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ブカレスト・・・・ 二人の青年との出会い・名演奏の民族音楽・郷土<br />            料理ミティティ<br /> <br />パスポートコントロール<br />早朝六時、ブルガリアの国境駅ルセ駅に到着。その直前になって、車掌がドアを叩いて起こしにやって来る。間もなく係官がやってきて、出国のためのパスポ−ト検閲が始まる。その間、三十分の停車でル−マニアのブカレストへ向け出発。晴れ上がった青空の下、朝もやに包まれたのどかな田園風景が窓外に流れていく。もう国境を越えているはずなのに、その実感はまったくない。ただ入出国のうるさい手続きのみが、それを意識させるだけである。<br /> <br /><br />ルセから三十分でル−マニアの国境駅ギウルギウ駅に到着、いよいよル−マニア入りである。ここで再びル−マニアのパスポ−トコントロ−ルがやってきて入国手続きが始まる。「滞在は何日間ですか?」「四日間です。」「ビザでは十日間となっていますね。」 それには答えようがないので沈黙していると、「OK」といって立ち去る。今度は別の係官がやってきてパスポ−トを渡せという。持ち去ろうとするので怪訝な顔を見せると、「ほれ、みんなのパスポ−トもこんなに預かっているんですよ。」とポケットから出して見せながら、「スタンプを押して返しますから。」といって立ち去る。まさかニセの係官ではあるまい。<br /><br /><br />やれやれと一服していると、今度は税関の係官がやってきてパスポ−トを見せよという。そこで、「手続きは先ほど終わりましたよ。」というと、自分にも見せよという。「先ほど係官が持っていきました。」というと、「何か申告することは?」「いいえ、何もありません。」「OK」のやりとりで無事完了する。このやりとりの最中に係官がパスポ−トを返しに来る。無事返却を受けてほっと一安心する。<br /> <br /><br />国境駅に一時間ほど停車した後、ブカレストへ向けて出発する。ここから二時間足らずで首都ブカレストに到着だ。それまでにヒゲ剃りを済ませておこうとバッグの中をまさぐる。おや、電気カミソリ機が見当たらないぞ、おかしいなあ。これは一大事とばかり、バッグから荷物を全部取り出して探しにかかる。だが、発見できない。確かに紛失しているのだ! 弱ったなあ……。昨日ホテルでの荷造りの様子を思い出してみる。確かにバッグに入れたと思ったのに…。でも、昨日にかぎって室内の最終チェックをどうも怠ったようだ。もし忘れていたらル−ムメイドから届け出があって、バッグを受け取る折に渡されるはずである。それがないところをみると、ホテルに預けている間に盗まれたものとしか考えようがない。<br /><br /><br />このバッグはカギが掛けられないので、その気になれば中身の抜き取りは自由自在だ。着替え類だけで、めぼしいものはないからと高をくくったのがいけなかったのか。その点がちょっと甘かった。ブルガリアの経済事情からすれば、充電式の電気ソリは高価品になるのだろう。<br /> <br /><br />ブカレスト到着<br />不愉快なことだが、悔やんでも仕方がない。だが、面倒なことになったものだ。お陰でブカレスト最初の仕事は、安全カミソリ探しと相成る。あきらめて、バナナとスプライトの飲み物で朝食にする。その間も列車はのどかな田園風景の中をひた走る。そのうちボツボツと民家の建物が見え始め、それが終着駅に近づいたことを知らせる。やがて列車は、無数に分かれた線路の分岐点を上手に選り分けながらブカレスト・ノルド駅に滑り込む。いよいよル−マニアの旅の始まりだ。<br /><br /> <br />ルーマニアのこと<br />この国の正式国名はル−マニア。ロ−マ人の末裔である国民の九割がル−マニア正教を信じる。この国の原形は二世紀にさかのぼる。十四世紀に建国されたワラキア公国とモルダヴィア公国は、ロシア、トルコなど大国の利害に翻弄されながらも、一八八一年統一を果たしル−マニア王国が誕生。第一次大戦では英仏露側について勝利国となり、トランシルバニアを含むかなりの領土を拡大する。その後、親ナチス色を強め、第二次大戦ではドイツ側につく。<br /><br /><br />敗戦後はソ連圏に組み込まれ、六十五年労働党第一書記にチャウシェスクが就任。当初は国民から愛されていたが次第に独裁色を強め、対外債務の完全返済を目指した強引な輸出型経済(飢餓輸出)、秘密警察による恐怖政治、ハンガリ−系住民の弾圧などで国民の不満は極限に達する。そしてついに八十九年十二月、ハンガリ−人牧師退去令に対する抗議運動は全土に広がり、チャウシェスク夫妻処刑という形で幕を閉じる。