2006/03/03 - 2006/03/03
167位(同エリア177件中)
鹿間玲子さん
3月3日(金)第11日目
一人卒業旅行の第11日目。私は今回の旅でどうしても砂漠に行きたかったからだ。空も海も山も行ったことがある。けれど砂漠には行ったことがない。ならばこの最後ともいえる長期旅行で行くしかない! そう思って3泊4日だけは日本からツアーを申し込んだのだ。
ワルザザードは砂漠の入り口。そこから4×4のオンボロのランドローバーで砂漠を目指す。道なき道を行くというのはこういうことで、転落するんじゃないかと思うような山道をずんずん進む。赤茶色したカスバ街道、のしかかってきそうなトドラ峡谷。見るもの全て雄大でゆっくりと時を過ごす村人が羨ましかった。
観光スポットを回りながら、サハラ砂漠のメルズーガ大砂丘に到着したのは夕方。休む暇もなくラクダに乗換える。今日は砂漠のど真ん中のテントで一泊するのだ。まつげがうっとりするほど長いラクダさん。あどけない顔がかわいい。あー、本物のフンころがしだ! 興奮は冷めない。サンセットも見ることができた。何もない砂漠から見る夕日は本当にきれいだった。
一時間半ほどでテントに到着。トイレに行きたい。案内役のハッサンにトイレはどこ? と聞く。すると、「全部トイレだよ」とさらっと答える。え!? ってことはこの砂漠のど真ん中でおしっこしろって!? 悩む暇もない。この際、やるしかないのだ。少し暗くなるのを待って決行。小学生以来だななんて思いながら、自然のままに生きている彼らがすごいと思った。
野菜たっぷりのタジン(モロッコの伝統料理)と丸くて大きくてとっても美味しいパンを夕食に、日本人ツアーの3人はハッサンに呼ばれて彼のタムタム(ベルベルの太鼓)を砂漠で聞くことに。満天の星空と砂漠と太鼓の音色がマッチしてとてもロマンチックだった。毎日、天の川を眺め、流れ星をみて、沈む月を見送る。テレビがなくてもインターネットがなくても楽しく生きている砂漠に住む人たち。ふと気がつくと、私の物欲って何だ? と自分自身に問いかけていた。
若夫婦がテントに戻るというので一度皆で引き返した。私はタムタムとずっと見ていても飽きない満天の星が気に入って、ハッサンと再び砂漠に戻ることに。とてつもなく寒いので、彼が焚き火を作ってくれた。燃えそうな木を集め、たった一吹きでボワっと火を大きくする手さばきに惚れ惚れした。どんなに難しい試験で難関大学にパスするより、何もない場所で生きていくための術を持っているほうがよっぽどすごい。その瞬間、日本で感じていた全てがどうでもよくなってきた。しかも、ハッサンが素敵に見えてきた。なんだこの砂漠の魔力は!
焚き火に当たりながら私たちは流れ星の数を数えたり、話をしたり、ターバンの巻き方を習ったりした。ハッサンからアラビア文字とベルベル語の1から10までの数を教わった。空と砂が私のノートでそれはそれは忘れられない一晩になった。もっと一緒にいたかったが、寒さと眠気と疲れが出てきてテントに戻ることにした。何だか複雑な気持ちで夜明けを待った。
その後の旅の2週間中、この日の出来事が頭から離れなかった。ツアーが終わって一人フェズのホテルの鏡の前に立っていると、たった数日しか砂漠にいられなかった悔しさと都会で見る星の少なさ、時間を忘れて過ごした日の懐かしさと一人旅の寂しさが一気に込み上げて、自然と涙が出てきた。この気持ちは日本に帰って来た今でも変わらずにいる。いつか、またモロッコを旅したい。必ず。
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