました。一人の老人を助手席に乗せ、先にどこかで降ろします。広い空港内、任せるしかありません。いつの間にか、クルー(CAやパイロットなどの乗務員)専用の手荷物検査ですが、クルー専用のせいかスムーズです。アメリカでは車イスの患者さんでも厳重で大変でしたが・・・ そして、車イスのまま入国審査場です。先月のローマと違って、ちゃんとスタンプを押してくれます。これで入国の証拠が残るので一安心です。1ヶ月前は、ローマ、つまりEUへの入国刻印がないので、帰りの乗り換え地・アムステルダムで少し出国手続きに手間取りました。<br /><br />いよいよ3機目、最後のフライト(アムステルダム〜バーゼル)です。今度は普通車(バン)で建物に連結していない駐機場にある中型機の所へ移動します。KLM skyhopper と書いています。いかにも、中距離路線用です。もちろん、普通車ですから、車イスではなく松葉杖です。目の前には、タラップ(階段)です。一体どうするのでしょう? 留学生に、一応無理なら他の方法があるとは言っていましたが、自分でタラップを上がれるかと空港職員が聞きます。彼女はできると答えます。半信半疑で見ていると、何と両手の長い彼女は両手が余裕を持って手すりに届くので、それをうまく利用して右足にはあまり体重をかけずに上手にタラップを上って行きます。私は松葉杖を持ってついて上がるだけです。楽勝です。<br /><br />このフライトは20時50分発で短いものですが、ビジネスクラスを手配してくれていたので、2列目の席ですし、少しだけ広い。しかも、残念賞だったKLM国際線の食事と違い、サラダだけでしたがよっぽどおいしかったです。ヨーロッパ線は短時間でも国際線では食事が出るのかと思いましたが、よくよく後部座席を見ると、我々ビジネスクラスだけの特権でした。22時10分には目的地、バーゼル空港へ着きました。正式名は Basel-Mulhouse-Freiburg 国際空港で、バーゼル(スイス)、ミュルーズ(フランス)、フライブルグ(ドイツ)と三か国の国境にあるいかにもヨーロッパらしい空港です。<br /><br />ここは小さい空港ですが、ちゃんと建物に連結した駐機場に着きます。従って、空港の車イスを待っていればいいのです。もちろん、出口には彼女の両親が出迎えています。彼女のサイズから想像していた両親とは全然違い、お母さんも普通のサイズの日本人女性、お父さんもスイス人にしてはそんなに背も高くないし、太ってもいません。軽くあいさつして、松葉杖と留学生を引き渡して私のミッションは終わりです。お母さんからお礼にとスイス・チョコレートをいただきました。これから50分ほどかけて車で自宅まで帰るそうです。<br /><br />その横に控えめに立っていたのが、AFSバーゼル支部長、19歳のヨナス・シュルンフ君です。1年前にコスタリカへの留学から帰って来たリターニー(留学経験者)でした。ボランティア団体AFSのいいところで、明日は彼が市内案内をしてくれることになっています。一日だけですが少しは現金がいるので、いつものように空港のATMで100スイスフラン(1フラン=85円)だけクレジットカードでキャッシングします。バスでバーゼル・スイス駅まで行きますが、たった4.2フランなのに、しかも現金を下ろしたばかりなのに、自動販売機でクレジットカードで払いました。予約してもらっているホテル・オイラーは駅の目の前でした。ヨナス君はホテルまで一緒に来てくれました。<br /><br /><br />【一日観光】<br />今日は土曜日。せめて今日一日は観光して日本へ帰ります。ほとんど忘れていましたが、実は大学院の時、30年も前に一度ここバーゼルへは立ち寄ったことがあります。夏休みヨーロッパ旅行の途中に、ホフマン・ラ・ロシュ社の研究所で同じ免疫の研究者に会ったことがあります。研究所の食堂で結構立派な昼食(生ハムとメロンなど)を御馳走になったことだけ覚えています。街の様子はほとんど記憶に残っていません。<br /><br />宿泊プランに朝食はついていません。どうも28フランもするようです。所詮コンチネンタルブレックファスト、冷たい料理が基本です。種々のパン、穴の開いたスイスチーズ、野菜は少しだけ、トマトときゅうり。かろうじて暖かい料理として卵料理とベーコンがあります。ヴィタミンジュース、コーヒーなどの飲み物です。さすがにスイスは物価が高いです。<br /><br />約束の10時半にフロントに降りると、入り口にヨナスが女性といます。でも、期待していた若い女性ではありません。実は、AFSで日本へ留学体験のあるお母さんでした。日本人などのホストファミリーの経験もあるそうです。私に挨拶したいと仕事へ行く途中に立ち寄ってくれたそうです。<br /><br />ここバーゼルもスイスらしく歩いて楽しめる街並みのようです。まずは二人でエリザベート教会を外から見て、市立美術館の入り口にある銅像を見ます。昔一人であちこちヨーロッパを回った頃は、ゆっくり美術館の中で鑑賞して過ごしたものですが、最近はあまり入っていません。ミュンスター広場を通り、ミュンスター(大聖堂)は外から眺めただけで、ライン川に降ります。渡し船があり、両端のロープの力だけで250M足らずの対岸へ渡れます。エコです。橋も近くにヴェットシュタイン橋とミットレレ橋があるのですが、この船も観光用にはのんびりして中々いいものです。<br /><br />ライン川沿いにそぞろ歩きし、橋を渡って市庁舎前のマルクト広場へ出ます。ここで二人の若い女性が加わります。一人は小柄な金髪のお嬢さんで、AFS留学でアメリカ・テキサス州から夏に帰って来たばかりのセリーヌとその友人のモアナです。セリーヌは金髪だし、アメリカでもよくスイス人でなく、スウェーデン人と間違われたそうです。モアナは英語が苦手なのか、あまり直接私には話しかけませんが、セリーヌは私自身がアメリカからのリターニーと知ったせいで懐かしいのか、どんどん話しかけてきます。当然、流暢なアメリカ英語で聞き取りやすいです。支部長のヨナス以上にたくさん話をしました。<br /><br />郷土料理のレストランへ案内してくれました。ドイツ語圏らしく、ほとんどがポテト料理のようです。Roesti(レシュティ)という短冊切りのジャガイモを油で軽く揚げたもの(焦げ目あり)が基本料理のようでした。私はソーセージ付きのを頼み、ヨナスはハム入り、モアナはチーズ入りを頼みました。期待していませんでしたが、やはりそれなりの味の料理でした。まずくはないけど、そうおいしいというほどのものではありません。むしろ、セリーヌが頼んだあっさりした野菜サラダはおいしそうでした。バーゼルはフランスとドイツの国境も近いですが、言葉通りドイツ圏です。料理もそんなに期待はしていません。もちろん、支払いはお礼を込めて4人分私が払いました。<br /><br />食後、朝方通り過ぎたミュンスター(大聖堂)へ行き、ゆっくりと塔の上へ上りました。