こうして社会主義時代は終わったが、激しいインフレ、高い失業率など不安定な情勢が続いている。<br /> <br /><br />また、ル−マニアを舞台にした「吸血鬼ドラキュラ」の小説は有名であるが、そのモデルになったのが十五世紀に実在した串刺し公ヴドラ・ツェペシュ公といわれている。彼が住んだとされるブラショフのブラン城は、ドラキュラ伯爵の居城として多くの観光客を集めている。そしてまた、オリンピック体操選手コマネチの名はわれわれ日本人にとっても有名であるが、あの十点満点の完ぺきな演技で魅了した姿は今でも記憶に新しい。<br /> <br /><br />両替にとまどう<br />駅頭に降り立ってコンコ−スへ進む。駅構内は広々として感じが良い。ここでまず両替をしなくては地下鉄にも乗れない。ところが両替所が見当たらない。そこでインフォメ−ションに尋ねてみると、この駅には両替所がないという。う〜ん、これは困ったなと思い「この近くに両替所はありますか?」と尋ねると、近くのホテルに行きなさいという。駅の玄関に立って見回すと、すぐ右手に大きなホテルが見える。駅前の様子から見ると、この街もソフィアと大同小異といった感じである。<br /><br /><br />信号を渡ってホテルへ辿り着きフロントに両替を頼むと、ここでは両替はしないという。これほどの規模のホテルが両替しないとは珍しい。頼みの綱に裏切られた感じで外に出ると、数軒先に小さなホテルが見える。ここに飛び込んで頼んでみると、しぶしぶ両替してくれる。取り敢えず十ドルだけの両替だが、これで身動きがとれて有難い。<br /> <br /><br />地下鉄でホテルヘ<br />これからメトロ(地下鉄)でホテルへ移動だ。ブカレスト市内の交通機関は、地下鉄、バス、トロリ−バス、トラム(路面電車)である。そしてソフィア同様、乗車券はこれらに共通となっている。ここの地下鉄は路線が単純なのでわかりやすい。メトロの表示を探すが、近くに見当たらない。通行人に「ウンデ メトロ?(地下鉄はどこですか)」と尋ねながら入り口を探し当て、地下に潜ってチケットを求める。ここのは進んでいて磁気カ−ドのチケットになっており、これを改札機に通して通過する。一回のみ使用のカ−ドはなく、最低二回分使用以上のカ−ドが揃えてある。二回使用のカ−ドで料金五〇〇レイ(二〇円)、つまり一回分十円とタダみたいに安い。 <br /><br /><br />ノルド駅から乗って次の勝利広場駅で乗り換えると、そこから二つ目の駅が下車する大学前駅である。地下鉄の車両や設備も結構なものだと思いながら、階段を上り地上へ出る。地図を確認しながら歩き出し、五分足らずでホテルへ到着。周囲の古びてやつれたような建物の中にまじって、このホテルだけは白亜の殿堂のように白く燦然と輝いている。しかし、ホテル周辺は道路工事で掘り起こされ、ホテルへ入るにも細い鉄板の渡しを渡って通る有様だ。<br /> <br /><br />フロントでチェックインを済ませ、ボ−イに案内されて部屋に入ると、そこは輝くようなデラックスル−ムで、大きなキングサイズのダブルベッドが部屋の主を歓迎している。バスル−ムは大理石張りでピカピカと輝き、壁面いっぱいの鏡がなんともまぶしい。早速、ボ−イにカミソリを売っている店が近くにあるかを尋ねると、「私が買ってきてあげましょう。」という。折角の申し出ながら、自分で品物を見て買いたいからと辞退する。そこでひとまず旅装を解き、洗面を済ませて一服する。時計を見ると、ノルド駅に着いてからホテルに入るまで一時間が過ぎている。<br /> <br /><br />パンで昼食<br />昼時になったので昼食に外出。辺りをぶらついていると、小さな立ち食い食堂が目に留まる。中に入って様子を見ると、それぞれ好みの料理を注文して食べている。ところが料理サンプルは置いてなく、ただ壁にメニュ−が貼ってあるだげである。美味しそうな肉料理を食べている人がいるのだがメニュ−を見ても何の料理かさっぱりわからず、その上、注文窓口から離れているので指さすわけにもゆかず、お手上げである。仕方なくここをあきらめて立ち去り、近くを彷徨する。<br /><br /><br />今度はパン類を販売する飲食店が目に留まり、ここに入ってパン1個とファンタジュ−スを求め、テ−ブルに座って昼食にする。ここの店では自分勝手に冷蔵庫の飲み物を取り出してレジに示すのではなく、まず注文してから店員がわざわざ取りに行くという非能率的なことをやっている。だから異国人には注文したい品の言葉が分からず、何かと不便である。 <br /><br /><br />お昼時とあって、空席もないほど結構お客で賑わっている。