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そんなこんなで私たちは仲良くなり、彼が<br />「もし良かったら、これから俺とシティ・ミュージアムに行かないか?」と誘ってきた。<br /><br />彼は、どういうわけか、とても必死で「無料だし、すごく素晴らしいところなんだ!!」と付け加えた。<br /><br />私は彼の熱意に負けるどころか、それを聞いてすぐに行ってみたいなと思ったのだが、<br />なぜか彼は、とにかく必死に私を誘ってきた。<br /><br />私はもちろんオーケーした。<br /><br />それから彼は「もう1杯俺はコーヒーを飲むが、君は何かいる?」と聞いていた。<br /><br />私は断ったが、彼は2杯目のコーヒーもすぐに飲んでしまい、どうやら、とにかく一刻も早く<br />シティ・ミュージアムに行きたいようだった。<br /><br />後で聞いた話だが、なんと彼は、そのシティ・ミュージアムに毎日(!?)通っていて、<br />現代絵画の勉強をしているとのことだった。彼は大学で美術を専攻したが卒業し<br />今は、アルバイトをしながら、ひたすら自分の腕を磨くことを熱心にやっているようだった。<br /><br />そんなわけで私たちはカフェを出て、シティ・ミュージアムに向かった。<br /><br />雨は止んでいたが、まだ曇っていた。<br /><br />外に出ると、彼は、けっこう体格の良い青年で、しかもサングラスを外すと、まだ若い男だった。<br />年齢は言わなかったが、23・4ぐらいだった。<br />てっきり私は、もっと年のいった30過ぎのおじさんだと思っていたのだが。<br /><br />彼は私よりも若いぐらいで、顔にはまだ若さがみなぎっていた。<br /><br />シティ・ミュージアムは、まだ真新しい建物だった。中に入ると、早速彼は、色んなことを話し始めた。<br /><br />まず彼に紹介されたのは、ブルガリアのすべての画家が「マスター」と呼ぶ人物の自画像。<br /><br />彼は、その人物について、事細かに私に説明した。例えば、そのマスターは、何年に生まれ<br />何歳のときにどの国(アルゼンチンと、どこか)を旅したとか・・・それからブルガリアに戻ってきて何をしたか、<br />何を描いたか・・・などといった詳細な知識を彼は驚くほど持っていた。<br /><br />それから、彼は私を別の絵の前に案内し、同じように画家の個人的な話から、その絵画の見方などを彼は<br />自分の感想を交えて、熱烈に語った。<br /><br />とにかく彼は、どこで学んだのか、それらの絵に関する膨大な知識を持っていて、私はとにかく驚いた。<br /><br />正直言って私は、彼の話を今ではほとんど覚えてないのだが、彼の、あの絵画に対する熱意だけは<br />決して忘れる事ができない。<br /><br />ほとんど私には、それは、彼の魂から発せられる強烈なエネルギーに感じられた。<br /><br />さっきまで、あのカフェで談笑していた彼とは違って、絵画を前にしたときの彼には<br />すさまじい情熱があった。たとえようもないほどの・・・まるで燃えさかる炎のような情熱。<br /><br />私はそれを感じて、そのことに心を打たれ。感動した。<br /><br />もちろん絵画の方も素晴らしかったのだが、それ以上に彼のエネルギーの方が強烈だった。<br /><br />それに感化されたのか私も、とりあえず、絵画の正しい見方を彼から教わった。<br /><br />まず彼は、画家のアイディアを賞賛した。<br />アイディア? そんなこと私は(絵をみるとき)考えた事すらなかった。<br /><br />どんな光景であれ、ある一場面を切り取ったときの、そのアイディアが重要だ!と彼は言った。<br /><br />それから次に大事なのが、テクニック。