1997/11/17 - 1997/11/17
9位(同エリア31件中)
北風さん
ポトシ観光名物「パイラビリ鉱山ツアー」
現在も掘り続けている現役の鉱山に入るツアーに参加した。
以前にもオーストラリア等で鉱山ツアーに参加した事があったが、そんなゆるいツアーじゃなかった。
標高4000mの高地の更に高所にある鉱山の真っ暗で息も詰まるぐらいの薄い空気の中、男達がうなる様に、うめく様に、ハンマーを振り下ろすリアルさは、ツアーにありがちなヤラセとは無縁の世界だった。
このツアーは、日本で働く事に疲れた時にもう一度来よう!
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 観光バス
-
旅日記
『ポトシのダイナマイト屋』
草津に来たら「温泉」、ポトシに来たら「鉱山ツアー」は観光客のお約束だった。
と、言う事で、丸一日寝て高山病をねじ伏せた俺は、現在「鉱山見学ツアー」なる小さなツアーバスに乗っている。
まるでイスラムの街のように小さな道が入り組む街中の一角で、バスが急停車した。
どう見ても、ここら辺に鉱山らしきものは無い。
あるのは、子供が店番をしている駄菓子屋みたいな店だけだった。
どうやら、ここで鉱山で働くおじさんへの手土産を買わなければならないらしい。 -
ツアー・ガイドの少年が大声を張り上げた。
「じゃあ、ここで、ダイナマイト3本と信管5本、導火線1mとコカイン煙草を買って下さい。お得なセットで380円です!」
・・・少年の英会話能力不足なのか?
それとも俺のリスニング・ミスなのか?なにげにものすごい事をいわれている気がするのだが・・
が、しかし、少女が店番している軒先に無造作に並べられている品物の数々は、確かにお土産キーホルダーには見えなかった。
俺は世界中の市場を見たつもりだったが、これだけご禁制の物を道端で売っている所を知らない。
しかも、このご禁制セットで380円!
ここはマクドナルドなのか? -
既にツアー参加者のサーファー風白人ツーリストがコカイン煙草の味見をしていた。
コカインで怪しく光る瞳で見つめるダイナマイト!
世の中には人を見て売らなければならない物もあるんじゃないのか?
こいつは、俺の横に座っている奴だぞ! -
旅日記
『鉱山ツアー』
なかなか人の良さそうな鉱山ガイドだった。人懐っこい笑顔が、これから暗闇の中に突入する俺達に安らぎを与えてくれている。
一通りの自己紹介を終えた後、彼は俺の背後で何やらごそごそと箱の中をいじりだした。
しばらくして、俺の周りからツアー客が離れ始める。皆、目を丸くしてムーンウォークよろしく後ずさりしている。
もしかして、さっきのオナラがばれたのだろうか?
かなりの技術でスカしたはずなのだが?
肩を叩かれて振り向いた。
そこには、馬鹿でかい葉巻をくわえて先程のガイドが立っていた。
葉巻の先には白い紐が!
その先端では、線香花火のような真っ赤な火花が「シュワー」と音まで出して燃えていた。
・・とんでもないガイドだった。
自分の背中に手をかけて、爆発寸前のダイナマイトをくわえている男の恐怖をどう例えればわかってもらえるだろうか? -
「さて、そろそろ出発する時間です」
と、バスの少年が話を切り出した。
しかし、誰もそんな話なんか聞いちゃいない。
皆の視線は、鉱山ガイドがくわえている既に導火線がかなり短く燃え尽きたダイナマイトにしか注がれていない。
そして、その視線を俺も熱いほど感じていた。
何故なら、人の良さげなガイドの右手は、がっしりと俺の肩を掴んでいたから・・
つまり、俺とガイドは半径30mほど離れて見物する観光客の中心いるわけだ。
あと15cmほどで火花はゴール地点の信管にたどり着くだろう。
この標高4000mの高所より更に高い所へと俺が昇天するのもその頃だ。
鉱山ガイドに動きがあった。
口からダイナマイトを抜くと、よだれでべたついた茶色いその筒を右手に持ち換える。
どうやら、ショーは終わりらしい。
観光客の間からも拍手が鳴り響く。
まぁ、素人相手に本物を使うわけもないし、ビビッた俺が少し恥ずかしかった。
が、しかし、その3分後、俺達はその現実を知る事になる。
鉱山ガイドがプロ野球の選手よろしく大遠投をかましたその茶色い筒が、眼下の山肌にぶつかるやいなや山を揺るがす爆発音が響き渡った!