いつものことで、かなり狭い階段を登って行きます。高い所は好きです。たいていの場合、景色がいいからです。ここも期待通り、ライン川を中心に両岸に建物が整然と並び、紅葉というより黄葉がきれいです。<br /><br />4人でひたすら歩きます。メッセ(大展示場)があります。近隣に以前はスイスで一番高かったというガラス張りのビルもあります。帰りは少しだけトラム(チンチン電車)に乗ります。料金はたぶんしれていますが、無料です。教えてくれたのですが、多くのスイスの町ではホテル宿泊客は市内の主なバス、トラムは無料らしいのです。橋の所で降りてまた歩きましたが、ライン川ではボートレースをやっています。ホテル近くのバーゼル駅まで送ってくれて4時半頃にはみんなと別れました。空港と違い、鉄道駅は別にフランス国営鉄道駅とドイツ国営鉄道駅が近くにあり、合計3つのバーゼル駅があるのでした。私のホテルはスイス国営鉄道駅のすぐ前です。<br /><br />まだ早いので、一人でまず駅構内をブラブラします。そしてトラムに乗りまた橋を渡ります。結局小さい街なので、さっき案内してもらった同じところへ出ます。そのうち暗くなり、先ほどのみんなの会話ででてきた名前の面白い「ママ」というレストランを見つけたので入りました。中は薄暗く、黒人ばっかりがいます。だんだんわかってきましたが、ブラジル人の店のようです。シュラスコ(焼き肉)、ユッカ、白ごはん、スープと結構おいしかったです。<br /><br /><br />【ロンドン経由で帰国】<br />翌日・日曜日、早くも帰国です。<br /><br />今回は自分でフライトを選んでいないので、自分ではまず選ばない乗り継ぎになっています。帰りは一人で福岡まで帰ります。当然のように、エコノミークラスです。それはともかく、英国航空でロンドン経由、中国東方航空の上海経由福岡です。イギリスは食事がひどいので、あまり好きではありません。中国の航空会社もやはりサービス業にはむいてないと思うので、最近は安くてもなるべく避けるようにしています。<br /><br />午前11時頃の便なので、朝はゆっくりしてバスでバーゼルの空港へ行き、45分遅れで出発しました。それでも、ロンドン・ヒースロー空港に着いて夜の便乗換えまで8時間近くあります。いくらなんでも、空港で待つのには長過ぎます。そこで、少しは市内観光をする予定です。30年ほど前に、ロンドンを中心にドーバーまで行き、フランスへ渡ったことがあります。<br /><br />半日滞在とはいえ、現金がいるので80ポンドをATMでキャッシングします。急行列車でパディントンの駅まで往復とはいえ、34ポンド(1ポンド=138円)もします。しかも、アムステルダム駅とは違い、近くに観光地がある訳でなく、また地下鉄で乗り換えないと目的地に行けません。ロンドンブリッジ駅まで 4.2 ポンドもします。以前乗った時は、英語で tube と言うだけあって灰色の円形チューブのような味気ない地下鉄電車でしたが、だいぶきれいになっていました。<br /><br />時間があるようでも、タワーブリッジまで歩いて行くと、結構時間がかかり、予想通り4時過ぎなのにもう薄暗くなり始めています。途中で、イタリアレストランの料理人と思われるイタリア人がビルの間で休憩していました。少しはロンドンもちゃんとしたレストランが増えているのかもしれません。写真を何枚か撮って、次の目的地、バッキンガム宮殿にでも行こうと思いますが、明るいうちに着きたいので、タクシーにします。でも、どこでタクシーを拾っていいのかわかりません。結局、無事に乗るまでに時間がかかり、バッキンガム宮殿に着く頃には恐れていた通り薄暗くなっていて、いずれにせよ近衛兵の交代などは終わっていました。外から写真だけ数枚撮って、タクシーが通過したので思い出したテムズ川沿いの国会議事堂とビッグベン(時計台)の写真を撮ろうと、タクシーでそのまま引き返してもらいそこで降ろしてもらいました。川をはさんで反対側にLEDの青色で目立つ大観覧車があります。たぶん、最近できたものと思われます。<br /><br />写真を撮った後、ちょうど近くに地下鉄の入り口を見つけました。以前から、万が一ロンドンに行く時は、チャイナタウンに食べに行くと決めていました。無難だからです。以前、知人でミュージカルが好きでよくロンドンに行くと言う人がいたので、「でも食べ物がまずいでしょう?」と聞くと、「いえ、ロンドンはおいしいですよ、チャイナタウンが」と答えます。駅員にチャイナタウンへの行き方を尋ねると、最寄りの地下鉄駅は名前が面白いので、よく知っているピカデリーサーカスです。でも、思ったより駅から探すのに苦労しました。聞いても知らない人が多いのです。そこで、ひらめいて東洋系の人に聞きました。勝手にサンフランシスコのような巨大なチャイナタウンを想像していましたが、都会のロンドンにある割には、一ブロックだけの意外と小規模でした。それでも、数十軒はレストランがあります。卵チャーハン、青梗菜炒め、魚の四川風炒めを食べ27ポンドでそれなりにおいしい中華料理でした。<br /><br />地下鉄でパディントンの駅へ戻るのに、また 4.2 ポンドも払います。合計3回も600円ずつくらい地下鉄代を払いました。後で聞くと、一日券を買えば、せめて8ポンド程度だそうです。いずれにせよ、物価が高いのか、地下鉄代は異常に高いし、毎年値上げしているそうです。<br /><br />パディントンの駅へ戻り、ヒースロー空港へ急ぎ、中国東方航空上海行きに乗ります。個人用のAV機器は以前の記憶よりは改善していました。でも、CA(客室乗務員)は相変わらず無愛想です。背だけみんなやたら高いです。食事も大したことありません。乗り継ぎの上海は相変わらずスモッグがひどく常に曇っています。そのせいか、まだ午後4時頃なのに薄暗いです。乗換えの手続きも相変わらず面倒です。福岡行きへ乗り継ぎ帰国、4日間のボランティアの仕事を終えました。<br /><br /><br /><br /><br />こういう私が「空飛ぶドクターと行くイタリア、美食と美容(健康)の旅」を2013年6月7日(金)〜14日(6泊8日)で企画しています。以前にこの旅行記にも書いた南イタリア、イスキア島(ナポリ湾)のポセイドン庭園温泉などを旅するのんびりした美食の旅です。本場のナポリ・ピッツァやポモドロ(トマトソース)スパゲッティ、日本人には嬉しい魚介類料理も豊富です。Facebook と連動した共感トラベラーです。詳細はウエブサイトを参照して下さい。   <br />http://kyokantraveller.jp/<br /><br />但し、facebook をやっていない人は直接ご連絡下さい。<br />info@kanoya-travelmedica.com<br /><br /><br />  空飛ぶドクター(登録商標)、坂本泰樹<br /><br /><br />