同じ長テ−ブルの席には、学生風の若い女性三人がお菓子をつまみながら楽しそうに談笑している。そこで、「英語話しますか?」と尋ねてみると、「えゝ、少しなら……。」という返事。それから暫くの間、彼らと楽しい語らいが続く。彼らはブカレスト大学の学生で、いま五年生だという。その中の一人が英語に堪能なので、旅行のことや日本の事情をいろいろ説明しながら、この地の事情を尋ねてみる。住宅は二部屋で月三万円の家賃、平均結婚年齢は二十三〜四歳だという。それぞれにボ−イフレンドがいて青春をエンジョイしているという。<br /> <br /><br />いろいろ談笑していると、一人の青年が一本のピンクのバラを手にしながら彼らの一人に近づき、それを手渡してキスをしている。彼女は嬉しそうに微笑みながらも、みんなの手前、少し照れて頬を赤く染めている。「あなたのボ−イフレンドなの?」と尋ねると、「えゝ、私のフィアンセなんです。」という。学生結婚が結構多いそうだが、それにしてもこの男性は女子大生にはちと不似合いな垢抜けしない有職青年である。彼は仕事中なのだろうに、彼女の手を握りしめながら寄り添って座り、面前で彼女とベタベタしている。こんな風景が見られるのもヨ−ロッパらしいところだ。これは若者の特権である。<br /> <br /><br />安全ソリとレストラン探し<br />若いカップルに少し当てられて店を出ると、近くのビクトリア百貨店へ安全カミソリを探しに出かける。小規模のデパ−トだが、一階の化粧品売場を訪ねると高級品から安いものまで数種類の安全ソリが置いてある。そこで、一番手軽で安物のソリを三個ほど求める。これで何とかこと足りるだろう。ソリが見つかってほっとしながら、今度はレストラン探しにかかる。この近くに訪れてみたい有名郷土料理店“Carul cu Bere”があるのだ。一八七九年の創業で、毎晩民族音楽のショ−があるという。地図を頼りに目指す場所に行ってみると、それらしいレストランはない。商店のオバサンに尋ねると、この裏手のほうだと手振りで教えてくれる。<br /><br /><br />だが、裏手の道に入って奥まで行っても見当たらない。次の通りは一ブロック先の通りになってしまう。おかしいなあと疑問に思いながらも、英語が通じないのでこれ以上の質問はできっこない。仕方なく、次の通りまで回り込んで眺めて見るが、それらしい看板も見えない。念のため通りの端まで歩いてみると、その中ほどにシックな看板を出したお目当てのレストランがあるではないか。<br /> <br /><br />地図のポイントとは少し違うぞ、と思いながら店内に入ると、まだ準備中でウェ−タ−たちも隅のほうでたむろしている。そこへ近づいて行き、民族音楽ショ−は何時に始まるのか、料金はいかほどかかるのか、などを質問する。すると、チ−フらしいウェ−タ−が英語で応対しながら、音楽ショ−は八時から始まる、料金は飲み代も入れて十五ドルもあれば十分でドル払いもできる、と教えてくれる。明日の夜にでも訪ねてみようと思いながらレストランを後にする。<br /> <br /><br />付近を探索した後はホテルへ戻り、夕方まで午睡をとる。これで夜行列車の旅と早朝からのパスポ−ト検閲などでたまっていた寝不足と疲れが消し飛び、体も軽くなる。起き上がってシャワ−を浴びようとするが、やはりここもぬるま湯である。四十年ぶりに使う安全カミソリに戸惑いながらヒゲ剃りを終え、身も心もすっきりなったところで夕食に出かける。<br /> <br /><br />夕 食<br />昼に見つけた小さな立ち食い食堂に再挑戦してみようと中に入る。注文カウンタ−の横にあるガラスケ−スの中に、チキンのモモ肉とサラダが置いてある。現物の陳列はこれのみなので、それを指さし注文する。カウンタ−のオバチャンはそれを取り出して皿に載せ、さらに丸パン二個を付けて渡そうとする。そこで、「ヌ−、ヌ−(ノ−、ノ−)」といいながらパンを断わる。モモ肉といっても胸部分まで付いたボリュ−ムのあるもので、これにパン二個はとても私の胃袋は受け付けない。<br /><br /><br />でも、注文する人はみんなパン二個を添えてもらっているので、それを断わる私にオバチャンは怪訝そうな顔をしている。「クットゥ コスタ?(いくら)」と尋ねると、“四、三〇〇レイ”(一七二円)と紙切れに書いて見せる。店の出口に飲み物類や果物を別売りしているので、そこでカンビ−ル一本三、〇〇〇レイ(一二〇円)を買い足し、それを店に持ち込んで立ち食いする。お腹いっぱいになってホテルへ戻る。<br /><br />(この続きはこちらへ⇒ http://yasy7.web.fc2.com/ )<br /><br /><br />

