2007/10 - 2007/10
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gibtalさん
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そんなこんなで私たちは仲良くなり、彼が
「もし良かったら、これから俺とシティ・ミュージアムに行かないか?」と誘ってきた。
彼は、どういうわけか、とても必死で「無料だし、すごく素晴らしいところなんだ!!」と付け加えた。
私は彼の熱意に負けるどころか、それを聞いてすぐに行ってみたいなと思ったのだが、
なぜか彼は、とにかく必死に私を誘ってきた。
私はもちろんオーケーした。
それから彼は「もう1杯俺はコーヒーを飲むが、君は何かいる?」と聞いていた。
私は断ったが、彼は2杯目のコーヒーもすぐに飲んでしまい、どうやら、とにかく一刻も早く
シティ・ミュージアムに行きたいようだった。
後で聞いた話だが、なんと彼は、そのシティ・ミュージアムに毎日(!?)通っていて、
現代絵画の勉強をしているとのことだった。彼は大学で美術を専攻したが卒業し
今は、アルバイトをしながら、ひたすら自分の腕を磨くことを熱心にやっているようだった。
そんなわけで私たちはカフェを出て、シティ・ミュージアムに向かった。
雨は止んでいたが、まだ曇っていた。
外に出ると、彼は、けっこう体格の良い青年で、しかもサングラスを外すと、まだ若い男だった。
年齢は言わなかったが、23・4ぐらいだった。
てっきり私は、もっと年のいった30過ぎのおじさんだと思っていたのだが。
彼は私よりも若いぐらいで、顔にはまだ若さがみなぎっていた。
シティ・ミュージアムは、まだ真新しい建物だった。中に入ると、早速彼は、色んなことを話し始めた。
まず彼に紹介されたのは、ブルガリアのすべての画家が「マスター」と呼ぶ人物の自画像。
彼は、その人物について、事細かに私に説明した。例えば、そのマスターは、何年に生まれ
何歳のときにどの国(アルゼンチンと、どこか)を旅したとか・・・それからブルガリアに戻ってきて何をしたか、
何を描いたか・・・などといった詳細な知識を彼は驚くほど持っていた。
それから、彼は私を別の絵の前に案内し、同じように画家の個人的な話から、その絵画の見方などを彼は
自分の感想を交えて、熱烈に語った。
とにかく彼は、どこで学んだのか、それらの絵に関する膨大な知識を持っていて、私はとにかく驚いた。
正直言って私は、彼の話を今ではほとんど覚えてないのだが、彼の、あの絵画に対する熱意だけは
決して忘れる事ができない。
ほとんど私には、それは、彼の魂から発せられる強烈なエネルギーに感じられた。
さっきまで、あのカフェで談笑していた彼とは違って、絵画を前にしたときの彼には
すさまじい情熱があった。たとえようもないほどの・・・まるで燃えさかる炎のような情熱。
私はそれを感じて、そのことに心を打たれ。感動した。
もちろん絵画の方も素晴らしかったのだが、それ以上に彼のエネルギーの方が強烈だった。
それに感化されたのか私も、とりあえず、絵画の正しい見方を彼から教わった。
まず彼は、画家のアイディアを賞賛した。
アイディア? そんなこと私は(絵をみるとき)考えた事すらなかった。
どんな光景であれ、ある一場面を切り取ったときの、そのアイディアが重要だ!と彼は言った。
それから次に大事なのが、テクニック。
彼の話によれば、最も素晴らしいテクニックは、斬新でオリジナリティがあるもの!とのことだった。
うむむ。これまた私はそんなこと考えたことすらなかった。
とはいえ、それは、文章テクニックに関しても似ているかもしれないと私は思った。
私はテクニックなど考えずにいつも書いているが、売れる作家の多くは、文章テクニックから入る・・・と
何かで読んだことがあった。例えば、私が村上龍の本を初めて読んだときには、そういえば
文体の斬新さとオリジナリティに驚いたな〜と思い出した。それに、町田康なども、ちょっと変わってる。
ともかく、彼は、(私には同じに見えるかのような)絵の違いを、事細かに説明して見せた。
