Mezquita

2010/04/24 - 2010/05/03

Mezquita

エリア グラナダ(スペイン)

スペイン南部アンダルシア地方の華やかな都市コルドバ。この街は西暦711年イスラム軍に征服され。15世紀末までイスラム文化を受容、発展させた。

コルドバはイスラムの一大文化が栄えた花の都。その歴史は古く、紀元前にローマ帝国によって建設された。10世紀イスラム教カリフ王国の時代に全盛期を迎える。当時の人口は100万人を超え、300ものモスクがあったという。モスクは祈りの場であるばかりではなく場学びの場でもあり、文献は翻訳され多くの知識人を排出してきた。

８世紀の終わりに建てられた巨大なメスキータ。メスキータとはモスクの意味で、建築を命じたのは、アブドゥル・ラフマン１世。シリアのダマスカスからイベリア半島に逃げ渡り、コルドバへやってきた。

高い塀に囲まれた門を潜ると、沐浴の為の中庭に通じる。この中庭をパテオと呼び砂漠の民は、オアシスをイメージしたパテオを、建築様式として古くから定着させてきた。

歴代の王は、人口の増加と共にメスキータの拡張を図っていった。外壁を壊し、多柱の空間を水平に拡張していった。最終的に、外周は約175ｍ×135ｍの広がりとなり２万５千人もの回教徒を収容する規模まで達した。

785年に建設が始まり、コルドバの発展とともに拡張してきたメスキータ。総面積2300?。25000人が礼拝できる巨大モスクとなっている。

イスラム建築はその教義にそって装飾されている。偶像崇拝を禁じ、限られた面積に線、文字や草を抽象的、かつ繊細に刻み込んでいる。細かな世界から始まり、大きな世界に繋がって行く。それがイスラムの世界。

正面ミフラーブ。メスキータからイスラム精神の中心、メッカの方向を指すこの場所は、メスキータで最も神聖な場所だった。しかし、教会の基礎の上に建っため、正確にメッカを指してはいない。

アブドゥル・ラフマン１世は、宗教の中心として創建した。その後増改築を繰り返す。円柱は実に854本を数える。アルマンスールと呼ばれる最後の増築が行われたこの場所は、以前からある構造の模倣に過ぎず、アーチの２色効果は、石とレンガの交互に使用しておらず、塗装で周囲と調和させている。

かつてヨーロッパの経済、学問や文化の中心地として、名を響かせたコルドバ。現在はイスラムのとカトリックの交差点となり、二つの異なる宗教はここで融合する。モスクの中の礼拝堂は、宗教を超越した唯一無比の祈りの場となった。

1236年フェルデナンド３世によりコルドバが征服されるとメスキータはキリスト教の礼拝堂として使われ始める。16世紀に入り、内部には大聖堂が建設されることによってメスキータは大きな転機を迎える。求心的なカソリックの祈りの空間がこの空間に挿入される。

細かな装飾には、草花をモチーフにしたものしか無い。イスラムの世界では動物や人がモチーフになる事は無かった。レコンキスタ完了後、信仰が砕かれても人々の習慣までも砕かれる事は無かった。神が変わっても根付いた生活までも変える事はできなかったのだ。見事なタイル細工やその技術は、今尚脈々と受け継がれている。

元々はモスクだったが、イスラム勢力衰退後、この場は教会が増設される事になる。しかし、ヨーロッパの巨大モスクは珍しく、「ここにしかないモノを壊して、どこにでもあるものを増設した」と批判が相次いだという。結果的には、モスクと教会の合作は他に例が無い。つまり、唯一無比の建築が産まれたのはまぎれも無い事実である。

メスキータの角にひっそりとたたずむ王室礼拝堂。多様な建築様式が混在するメスキータの中で、ルネッサンス様式の礼拝堂。この一角は、基礎そのものはイスラムだが、内装は完全なカトリックの仕様となっている。

レコンキスタ終了後も、破壊を免れたメスキータ。祈りの場はこの地元の熱い希望で破壊される事無く保存されている。信仰の対象が変わろうと、地元の想いは変える事が出来なかったのだ。

街を見守る大天使、聖ラファエル。アブド・アッラーマン３世の塔を覆うようにして現在の鐘楼が建設されている。この塔はスペインの変わりゆく姿を見守ってきた。ここを訪れるイスラム教徒はきっと特別な気持ちになる事だろう。かつてイスラム精神の中心がスペインで開花したのだから。信仰は変わっても、イスラムの歴史の足跡は今も生活の基盤にはっきり残っている。