ルーマニア:ブカレストの旅

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1996/05/25 - 1996/05/27

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yasyas

yasyasさん

ブカレスト・・・・ 二人の青年との出会い・名演奏の民族音楽・郷土
            料理ミティティ
 
パスポートコントロール
早朝六時、ブルガリアの国境駅ルセ駅に到着。その直前になって、車掌がドアを叩いて起こしにやって来る。間もなく係官がやってきて、出国のためのパスポ−ト検閲が始まる。その間、三十分の停車でル−マニアのブカレストへ向け出発。晴れ上がった青空の下、朝もやに包まれたのどかな田園風景が窓外に流れていく。もう国境を越えているはずなのに、その実感はまったくない。ただ入出国のうるさい手続きのみが、それを意識させるだけである。
 

ルセから三十分でル−マニアの国境駅ギウルギウ駅に到着、いよいよル−マニア入りである。ここで再びル−マニアのパスポ−トコントロ−ルがやってきて入国手続きが始まる。「滞在は何日間ですか?」「四日間です。」「ビザでは十日間となっていますね。」 それには答えようがないので沈黙していると、「OK」といって立ち去る。今度は別の係官がやってきてパスポ−トを渡せという。持ち去ろうとするので怪訝な顔を見せると、「ほれ、みんなのパスポ−トもこんなに預かっているんですよ。」とポケットから出して見せながら、「スタンプを押して返しますから。」といって立ち去る。まさかニセの係官ではあるまい。


やれやれと一服していると、今度は税関の係官がやってきてパスポ−トを見せよという。そこで、「手続きは先ほど終わりましたよ。」というと、自分にも見せよという。「先ほど係官が持っていきました。」というと、「何か申告することは?」「いいえ、何もありません。」「OK」のやりとりで無事完了する。このやりとりの最中に係官がパスポ−トを返しに来る。無事返却を受けてほっと一安心する。
 

国境駅に一時間ほど停車した後、ブカレストへ向けて出発する。ここから二時間足らずで首都ブカレストに到着だ。それまでにヒゲ剃りを済ませておこうとバッグの中をまさぐる。おや、電気カミソリ機が見当たらないぞ、おかしいなあ。これは一大事とばかり、バッグから荷物を全部取り出して探しにかかる。だが、発見できない。確かに紛失しているのだ! 弱ったなあ……。昨日ホテルでの荷造りの様子を思い出してみる。確かにバッグに入れたと思ったのに…。でも、昨日にかぎって室内の最終チェックをどうも怠ったようだ。もし忘れていたらル−ムメイドから届け出があって、バッグを受け取る折に渡されるはずである。それがないところをみると、ホテルに預けている間に盗まれたものとしか考えようがない。