そして彼は何度も「これは俺が一番好きな絵だ」とか「このアイディアは信じられないよ!」とか
「(この絵を初めて見たとき)こんな絵は今まで見たことがない!と思った。世界にひとつだけの絵だ!」などと話した。
彼は、毎日それらの絵を見ているにも関わらず、初めて見る絵のように、新鮮な眼差しで
すべての絵を見ていた。それでいて、まったく彼の話には尽きることがなかった。
他には、少なくともブルガリアでは、政治体制が絵の雰囲気に影響を与えると彼は話した。
確かに彼の言うとおり、1947年?ぐらいより前の絵は明るい雰囲気なのだが
1970年頃から、何かが怪しくなり始めた感が見え隠れし始め、
その後から1990年ぐらいまで(冷戦の頃は)疲れ果ててた肉体労働者など暗い雰囲気の絵が多くなり
そして最近の絵は、いかにも現代絵画っぽいのが多くあった。
私にも、それぐらいは分かった。実際それは一目瞭然だったのだが、あまりにも分かり易すぎて
逆にビックリするほどだった。
一通り私は彼に説明を受け、私は言えなかったのだが、彼の情熱にとことん胸を打たれた。
というのも彼は、そこにあった絵画の知識を私に与えようとしてくれたのだが、私は彼の話よりも
彼の熱意の方にばかり関心が行ってしまい、要するに、あまり絵画の方に対する感想などは
どうにもうこうにも、何と言えばいいのか分からなかった。
そんな私を見て彼は、どことなくガッカリしたようだったが、また、完全燃焼したかのようにも見えた。
しかし私はとりあえず
「あなたの絵は見たことがないけど、もしかすると美術評論家とか、ガイドの方が向いてるかも」と伝えた。
彼は納得したようで、まんざらでもない感じだった。
しかし彼にとって、これらの絵画を見ることは、ほとんど遊び・趣味であるが、生活の一部になっていると
言っていた。
ともあれ。とにかく私は、彼の絵画に対する<すべて>に感動していた。
果たして私に、彼のように、すさまじい情熱を傾けられる何かがあっただろうか?と考えたのだが
いまいち思い出せなかった。
しかし、真の理解には必ず感動と興奮が伴うように私は思う。
その理解には、涙があり、愛がある。存在についての理解・・・それは必ず人を真実に導くだろう。
感動のあるところに神はいる。
私は彼の存在を理解して、感動した。
彼の話し振りよりも、彼の・・・存在。
あそこに、どういうわけかで、存在していた、あの男。
みなぎる情熱。
私は今でも泣いてしまう。
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ブルガリアの画家が敬愛する
「マスター」と呼ばれる人物の自画像。 -
以下:シティミュージアムに飾ってあった絵画。
作者名は絵の下に書いてあったが、メモしてないし
みんな無名(?)の画家だった。
でも、すべてブルガリア人。 -
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何かの賞をとった作品。
ブルガリアの美大の教授だったと思う。
実物はデカイ。 -
冷戦時代に描かれたという労働者
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不思議な世界
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なぜか日本の戦国時代っぽい絵
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これは国立美術館で(密かに)撮影。
しかし、写真に撮ったことがバレて
係りの女性から怒鳴られ、
「撮った写真消しなさい!」と、言われたが、
消したふりして残っていた写真。 -
シティミュージアム入口。改装中。
入場料は無料。受付の人たちも親切で
絵を写真に撮ってもいいか?と尋ねると
「自由に撮っていい」との事だった。
「ただし購入したいなら・・・」などと、
聞いてもいないことを告げられた。
いくつかは非売品だったが、売ってるのも
あるらしかった。 -
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