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サンクトペテルブルクは音楽の聖地である。ここフィルハーモニーホール(写真1−3)では1893年コレラによる死の直前のチャイコフスキーの指揮で交響曲第6番「悲愴」が初演されている。 <br /> <br />サンクトペテルブルクフィルハーモニーはソ連時代はレニングラードフィルハーモニーと称しており、巨匠ムラヴィンスキー(1903−1984、写真5、6)を常任指揮者として、当時絶頂期にあったカラヤン・ベルリンフィル、べーム・ウィーンフィル、ショルティ・シカゴシンフォニーと並ぶ世界4大オーケストラとして君臨していた。私も学生時代にムラヴィンスキーの強烈な個性、厳格な音楽にしびれた思い出の演奏会を体験している。彼は飛行機嫌いで有名で、日本へはシベリア鉄道で演奏旅行にやってきたそうだ。また極端なレコード嫌いとしてカラヤンの対極にあるマエストロであったため、長く幻の指揮者と呼ばれていた。その後4回の日本への演奏旅行で限られた聴衆ではあるが、ファンの語り草となっており、いまだに海賊版の録音が発見されるとファンの間で話題になっている。私も彼の演奏に接して、いつか彼らの本拠地のホールを訪れたいと思っていたが、約25年を経て昨年やっと夢が実現した。 <br /> <br />彼の指揮でショスタコーヴィッチ(1906−1975)の多くの交響曲がここで初演された。最も名高いのは交響曲第5番、「革命」の名で知られるが、革命とは直接の関係がない。また1942年8月9日、ナチスドイツに包囲されたこのホールで交響曲第7番「レニングラード」は初演された。 <br /> <br />現在の首席指揮者はユーリ・テミルカーノフ(1938−、写真7)で、世界最高峰の演奏レベルを維持している。彼はロンドン、ドレスデン、ボルティモアなどにも拠点を持っている。昨年はプロコフィエフの記念の年で、私は彼の指揮でカンタータと交響曲第5番、昨年12月にはロメオとジュリエット組曲などを聞くことができた。現代の残り少ない巨匠の一人である。巨匠と呼べる指揮者の特徴は、指揮台にいるだけでオーケストラが自由自在に鳴り出す。指揮者はほとんど何もしない。円熟の巨匠だけが可能な至芸である。 <br /> <br />彼はこの年(2008年)70歳、サンクトフィル就任20周年とあわせて08年12月12日に彼のバースデーコンサートが開催された。マリス・ヤンソンス、ユーリ・バシュメット、エウゲニ−・キーシン、ギドン・クレ−メル、ナタ−リア・グートマン、ヴァディム・レーピン、庄司紗矢香などが一同に会し、ガラ・コンサートが開催され、客席にはゲルギエフの姿も見えたそうだ。これだけの顔ぶれが揃うことが度々あろうとは思えない。テミルカーノフのお気に入り、庄司紗矢香が日本人として一人参加している。(この日はサンクトペテルブルグに滞在中であったが、残念なことにこのコンサートには行けなかった。上記の情報はこのコンサートに行かれた方に直接伺ったお話である) <br /><br />この町の第2のオーケストラとして、アカデミーオーケストラがある。こちらは最近単身来日して日本でも知られるようになったアレクサンドル・ドミトリエフ(写真8)が率いている。上記のサンクトフィルと比較すると、その表現力、パワーと繊細さは開きがある(サンクトフィルが別格に優れている)というものの、この日に聴いたプロコフィエフなどお国物を演奏させると他のオーケストラにはひけをとらない。 <br /><br />サンクトペテルブルクの目抜き通りネフスキー通りの東の終点近くにあるアレクサンドル・ネフスキー大修道院(写真9)に向かう通路の両側には、18−19世紀に活躍した文化人らが眠る二つの墓地がある。ここにチャイコフスキー(写真10)、ムソルグルキー(写真11)、グリンカ(写真12)、バラキレフ(写真13)、リムスキー・コルサコフ、グリンカなどロシアを代表する偉人達の墓があり、日本を含む世界中から愛好者の訪問が絶えることがない。音楽家以外にもドストエフスキー(写真14)、カラムジン、科学者のロモノソフ、建築家のロッシ、ザハーロフ‥、ロシアの奥の深さを感じる。

サンクトペテルブルクのフィルハーモニー:ついに訪れたムラヴィンスキーの家

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2007/08/17 - 2007/09/25

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14

ハンク

ハンクさん

サンクトペテルブルクは音楽の聖地である。ここフィルハーモニーホール(写真1−3)では1893年コレラによる死の直前のチャイコフスキーの指揮で交響曲第6番「悲愴」が初演されている。
 
サンクトペテルブルクフィルハーモニーはソ連時代はレニングラードフィルハーモニーと称しており、巨匠ムラヴィンスキー(1903−1984、写真5、6)を常任指揮者として、当時絶頂期にあったカラヤン・ベルリンフィル、べーム・ウィーンフィル、ショルティ・シカゴシンフォニーと並ぶ世界4大オーケストラとして君臨していた。私も学生時代にムラヴィンスキーの強烈な個性、厳格な音楽にしびれた思い出の演奏会を体験している。彼は飛行機嫌いで有名で、日本へはシベリア鉄道で演奏旅行にやってきたそうだ。また極端なレコード嫌いとしてカラヤンの対極にあるマエストロであったため、長く幻の指揮者と呼ばれていた。その後4回の日本への演奏旅行で限られた聴衆ではあるが、ファンの語り草となっており、いまだに海賊版の録音が発見されるとファンの間で話題になっている。私も彼の演奏に接して、いつか彼らの本拠地のホールを訪れたいと思っていたが、約25年を経て昨年やっと夢が実現した。
 