このバッグはカギが掛けられないので、その気になれば中身の抜き取りは自由自在だ。着替え類だけで、めぼしいものはないからと高をくくったのがいけなかったのか。その点がちょっと甘かった。ブルガリアの経済事情からすれば、充電式の電気ソリは高価品になるのだろう。
 

ブカレスト到着
不愉快なことだが、悔やんでも仕方がない。だが、面倒なことになったものだ。お陰でブカレスト最初の仕事は、安全カミソリ探しと相成る。あきらめて、バナナとスプライトの飲み物で朝食にする。その間も列車はのどかな田園風景の中をひた走る。そのうちボツボツと民家の建物が見え始め、それが終着駅に近づいたことを知らせる。やがて列車は、無数に分かれた線路の分岐点を上手に選り分けながらブカレスト・ノルド駅に滑り込む。いよいよル−マニアの旅の始まりだ。

 
ルーマニアのこと
この国の正式国名はル−マニア。ロ−マ人の末裔である国民の九割がル−マニア正教を信じる。この国の原形は二世紀にさかのぼる。十四世紀に建国されたワラキア公国とモルダヴィア公国は、ロシア、トルコなど大国の利害に翻弄されながらも、一八八一年統一を果たしル−マニア王国が誕生。第一次大戦では英仏露側について勝利国となり、トランシルバニアを含むかなりの領土を拡大する。その後、親ナチス色を強め、第二次大戦ではドイツ側につく。


敗戦後はソ連圏に組み込まれ、六十五年労働党第一書記にチャウシェスクが就任。当初は国民から愛されていたが次第に独裁色を強め、対外債務の完全返済を目指した強引な輸出型経済(飢餓輸出)、秘密警察による恐怖政治、ハンガリ−系住民の弾圧などで国民の不満は極限に達する。そしてついに八十九年十二月、ハンガリ−人牧師退去令に対する抗議運動は全土に広がり、チャウシェスク夫妻処刑という形で幕を閉じる。こうして社会主義時代は終わったが、激しいインフレ、高い失業率など不安定な情勢が続いている。
 

また、ル−マニアを舞台にした「吸血鬼ドラキュラ」の小説は有名であるが、そのモデルになったのが十五世紀に実在した串刺し公ヴドラ・ツェペシュ公といわれている。彼が住んだとされるブラショフのブラン城は、ドラキュラ伯爵の居城として多くの観光客を集めている。そしてまた、オリンピック体操選手コマネチの名はわれわれ日本人にとっても有名であるが、あの十点満点の完ぺきな演技で魅了した姿は今でも記憶に新しい。
 

両替にとまどう
駅頭に降り立ってコンコ−スへ進む。駅構内は広々として感じが良い。ここでまず両替をしなくては地下鉄にも乗れない。ところが両替所が見当たらない。そこでインフォメ−ションに尋ねてみると、この駅には両替所がないという。う〜ん、これは困ったなと思い「この近くに両替所はありますか?」と尋ねると、近くのホテルに行きなさいという。駅の玄関に立って見回すと、すぐ右手に大きなホテルが見える。駅前の様子から見ると、この街もソフィアと大同小異といった感じである。


信号を渡ってホテルへ辿り着きフロントに両替を頼むと、ここでは両替はしないという。これほどの規模のホテルが両替しないとは珍しい。頼みの綱に裏切られた感じで外に出ると、数軒先に小さなホテルが見える。ここに飛び込んで頼んでみると、しぶしぶ両替してくれる。取り敢えず十ドルだけの両替だが、これで身動きがとれて有難い。
 

地下鉄でホテルヘ
これからメトロ(地下鉄)でホテルへ移動だ。ブカレスト市内の交通機関は、地下鉄、バス、トロリ−バス、トラム(路面電車)である。そしてソフィア同様、乗車券はこれらに共通となっている。ここの地下鉄は路線が単純なのでわかりやすい。メトロの表示を探すが、近くに見当たらない。通行人に「ウンデ メトロ?(地下鉄はどこですか)」と尋ねながら入り口を探し当て、地下に潜ってチケットを求める。ここのは進んでいて磁気カ−ドのチケットになっており、これを改札機に通して通過する。一回のみ使用のカ−ドはなく、最低二回分使用以上のカ−ドが揃えてある。二回使用のカ−ドで料金五〇〇レイ(二〇円)、つまり一回分十円とタダみたいに安い。 


