2008/01/01 - 2008/01/07
103位(同エリア183件中)
356さん
2008年のお正月に旅した九寨溝、黄龍の記録です。
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【遠くチベット族の集落を望む】
朝8時。ロビーでガイドの李さんに小さな袋を渡される。
黄龍近辺はシーズンオフのため開いているレストランはもちろん商店もないのだ。
袋を覗くと菓子、パン、あめ、みかんなどが見えた。ちょっと笑える。まるで気分は遠足だ。
黄龍ではかなり歩くらしい。リュックは最低限にというきついお達し。僕は密かに酸素タブレットを忍ばせた。酸素ボンベが欲しいところだが、売っている店がなければ買いようがない。ちょっと残念。酸素ボンベを吸う写真を撮りたかったのに・・。(動機が不純!?) -
黄龍までは車で3時間ぐらい要する。車窓からチベット族の集落が見える。
ドライバーさんはクラクションを鳴らしながら快走する。彼は川主寺在住のチベット族だ。22歳。結婚したばかり。ガイドの李さんは成都出身、重慶在住の24歳。美人。偶然にも息子22歳、娘24歳。同じだった。
給油のためガソリンスタンドに入る。リッター120円ぐらい。想像以上に高くてちょっとびっくり。道路の向かいには高い山とチベット族の集落が見える。雲一つ無い快晴。本当に雲のひとかけらも見当たらない。 -
【海抜4000mの峠】
海抜3000m程の平地を快走していたが、いよいよ曲がりくねった坂道に入った。
峠を目指して車はグイグイ坂道を登っていく。日陰では凍ったところもある。
他に車は見当たらない。まるで別天地に迷い込んだ感じだ。 -
車窓から見える景色にとろけてしまいそうだ。まるでエベレスト登山をしているようだ。
標高はすでに富士山より高い。そして、車は滑り込むように4000m地点に到達した。 -
確かに空気が薄いと感じる。用心してゆっくり行動する。
直射日光がまぶしい。
エベレスト登山隊が真っ黒に日焼けするのがよくわかる。 -
トイレから出てくると少年が1元と手でジェスチャーをしながら近づいてきた。
学校なんて行かないんだろうな。ドライバーさんも学校にはほとんど行かなかったそうだ。
13歳から車の運転をしていると自慢する。 -
黄龍はもうすぐ近くだ。
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【黄龍入場】
九寨溝も確かに観光客は少なかったが、さすがにこれほどじゃなかった。
ここには誰もいない。今日の入場者数は僅か13人だそうだ。 -
黄龍は九寨溝と違って中に車は入れない。というか車の通れるような道がない。ただただ歩くのみである。昔は駕籠、今はロープウェイがあるらしいが、冬場はそんなもの、影も形も見当たらない。
現在の標高は3000m。目的地である五彩池は3700m。そこまで距離にして4キロ。丁度、去年登った開聞岳と高度差も距離も同じぐらいだ。まあ、違うといえば、開聞岳はほぼ高度0mからの出発だったが、ここは3000mってことぐらいか。って、本当に大丈夫か?買おうと思っていた酸素ボンベも手に入れられないままだというのに。 -
ゲートをくぐり、左に曲がってしばらく行くと森の中に入ってきた。後ろから野太い声で唄を歌いながら緑色の制服を着た若者が追いついてきた。
黄龍の管理人だという。僕らに同行するという。絶対、僕らを見張るつもりなんだ。 -
左からガイドの李さん、黄龍の管理人、そして妻。
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森の中を歩いていくと凍り付いた池が現れた。黄龍特有の棚田の面影がある。割れ口の青さに目を奪われる。
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森を抜けると迎賓彩池と呼ばれる棚田群が広がった。遠くに「タン、ターン」と大工さんの木をたたく音が響いている。閑散期の今が、一番のメンテナンスの時期なのだ。大がかりな改修工事が行われている。太い角材を何本も背負って坂を登る人を見かけた。聞くと70キロの重量があるという。
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再び森に戻り、しばらく坂道を登っていく。
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すると工事現場に出た。いや、洗身洞瀑布を見るための眺望デッキを作っているところだ。
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【洗身洞瀑布】
振り向くと氷の壁が立ちはだかった。 -
本来なら、ここは水の中だ。今、作業中のデッキからしか見られないはずなのだ。凍り付いているからこそのこの絶景。その時、氷の女王が降臨された。
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【黄龍下流】
洗身洞瀑布を右に見ながら坂道を登っていく。が、桟道が工事中のため、雪道を歩いて登る。滑りそうで、ちょっと怖い。 -
右手に洗身洞瀑布。
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洗身洞瀑布の上に出たら、その迫力ある景観に驚き、立ちすくむ。
全てが氷の世界。目に見えるところ全てが凍り付いている。春になれば、雪解け水で溢れかえるこの川が、今はじっと時を止めて凍り付いている。