<br />彼の話によれば、最も素晴らしいテクニックは、斬新でオリジナリティがあるもの!とのことだった。<br /><br />うむむ。これまた私はそんなこと考えたことすらなかった。<br /><br />とはいえ、それは、文章テクニックに関しても似ているかもしれないと私は思った。<br /><br />私はテクニックなど考えずにいつも書いているが、売れる作家の多くは、文章テクニックから入る・・・と<br />何かで読んだことがあった。例えば、私が村上龍の本を初めて読んだときには、そういえば<br />文体の斬新さとオリジナリティに驚いたな〜と思い出した。それに、町田康なども、ちょっと変わってる。<br />ともかく、彼は、(私には同じに見えるかのような)絵の違いを、事細かに説明して見せた。<br /><br />そして彼は何度も「これは俺が一番好きな絵だ」とか「このアイディアは信じられないよ!」とか<br />「(この絵を初めて見たとき)こんな絵は今まで見たことがない!と思った。世界にひとつだけの絵だ!」などと話した。<br /><br />彼は、毎日それらの絵を見ているにも関わらず、初めて見る絵のように、新鮮な眼差しで<br />すべての絵を見ていた。それでいて、まったく彼の話には尽きることがなかった。<br /><br />他には、少なくともブルガリアでは、政治体制が絵の雰囲気に影響を与えると彼は話した。<br /><br />確かに彼の言うとおり、1947年?ぐらいより前の絵は明るい雰囲気なのだが<br />1970年頃から、何かが怪しくなり始めた感が見え隠れし始め、<br />その後から1990年ぐらいまで(冷戦の頃は)疲れ果ててた肉体労働者など暗い雰囲気の絵が多くなり<br />そして最近の絵は、いかにも現代絵画っぽいのが多くあった。<br /><br />私にも、それぐらいは分かった。実際それは一目瞭然だったのだが、あまりにも分かり易すぎて<br />逆にビックリするほどだった。<br /><br />一通り私は彼に説明を受け、私は言えなかったのだが、彼の情熱にとことん胸を打たれた。<br /><br />というのも彼は、そこにあった絵画の知識を私に与えようとしてくれたのだが、私は彼の話よりも<br />彼の熱意の方にばかり関心が行ってしまい、要するに、あまり絵画の方に対する感想などは<br />どうにもうこうにも、何と言えばいいのか分からなかった。<br /><br />そんな私を見て彼は、どことなくガッカリしたようだったが、また、完全燃焼したかのようにも見えた。<br /><br />しかし私はとりあえず<br />「あなたの絵は見たことがないけど、もしかすると美術評論家とか、ガイドの方が向いてるかも」と伝えた。<br /><br />彼は納得したようで、まんざらでもない感じだった。<br /><br />しかし彼にとって、これらの絵画を見ることは、ほとんど遊び・趣味であるが、生活の一部になっていると<br />言っていた。<br /><br />ともあれ。とにかく私は、彼の絵画に対する<すべて>に感動していた。<br /><br />果たして私に、彼のように、すさまじい情熱を傾けられる何かがあっただろうか?と考えたのだが<br />いまいち思い出せなかった。<br /><br />しかし、真の理解には必ず感動と興奮が伴うように私は思う。<br /><br />その理解には、涙があり、愛がある。存在についての理解・・・それは必ず人を真実に導くだろう。<br /><br />感動のあるところに神はいる。<br /><br />私は彼の存在を理解して、感動した。<br /><br />彼の話し振りよりも、彼の・・・存在。<br /><br /><br />あそこに、どういうわけかで、存在していた、あの男。<br /><br />みなぎる情熱。<br /><br />私は今でも泣いてしまう。<br /><br />