彼の指揮でショスタコーヴィッチ(1906−1975)の多くの交響曲がここで初演された。最も名高いのは交響曲第5番、「革命」の名で知られるが、革命とは直接の関係がない。また1942年8月9日、ナチスドイツに包囲されたこのホールで交響曲第7番「レニングラード」は初演された。
 
現在の首席指揮者はユーリ・テミルカーノフ(1938−、写真7)で、世界最高峰の演奏レベルを維持している。彼はロンドン、ドレスデン、ボルティモアなどにも拠点を持っている。昨年はプロコフィエフの記念の年で、私は彼の指揮でカンタータと交響曲第5番、昨年12月にはロメオとジュリエット組曲などを聞くことができた。現代の残り少ない巨匠の一人である。巨匠と呼べる指揮者の特徴は、指揮台にいるだけでオーケストラが自由自在に鳴り出す。指揮者はほとんど何もしない。円熟の巨匠だけが可能な至芸である。
 
彼はこの年(2008年)70歳、サンクトフィル就任20周年とあわせて08年12月12日に彼のバースデーコンサートが開催された。マリス・ヤンソンス、ユーリ・バシュメット、エウゲニ−・キーシン、ギドン・クレ−メル、ナタ−リア・グートマン、ヴァディム・レーピン、庄司紗矢香などが一同に会し、ガラ・コンサートが開催され、客席にはゲルギエフの姿も見えたそうだ。これだけの顔ぶれが揃うことが度々あろうとは思えない。テミルカーノフのお気に入り、庄司紗矢香が日本人として一人参加している。(この日はサンクトペテルブルグに滞在中であったが、残念なことにこのコンサートには行けなかった。上記の情報はこのコンサートに行かれた方に直接伺ったお話である)

この町の第2のオーケストラとして、アカデミーオーケストラがある。こちらは最近単身来日して日本でも知られるようになったアレクサンドル・ドミトリエフ(写真8)が率いている。上記のサンクトフィルと比較すると、その表現力、パワーと繊細さは開きがある(サンクトフィルが別格に優れている)というものの、この日に聴いたプロコフィエフなどお国物を演奏させると他のオーケストラにはひけをとらない。

サンクトペテルブルクの目抜き通りネフスキー通りの東の終点近くにあるアレクサンドル・ネフスキー大修道院(写真9)に向かう通路の両側には、18−19世紀に活躍した文化人らが眠る二つの墓地がある。ここにチャイコフスキー(写真10)、ムソルグルキー(写真11)、グリンカ(写真12)、バラキレフ(写真13)、リムスキー・コルサコフ、グリンカなどロシアを代表する偉人達の墓があり、日本を含む世界中から愛好者の訪問が絶えることがない。音楽家以外にもドストエフスキー(写真14)、カラムジン、科学者のロモノソフ、建築家のロッシ、ザハーロフ‥、ロシアの奥の深さを感じる。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.0
ショッピング
3.0
交通
3.5
同行者
社員・団体旅行
一人あたり費用
50万円 - 100万円
交通手段
タクシー 飛行機
航空会社
エールフランス JAL
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行なし)

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  • フィルハーモニーホールの外観

    フィルハーモニーホールの外観

  • フィルハーモニーホールの内部

    イチオシ

    フィルハーモニーホールの内部

  • ステージ裏からの眺め

    ステージ裏からの眺め

  • フィルハーモニーホールの天井採光

    フィルハーモニーホールの天井採光

  • ロビーに飾られているムラヴィンスキーの写真

    ロビーに飾られているムラヴィンスキーの写真

  • ホール入り口横のムラヴィンスキーのレリーフ

    ホール入り口横のムラヴィンスキーのレリーフ

  • ユーリ・テミルカーノフ

    ユーリ・テミルカーノフ

  • アレクサンドル・ドミトリエフ

    アレクサンドル・ドミトリエフ

  • アレクサンドル・ネフスキー大修道院

    アレクサンドル・ネフスキー大修道院

  • チャイコフスキーの墓

    チャイコフスキーの墓

  • ムソルグスキーの墓

    ムソルグスキーの墓

  • グリンカの墓

    グリンカの墓

  • バラキレフの墓

    バラキレフの墓

  • ドストエフスキーの墓

    ドストエフスキーの墓

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この旅行記へのコメント (1)

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  • tadさん 2017/07/20 21:52:01
    この旅行記もまた凄い!
    ムラビンスキーをお聞きになっているんですね!

    私は東京時代に彼とレニングラード・フィルの演奏会チケットを買っていて、で、直前にキャンセルされた経験があります。確か1972,3年ごろです。交代指揮者はだれだか忘れました。勿論、こちらもレコードで知っている名前でしたが、それでも、ショックが大きくて、あれからムラヴィンスキのレコードは買わなくなりました!交代した人の名前を覚えていないのも、そのショックが大きかったからでしょう。。。。

    その意味でも、ハンクさんがうらやましいですが、でも、ハンクさんなら、仕方ないかなと今は思います。サンクトペテルブルク情報の権威ですから。。

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