ノルド駅から乗って次の勝利広場駅で乗り換えると、そこから二つ目の駅が下車する大学前駅である。地下鉄の車両や設備も結構なものだと思いながら、階段を上り地上へ出る。地図を確認しながら歩き出し、五分足らずでホテルへ到着。周囲の古びてやつれたような建物の中にまじって、このホテルだけは白亜の殿堂のように白く燦然と輝いている。しかし、ホテル周辺は道路工事で掘り起こされ、ホテルへ入るにも細い鉄板の渡しを渡って通る有様だ。
 

フロントでチェックインを済ませ、ボ−イに案内されて部屋に入ると、そこは輝くようなデラックスル−ムで、大きなキングサイズのダブルベッドが部屋の主を歓迎している。バスル−ムは大理石張りでピカピカと輝き、壁面いっぱいの鏡がなんともまぶしい。早速、ボ−イにカミソリを売っている店が近くにあるかを尋ねると、「私が買ってきてあげましょう。」という。折角の申し出ながら、自分で品物を見て買いたいからと辞退する。そこでひとまず旅装を解き、洗面を済ませて一服する。時計を見ると、ノルド駅に着いてからホテルに入るまで一時間が過ぎている。
 

パンで昼食
昼時になったので昼食に外出。辺りをぶらついていると、小さな立ち食い食堂が目に留まる。中に入って様子を見ると、それぞれ好みの料理を注文して食べている。ところが料理サンプルは置いてなく、ただ壁にメニュ−が貼ってあるだげである。美味しそうな肉料理を食べている人がいるのだがメニュ−を見ても何の料理かさっぱりわからず、その上、注文窓口から離れているので指さすわけにもゆかず、お手上げである。仕方なくここをあきらめて立ち去り、近くを彷徨する。


今度はパン類を販売する飲食店が目に留まり、ここに入ってパン1個とファンタジュ−スを求め、テ−ブルに座って昼食にする。ここの店では自分勝手に冷蔵庫の飲み物を取り出してレジに示すのではなく、まず注文してから店員がわざわざ取りに行くという非能率的なことをやっている。だから異国人には注文したい品の言葉が分からず、何かと不便である。 


お昼時とあって、空席もないほど結構お客で賑わっている。同じ長テ−ブルの席には、学生風の若い女性三人がお菓子をつまみながら楽しそうに談笑している。そこで、「英語話しますか?」と尋ねてみると、「えゝ、少しなら……。」という返事。それから暫くの間、彼らと楽しい語らいが続く。彼らはブカレスト大学の学生で、いま五年生だという。その中の一人が英語に堪能なので、旅行のことや日本の事情をいろいろ説明しながら、この地の事情を尋ねてみる。住宅は二部屋で月三万円の家賃、平均結婚年齢は二十三〜四歳だという。それぞれにボ−イフレンドがいて青春をエンジョイしているという。
 

いろいろ談笑していると、一人の青年が一本のピンクのバラを手にしながら彼らの一人に近づき、それを手渡してキスをしている。彼女は嬉しそうに微笑みながらも、みんなの手前、少し照れて頬を赤く染めている。「あなたのボ−イフレンドなの?」と尋ねると、「えゝ、私のフィアンセなんです。」という。学生結婚が結構多いそうだが、それにしてもこの男性は女子大生にはちと不似合いな垢抜けしない有職青年である。彼は仕事中なのだろうに、彼女の手を握りしめながら寄り添って座り、面前で彼女とベタベタしている。こんな風景が見られるのもヨ−ロッパらしいところだ。これは若者の特権である。
 

