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2007年10月20日<br /><br />ブルガリアの首都ソフィアは、寂しくて、どこか物悲しい街である。<br /><br />街で一番の大通りには、たくさんの人が歩いていたが、皆、寒そうに下を向きながら歩いていた。<br /><br />どの建物にも華やかさはなく、たぶん旧共産党時代の名残が、いまだに漂っていた。<br /><br />街の中心には荘厳で巨大な建物があり、その近くには、同じく巨大なキリスト教の寺院があったが<br />それらを取り巻くようにあった黄色い広場が冷たい時代の何かを物語っているように思われた。<br /><br />私は、この日、昼食のために、あるレストランを探していた。<br /><br />それは街の中心から少し歩いた、若者が集まる(と言われている)繁華街の中にあるはずだった。<br /><br />しかし、その辺りの道は複雑で、また始め私は地図の見方を間違えてしまっていたので<br />簡単には見つけることができなかった。<br /><br />私は2時間ほど、街のある一角をウロウロし続けていた。<br /><br />ブルガリア人の若者たちが、ほどほど歩いていた。しかし皆、本当に寒そうで、ほとんど誰も<br />この日本から来た旅人の存在に気づかなかった。彼らは下を向きながら歩いていたからである。<br /><br />私はお腹が空いてきたので、レストラン探しを中断して、途中でピザを一切れ食べることにした。<br /><br />1Lv(=約85円)の割には大きくて、日本で普通に売ってそうな大きさの3倍はあった。<br /><br />街の隅っこで、ひっそりと隠れるようにあったピザの小さなファースト・フード店。<br /><br />店員はおばちゃん一人で、まったくの個人経営に見えた。<br /><br />しかし恐らく、その近辺ではまぁまぁ有名だったのか、ブルガリアの若者達が、私の後に<br />ぞくぞくと店に入ってきて、ピザを片手に寒空の下に出て行った。<br /><br />ブルガリア料理は煮込み系が多くて、チーズをふんだんに使った濃厚な味が得意なせいか<br />ピザもなかなか得意のようである。<br /><br />小腹を満たしてしまった私は、この後どうしようか・・・?と考えなくてはならなくなった。<br /><br />ぶ厚い曇り空の下で、外はかなり冷え込んでいて、少し雨が降っていた。<br /><br />ソフィアの街の観光は昨日の時点でほぼ終わっていた。<br /><br />というのも、見るべきところは、旧共産党本部近くに集中してある教会と博物館ぐらいしかない。<br /><br />そして私は明日には移動して、別の街に行くつもりだった。<br /><br />私は、てきとうなカフェにでも入って本でも読んで、時間をつぶそうと思った。<br /><br />近くには2軒のおしゃれなカフェがあり、私はそのうちの1軒に入った。<br /><br />何も期待せずに。ただ寒さをしのぐ為に、また、読書の為だけに。。。<br /><br />・・・<br /><br /><br />店内はほど良く暖まっていた。<br /><br />ブルガリアにしては少し高級?なカフェで、カプチーノが1杯3Lv ほどだった。<br />しかし、リラックスできそうな一人用のソファがいくつかあり、読書をするには最適そうに見えた。<br /><br />店員からカプチーノを受け取ると私は、空いてそうな席を探した。<br />いくつかの席には「Reservation」という札がテーブルに置かれていた。<br /><br />私は、柔らかそうなソファに座りたいと思ったが、予約なしのソファの相席は2つしかなく、<br />ひとつはすでに男性がひとりで座っていた。<br />もうひとつは空いていたが、黒革のジャケットが置かれていた。そこは誰も座っていなかったが、しかし<br /><br />誰かの洋服だけがあった。そして、その隣りには、サングラスをかけた男が一人でタバコを吸っていた。<br /><br />私は、その男に、「この席は空いてるか?」と英語で聞いた。<br /><br />すると彼は一瞬ビックリして、慌ててそのジャケットを掴み、口をパクパクさせた。<br /><br />何を言ったか分からなかったが、どうやらジャケットは彼の物で、席は空いてるみたいだった。<br /><br />たぶん彼は、いきなり英語で話しかけられたので、英語で返事をするのに戸惑ったようだ。<br /><br />私はそこで「いや、いいんです。ジャケットはそのままでも。私はこっちに座りたいだけなので・・・」と言った。<br /><br />彼はホッとしたようで、納得したが、ジャケットを持ち上げて、着ようとしたが、再び席に置いて笑った。<br /><br />私も笑って、席に着いた。<br /><br />そしてカバンの中から本を取り出して、読むことにした。<br /><br />けれども数分で、何か、なんとなく読書に集中できないことに気付いた。<br /><br />私は本から顔を上げて店内を少し観察した。<br /><br />店内はアフリカっぽい雰囲気で、どこか民族音楽のようなメロディが流れていた。<br />オレンジ色の壁にアフリカの大地の絵が描かれた布が貼ってあった。<br /><br />しかし、なぜか?店の名前は「Onda」と書かれていた。オンダ? 日本人の名前みたいだなと思った。<br /><br />というわけで、色々な意味で、そこのカフェはブルガリアらしくなかった。<br /><br />店のメニューは英語で書かれていたが、店員は私の英語を理解しなかった。<br /><br />しかし、店員の女の子たちは雑談をしながら楽しそうに働いていた。<br /><br />外のソフィアの街中とは対照的に、店内は明るく温かい雰囲気に包まれていた。<br /><br />店内の観察を一通り終えると、隣りの席にいたさっきの男が話しかけてきた。<br /><br />「どこから君は来たんだ?」 <br />(Where are you from? 以下すべて本当の会話は英語)<br /><br />日本。と私は答えた。 <br /><br />彼は納得したように、ニヤリとして、すぐに続けてこう言った。<br /><br />「このタバコはうまいよ」<br /><br /><br />

