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4週間のロシア、ポーランド滞在を終えて帰国の途に着いた。日本は35℃を越える酷暑と聞いているので、少々気が重い。何しろロシアでは15~25℃という快適な気候だった。<br /><br />フライトは早朝のフランクフルト行きのルフトハンザ、時差のおかげで7時過ぎには到着する。日本行きとの接続時間は7時間ある。疲労の極にあっても自称「好奇心の塊」としては一つでもドイツの世界遺産を訪れておかないと気がすまない。そこでかねてから調べておいたバート・ホンブルクのローマ遺跡リーメスを訪ねることにした。フライトに乗り遅れないよう時計とにらめっこのスリルの旅だ。<br /><br />バート・ホンブルクはその名の示すとおり温泉保養都市だ。フランクフルト中央駅からSバーン#5で約20分、平日は約15分ごとに走っているが、休日は本数が大幅に減るので要注意である。空港から往復8ユーロで、近すぎてProbe-Bahncardの25%の割引対象にはならない。人口5万人の閑静な衛星、住宅都市。ローマ時代から知られるナトリウム泉は内臓・循環器疾患に効くという。また17世紀の宗教戦争の結果フランスから亡命した新教徒(ユグノー)たちがここに居住した。<br /><br />復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦は駅からバスで20分、とあるが、本数は少ないため駅前でタクシーを拾った。運転手はパキスタン生まれでドイツ在住30年、ドイツ語を話す日本人に興味津々で、日本の津波被害や原発事故、パキスタン情勢や日欧の経済やら有益な世間話ができた。メーターは14ユーロを示していたが、チップを含めて15ユーロ渡しておいた。なおザールブルク砦の博物館で約2時間過ごした後のバスも当分ないため、同じタクシー会社に電話したところ、同じパキスタン人の車が迎えに来てくれ、帰りは頼みもしないのにバート・ホンブルクの旧市街、教会などを案内してくれた。時計とにらめっこしながら、時間の許す限り好意に甘んじた。チップを含めて20ユーロ渡しておいた。<br /><br />リーメスとはヨーロッパ版万里の長城だ。ローマ帝国時代の紀元前2世紀頃から建設が始まり、目的としてはゲルマン民族の侵入からライン川・マイン川流域の肥沃な土地と通商路を守るためである。長城の総延長は約550kmで、東はドナウ川から西はライン川まで達する。石塁は、付近から産出する石を使用している。<br /><br />長城に沿って60以上の大きな砦跡が建設され、1つあたり約100から1000人の守備隊が配置され、長城の警備および長城を通過する人々を管理する関所の役割を果たしたらしい。ここザールブルク砦は、リーメスの中でも最も調査、復元作業が進んでいる。砦は紀元前90年頃に建設、長方形で面積は約0.7ha。発掘調査は19世紀後半から始まっており、1897年にドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が、このザールブルク砦の再建を命じ、第一次世界大戦前に完成した。現在ではこの時に復元された建物を博物館として使用している。<br /><br />博物館の中身にはさほど興味を引かれるものはないが、建物とともに展示物の整備も進められている。夏休み中ということもあり、子供同伴の家族には紙で作られたローマ兵の衣装が渡され、ローマ時代について教育的な活動が行われておりいかにもドイツらしい。<br /><br />前述のパキスタン人ドライバーの案内でバート・ホンブルクの市街にあるクアハウス、教会、カジノなどで撮影をして駅に戻った。珍しく時間的には余裕があったため、巨大なフランクフルト中央駅で幾つか列車の写真を撮った後、空港に向かった。空腹だったため、ラウンジで急いでフランクフルターヴュルストとザウアークラウトを食べようとして、服にこぼしてしまった。おかげで帰宅して着替えるまで約15時間、ザウアークラウトの甘酸っぱいにおいに悩まされることになった。

ドイツの世界遺産No.15:バート・ホンブルクのローマ遺跡リーメスとザールブルク砦(改訂版)

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2012/08/01 - 2012/08/02

295位(同エリア545件中)

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ハンク

ハンクさん

4週間のロシア、ポーランド滞在を終えて帰国の途に着いた。日本は35℃を越える酷暑と聞いているので、少々気が重い。何しろロシアでは15~25℃という快適な気候だった。

フライトは早朝のフランクフルト行きのルフトハンザ、時差のおかげで7時過ぎには到着する。日本行きとの接続時間は7時間ある。疲労の極にあっても自称「好奇心の塊」としては一つでもドイツの世界遺産を訪れておかないと気がすまない。そこでかねてから調べておいたバート・ホンブルクのローマ遺跡リーメスを訪ねることにした。フライトに乗り遅れないよう時計とにらめっこのスリルの旅だ。

バート・ホンブルクはその名の示すとおり温泉保養都市だ。フランクフルト中央駅からSバーン#5で約20分、平日は約15分ごとに走っているが、休日は本数が大幅に減るので要注意である。空港から往復8ユーロで、近すぎてProbe-Bahncardの25%の割引対象にはならない。人口5万人の閑静な衛星、住宅都市。ローマ時代から知られるナトリウム泉は内臓・循環器疾患に効くという。また17世紀の宗教戦争の結果フランスから亡命した新教徒(ユグノー)たちがここに居住した。

復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦は駅からバスで20分、とあるが、本数は少ないため駅前でタクシーを拾った。運転手はパキスタン生まれでドイツ在住30年、ドイツ語を話す日本人に興味津々で、日本の津波被害や原発事故、パキスタン情勢や日欧の経済やら有益な世間話ができた。メーターは14ユーロを示していたが、チップを含めて15ユーロ渡しておいた。なおザールブルク砦の博物館で約2時間過ごした後のバスも当分ないため、同じタクシー会社に電話したところ、同じパキスタン人の車が迎えに来てくれ、帰りは頼みもしないのにバート・ホンブルクの旧市街、教会などを案内してくれた。時計とにらめっこしながら、時間の許す限り好意に甘んじた。チップを含めて20ユーロ渡しておいた。