シャペロンでスイスへ2泊4日

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2012/11/16 - 2012/11/19

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空飛ぶドクター

空飛ぶドクターさん

【前泊、広島へ】
11月16日(金)、1ヶ月もたたないのに、またオランダ、アムステルダム・スキポール空港にいます。まさか30年ぶりに訪れたアムステルダム空港に1ヶ月以内に再び立ち寄るとは夢にも思いませんでした。今回はいつものプライベートの旅行でもなく、仕事でもありません。ボランティアとして頼まれたのです。報酬はありませんが、飛行機代とホテル代は出ます。と言っても、2泊4日の旅ですが・・・

普段から、公益財団法人AFS日本協会の博多支部長として、主に福岡にやって来る高校留学生の世話をしています。ボランティアです。私自身、40年前にAFS奨学生としてアメリカへ1年間高校留学しています。今回はスイスから1年間の予定で広島に留学している女子高生が、右ひざの靭帯を痛め手術・リハビリのため早期帰国になり、車イスでしか移動できないので、シャペロン(付き添い)が必要ということで、私に依頼がありました。幸か不幸か、付き添いは医療者でなくてもいいという保険会社の判断ですから、医師の私には報酬は出ず、ボランティアです。でも、実際は医療搬送(medical repatriation)に近いので、私にとっては貴重な体験となります。

もう少し詳しく書くと、留学生は3月に来日し、来年2月まで滞在の予定でした。ところが数週間前、体育の授業で平均台から着地した時に、右膝を痛め、地元の整形外科医の診断で右前十字靭帯完全断裂と判明しました。すぐに急がない手術とはいえ、来年2月まで待つには長過ぎ、手術や術後リハビリを考慮すると母国へ帰って治療した方がいいと判断されたようです。

