１）．旅の始めに<br /><br /> 　　　　　　　　　　　　　リズム踏み　枯野見下ろす　大水車<br />　　　　　　　　　　　　<br />　　或る日、中国で事業をしている友人から、「忘年会を中国でしよう」と、誘われた。行く先は、上海蟹の養殖で有名な「陽澄湖」がある「昆山」であった。<br />　　「昆山」での、舟形の料理屋での忘年会は、賑やかに始まった。蒸された蟹が運ばれ、好みの蟹を手元の皿に取り、蟹の解体に入るや、部屋は次第に静まって行った。蟹の解体に梃子摺るも、紹興酒を舐めながら、挑戦し続けた。やがて、会話が減り、蟹肢をせせる音も力なく、室内は、静寂へと陥って行った。<br /><br />2）．「蘇州西山風景区」へ<br /><br />　　次の日、僕は、冬の「太湖」を辿るため、蘇州へ向かった。この日は、晴てはいたが、気温は零度を割っており、防寒具をしっかり着込んでいた。<br />　　「蘇州西山風景区」は、蘇州市の西方に位置し、1994年に、「太湖大橋」が完成した。「西山島」は、「洞庭山」とも呼ばれ、「太湖」では最大の島であり、呉越時代からの旧跡があり、みかん、金柑等の柑橘類の果樹が豊富である。春節には観梅客で賑わい、高級緑茶の「碧螺春」の産地でもある。「西湖夕照」、「石公秋月」、「鳳凰煙雨」等の景点にも、出会った。<br /><br />3）．「西山島」へ　<br /><br />　　　　　　　　　　　　　　青魚干す　湖畔の村の　年の暮れ<br /><br /> 　　「西山島」では、東南の「明月湾古村」に向かった。「石公山」の入り口に、老人の形した巨大な太湖石が、「石公」と名付けられ、置かれていた。入り口付近の広場に、樹齢千年の楠木があり、広場と住区の間には、昔は、湖賊などから守るための濠であったが、今は舟泊りとなっている。橋を渡り、村へ入ると、淡褐色の絨毛に包まれ、かたまり咲く枇杷の白い花が咲いていた。庭先には、開きにした巨大魚が、縄にぶら下げられ、小魚や蝦等は筵に広げて、干してあった。<br />　　お昼近くに、船着場を見下ろす宿屋の食堂に入った。太湖「三白」といわれる銀魚、白エビ、白魚を使った魚料理に、裏の畑で取れた野菜やキノコを添えた地元料理である。淡白な味付けの魚料理中心の、食べ易い料理であった。ただ淡水魚の小骨の多さには、些か閉口はしたが。<br />　　　　　　　　　　　　　　<br />　　　　　　　　　　　　　<br />4）．「湿原公園」へ　<br />　　<br />　　食後、2004年頃から開発されている「湿原（土）公園」に向かった。「太湖大橋」を渡り、湖畔に沿い右回りに行くと、レストランが建ち並ぶリゾート地区に出た。その水辺に、巨大な水車が見えたが、2009年夏に完成した「湿地公園」のシンボルでもある大型水車であった。車から降り、湿地の中の桟道を歩いて、大型水車へ向かった。午後になっても気温は上がらず、桟道の脇で、鈍色の葦や、枯れ芒が風に揺れ、一層の寒さを誘った。<br />　　「水車広場」では、背抜きのウエディングドレスを着た女性たちが、震えながら立っていた。水車を背景に、結婚記念アルバムの写真を撮る順番を待っているのだ。順番が来ると、コートを脱ぎ、新郎と絡みながら、笑みを浮かべ写真を撮っていたが、中国では、80年后生まれの離婚率は、今や20％を超えているとも、聞いていた。<br /><br />5).　旅の終わりに<br />　　<br />　　その夜、ホテル近くの酒屋の前を通ったら、甘い香が漂ってきた。金木犀を入れた「冬醸酒」である。この日は、「冬醸酒」を飲み、冬至を祝う、祭日であった。<br />　　2009年の中国は、GNPが8%は超えたようである。不動産価格も、この1年で2桁の値上がりだと言われている。企業誘致のため開発された「工業園区」も「新区」も、今も、マンションブームの様である。中国経済の元気さは羨ましい限りだが、夜になっても灯りが点かないマンションが増えつつあるのは、些か不気味である。<br />　翌日、空席の目立つ最終便で、上海から帰国の途についた。(完)<br /><br /><br />＊　Coordinator: Gu Hong <br /><br /><br /><br />

