2009/05/04 - 2009/05/05
29位(同エリア56件中)
シュンスケさん
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朝7時、ウユニからのバスはラパスのターミナルに到着。町の喧騒の中に帰ってくると、あの静けさの世界にいたことがまるで夢の中の出来事だったかのように感じてくる。
さて、ラパスからの帰り便の出発は明日の夜。ウユニを一泊二日にしたのでラパスで一日半ほど時間ができた。さて、何をしよう。
宿の前の道に何軒かあるエージェントをのぞいてみると、サイクリング、トレッキングの文字が目につく。やっぱりアウトドアが気になってしまう。とは言っても一日半しかないし、と思いつつダメモトで聞いてみると「今から出ればトレッキング間に合うよ、一泊二日で6,000mの山登るのに装備レンタルすべて含んで100ドルぽっきり」とのこと。
えー!6,000mの山に登るのに、移動も装備も食事も宿泊もガイドも全部込で100ドル、これは安い。話を聞くと4,700mくらいまで車で行って登るらしい。「素人でも簡単に登れるよ」その一言につられてトレッキング行きを決めてしまった。本当に登っちゃうんですか?登っちゃうんですよ!
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登り終わっての感想。この手軽さで6,000mの世界を体験できるのはすごい。だけどクランポン装着でピッケル使用の登攀の上、それなりに難易度の高い氷壁を登ることになるので登山の経験がないと厳しいと思う。それと、ガイドがスペイン語オンリーなのでスペイン語を話せないとかなりの極限の中コミュニケーションをするのは難しい。だけど、それを抜きにしても6,000mの世界は素晴らしかった。
ワイナポトシ登山ツアー:100USD
初日:登山口(4,700m)→ ロックキャンプ(5,130m) 1時間40分
二日目:ロックキャンプ(5,130m)→ 最高到達地点(6,000m) 5時間30分
最高到達地点 → ロックキャンプ 1時間50分
ロックキャンプ → 登山口 1時間20分
【全日程】
□4/25
*NH6 成田 17:10 ⇒LA 11:10
*AA252 LA 14:30 ⇒マイアミ 22:15
*LA2511 マイアミ 23:55 ⇒
□4/26
*LA2511 ⇒リマ 4:35
*LA19 リマ 7:40 ⇒クスコ 08:55 ⇒マチュピチュ(タクシー、鉄道)
□4/27 マチュピチュ ⇒オリャンタイタンボ(鉄道)
□4/28 オリャンタイタンボ ⇒クスコ(乗り合いタクシー)
□4/29 クスコ ⇒プーノ(バス)
□4/30 チチカカ湖観光(船)
□5/1 プーノ ⇒ラパス ⇒(バス)
□5/2 ⇒ウユニ(ランクル)
□5/3 ウユニ ⇒(バス)
■5/4 ⇒ラパス(山登り)
■5/5
*LA2566 ラパス 21:55 ⇒リマ 22:50
□5/6
*LA600 リマ 1:05 ⇒LA 7:40
*NH05 LA 12:55 ⇒
□5/7 ⇒成田 16:25
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 観光バス 船 タクシー
- 航空会社
- ラタム チリ
-
そうと決まれば話は早い。持ってる装備を確認し、レンタル装備のサイズを測りにいく。ここで登場したのがクランポン。おおー確かに6,000mだったら雪あるもんな、人生二回目のクランポンだよ。
装備がそろったところで、近場のシェークスタンドでバナナシェークの腹ごしらえ。やっぱり腹が減っては…ですから。 -
11時、装備がそろいガイドと一緒に出発。ガイドは(ボリビア人なのになぜか)フランシス、22歳。僕とフランシスを乗せた車はラパス市内を離れ、ぐんぐんと高度を上げていく。
途中、ラパス市街を見渡す丘からパシャリ。盆地というよりもクレーターのような窪地に家々が密集しているのがよくわかる。 -
見晴らしポイントを過ぎると次第に荒涼とした土地になってきて、丘を越えた瞬間きれいなピークの雪山が目の前に広がった。そう、これが今から登る山Huayna Potosi(ワイナ・ポトシ)海抜6,088m。いざ目の前にするとちょっとビビる。ってか、後悔。やっぱり見栄はるんじゃなかった。トレッキングじゃなくて雪山登山じゃないですか。
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この世のものとは思えないきれいな景色を眺めながら、車はさらに高度をあげて登山口へと向かう。
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こんな人里離れたところに墓がつくられていた。天に近いところに、神である太陽に近いところに行くためなんだろうか。
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ラパスを出て一時間半ほどで登山口に到着。ここですでに高度4,700mほど。むむ、われわれは今この写真の④の場所にいて、今日は③のRock Campまで登り、明日①の頂上に向かうのか。昼ごはんをすませ、いよいよ登山開始。
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ここまでくると、なんか水もすごい色になってる。草津の白根山にある池もこんな色だったなあ。