何も期待せず入ったカフェで魂の友と出会うことについて (4)

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2007/10 - 2007/10

477位(同エリア552件中)

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14

gibtal

gibtalさん

そんなこんなで私たちは仲良くなり、彼が
「もし良かったら、これから俺とシティ・ミュージアムに行かないか?」と誘ってきた。

彼は、どういうわけか、とても必死で「無料だし、すごく素晴らしいところなんだ!!」と付け加えた。

私は彼の熱意に負けるどころか、それを聞いてすぐに行ってみたいなと思ったのだが、
なぜか彼は、とにかく必死に私を誘ってきた。

私はもちろんオーケーした。

それから彼は「もう1杯俺はコーヒーを飲むが、君は何かいる?」と聞いていた。

私は断ったが、彼は2杯目のコーヒーもすぐに飲んでしまい、どうやら、とにかく一刻も早く
シティ・ミュージアムに行きたいようだった。

後で聞いた話だが、なんと彼は、そのシティ・ミュージアムに毎日(!?)通っていて、
現代絵画の勉強をしているとのことだった。彼は大学で美術を専攻したが卒業し
今は、アルバイトをしながら、ひたすら自分の腕を磨くことを熱心にやっているようだった。

そんなわけで私たちはカフェを出て、シティ・ミュージアムに向かった。

雨は止んでいたが、まだ曇っていた。

外に出ると、彼は、けっこう体格の良い青年で、しかもサングラスを外すと、まだ若い男だった。
年齢は言わなかったが、23・4ぐらいだった。
てっきり私は、もっと年のいった30過ぎのおじさんだと思っていたのだが。

彼は私よりも若いぐらいで、顔にはまだ若さがみなぎっていた。

シティ・ミュージアムは、まだ真新しい建物だった。中に入ると、早速彼は、色んなことを話し始めた。

まず彼に紹介されたのは、ブルガリアのすべての画家が「マスター」と呼ぶ人物の自画像。

彼は、その人物について、事細かに私に説明した。例えば、そのマスターは、何年に生まれ
何歳のときにどの国(アルゼンチンと、どこか)を旅したとか・・・それからブルガリアに戻ってきて何をしたか、
何を描いたか・・・などといった詳細な知識を彼は驚くほど持っていた。

それから、彼は私を別の絵の前に案内し、同じように画家の個人的な話から、その絵画の見方などを彼は
自分の感想を交えて、熱烈に語った。

とにかく彼は、どこで学んだのか、それらの絵に関する膨大な知識を持っていて、私はとにかく驚いた。

正直言って私は、彼の話を今ではほとんど覚えてないのだが、彼の、あの絵画に対する熱意だけは
決して忘れる事ができない。

ほとんど私には、それは、彼の魂から発せられる強烈なエネルギーに感じられた。

さっきまで、あのカフェで談笑していた彼とは違って、絵画を前にしたときの彼には
すさまじい情熱があった。たとえようもないほどの・・・まるで燃えさかる炎のような情熱。

私はそれを感じて、そのことに心を打たれ。感動した。

もちろん絵画の方も素晴らしかったのだが、それ以上に彼のエネルギーの方が強烈だった。

それに感化されたのか私も、とりあえず、絵画の正しい見方を彼から教わった。

まず彼は、画家のアイディアを賞賛した。
アイディア? そんなこと私は(絵をみるとき)考えた事すらなかった。

どんな光景であれ、ある一場面を切り取ったときの、そのアイディアが重要だ!と彼は言った。

それから次に大事なのが、テクニック。
彼の話によれば、最も素晴らしいテクニックは、斬新でオリジナリティがあるもの!とのことだった。

うむむ。これまた私はそんなこと考えたことすらなかった。

とはいえ、それは、文章テクニックに関しても似ているかもしれないと私は思った。

私はテクニックなど考えずにいつも書いているが、売れる作家の多くは、文章テクニックから入る・・・と
何かで読んだことがあった。例えば、私が村上龍の本を初めて読んだときには、そういえば
文体の斬新さとオリジナリティに驚いたな〜と思い出した。それに、町田康なども、ちょっと変わってる。
ともかく、彼は、(私には同じに見えるかのような)絵の違いを、事細かに説明して見せた。

そして彼は何度も「これは俺が一番好きな絵だ」とか「このアイディアは信じられないよ!」とか
「(この絵を初めて見たとき)こんな絵は今まで見たことがない!と思った。世界にひとつだけの絵だ!」などと話した。

彼は、毎日それらの絵を見ているにも関わらず、初めて見る絵のように、新鮮な眼差しで
すべての絵を見ていた。それでいて、まったく彼の話には尽きることがなかった。

他には、少なくともブルガリアでは、政治体制が絵の雰囲気に影響を与えると彼は話した。

確かに彼の言うとおり、1947年?ぐらいより前の絵は明るい雰囲気なのだが
1970年頃から、何かが怪しくなり始めた感が見え隠れし始め、
その後から1990年ぐらいまで(冷戦の頃は)疲れ果ててた肉体労働者など暗い雰囲気の絵が多くなり
そして最近の絵は、いかにも現代絵画っぽいのが多くあった。