山肌はまるで火山が噴火したみたいに、もうもうと煙を上げている。
・・・本物だったのか?・・ -
・・・ちょっと、真似してみた。
ガイドが気を利かして、ライターを近づける。
・・・違う! そこまでは要求していない! -
ガイドの気の遠くなる様なパフォーマンスも終わり鉱山突入の時が来た。
鉱山の入り口には、カッパと長靴とライトになるアルコールランプが並べられている。
ガイドがほがらかに言うには、
「このランプは、酸欠防止の役割もあります。このランプの炎が消えた時は空気がなくなった証拠です。急いで引き返してください」
・・・それで間に合うもんなの? -
鉱山の入り口は想像以上に小さかった。
もし中もあんな感じで狭いなら、すぐに空気が無くなる事はわかる。
そして、すぐに引き返せる事が困難なのもわかる。 -
鉱山夫見習いはまだ子供だった。
-
旅日記
『坑道にて』
この空気の悪さは何だろう?
重く、どんよりとした気体を飲み込んでいるみたいだ。
頼りないランプの光が、大人一人どうにか通れそうなデコボコの岩肌を照らし出している。
既に坑道に入ってから15分ほどが経過していた。
俺達は右に左に、時には上下に入り乱れている坑道の中を、まるで働き蟻の様に動き回っている気がする。
絶えずパラパラと頭上から降ってくる砂を払いながら、頭に浮かぶのは「生き埋め」「酸欠」。
しかも、さっき思い出したのだが、俺は閉所恐怖症だった。
後悔と恐怖が足元からはい上がってくる中、暗闇に男の呻き声がこだましてきた。
正確には「ウッ、ガキッ、ウッ、ガキッ」という、呻き声と重たい金属音の連続音だ。 -
前方のランプの光の中に、男が一人かがんでいる。
硬い岩肌にノミを当て、渾身の力でハンマーを振り下ろすその男の口元からその呻き声は漏れていた。
いつ生き埋めになるかわからない暗闇の中、ただ一人、酸欠寸前の重労働を続けていたのか? -
なんて仕事だ!
この壮絶さはTVのブラウン管越しじゃ絶対伝わらない。
ツアー客の中から息を呑む音が聞こえてくる。
俺もただその場に立ち尽くすしかなかった。 -
旅日記
『ボリビアの鉱夫』
トンネルの片隅には鉱山の神様が祭られていた。
休憩に入った男達が、一人一人お供え物の煙草を持ってやって来る。
鉱夫は独立採算制を採っていた。
つまり、鉱山会社が調査した鉱脈を皆で掘るわけじゃなく、会社から一人一人採掘権を買い、独自のカンでここぞと思った場所を掘り続け、採れた鉱石を会社に売るシステムらしい。
当然、安全基準などあるはずもなく、掘り進むにつれ緩くなった地盤を支えるのは自分で持ってきた細い丸太だけ。
男達は絶えず生き埋めの恐怖に去らされながら、一日8時間、コカの葉を口に含んで空腹をごまかし、微かな光と重くよどみ薄い空気の中、歯を食いしばってハンマーを振り下ろす。
これ程の重労働で得る1カ月の給料は、5000円にもならないらしい。
沈黙が支配する暗闇の中、男達は敬虔な表情で祈りを捧げる。
ここでは、人は何かを信じなければ生きていけないのかもしれない。
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