安全ソリとレストラン探し
若いカップルに少し当てられて店を出ると、近くのビクトリア百貨店へ安全カミソリを探しに出かける。小規模のデパ−トだが、一階の化粧品売場を訪ねると高級品から安いものまで数種類の安全ソリが置いてある。そこで、一番手軽で安物のソリを三個ほど求める。これで何とかこと足りるだろう。ソリが見つかってほっとしながら、今度はレストラン探しにかかる。この近くに訪れてみたい有名郷土料理店“Carul cu Bere”があるのだ。一八七九年の創業で、毎晩民族音楽のショ−があるという。地図を頼りに目指す場所に行ってみると、それらしいレストランはない。商店のオバサンに尋ねると、この裏手のほうだと手振りで教えてくれる。


だが、裏手の道に入って奥まで行っても見当たらない。次の通りは一ブロック先の通りになってしまう。おかしいなあと疑問に思いながらも、英語が通じないのでこれ以上の質問はできっこない。仕方なく、次の通りまで回り込んで眺めて見るが、それらしい看板も見えない。念のため通りの端まで歩いてみると、その中ほどにシックな看板を出したお目当てのレストランがあるではないか。
 

地図のポイントとは少し違うぞ、と思いながら店内に入ると、まだ準備中でウェ−タ−たちも隅のほうでたむろしている。そこへ近づいて行き、民族音楽ショ−は何時に始まるのか、料金はいかほどかかるのか、などを質問する。すると、チ−フらしいウェ−タ−が英語で応対しながら、音楽ショ−は八時から始まる、料金は飲み代も入れて十五ドルもあれば十分でドル払いもできる、と教えてくれる。明日の夜にでも訪ねてみようと思いながらレストランを後にする。
 

付近を探索した後はホテルへ戻り、夕方まで午睡をとる。これで夜行列車の旅と早朝からのパスポ−ト検閲などでたまっていた寝不足と疲れが消し飛び、体も軽くなる。起き上がってシャワ−を浴びようとするが、やはりここもぬるま湯である。四十年ぶりに使う安全カミソリに戸惑いながらヒゲ剃りを終え、身も心もすっきりなったところで夕食に出かける。
 

夕 食
昼に見つけた小さな立ち食い食堂に再挑戦してみようと中に入る。注文カウンタ−の横にあるガラスケ−スの中に、チキンのモモ肉とサラダが置いてある。現物の陳列はこれのみなので、それを指さし注文する。カウンタ−のオバチャンはそれを取り出して皿に載せ、さらに丸パン二個を付けて渡そうとする。そこで、「ヌ−、ヌ−(ノ−、ノ−)」といいながらパンを断わる。モモ肉といっても胸部分まで付いたボリュ−ムのあるもので、これにパン二個はとても私の胃袋は受け付けない。


でも、注文する人はみんなパン二個を添えてもらっているので、それを断わる私にオバチャンは怪訝そうな顔をしている。「クットゥ コスタ?(いくら)」と尋ねると、“四、三〇〇レイ”(一七二円)と紙切れに書いて見せる。店の出口に飲み物類や果物を別売りしているので、そこでカンビ−ル一本三、〇〇〇レイ(一二〇円)を買い足し、それを店に持ち込んで立ち食いする。お腹いっぱいになってホテルへ戻る。

(この続きはこちらへ⇒ http://yasy7.web.fc2.com/ )


旅行の満足度
4.5
観光
4.5
同行者
一人旅
交通手段
高速・路線バス
旅行の手配内容
個別手配
  • ブカレストの凱旋門<br />

    ブカレストの凱旋門

  • ブカレスト・ノルド駅<br />

    ブカレスト・ノルド駅

  • 音楽堂<br />

    音楽堂

  • 銃撃戦の舞台となった革命広場<br /><br />

    銃撃戦の舞台となった革命広場

  • コンサート風景<br />立って歌うのが次男のバリトン歌手<br />

    コンサート風景
    立って歌うのが次男のバリトン歌手

  • 家族一同と記念写真<br />

    家族一同と記念写真

  • ブカレストのメインストリート・マゲル通り<br /><br />

    ブカレストのメインストリート・マゲル通り

  • 農村博物館<br />

    農村博物館

  • わびしい遊園地<br />

    わびしい遊園地

  • 公園の湖<br />

    公園の湖

  • レストラン「Carul cu Bere」の民族音楽ショー<br /><br />

    レストラン「Carul cu Bere」の民族音楽ショー

  • 威容を誇る「国民の館」<br />

    威容を誇る「国民の館」

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