1997/06/14 - 1997/06/15
17位(同エリア28件中)
北風さん
オアハカを出たバスは、魚の尻尾のような形をしたチアパス州に突入!
とうとう、俺にとってはメキシコ最後の州になった。
本来ならば。そのまま直線的に南下すればすぐにでもガテマラ入国なのだけど・・・
メキシコは南へ向かう旅人の足を引き留めるように観光名所を配置しているフシがある。
またしても、旅のルートは東へ、
向かう先には、カリブ海やら、ピラミッドやら、わんさか!
まずは、チアパス州の入り口「サンクリストバル・デ・ラスカサス」へ!
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス
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まるで、魚の尻尾のような形をしたメキシコ南部のチアパス州。
メキシコであって、メキシコではない場所だと言う。
北部の広大な領土をアメリカにぶん取られたメキシコが、南部の隣国ガテマラからぶん取った土地らしい。
確かにこの州に入ってから、インディヘナの人口が桁違いに増えてきた。
まさに、弱肉強食!
大陸版国盗り物語だ。
俺にとっては、メキシコ最後の州となる。
南下するにつれ、暑さはますます増してくる。
いけるのか?
この暑さで? -
<サンクリストバル教会>
山賊が出る!
神隠しに合う!
と、まぁ、いろいろ有難いアドバイスを頂いた教会は、丘の上にそびえていた。
四国の金毘羅さん並の階段を前に、まず外敵による危険より心臓の危機を予感。 -
階段を登りきって、振り返ると旧チアパス州の首都でもあった街が・・・
意外と大きいなぁ。 -
旅日記
『インディヘナとレストラン』
日本的とも言える小ぎれいでモダンなスーパーマーケットの入口に、インディヘナのおばあちゃんが座っていた。
眠っているのだろうか?
着古した民族衣装の布で顔を覆い、額をピカピカ光る白いタイルにこすりつける様にして身動き一つしない。
メキシコで最も貧しく、最も先住民の多いチアパス州の州都であるこの街は、計り知れないほどの貧富の差が光と影のごとく同居していた。
そしてここでは、街の人々が先住民に対して異常なほどの寛容さを見せている。
店先で眠りこける老婆、白人ツアー客に群がる物売り、乞食に対しても、ツアーガイドや店の人間も何も言わずに見守っている。
何故だろう?
何処の国でも、富める者は、その利益を守る為、店のイメージを守る為、仕事での有能さを示す為、貧しき者を蹴散らしていた。
が、しかし、ここでは乞食に自分の店の軒先までも貸し与えている。
先住民にとって、これほど動きやすい街も他にはないのではないのだろうか?
しかし、ツーリストにとって、ここは、それ程居心地がいい街ではない。
一番苦手な場所は、食事時だった。
街中の喧騒から逃れ、目の前の美味そうな料理にかぶりつこうとする時、彼らはそこにいる。
気がつくと、周囲には、民芸品を手にしたインディヘナの子供達が、俺を中心にした人工衛星の様に回り始める。(オープンスペースならまだしも、完全な室内なのだが・・)
人が肉を噛みしめている間も、入れ替わり立ち代わり押し売りをされる。
これじゃ、料理の味なんてわかるはずはない。
あのインドでさえ、乞食は自分のテリトリーで仕事をしていた。
それなのに、ここじゃ、押し売りを断ると、「1ペソくれ!」「コーラーを奢ってくれ!」と始まる。
この状態で飯が食える程、俺の良心はタフじゃない!
・・・2日後、この状態の中、うまそうに肉をほおばる俺がいた。
俺はまた一つ、大切な何かをなくしてしまったかもしれない。 -
旅日記
『歩道にて』
男が死んでいた。
ぎらつく太陽から逃れる術を知らない壊れかけた石畳の上で。
崩れかけた建物の影がようやく救いの手を差し延べる昼下がり、男はおそらくこの街で最も人通りの多い市場へと続くこの道端で、右脇腹を下にして転がっている。
靴は履いていない。
この街でよく見かけるインディヘナ同様、裸足の指は変色し、爪ははがれ、無数の亀裂が覆い尽くしている。
汚れた衣服からのぞく、のど、胸、腹、どこにも男の生存を示す動きはなかった。
最後に口にしたであろうかすかな嘔吐物が、赤い海に浮かんでいた。
軽く閉じられた瞳は、自分の末路に何を見たんだろう?
薄汚れた民族衣装に身を包んだインディヘナの親子の行く手を、男の身体がさえぎっていた。
親子は汗だくの厳しい表情を変えることもなく、その急いだ歩調を緩める事もなく、ほんの少し進路を変えただけで、男の横を通り過ぎて行った。
男は乞食として生きている間も、そして死んだ現在でも、人々から忘れられた存在だったのだろうか?
自分の死を自分で決められず、最後まで人に乞うていたのであろうか?
この男を惨めだと思う俺は、裕福な国に生まれた者のおごりだろうか?
男が無言で語りかけてくる。
「お前は違うのか?」と
立ちすくんだ俺の前に少女が現れた。
ためらう事無く右手を差し出し、「1ペソ」とつぶやく。
生活という現実が、陽炎のように男の死体をかすませた。 -
<サンファン・チャムラ村>
今日は、サンファン・チャムラ村のお祭りの日との情報が入った。
ローカルバスでゴトゴトと揺られながらたどり着いた蔵の教会は既にお祭りムード一色! -
村の男達もよそいきの白いポンチョを着込んでめかしこんでいる。
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裸足でタッタッタッと走ってきた子供が、教会の暗い闇の中に吸い込まれていった。
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村の家々は、板地に泥を塗りたくった土の家だった。
ネパールを思い出してしまう。
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