せっかく医師の私が同行するのですから、事前に主治医に電話します。1週間ギプス固定後、松葉杖 (crutches) で少しは歩ける状態のようです。少しだけなら右足に荷重をかけてもいい程度のようです。移動中の注意事項を尋ねると、万が一痛んだ時は、通常の鎮痛剤(もちろん医療用)で十分ということと、血栓を起こしやすいので「エコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症)」には気を付ける程度でした。こういう時、「空飛ぶドクター」である私の「カバン」には色々な病院処方薬が準備されていますが、もちろん鎮痛剤も2種類ほど入っています。医師の私がわざわざ同行することに主治医はビックリしていました。AFSの面目躍如です。

前日夕方、福岡在住の私は広島へ向かいました。翌朝のフライトに備えるためです。ボランティア団体のAFSとはいえ、保険からお金が出るので駅前のホテルを予約してもらっていました。でも、広島支部員から自分の家に泊まってくれとの申し出がありました。広島空港は駅から少し遠いと知っていたのと、翌朝のことを考えると、関係者のお宅に世話になった方がスムーズだろうとも思い、お言葉に甘えることにしました。しかも、そのお宅は東広島市で空港には近いということです。典型的な農家のお宅でしたが、大分の田舎で生まれ育った私にはむしろ懐かしい家のつくりでした。後で知ったのですが、留学生のお母さんは日本人で東京出身です。ですから、日本の都会は知っているので、ちょうど日本の田舎に留学したのは貴重な体験になったでしょう。夕食は当然の如く広島名物、お好み焼きを御馳走になりました。


【車イスでの移動】
当日、朝食を済ませて支部員の車で広島空港へ向かいます。ところが、いきなりハプニングです。携帯電話での連絡によると、予定していた成田便が落雷事故にて欠航だと言うのです。もともと保険会社の手配が不十分で、移動が大変なのに、羽田空港経由で成田まで移動になっていたのを土壇場で変更させたのでした。

ともかく、広島空港へ行くしかありません。車イスに乗っているスイス人留学生と初対面です。回りには、ホストファミリーはじめAFS留学関係者が何人も見送りに来ています。けがのため予定より短くなったとはいえ、半年間以上の留学です。前日知ったようにハーフらしい顔ですが、体格がやたらいいのには困りました。170cm、70kgだそうです。瞬間的に頭をよぎったのは、彼女が小柄なら、いざとなったら私が持ち上げたりして手伝おうと思っていたのが、無理だということです。

早目に出発していたからいいのですが、07:55発予定の成田便から少し早い
07:35発の羽田便へ変更になりました。みんなとお別れして、いよいよ私と彼女での出発です。車イスは全日空が準備した空港用のものです。もちろん、優先搭乗で、他の客より先に乗り込みます。そのまま、駐機場の飛行機へ行き、搭乗橋入り口で機内専用の幅の狭い車イスに乗り換えると私は思っていました。2年前に、末期がん患者さんをエスコートしてのメンフィスへの旅行の経験があるからです。ところが、今回の車イスは何と外側のタイヤだけを外せる(二重タイヤ)ので乗り換える必要がないのです。そうすることにより、機内の狭い通路を通過できる幅になるのでした。但し、飛行機を手配した保険会社の勝手な判断でプレミアムクラスを確保してくれていないので、機種変更になり、前方の座席が確保できず、よりによってかなり後方の座席でした。車イス対応のお客さんは、移動距離を短くスムーズにするため、前方の座席が常識なのですが・・・

最初の予定では、病院の松葉杖を広島空港で返却することになっていました。それを聞いた私が松葉杖を買い取って、持参するよう指示しました。全行程をイメージすればわかりますが、機内へは車イスで移動できても、国際線の機内ではトイレに行く必要もあり、またスイスに着いてもすぐに病院へ直行するわけではないので、松葉杖が必要だからです。ともかく、こんなに長い松葉杖は初めて見ました。彼女の身長が高いからです。

機内では、羽田空港から成田空港へどうして移動しようかと考えていました。乗換えのない空港間のリムジンバスが一番よさそうですが、普通の狭い階段を4段くらい登らないといけません。どう考えても、JRや私鉄で乗り継ぐのは大変です。最悪、タクシーで行くしかないかと覚悟を決めていました。いくらかかるか想像もつきませんが、こういう時のために現金も珍しく余裕を持って準備しています。

いろいろ考えているうちに羽田空港に到着しました。降りる時は、車イスは最後で他の乗客が全て降りてからになります。今度は機内専用車イス(aisle wheelchair)で機外に出て、そこでより大きな空港内車イスに乗り換えます。応援のために、AFS職員が羽田空港で待っていてくれています。しかし、移動の心配は杞憂で、さすが全日空、すでに成田空港まで移動のためにタクシーを手配してくれていました。おかげで、AFS職員の手助けも必要なく、私が個人的に新聞だけ買ってきてもらいました。時間に余裕があったからいいのですが、事故でもあったのか大渋滞で、羽田空港からしばらくタクシーはほとんど動きませんでした。成田空港では全日空の職員が待っていて、タクシーの支払いもしてくれました。余裕を持って眺めていると、さすがに 25,500 円もするようでした。