何も期待せず入ったカフェで魂の友と出会うことについて (1)

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2007/10 - 2007/10

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gibtal

gibtalさん

2007年10月20日

ブルガリアの首都ソフィアは、寂しくて、どこか物悲しい街である。

街で一番の大通りには、たくさんの人が歩いていたが、皆、寒そうに下を向きながら歩いていた。

どの建物にも華やかさはなく、たぶん旧共産党時代の名残が、いまだに漂っていた。

街の中心には荘厳で巨大な建物があり、その近くには、同じく巨大なキリスト教の寺院があったが
それらを取り巻くようにあった黄色い広場が冷たい時代の何かを物語っているように思われた。

私は、この日、昼食のために、あるレストランを探していた。

それは街の中心から少し歩いた、若者が集まる(と言われている)繁華街の中にあるはずだった。

しかし、その辺りの道は複雑で、また始め私は地図の見方を間違えてしまっていたので
簡単には見つけることができなかった。

私は2時間ほど、街のある一角をウロウロし続けていた。

ブルガリア人の若者たちが、ほどほど歩いていた。しかし皆、本当に寒そうで、ほとんど誰も
この日本から来た旅人の存在に気づかなかった。彼らは下を向きながら歩いていたからである。

私はお腹が空いてきたので、レストラン探しを中断して、途中でピザを一切れ食べることにした。

1Lv(=約85円)の割には大きくて、日本で普通に売ってそうな大きさの3倍はあった。

街の隅っこで、ひっそりと隠れるようにあったピザの小さなファースト・フード店。

店員はおばちゃん一人で、まったくの個人経営に見えた。

しかし恐らく、その近辺ではまぁまぁ有名だったのか、ブルガリアの若者達が、私の後に
ぞくぞくと店に入ってきて、ピザを片手に寒空の下に出て行った。

ブルガリア料理は煮込み系が多くて、チーズをふんだんに使った濃厚な味が得意なせいか
ピザもなかなか得意のようである。

小腹を満たしてしまった私は、この後どうしようか・・・?と考えなくてはならなくなった。

ぶ厚い曇り空の下で、外はかなり冷え込んでいて、少し雨が降っていた。

ソフィアの街の観光は昨日の時点でほぼ終わっていた。

というのも、見るべきところは、旧共産党本部近くに集中してある教会と博物館ぐらいしかない。

そして私は明日には移動して、別の街に行くつもりだった。

私は、てきとうなカフェにでも入って本でも読んで、時間をつぶそうと思った。

近くには2軒のおしゃれなカフェがあり、私はそのうちの1軒に入った。

何も期待せずに。ただ寒さをしのぐ為に、また、読書の為だけに。。。

・・・


店内はほど良く暖まっていた。

ブルガリアにしては少し高級?なカフェで、カプチーノが1杯3Lv ほどだった。
しかし、リラックスできそうな一人用のソファがいくつかあり、読書をするには最適そうに見えた。

店員からカプチーノを受け取ると私は、空いてそうな席を探した。
いくつかの席には「Reservation」という札がテーブルに置かれていた。

私は、柔らかそうなソファに座りたいと思ったが、予約なしのソファの相席は2つしかなく、
ひとつはすでに男性がひとりで座っていた。
もうひとつは空いていたが、黒革のジャケットが置かれていた。そこは誰も座っていなかったが、しかし

誰かの洋服だけがあった。そして、その隣りには、サングラスをかけた男が一人でタバコを吸っていた。

私は、その男に、「この席は空いてるか?」と英語で聞いた。

すると彼は一瞬ビックリして、慌ててそのジャケットを掴み、口をパクパクさせた。

何を言ったか分からなかったが、どうやらジャケットは彼の物で、席は空いてるみたいだった。

たぶん彼は、いきなり英語で話しかけられたので、英語で返事をするのに戸惑ったようだ。

私はそこで「いや、いいんです。ジャケットはそのままでも。私はこっちに座りたいだけなので・・・」と言った。

彼はホッとしたようで、納得したが、ジャケットを持ち上げて、着ようとしたが、再び席に置いて笑った。

私も笑って、席に着いた。

そしてカバンの中から本を取り出して、読むことにした。

けれども数分で、何か、なんとなく読書に集中できないことに気付いた。

私は本から顔を上げて店内を少し観察した。

店内はアフリカっぽい雰囲気で、どこか民族音楽のようなメロディが流れていた。
オレンジ色の壁にアフリカの大地の絵が描かれた布が貼ってあった。

しかし、なぜか?店の名前は「Onda」と書かれていた。オンダ? 日本人の名前みたいだなと思った。

というわけで、色々な意味で、そこのカフェはブルガリアらしくなかった。

店のメニューは英語で書かれていたが、店員は私の英語を理解しなかった。

しかし、店員の女の子たちは雑談をしながら楽しそうに働いていた。

外のソフィアの街中とは対照的に、店内は明るく温かい雰囲気に包まれていた。

店内の観察を一通り終えると、隣りの席にいたさっきの男が話しかけてきた。

「どこから君は来たんだ?」 
(Where are you from? 以下すべて本当の会話は英語)

日本。と私は答えた。 

彼は納得したように、ニヤリとして、すぐに続けてこう言った。

「このタバコはうまいよ」


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  • あれが旧共産党本部

    あれが旧共産党本部

  • ソフィアの街を象徴する巨大な教会

    ソフィアの街を象徴する巨大な教会

  • 教会その2 中は湿っていて臭い(笑)<br />

    教会その2 中は湿っていて臭い(笑)

  • 政府関係の建物(たぶん)

    政府関係の建物(たぶん)

  • 自然はどこでも美しい

    自然はどこでも美しい

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