2008/12/04 - 2008/12/06
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空飛ぶドクターさん
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【国内旅行に医者として添乗】
12月は私としては想定外の外国人の国内旅行に医者として同行しました。私がやろうとしている日本人の海外旅行に医者として同行するという形の逆です。安倍首相の時に制定された国のプロジェクトである JENESYS (Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youths) Programme(21世紀東アジア青少年大交流計画)の一部として、AFS(高校生の留学斡旋で有名な財団法人) 短期高校留学生660名が2週間の日本滞在のため来日しました。5年間のプロジェクトで、今年が2年目です。昨年の1年目にインフルエンザはじめ結構病人が出て苦労したらしく、医者の私に是非同行してくれという話が来たのです。何故なら、日本中探しても私くらいしかこんなことができる医者はいないからです。普通の勤務医や開業医は自由に長期の休みは取れません。私は海外旅行が主な目的とはいえ、「旅行に同行する医者」という日本初の仕事を目指し、そのためにフリーランスの医者になっているからです。自身が AFS 奨学生としてアメリカへ留学して以来、時々ボランティアとして活動しているので、東京の財団法人エイ・エフ・エス日本協会には多くの知り合いがいます。インド、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドの7カ国からの学生600名と引率の先生60名です。彼らは途中1週間は全国のボランティアの家庭でのホームステイを経験しました。10名の学生と1人の引率の先生、合計11名がグループ単位で各地の支部でホームステイしました。
12月4日から9日までの国内旅行(京都、阪神大震災跡、広島)に、そして15日から18日までの東京学習ツアーなどに私が同行しました。ただ残念なことに、バンコクの反政府派による空港占拠・閉鎖の影響で、タイ人66人は前半の国内学習旅行には参加できませんでしたが、何とか全国各地でのホームステイには間に合いました。不幸中の幸いでした。
私は福岡から初日の成田のホテルで合流し、AFS と今回の国内旅行の受託会社 JTB の関係者と打ち合わせをしました。私が着いたのは午後遅くでしたが、すでに生徒の一人が日本に到着直後に気分不良で病院にかかったそうでした。
翌朝は、成田国際文化会館へ全員移動し、全体的なオリエンテーションがありました。短期間とはいえ、ホームステイ中の注意事項や日本の文化などについて、主に大学生のボランティアが説明しました。私も予定通り、パワーポイントを使い医者の自分が同行していると自己紹介し、主に風邪と車酔いの予防の注意点などを説明しました。高校生が中心ですから、心筋梗塞や脳卒中などの心配はありませんので。
このオリエンテーションの前に会場で早速病人が出ました。しかも、私と同じバスの学生ボランティアです。高熱と嘔吐と下痢の症状です。本人はどうしても参加したいと言うので、薬で様子をみることにしました。結果的には、徐々に治まりました。
【京都へ移動】
私のバスは A 〜 T の20台のうちの K で、10台ずつ半分に分けた第2グループの先頭です。先述した11名のグループが3組で合計33名が一台のバスに乗り、夫々1名の添乗員と英語通訳と2名の学生ボランティアが乗っています。私の第2グループ(330名)は新幹線で京都駅へ移動です。第1グループ(330名)は、逆コースですので飛行機で広島へ行っています。ホテルは京都市内ではなく、滋賀県の大津の琵琶湖畔のホテルでした。若い生徒たちが羽目をはずして京都でトラブルに巻き込まれないように、わざと郊外のホテルにしたようでした。
最初この仕事を頼まれた時には、若い高校生がほとんどなので、そんなに病人は出ないだろうと甘く考えていました。ところが、この移動の初日だけでも、風邪症状2名、頭痛2名、車酔い2名と早速病人が出ました。幸い、以上の薬は予想して、ある程度準備しているので問診して薬を手渡すだけです。