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今日のベースキャンプからロックキャンプまでの道のりは標高400mほどの普通のトレッキング。写真は海抜4,700mから900mの地点まで続いているゾンゴの谷(Valle de Zongo)。これは見事な氷河地形。雄大という言葉がぴったりな風景を横に眺めながらフランシスのあとを追う。
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僕は自分の装備、水を持っているだけなんだけど、フランシスはそれ以外に僕の分のピッケルとクランポン、そして晩ごはんも持っている。それでも彼の歩くスピードについていくだけで息が切れる。これが5,000mか。
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最初はなだらかだった上りも、次第に岩が多くなってきた。このくらいの上りになると、少し登っただけで息があがる。で、違うのはもう少し標高が低ければある程度リズミカルに呼吸をしていけばなんとかなるんだけど、ここではなんともならない。すぐ酸欠状態に。
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ちょっぴり休憩。ヒイヒイ言っている僕を尻目にフランシスは余裕の表情。お願いだから肺を取り換えてくれ…
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途中、左手に氷河と氷河湖を望む。フランシス曰く、10年前は湖になっているところまで氷河だったんだけど、ここ数年溶けてきてどんどん短くなっているとか。フンザのウルタル氷河の時もガイドのMr.Gulが同じこと言ってたなあ。
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結局、途中からは写真を撮る余裕もなく、普通の岩場の道を1時間40分もかけてロックキャンプに到着。標高5,130m。400mほど登るのに1時間40分か。この先が思いやられる。
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ロックキャンプ5,130m。
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ロックキャンプの中のラウンジで温かいコカ茶を飲み、ほっと一息つく。結局今日は最後まで自分の登るペースがつかめないままだった。ラウンジは二階建てになっていて、一階はラウンジで二階が寝るスペース。
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ロックキャンプから上を見上げると、二泊三日で来ているパーティがクランポンとピッケルを使って斜面登攀の練習をしていた。↓の写真のノミみたいな小さな黒いのが人です。明日は富士山みたく明け方1時位に起きて、雪山装備でここを登ることになる。うーん、大丈夫かなあ。自分のペースがつかめればいいけど。
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この日ロックキャンプに来ていたのは登山客15人、ガイド8人くらい。隣の調理テントをのぞくと、みなの分の料理をつくっていた。みな山男だ。
いちばん右が僕のガイドのフランシス。 -
ロックキャンプの夕暮れ。この日は翌朝の登攀に備えて19時過ぎに床につく。標高も5,000mを超えると横になって眼をつぶってもなかなか寝付けず、次第にズキズキ頭も痛くなってきた。明日の登り900m、果たしてどうなることやら。
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夜中12時半、ガイドのフランシスに起こされ寝袋を出る。結局標高5,000mちょっとのロックキャンプでまったく寝つけなかった。横になった頃から痛くなった頭のズキズキは一向によくなる気配はない。重たい頭を抱えなんとか用意した朝食を口に運ぶ。
周りを見てもどの登山客も体が重そうだ。昨夜床に入ってからというもの、寝返りをうつ音やガサゴソと荷物を探る音が絶えることはなかった。みななかなか寝つけなかったんだろう。
朝食を流しこんだら装備を身につける。ゴアテックスを着込み、ザイルを結んでフランシスと身体をつなぐ。そしてクランポン(アイゼン)をつけ、ピッケルを手に取りいざ雪の斜面の前に立つ。
写真を撮る余裕なんてなかったので、前日の夕暮れを。 -
午前1時30分ロックキャンプを出発。気温はマイナス12度、風はそれほどないけれどじっとしていると身体の先のほうがすぐに冷えてくる。この時点ですでに写真を撮る余裕なんてない。山側に差したピッケルを支えにして、雪の上にギザギザのクランポンを突きさすように足をすすめていく。月明かりが雪面に反射しているので、ヘッドライトの明かりで十分登攀が可能な明るさだ。
高山病と思しき頭痛のせいか、単に心肺機能のトレーニング不足か、呼吸は昨日よりもさらにひどい。三歩進んだだけでもうまともに息ができない。急な登りでは二歩進んでは呼吸を整え、なんとか自分のペースをつかもうと手探りで足を進めていく。
1時間ほど経った時時計で高度を確認するが、まだ150mしか高度を稼いでいないことに愕然とする。ってことは頂上まで6時間ペース、最低でも200mは登ったと思っていたのに。まったく距離と高度の感覚がわからない。これが5,000mオーバーの世界か。 -