もちろん、車イスも準備されています。ここでも、別のAFS職員が手伝いに来てくれています。行先はスイスのバーゼルでもちろん直行便はありません。まずKLMオランダ航空でアムステルダムまで、そして乗り継ぎ、エールフランス航空でバーゼルです。同じ skyteam グループで、同じ会社扱いです。保険会社の手配はかなりいい加減で、ビジネスクラスは当然でいいのですが、2階建てジャンボ機・ボーイング747の2階席を予約していたらしいのです。幸い、手伝いに来てくれたAFS職員がしっかりしていたので、そのことにすぐに気付き、1階席のビジネスクラス席に変更してくれていました。ですから、カウンターの手続きもスムーズです。20kgちょうどの留学生のカバンをバーゼルまでチェックインします。さすがスイス人、制限重量(先ほどの国内線)ぎりぎりです。国際線はビジネスクラスなので、たぶんもう少し重量に余裕があるはずですが。トンボ返りの私は預ける大きな荷物もありません。だいたい、いつも身軽ですが。

14時40分のフライトですから、たっぷり時間があり、ビジネスクラスの特権でゆっくりエールフランスのラウンジを使えます。飲み物、軽食、スナック菓子があり、フランスらしくシャレた椅子でゆったり過ごします。もちろん、私が留学生の飲み物やスナックは取って来てあげます。留学生とは、当然の如く日本語で話します。かなり上手です。もともと、母親から日本語を習っていて、スイスでも勉強していたらしいので、ほぼ完璧です。広島に来た当初は広島弁がわからなかっただけのようです。

いくら車イス対応とはいえ、出発の1時間も前にKLM空港職員が迎えにやって来ます。どうも、国際線で二階建てのジャンボ機なのに、駐機場でも建物に横付けできず、普通の乗客はバスで移動してタラップ(階段)を歩いて上がる滑走路の端に待機しているタイプのようです。どうするのかと興味津々でみていると、特殊なトラック様の車が用意されます。後部がリフトになっていて、車イスと私も一緒にリフトで車内に乗り込みます。特殊車でジャンボ機まで着きますが、どう見ても乗降口はこの車よりはるか高い所にあります。同じく、どうするのか好奇心たっぷりで待っていると、何と今度は運転席近くの前部がエレベーターのようにどんどん高く上がって行きます。乗降口の高さに合わせたところで、隙間を埋めるための板をカバーして、後は車イスを押して機内に乗り込みます。なるほど! 感心しました。何とかなるものです。席は入り口近くの最前部のビジネスクラスです。機内の移動は松葉杖ですから、もちろん機内に持ち込んでいます。

乗ってしまえば、病人と一緒とはいえ楽なものです。約10時間のフライトですが、留学生は一度しかトイレに行きません。もちろん、松葉杖で移動ですから自分で歩けますが、私がトイレの外で松葉杖を持って待っていました。主治医から聞いていたように、エコノミークラス症候群には気を付けないと、つまり血栓症を起こしやすいので、むしろトイレに頻回に行ったり、動くように言おうかとも思いました。でも、途中で自主的に足の体操を始めたので、様子をみるだけですませました。

実は、7月にアメリカへ行った時の日航機でのビジネスクラスでの食事が最高だったので、期待していました。しかも、その時はマイレージを使った(つまり無料)プレミアムエコノミー席だったのが、勝手にアップグレードしてもらえてのビジネスクラスでした。非常にラッキーでした。

ところが、期待は見事に裏切られました。最初にCA(客室乗務員)がメニューを聞きに来た時に、どうも日本食を選んで欲しそうでした。たぶん、日本人客が少なかったので、和食が余り、洋食が足りなくなりそうだったのでしょう。でも、チキンなら洋食はあると確かに言ったはずでした。でも、一皿目に前菜風のが来ました。でも、何故か漬物がついています。二皿目、確かにチキン料理が来ました。あまりおいしくもありません。でも、何故か味噌汁がついています。でも、待てども待てども御飯は出てきません。パンだけ何回も持って来ます。最悪です。どうも悪気はなさそうですが、オランダ人のCAで和食の基本もわかってないのでしょう。オランダも料理に関してはレベルの低い国ですから仕方がありません。

でも、もう一人のCAは留学生のところにやって来て、親身になって話を聞き、自分も十字靭帯を切ったことがあるけど、今はどうもなくほとんど機能が回復したと慰めてくれていました。珍しく予定より10分早く出発したせいもあるのか、予定より30分も早く18時10分にはアムステルダム・スキポール空港へ着きました。私にとっては10月21日以来で、まだ一ヶ月もたっていません。

もちろん、他の客が降りてからの最後ですが、松葉杖で出口まで行き、待機している車イスに留学生を乗せます。予想通り、外国の車イスですからかなり大きいサイズです。でも感心したのは、患側(右側)のやや伸ばしたままの脚をサポートする器具がついていることです。今までの車イスは、曲げて足置きで安定していた反対側、健側(左側)の脚と違い、患側はやや伸びたままで、宙に浮いてやや不安定で、万が一引っかけたら大事になると心配していましたが、これなら安定するし安心です。最初の待合室で待つように言われ、CAなどはバイバイと先に行ってしまい、我々二人だけでぽつんと待たされました。ほんの10〜15分でしょうが、こういう時は不安なものです。万が一、誰も来なかったら、誰に言えばいいのだとか考えていました。

