2009/01 - 2009/01
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JIC旅行センターさん
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ヤクーツクからヴェルホヤンスクへは、常設の自動車道路がありません。陸の孤島のようになっているので、飛行機を利用します。しかし、面倒なことに、ヴェルホヤンスクには現在空港がないので、直接飛んでいくこともできません。最寄りの空港は、ヴェルホヤンスクの東のバタガイという町にあり、ヤクーツクとは週に数便のフライトで結ばれています。大変ですが、まずはバタガイヘ向かい、そこからは陸路でヴェルホヤンスクを目指します。
早朝のヤクーツク空港では、まだ暗いうちから発着便が数多く設定されていて、利用客で賑っています。眠い目をこすりながら空港へ向かうのは辛いですが、昼間は濃霧が発生しやすくなるため、飛行機の発着にとっては朝早いほうが、都合がよいようです。
ここでちょっと霧の話をします。サハのような酷寒地では、しばしば濃霧が視界を遮ります。そのほとんどは、居住霧(キョジュウム)といって、特に人が生活しているところで発生します。暖房設備、車、工場の排気などに含まれている水分が霧となるからです。日本でも、冬になると吐く息や自動車の排気ガスが白っぽく見えますね。これがもっと大きなスケールで起こると居住霧になります。ちょうど、町全体が大空に白い息を吐いているような感じです。
居住霧は、過冷却状態の水分でできています。つまり、氷点下においても凍っていない、ちょっと不思議な状態の水なのですが、何かに触れると、この過冷却状態が壊れ、たちまち氷になってしまいます。これは霧氷(ムヒョウ)といって、日本では冬山の樹木などで見られる自然現象ですが、ヤクーツクではこの霧氷が街路樹から電線まで、あらゆるものにとりついています。特に、交通量の多い通り沿いは、ふんだんな排気ガスの恩恵を受けて、まさに氷漬けの町、というにふさわしい、凄まじい景色を作り出しています。
閑話休題、話をヤクーツク空港に戻しましょう。空港の敷地内で活躍する車の中に、見慣れないものがあります。見た目はちょっと古いデザインのトラックですが、後部から太いパイプが何本もにょろにょろと伸びています。この車、何に使われるかわかりますか?これは、駐機中の飛行機に暖房を供給するための車なのです。ある程度以上の大きな飛行機は、メインエンジンが停止していても補助動力装置から自力で暖房を供給できるのですが、小型の飛行機はエンジンを止めるとそのまま冷凍庫になってしまいます。
そこで、駐機中の小型機がエンジンを始動するまでの間、この車が暖房を供給するというわけです。仕組みは単純で、車の後部から伸びている太いパイプを飛行機の乗降口に突っ込み、強制的に暖気を送り込むだけです。しかし、それは一種異様な光景となります。先ほどの居住霧の原理の通り、猛烈な白煙が飛行機を取り囲むからです。
これからバタガイヘ飛ぶのは、その名もずばり北極航空(Полярные авиалинии)のアントノフ24型機―これはロシア全土に大変よく普及している、旧ソ連製の小型ターボプロップ機です―で、しっかりと暖房用パイプが差し込まれていました。機内に入ると、例の暖房用の管の先端が通路に遠慮なく這っていて、ちょっと邪魔ですが、超強力な温風でキャビンはポカポカです。
余談ながら、この暖房用パイプは、機体の左舷側から引き込まれていたため、乗客の我々は右舷側から搭乗しました。右側から飛行機に乗るのは、ちょっと珍しいですね。
キャビンの3分の1くらいのスペースは物資輸送用に充てられているようで、さながら貨客混載機という風情です。著しく陸路の未発達なヴェルホヤンスク方面への物資補給に、この航空路がどれほど重要な役割を果たしているか、容易に想像がつきました。
フライト時間は約2時間、機内サービスらしいものはありません。離陸してすぐレナ川を飛び越えると、眼下にはひたすらゆったりした山々がどこまでも続きます。植生は黒っぽい針葉樹の疎林ばかりの、モノクロの世界です。
エコノミークラスにしてはゆったり目のシートピッチで、快適なフライトが終わると、小さなバタガイ空港に着陸しました。エプロンに降りると、何と、複葉機が何機か見えます。21世紀に現役で定期旅客運用に就いているおそらく唯一のレシプロ複葉機である、アントノフ2に間違いありません。すごい!すごい!…などと興奮しているうち、違和感を覚えました。気のせいかあんまり寒くないのです。それどころか、ヤクーツクより暖かいようにさえ感じます。
そして、それは気のせいでなんかはなかったのです。
< 続 >
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