【江蘇省】　蘇州　＊　太湖・西山を　旅する

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2009/12 - 2009/12

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１）．旅の始めに

　　　　　　　　　　　　　リズム踏み　枯野見下ろす　大水車
　　　　　　　　　　　　
　　或る日、中国で事業をしている友人から、「忘年会を中国でしよう」と、誘われた。行く先は、上海蟹の養殖で有名な「陽澄湖」がある「昆山」であった。
　　「昆山」での、舟形の料理屋での忘年会は、賑やかに始まった。蒸された蟹が運ばれ、好みの蟹を手元の皿に取り、蟹の解体に入るや、部屋は次第に静まって行った。蟹の解体に梃子摺るも、紹興酒を舐めながら、挑戦し続けた。やがて、会話が減り、蟹肢をせせる音も力なく、室内は、静寂へと陥って行った。

2）．「蘇州西山風景区」へ

　　次の日、僕は、冬の「太湖」を辿るため、蘇州へ向かった。この日は、晴てはいたが、気温は零度を割っており、防寒具をしっかり着込んでいた。
　　「蘇州西山風景区」は、蘇州市の西方に位置し、1994年に、「太湖大橋」が完成した。「西山島」は、「洞庭山」とも呼ばれ、「太湖」では最大の島であり、呉越時代からの旧跡があり、みかん、金柑等の柑橘類の果樹が豊富である。春節には観梅客で賑わい、高級緑茶の「碧螺春」の産地でもある。「西湖夕照」、「石公秋月」、「鳳凰煙雨」等の景点にも、出会った。

3）．「西山島」へ　

　　　　　　　　　　　　　　青魚干す　湖畔の村の　年の暮れ

　　「西山島」では、東南の「明月湾古村」に向かった。「石公山」の入り口に、老人の形した巨大な太湖石が、「石公」と名付けられ、置かれていた。入り口付近の広場に、樹齢千年の楠木があり、広場と住区の間には、昔は、湖賊などから守るための濠であったが、今は舟泊りとなっている。橋を渡り、村へ入ると、淡褐色の絨毛に包まれ、かたまり咲く枇杷の白い花が咲いていた。庭先には、開きにした巨大魚が、縄にぶら下げられ、小魚や蝦等は筵に広げて、干してあった。
　　お昼近くに、船着場を見下ろす宿屋の食堂に入った。太湖「三白」といわれる銀魚、白エビ、白魚を使った魚料理に、裏の畑で取れた野菜やキノコを添えた地元料理である。淡白な味付けの魚料理中心の、食べ易い料理であった。ただ淡水魚の小骨の多さには、些か閉口はしたが。
　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　
4）．「湿原公園」へ　
　　
　　食後、2004年頃から開発されている「湿原（土）公園」に向かった。「太湖大橋」を渡り、湖畔に沿い右回りに行くと、レストランが建ち並ぶリゾート地区に出た。その水辺に、巨大な水車が見えたが、2009年夏に完成した「湿地公園」のシンボルでもある大型水車であった。車から降り、湿地の中の桟道を歩いて、大型水車へ向かった。午後になっても気温は上がらず、桟道の脇で、鈍色の葦や、枯れ芒が風に揺れ、一層の寒さを誘った。
　　「水車広場」では、背抜きのウエディングドレスを着た女性たちが、震えながら立っていた。水車を背景に、結婚記念アルバムの写真を撮る順番を待っているのだ。順番が来ると、コートを脱ぎ、新郎と絡みながら、笑みを浮かべ写真を撮っていたが、中国では、80年后生まれの離婚率は、今や20％を超えているとも、聞いていた。

5).　旅の終わりに
　　
　　その夜、ホテル近くの酒屋の前を通ったら、甘い香が漂ってきた。金木犀を入れた「冬醸酒」である。この日は、「冬醸酒」を飲み、冬至を祝う、祭日であった。
　　2009年の中国は、GNPが8%は超えたようである。不動産価格も、この1年で2桁の値上がりだと言われている。企業誘致のため開発された「工業園区」も「新区」も、今も、マンションブームの様である。中国経済の元気さは羨ましい限りだが、夜になっても灯りが点かないマンションが増えつつあるのは、些か不気味である。
　翌日、空席の目立つ最終便で、上海から帰国の途についた。(完)

＊　Coordinator: Gu Hong