ようやく、空港職員が来てくれました。電気自動車でやって来ます。我々二人は後部座席に後ろ向きに座らされます。車イスは目の前に固定されています。広い空港内を移動します。かなりスピードも出ます。途中でずっと待たされました。一人の老人を助手席に乗せ、先にどこかで降ろします。広い空港内、任せるしかありません。いつの間にか、クルー(CAやパイロットなどの乗務員)専用の手荷物検査ですが、クルー専用のせいかスムーズです。アメリカでは車イスの患者さんでも厳重で大変でしたが・・・ そして、車イスのまま入国審査場です。先月のローマと違って、ちゃんとスタンプを押してくれます。これで入国の証拠が残るので一安心です。1ヶ月前は、ローマ、つまりEUへの入国刻印がないので、帰りの乗り換え地・アムステルダムで少し出国手続きに手間取りました。

いよいよ3機目、最後のフライト(アムステルダム〜バーゼル)です。今度は普通車(バン)で建物に連結していない駐機場にある中型機の所へ移動します。KLM skyhopper と書いています。いかにも、中距離路線用です。もちろん、普通車ですから、車イスではなく松葉杖です。目の前には、タラップ(階段)です。一体どうするのでしょう? 留学生に、一応無理なら他の方法があるとは言っていましたが、自分でタラップを上がれるかと空港職員が聞きます。彼女はできると答えます。半信半疑で見ていると、何と両手の長い彼女は両手が余裕を持って手すりに届くので、それをうまく利用して右足にはあまり体重をかけずに上手にタラップを上って行きます。私は松葉杖を持ってついて上がるだけです。楽勝です。

このフライトは20時50分発で短いものですが、ビジネスクラスを手配してくれていたので、2列目の席ですし、少しだけ広い。しかも、残念賞だったKLM国際線の食事と違い、サラダだけでしたがよっぽどおいしかったです。ヨーロッパ線は短時間でも国際線では食事が出るのかと思いましたが、よくよく後部座席を見ると、我々ビジネスクラスだけの特権でした。22時10分には目的地、バーゼル空港へ着きました。正式名は Basel-Mulhouse-Freiburg 国際空港で、バーゼル(スイス)、ミュルーズ(フランス)、フライブルグ(ドイツ)と三か国の国境にあるいかにもヨーロッパらしい空港です。

ここは小さい空港ですが、ちゃんと建物に連結した駐機場に着きます。従って、空港の車イスを待っていればいいのです。もちろん、出口には彼女の両親が出迎えています。彼女のサイズから想像していた両親とは全然違い、お母さんも普通のサイズの日本人女性、お父さんもスイス人にしてはそんなに背も高くないし、太ってもいません。軽くあいさつして、松葉杖と留学生を引き渡して私のミッションは終わりです。お母さんからお礼にとスイス・チョコレートをいただきました。これから50分ほどかけて車で自宅まで帰るそうです。

その横に控えめに立っていたのが、AFSバーゼル支部長、19歳のヨナス・シュルンフ君です。1年前にコスタリカへの留学から帰って来たリターニー(留学経験者)でした。ボランティア団体AFSのいいところで、明日は彼が市内案内をしてくれることになっています。一日だけですが少しは現金がいるので、いつものように空港のATMで100スイスフラン(1フラン=85円)だけクレジットカードでキャッシングします。バスでバーゼル・スイス駅まで行きますが、たった4.2フランなのに、しかも現金を下ろしたばかりなのに、自動販売機でクレジットカードで払いました。予約してもらっているホテル・オイラーは駅の目の前でした。ヨナス君はホテルまで一緒に来てくれました。


【一日観光】
今日は土曜日。せめて今日一日は観光して日本へ帰ります。ほとんど忘れていましたが、実は大学院の時、30年も前に一度ここバーゼルへは立ち寄ったことがあります。夏休みヨーロッパ旅行の途中に、ホフマン・ラ・ロシュ社の研究所で同じ免疫の研究者に会ったことがあります。研究所の食堂で結構立派な昼食(生ハムとメロンなど)を御馳走になったことだけ覚えています。街の様子はほとんど記憶に残っていません。

宿泊プランに朝食はついていません。どうも28フランもするようです。所詮コンチネンタルブレックファスト、冷たい料理が基本です。種々のパン、穴の開いたスイスチーズ、野菜は少しだけ、トマトときゅうり。かろうじて暖かい料理として卵料理とベーコンがあります。ヴィタミンジュース、コーヒーなどの飲み物です。さすがにスイスは物価が高いです。

約束の10時半にフロントに降りると、入り口にヨナスが女性といます。でも、期待していた若い女性ではありません。実は、AFSで日本へ留学体験のあるお母さんでした。日本人などのホストファミリーの経験もあるそうです。私に挨拶したいと仕事へ行く途中に立ち寄ってくれたそうです。

ここバーゼルもスイスらしく歩いて楽しめる街並みのようです。まずは二人でエリザベート教会を外から見て、市立美術館の入り口にある銅像を見ます。昔一人であちこちヨーロッパを回った頃は、ゆっくり美術館の中で鑑賞して過ごしたものですが、最近はあまり入っていません。ミュンスター広場を通り、ミュンスター(大聖堂)は外から眺めただけで、ライン川に降ります。渡し船があり、両端のロープの力だけで250M足らずの対岸へ渡れます。エコです。橋も近くにヴェットシュタイン橋とミットレレ橋があるのですが、この船も観光用にはのんびりして中々いいものです。