夕方、携帯電話に広島に行った第1グループの一人が少し呼吸がおかしいと相談がありました。「特殊な肺炎」でステロイドを時々使っているということで、薬の名前はわかるということでした。ありふれた(細菌性)肺炎で、逆効果のステロイドを使うことはありえないので、何かおかしいと直感しました。通訳も病名などの英語は必ずしも得意でないので、正確に伝わってない可能性があると思い、患者本人と直接話しましたが、pneumonia(肺炎)とか bronchia(気管支、でも厳密には語尾が間違い)とかでらちがあきません。日本でも高齢者を中心によくあることです。患者自身が自分の病名などをきちんと言えないし、理解もしていないのです。仕方がないので、添乗員には広島の病院へ連れて行くように指示しました。後日談ですが、実際には bronchial asthma、つまり気管支喘息発作でしたが、結局軽くて治まり、病院には行かなかったそうです。しかも、手違いで JTB の責任者の手元には、こういう大事な既往歴のデータがあるのに、肝心の医者の私の手元には資料がありませんでした。ようやく、時々ステロイドを使っている理由がわかりました。
私が K バスで最初に印象的だったことに、「rubbish」という単語に出会ったことがあります。引率の先生が盛んにゴミを捨てないように注意しているので意味はすぐに想像できました。電子辞書でもすぐに確認しました。やはり、イギリス(オーストラリア)英語のようです。米語では、garbage または trash です。英語にはかなり自信のある私ですから、全部は意味を知らなくてもこんな重要な、基本的な単語で聞いたこともない単語というのは滅多にないからです。妙に新鮮な驚きでした。やはり、オーストラリア英語には私の知らない単語がたくさんあるのだろうと気を引き締めました。今回は留学生相手で英語の会話が中心とは言え、オーストラリア、ニュージーランド、インドとほとんどイギリス英語に近い国が中心です。フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア人には外国語としての英語です。
3日目、いよいよ本格的な観光です。でも、朝食時に昨日からの車酔いらしく、嘔吐と軽いめまいの女生徒がいて、薬を飲ませホテルで待機させました。今日は京都ですが、バス10台は多過ぎるので、これも半分のグループに分け、同じところでも逆の順番に回るのです。私の K バスはまず金閣寺へ行きました。私もさすがに何度か来たことがあります。最初は中学校の修学旅行で大分の田舎から来ました。そのせいか、私も昔を思い出してボランティアの学生や留学生と写真を一緒に写ったりして楽しみました。最近はデジカメで、フィルム代や現像代を気にしなくていいし、ウェブサイトに紀行文を載せるのに合わせて写真もアップするので、意図的にたくさんの写真を撮っています。
次は嵐山で、昼食後は竹林などを散策しました。名前だけでは行ったことがあるのかないのかはっきりしませんでしたが、実際に来て川を眺めていたらどうも見覚えがあります。この日の最後は清水寺で、中学の修学旅行でも来ました。しかも、外人なんかいない田舎で英語を一生懸命勉強していて、生まれて初めて外人に話しかけて喋ったのがここ清水寺でした。”Where are you from?”、”I’m from California.” という定番のやりとりをいまだに覚えています。普通の国の人は、国名で答えるのに、アメリカ人だけは州の名前で答えます。私が気のついた一つの面白い傾向です。当時は外人に話しかけることが珍しく(少なくとも田舎者には)、友達が写真を撮ってくれていたので、よく覚えています。それも当時ですから、白黒写真でした。京都は山ほど見所があると思っていましたが、その中でも今回の3ヶ所がハイライトなのでしょう。病人に関しては、この日は引率の先生が風邪で、ニュージーランドの生徒も夜、車酔いの症状で薬を渡しました。
(続く)
私は本邦初の「海外旅行に添乗する専門医」で、
「空飛ぶドクター」(登録商標)と名乗っていま
す。私のサービスに興味のある人はウェブサイト
http://www.kanoya-travelmedica.com を参考し
て下さい。
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