私にも、それぐらいは分かった。実際それは一目瞭然だったのだが、あまりにも分かり易すぎて
逆にビックリするほどだった。

一通り私は彼に説明を受け、私は言えなかったのだが、彼の情熱にとことん胸を打たれた。

というのも彼は、そこにあった絵画の知識を私に与えようとしてくれたのだが、私は彼の話よりも
彼の熱意の方にばかり関心が行ってしまい、要するに、あまり絵画の方に対する感想などは
どうにもうこうにも、何と言えばいいのか分からなかった。

そんな私を見て彼は、どことなくガッカリしたようだったが、また、完全燃焼したかのようにも見えた。

しかし私はとりあえず
「あなたの絵は見たことがないけど、もしかすると美術評論家とか、ガイドの方が向いてるかも」と伝えた。

彼は納得したようで、まんざらでもない感じだった。

しかし彼にとって、これらの絵画を見ることは、ほとんど遊び・趣味であるが、生活の一部になっていると
言っていた。

ともあれ。とにかく私は、彼の絵画に対する<すべて>に感動していた。

果たして私に、彼のように、すさまじい情熱を傾けられる何かがあっただろうか?と考えたのだが
いまいち思い出せなかった。

しかし、真の理解には必ず感動と興奮が伴うように私は思う。

その理解には、涙があり、愛がある。存在についての理解・・・それは必ず人を真実に導くだろう。

感動のあるところに神はいる。

私は彼の存在を理解して、感動した。

彼の話し振りよりも、彼の・・・存在。


あそこに、どういうわけかで、存在していた、あの男。

みなぎる情熱。

私は今でも泣いてしまう。

  • ブルガリアの画家が敬愛する<br />「マスター」と呼ばれる人物の自画像。

    ブルガリアの画家が敬愛する
    「マスター」と呼ばれる人物の自画像。

  • 以下:シティミュージアムに飾ってあった絵画。<br /><br />作者名は絵の下に書いてあったが、メモしてないし<br />みんな無名(?)の画家だった。<br />でも、すべてブルガリア人。

    以下:シティミュージアムに飾ってあった絵画。

    作者名は絵の下に書いてあったが、メモしてないし
    みんな無名(?)の画家だった。
    でも、すべてブルガリア人。

  • 何かの賞をとった作品。<br />ブルガリアの美大の教授だったと思う。<br />実物はデカイ。

    何かの賞をとった作品。
    ブルガリアの美大の教授だったと思う。
    実物はデカイ。

  • 冷戦時代に描かれたという労働者

    冷戦時代に描かれたという労働者

  • 不思議な世界

    不思議な世界

  • なぜか日本の戦国時代っぽい絵

    なぜか日本の戦国時代っぽい絵

  • これは国立美術館で(密かに)撮影。<br />しかし、写真に撮ったことがバレて<br />係りの女性から怒鳴られ、<br />「撮った写真消しなさい!」と、言われたが、<br />消したふりして残っていた写真。<br />

    これは国立美術館で(密かに)撮影。
    しかし、写真に撮ったことがバレて
    係りの女性から怒鳴られ、
    「撮った写真消しなさい!」と、言われたが、
    消したふりして残っていた写真。

  • シティミュージアム入口。改装中。<br />入場料は無料。受付の人たちも親切で<br />絵を写真に撮ってもいいか?と尋ねると<br />「自由に撮っていい」との事だった。<br />「ただし購入したいなら・・・」などと、<br />聞いてもいないことを告げられた。<br />いくつかは非売品だったが、売ってるのも<br />あるらしかった。

    シティミュージアム入口。改装中。
    入場料は無料。受付の人たちも親切で
    絵を写真に撮ってもいいか?と尋ねると
    「自由に撮っていい」との事だった。
    「ただし購入したいなら・・・」などと、
    聞いてもいないことを告げられた。
    いくつかは非売品だったが、売ってるのも
    あるらしかった。

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