ライン川沿いにそぞろ歩きし、橋を渡って市庁舎前のマルクト広場へ出ます。ここで二人の若い女性が加わります。一人は小柄な金髪のお嬢さんで、AFS留学でアメリカ・テキサス州から夏に帰って来たばかりのセリーヌとその友人のモアナです。セリーヌは金髪だし、アメリカでもよくスイス人でなく、スウェーデン人と間違われたそうです。モアナは英語が苦手なのか、あまり直接私には話しかけませんが、セリーヌは私自身がアメリカからのリターニーと知ったせいで懐かしいのか、どんどん話しかけてきます。当然、流暢なアメリカ英語で聞き取りやすいです。支部長のヨナス以上にたくさん話をしました。

郷土料理のレストランへ案内してくれました。ドイツ語圏らしく、ほとんどがポテト料理のようです。Roesti(レシュティ)という短冊切りのジャガイモを油で軽く揚げたもの(焦げ目あり)が基本料理のようでした。私はソーセージ付きのを頼み、ヨナスはハム入り、モアナはチーズ入りを頼みました。期待していませんでしたが、やはりそれなりの味の料理でした。まずくはないけど、そうおいしいというほどのものではありません。むしろ、セリーヌが頼んだあっさりした野菜サラダはおいしそうでした。バーゼルはフランスとドイツの国境も近いですが、言葉通りドイツ圏です。料理もそんなに期待はしていません。もちろん、支払いはお礼を込めて4人分私が払いました。

食後、朝方通り過ぎたミュンスター(大聖堂)へ行き、ゆっくりと塔の上へ上りました。いつものことで、かなり狭い階段を登って行きます。高い所は好きです。たいていの場合、景色がいいからです。ここも期待通り、ライン川を中心に両岸に建物が整然と並び、紅葉というより黄葉がきれいです。

4人でひたすら歩きます。メッセ(大展示場)があります。近隣に以前はスイスで一番高かったというガラス張りのビルもあります。帰りは少しだけトラム(チンチン電車)に乗ります。料金はたぶんしれていますが、無料です。教えてくれたのですが、多くのスイスの町ではホテル宿泊客は市内の主なバス、トラムは無料らしいのです。橋の所で降りてまた歩きましたが、ライン川ではボートレースをやっています。ホテル近くのバーゼル駅まで送ってくれて4時半頃にはみんなと別れました。空港と違い、鉄道駅は別にフランス国営鉄道駅とドイツ国営鉄道駅が近くにあり、合計3つのバーゼル駅があるのでした。私のホテルはスイス国営鉄道駅のすぐ前です。

まだ早いので、一人でまず駅構内をブラブラします。そしてトラムに乗りまた橋を渡ります。結局小さい街なので、さっき案内してもらった同じところへ出ます。そのうち暗くなり、先ほどのみんなの会話ででてきた名前の面白い「ママ」というレストランを見つけたので入りました。中は薄暗く、黒人ばっかりがいます。だんだんわかってきましたが、ブラジル人の店のようです。シュラスコ(焼き肉)、ユッカ、白ごはん、スープと結構おいしかったです。


【ロンドン経由で帰国】
翌日・日曜日、早くも帰国です。

今回は自分でフライトを選んでいないので、自分ではまず選ばない乗り継ぎになっています。帰りは一人で福岡まで帰ります。当然のように、エコノミークラスです。それはともかく、英国航空でロンドン経由、中国東方航空の上海経由福岡です。イギリスは食事がひどいので、あまり好きではありません。中国の航空会社もやはりサービス業にはむいてないと思うので、最近は安くてもなるべく避けるようにしています。

午前11時頃の便なので、朝はゆっくりしてバスでバーゼルの空港へ行き、45分遅れで出発しました。それでも、ロンドン・ヒースロー空港に着いて夜の便乗換えまで8時間近くあります。いくらなんでも、空港で待つのには長過ぎます。そこで、少しは市内観光をする予定です。30年ほど前に、ロンドンを中心にドーバーまで行き、フランスへ渡ったことがあります。

半日滞在とはいえ、現金がいるので80ポンドをATMでキャッシングします。急行列車でパディントンの駅まで往復とはいえ、34ポンド(1ポンド=138円)もします。しかも、アムステルダム駅とは違い、近くに観光地がある訳でなく、また地下鉄で乗り換えないと目的地に行けません。ロンドンブリッジ駅まで 4.2 ポンドもします。以前乗った時は、英語で tube と言うだけあって灰色の円形チューブのような味気ない地下鉄電車でしたが、だいぶきれいになっていました。

時間があるようでも、タワーブリッジまで歩いて行くと、結構時間がかかり、予想通り4時過ぎなのにもう薄暗くなり始めています。途中で、イタリアレストランの料理人と思われるイタリア人がビルの間で休憩していました。少しはロンドンもちゃんとしたレストランが増えているのかもしれません。写真を何枚か撮って、次の目的地、バッキンガム宮殿にでも行こうと思いますが、明るいうちに着きたいので、タクシーにします。でも、どこでタクシーを拾っていいのかわかりません。結局、無事に乗るまでに時間がかかり、バッキンガム宮殿に着く頃には恐れていた通り薄暗くなっていて、いずれにせよ近衛兵の交代などは終わっていました。外から写真だけ数枚撮って、タクシーが通過したので思い出したテムズ川沿いの国会議事堂とビッグベン(時計台)の写真を撮ろうと、タクシーでそのまま引き返してもらいそこで降ろしてもらいました。川をはさんで反対側にLEDの青色で目立つ大観覧車があります。たぶん、最近できたものと思われます。

