2011/09/29 - 2011/09/29
31位(同エリア46件中)
池彼方さん
リヴィウから乗った列車はシンフェローポリが終着駅でした。
シンフェローポリはクリミア自治共和国の首都となっています。
クリミア半島はもともとロシアの版図でしたが、1955年にフルシチョフによってウクライナに移管され現在に至っています。
今もなお住民はロシア系が多数を占め、ウクライナの中でも特殊な位置づけの地域となっています。
シフェローポリからヤルタへはバスもしくはトロリーバスを利用していくことになります。
バスなら所要時間は1時間30分。トロリーバスならその倍の3時間もかかるといいます。
ふつうならバスを利用するところですが、旅行者の中にはトロリーバスを利用する向きも少なくありません。
それというのもこのトロリーバスは全長86キロ、トロリーバスとしては世界最長の距離を誇っているからです。
数年前にBBC制作の旅番組でクリミア半島のトロリーバスを紹介しているのをBSで見て以来、気になっていた乗り物です。
バスよりも所要時間が倍もかかるのは駆け足旅行の身としては痛いのですが、ここでしか乗れない代物なので思い切って乗ってみることにしました。
車体はソビエト時代のものなのかずいぶん古いですが、乗り心地はそんなに悪いものではありません。
乗客も買い物帰りのおばさん、娘さん、若い旅行者とバラエティーに富んでいます。
クリミア半島がウクライナの中にあって異色なのは住民の民族構成だけでなく、地形や植生も一種独特のものがあります。
険しい岩山が続き、ところどころに潅木が生えています。
どことなくギリシャあたりの風景に似ています。
トロリーバスの便は頻繁にあるようで、道中の多くのトロリーバスとすれ違いました。
老朽化が激しく、シンフェローポリからヤルタまでの間でエンジントラブルなのか立ち往生しているトロリーバスを2台も見かけました。
別に事故を起こしているわけではないですが、時間に追われている旅行者にはリスキーな交通手段といえそうです。
シンフェローポリから乗っていた乗客も途中でみんな降りてしまい、その代わりに新たな乗客たちが乗り込んできます。
全線乗り続ける乗客は酔狂な外国人旅行者ぐらいのようです。
3時間近く経ってようやくヤルタのバスターミナルに到着しました。
岩山あり青い海ありと車窓の風景が変化に富んでいることもあって、あまり退屈を感じさせないバス旅となりました。
ヤルタにはホテルブリストルという老舗ホテルに泊りました。
さすが国際的なリゾート地だけあって外国人旅行者の扱いに慣れています。
部屋もそんなに広くはありませんが、モダンで日本のホテルいるような感じがしました。
快適だからといって部屋でだらだらしているわけにもいきません。
明日は朝8時からタクシーを貸しきってクリミア半島の名所を巡り空港に向かう予定なのでヤルタの町を見物するのは今しかないからです。
ヤルタは目の前に黒海が広がり、背後には山を控え、そこに白亜のホテルが点在して、熱海とよく似た景色です。
そして熱海同様多くの旅行者でにぎわっています。
違うのはいろんな人種民族の旅行者が見られることでしょうか。
カザフスタンあたりから来たかのような東洋系の人もちらほら見えます。
旧ソ連の人々にとってヤルタは、一昔前の日本人がハワイに抱いていたのと同じ憧れの場所なのでしょう。
急に雲が出てきて肌寒くなってきたのですが、それでも海に入っている海水浴客の姿もあります。
そういう人はお決まりのようにボンレスハムのような体を誇らしげにさらしています。
冬になるとモスクワの寒中水泳の模様がニュースで流れますが、おそらく同好の士の方々なのでしょう。
海岸べりの散策は切り上げて、チエホフが『桜の園』を執筆した別荘に足をのばしました。
ガイドブックには近いようなことが書いてあったのですが、ずいぶん距離がありました。
正直なところチエホフの作品はひとつも読んだことがないので、彼の部屋や遺品を見てもいまひとつぴんときません。
それよりもチエホフの別荘までの家並みが少しごちゃごちゃとしていて京都の東山のはずれあたりのようでもあり興味深かったです。
ヤルタでの夕食はガイドブックに載っていたタタール料理の店に行くことにしました。
クリミア半島にはタタール人と呼ばれるトルコ系の人々が25万人も住んでいるとされています。
どんな料理が出てくるのか楽しみです。
店はオープンエアーの、今日のように日が沈んでから氷雨が降ってくるような夜には少しつらいお店です。
それでも客たちはお構いなしにビールをぐびぐびやっています。
たぶん家族経営の店なのでしょう。
子供も一緒になって働いていました。
メニューを見てもウクライナ語(ロシア語?)で書かれているため何のことやらわかりません。
そこで適当なものを持ってきてもらうことにしました。
まず出てきたのがトマト味のスープ。
具沢山の汁の中には手打ち麺が入っていました。
店の人はラグメンといいます。
そして分厚いナンも出てきました。
スープに浸して食べるとおしいいです。
確かウイグルにも似たような料理があったはずです。
続いて香ばしく棒状に焼かれたハンバーグが出てきました。
イランのケバブとは比較にならないぐらい大きいです。
肉の味がしっかりしていて、あの某ハンバーガーとは段違いのうまさです。
そういえばさきほど歩いたヤルタのビーチでもっとも見晴らしのよい場所に大きな某ハンバーガーショップが鎮座していました。
西洋人は“タタールのくびき”などと否定的なニュアンスで用いることがありますが、こと食に関する限り“タタールのくびき”大いに結構という気分になりました。
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