旅行の最終日、ゆっくり買い物でもしていればよかったのに何でこんなつらいことやっているんだろう?早めにギブアップして山小屋に戻っちゃえ。頭の中を何度もそんな思いが交錯するが、そこはドMの意地。中途半端なことが多い自分に決別するためにも、ここは最後まで登りぬきたい。そんな意地を抱え、ただただフランシスのあとを追って足を先に進める。ほんとバカだよ。
もう何時間経ったんだろう?頭の痛みは気にならなくなってきたが、次第に頭がボーっとして自分がどこにいるのか何をしているのかがわからなくなってきた。左足のレンタルブーツの状態がよくないらしく、さっきから濡れてきて感覚がなくなってきている。足だけじゃない。手袋で覆っているはずの手もあまり感覚がない。
思えば昨夜はウユニからのバス移動、その前も移動の連続、そしてロックキャンプでも寝付けなかった僕の身体はかなりよくないコンディションのはず。5,500mを過ぎてからは症状はさらにひどくなり2回ほど気を失いかけた。二週間後に振り返っている今でも、生き地獄のようなあの苦しみがこみ上げてくる。
ちなみにフランシスは超スパルタガイド。僕が身体の不調を訴えても「立ち止まったら凍え死ぬ、前に進む以外に選択肢はない」とバッサリ。Go or dieって。ロックキャンプに戻るという選択肢も暗いなかの下りは確かに危険。進むしかないのか…
6時を過ぎたころ、東の空が明るくなりはじめてきた。真っ暗だった世界が次第に光を取り戻してくる。ようやく僕も写真を撮るということを思い出した。ここで高度は5,900m。 -
と頭では考えるものの、身体はまったく言うことを聞いてくれない。高度、疲労、年齢、運動不足。目指す頂上はあともう一息なのに、身体も肺も油が切れた機械のように錆びついてしまっている。結局頂上まであと高度100m地点、標高6,000mで日の出を迎えた。
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ここまで来たからには意地でも頂上まで行きたかったけど、コンディションと時間を考え泣く泣くここで頂上を断念。下ってきた別のパーティを出迎えると無念さがこみ上げてきた。結局登山も中途半端じゃないか、悔しすぎる。
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登頂を断念した地点から頂上を見上げる。あーあとこれだけなのに。これだけの距離がなんて遠いんだ。
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精魂尽き果てた図。マジ限界。
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中途半端ではあるけれど、それなりに頑張ったということでフランシスと一緒に記念撮影。
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それにしても空は限りなく青く、山はただ白い。明け方の気温はマイナス20度。きらきら光るダイヤモンドダストがまぶしかった。太陽の光は極寒の地を一気に暖かくしてくれる。高地に住んだインカの人たちが太陽を神と崇めた理由がよくわかる。
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ゆっくりする暇もなく、すぐに下山を開始。
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上っているときは暗くてよくわからなかったけれど、ここまで来るとさすがに雪もすごい。これなんていつ雪崩がおきてもおかしくない。考えてみると、誰でも来れちゃうこのツアー、ちょっとすごい。
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稜線をロックキャンプへと下る。絵になるなあ。
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太陽の光でかなり暖かくなってきた。いったん陽が昇ると日差しが強烈。それにしてもすっかり雲の上にきちゃたなあ。
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どうしても断念したピークを振り返ってしまう。悔しい。体調も含めて自分の実力だなあ。
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登山道のすぐ横にぽっかりと口をあけたクレバス。登りでは暗かったからよくわからなかったけど、少し踏み外したら…と思うとむしろ見えないほうが恐怖感がなくてよかった。
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このあと9時過ぎに無事ロックキャンプに帰還。着いてみたらザックに入れていた水が凍っていた。その後、速攻で15時にラパスに戻ったあとお土産を買い込んで20時の飛行機でボリビアをあとにする。それにしても、30年間の人生で精神的にも肉体的にも一番追い詰められた日だった気がする。だけど空の美しさと朝日の神々しさは、その苦痛を補って余りあるものだった。
登山時に濡れた左足の指3本が軽い凍傷になってしまって、現在まだちょっとしびれがある。ウユニですっかりクライマックスかと思いきや、南米旅行の最後にこんなのが待っているとは。
ドMのみなさん、わずか100ドルで6,000mのピークに登れてしまうボリビアたまりません(頂上行ってないけど)。なんか神の存在を少し感じることができた気がします。なんか日常物足りないなあと感じたら、ぜひ行ってみてください。
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