写真を撮った後、ちょうど近くに地下鉄の入り口を見つけました。以前から、万が一ロンドンに行く時は、チャイナタウンに食べに行くと決めていました。無難だからです。以前、知人でミュージカルが好きでよくロンドンに行くと言う人がいたので、「でも食べ物がまずいでしょう?」と聞くと、「いえ、ロンドンはおいしいですよ、チャイナタウンが」と答えます。駅員にチャイナタウンへの行き方を尋ねると、最寄りの地下鉄駅は名前が面白いので、よく知っているピカデリーサーカスです。でも、思ったより駅から探すのに苦労しました。聞いても知らない人が多いのです。そこで、ひらめいて東洋系の人に聞きました。勝手にサンフランシスコのような巨大なチャイナタウンを想像していましたが、都会のロンドンにある割には、一ブロックだけの意外と小規模でした。それでも、数十軒はレストランがあります。卵チャーハン、青梗菜炒め、魚の四川風炒めを食べ27ポンドでそれなりにおいしい中華料理でした。

地下鉄でパディントンの駅へ戻るのに、また 4.2 ポンドも払います。合計3回も600円ずつくらい地下鉄代を払いました。後で聞くと、一日券を買えば、せめて8ポンド程度だそうです。いずれにせよ、物価が高いのか、地下鉄代は異常に高いし、毎年値上げしているそうです。

パディントンの駅へ戻り、ヒースロー空港へ急ぎ、中国東方航空上海行きに乗ります。個人用のAV機器は以前の記憶よりは改善していました。でも、CA(客室乗務員)は相変わらず無愛想です。背だけみんなやたら高いです。食事も大したことありません。乗り継ぎの上海は相変わらずスモッグがひどく常に曇っています。そのせいか、まだ午後4時頃なのに薄暗いです。乗換えの手続きも相変わらず面倒です。福岡行きへ乗り継ぎ帰国、4日間のボランティアの仕事を終えました。




こういう私が「空飛ぶドクターと行くイタリア、美食と美容(健康)の旅」を2013年6月7日(金)〜14日(6泊8日)で企画しています。以前にこの旅行記にも書いた南イタリア、イスキア島(ナポリ湾)のポセイドン庭園温泉などを旅するのんびりした美食の旅です。本場のナポリ・ピッツァやポモドロ(トマトソース)スパゲッティ、日本人には嬉しい魚介類料理も豊富です。Facebook と連動した共感トラベラーです。詳細はウエブサイトを参照して下さい。   
http://kyokantraveller.jp/

但し、facebook をやっていない人は直接ご連絡下さい。
info@kanoya-travelmedica.com


  空飛ぶドクター(登録商標)、坂本泰樹


旅行の満足度
4.5
同行者
その他
交通手段
徒歩
航空会社
KLMオランダ航空

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  • 車イスで出発

    車イスで出発

  • 特殊車の中

    特殊車の中

  • KLMジャンボ機へ

    KLMジャンボ機へ

  • ビジネスクラスの機内はゆったり

    ビジネスクラスの機内はゆったり

  • 不思議な機内食

    不思議な機内食

  • KLMジャンボ機

    KLMジャンボ機

  • バーゼル空港へ到着

    バーゼル空港へ到着

  • エリザベート教会

    エリザベート教会

  • 市立美術館入り口の銅像

    市立美術館入り口の銅像

  • ライン川沿岸

    ライン川沿岸

  • コンドーム専門店(黄色の看板)

    コンドーム専門店(黄色の看板)

  • ライン川沿い

    ライン川沿い

  • レシュティ(ソーセージ付き)

    レシュティ(ソーセージ付き)

  • 市庁舎前のマルクト広場<br />スイス人3人

    イチオシ

    市庁舎前のマルクト広場
    スイス人3人

  • ミュンスター(大聖堂)からの風景

    イチオシ

    ミュンスター(大聖堂)からの風景

  • ミュンスター(大聖堂)からの風景

    ミュンスター(大聖堂)からの風景

  • ミュンスター(大聖堂)

    ミュンスター(大聖堂)

  • バーゼル(スイス)駅の前で

    バーゼル(スイス)駅の前で

  • 夜の市庁舎

    夜の市庁舎

  • ブラジル料理

    ブラジル料理

  • スイスのスーパー

    スイスのスーパー

  • イギリス<br />タワーブリッジ

    イギリス
    タワーブリッジ

  • 夕方のバッキンガム宮殿

    夕方のバッキンガム宮殿

  • 国会議事堂とビッグベン(時計台)<br />テムズ川

    イチオシ

    国会議事堂とビッグベン(時計台)
    テムズ川

  • ビッグベン<br />地下鉄サイン

    ビッグベン
    地下鉄サイン

  • テムズ川<br />ビッグベン対岸の大観覧車

    テムズ川
    ビッグベン対岸の大観覧車

  • tube と呼ばれるイギリスの地下鉄車両

    tube と呼ばれるイギリスの地下鉄車両

  • ロンドンのチャイナタウン

    ロンドンのチャイナタウン

  • 電車車内

    電車車内

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