リーメスとはヨーロッパ版万里の長城だ。ローマ帝国時代の紀元前2世紀頃から建設が始まり、目的としてはゲルマン民族の侵入からライン川・マイン川流域の肥沃な土地と通商路を守るためである。長城の総延長は約550kmで、東はドナウ川から西はライン川まで達する。石塁は、付近から産出する石を使用している。

長城に沿って60以上の大きな砦跡が建設され、1つあたり約100から1000人の守備隊が配置され、長城の警備および長城を通過する人々を管理する関所の役割を果たしたらしい。ここザールブルク砦は、リーメスの中でも最も調査、復元作業が進んでいる。砦は紀元前90年頃に建設、長方形で面積は約0.7ha。発掘調査は19世紀後半から始まっており、1897年にドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が、このザールブルク砦の再建を命じ、第一次世界大戦前に完成した。現在ではこの時に復元された建物を博物館として使用している。

博物館の中身にはさほど興味を引かれるものはないが、建物とともに展示物の整備も進められている。夏休み中ということもあり、子供同伴の家族には紙で作られたローマ兵の衣装が渡され、ローマ時代について教育的な活動が行われておりいかにもドイツらしい。

前述のパキスタン人ドライバーの案内でバート・ホンブルクの市街にあるクアハウス、教会、カジノなどで撮影をして駅に戻った。珍しく時間的には余裕があったため、巨大なフランクフルト中央駅で幾つか列車の写真を撮った後、空港に向かった。空腹だったため、ラウンジで急いでフランクフルターヴュルストとザウアークラウトを食べようとして、服にこぼしてしまった。おかげで帰宅して着替えるまで約15時間、ザウアークラウトの甘酸っぱいにおいに悩まされることになった。

旅行の満足度
4.0
観光
4.5
グルメ
4.0
ショッピング
4.5
交通
3.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円 - 3万円
交通手段
鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配

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  • バート・ホンブルクまでフランクフルト中央駅からSバーン5番で約20分

    バート・ホンブルクまでフランクフルト中央駅からSバーン5番で約20分

  • 改修中のバート・ホンブルク中央駅

    改修中のバート・ホンブルク中央駅

  • 木立の中にあるザールブルク砦の入り口

    木立の中にあるザールブルク砦の入り口

  • 復元されたザールブルク砦博物館の入り口に立つローマ将軍アントニウスの像

    イチオシ

    復元されたザールブルク砦博物館の入り口に立つローマ将軍アントニウスの像

  • 復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦の入り口

    復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦の入り口

  • 復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦の入り口

    復元されたローマ帝国の辺境防塁リーメスとザールブルク砦の入り口

  • ザールブルク砦の内部の遺構

    ザールブルク砦の内部の遺構

  • ザールブルク砦の井戸の遺構

    ザールブルク砦の井戸の遺構

  • 建設整備中のザールブルク砦の博物館

    建設整備中のザールブルク砦の博物館

  • 復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

    復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

  • 復元されたローマ帝国のザールブルク砦の外壁

    復元されたローマ帝国のザールブルク砦の外壁

  • 復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

    復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

  • 復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物の中庭

    復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物の中庭

  • 1900年カイザー・ヴィルヘルム2世によって改修されたザールブルク砦の建物の礎石

    1900年カイザー・ヴィルヘルム2世によって改修されたザールブルク砦の建物の礎石

  • 2000年に新たに改修された建物の礎石

    2000年に新たに改修された建物の礎石

  • 復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

    復元されたローマ時代のザールブルク砦の建物

  • シュタープゲボイデ(中央建物)

    シュタープゲボイデ(中央建物)

  • 1日3回子供向けのローマ兵のデモがある

    1日3回子供向けのローマ兵のデモがある

  • 博物館の展示品、建屋のカットモデル

    博物館の展示品、建屋のカットモデル

  • 展示品を整備する学芸員たち

    展示品を整備する学芸員たち

  • 売店のアントニウス将軍の石膏像、850→550ユーロにディスカウント

    売店のアントニウス将軍の石膏像、850→550ユーロにディスカウント

  • 売店のアウグストゥスの石膏像、835ユーロ

    売店のアウグストゥスの石膏像、835ユーロ

  • 野蛮なゲルマン人からローマ帝国を守るリーメス(万里の長城)

    野蛮なゲルマン人からローマ帝国を守るリーメス(万里の長城)

  • 野蛮なゲルマン人からローマ帝国を守るリーメス(万里の長城)

    野蛮なゲルマン人からローマ帝国を守るリーメス(万里の長城)

  • バート・ホンブルク市の中心部の旧市街、教会が見える

    バート・ホンブルク市の中心部の旧市街、教会が見える

  • バート・ホンブルク市の中心部の目抜き通り

    バート・ホンブルク市の中心部の目抜き通り

  • バート・ホンブルク市の中心にあるクアハウス

    バート・ホンブルク市の中心にあるクアハウス

  • バート・ホンブルク市の中心部の公園

    バート・ホンブルク市の中心部の公園

  • バート・ホンブルク市の中心にあるカイザーブルネン(皇帝の泉)

    バート・ホンブルク市の中心にあるカイザーブルネン(皇帝の泉)

  • バート・ホンブルク市の中心にあるカイザー・ヴィルヘルム・バート(皇帝ヴィルヘルムの温泉)

    バート・ホンブルク市の中心にあるカイザー・ヴィルヘルム・バート(皇帝ヴィルヘルムの温泉)

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