まだまだ先は長い。上を目指して歩き始める。桟道がしっかりしているから歩きやすい。この材木を担いで運んだ人々に感謝だ。 -
ふと、後ろを振り向いて、・・心が打ち震えた。思わず、涙が零れた。子供の頃からずっと探し続けてきた青空にようやく巡り会えた、そんな気がした。
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【黄龍空気感】
冷たく突き刺さるような空気。凍り付いた桟道。
上の写真をオリジナルサイズで見て欲しい。
その空気感が伝われば・・と思う。 -
【黄龍中流】
日陰はもちろん、太陽の当たるところでも、池は凍り付き、夏場のまんまんと水をたたえた時の面影はない。 -
しかし、氷の下では動の世界が秘かに繰り広げられていた。
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そして、水がわき出しているのか凍っていないところもある。そこでは九寨溝に負けず劣らず綺麗な色を見せてくれる。
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もうちょっと高いアングルから撮りたいと手すりのうえに立ったら、監視員が大声で何か叫んでいた。
いやぁ、ごめんごめん。 -
小さかった正面の山、玉翠峰がだいぶ大きくなってきた。
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さっき、監視員がいた所から、撮影スポットを眺める。
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酸素が薄いとかの問題じゃなく、足腰の問題が急浮上。桟道が続く分は上り坂でもなんとかなるが、階段が続くとへばってしまう。足が上がらない。あぁ、キツイ。
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息も絶え絶え。
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そんな中、撮影スポットが現れると俄然元気になるから、気の持ちようってことか。
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写真を撮りながらで、遅れがちだったが、ガイドの李さんがトイレに行っている間に引き離しにかかる。ちなみに、閑散期ということもありトイレの数は制限されているが、それなりに桟道沿いに下から上まで無料で完備されている。
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氷の世界の中で時折エメラルドグリーンの表情を見せる。
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息も絶え絶え。一歩一歩、足を進めるので精一杯。
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玉翠峰がこんなに大きくなった。それでも、桟道はまだまだ続く。
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【黄龍上流】
寒さ対策万全で臨んだだけに、かなりの運動量で暑いぐらい。
酸素錠を食べながら桟道を登って行くととうとう見えてきた。 -
黄龍寺に到着。いよいよ五彩池かと思いきや・・・。
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通り過ぎても五彩池あらわれず。黄龍寺じゃなく、黄龍中寺なるものだったのね。
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桟道は続く、つづく。階段はキツ〜い。足が上がらない。
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ハッハッ、ゼィゼィ。
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そして、とうとう、ついに、本当の黄龍寺に到着。
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【 五 彩 池 】
黄龍寺の脇を抜けると五彩池展望所の標識があり、更に急な階段が右の山を登っている。僕は迷うことなく、そのルートを選択した。階段を滑らないように気をつけながら、踏みしめるように一段一段登っていく。 -
山の中腹にせり出すように作られた展望所。
眼下に五彩の池が広がった。 -
目はそのエメラルドグリーンの池に釘付けされながら、更に延びる細い道沿いに歩いていく。
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九寨溝の五彩池のような神聖な感じではなく、黄龍の五彩池は山を登り切ったという達成感がその美しさを何倍にもしてくれる。ただただ放心状態で展望所からボォーと眺める。思い出したように下を歩く妻を捜す。そういえば、誰もいない。僕らだけだ。
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中央の大きなデッキを右に行ったり左に行ったりしながら撮影を繰り返していたが、デッキから足を投げ出して座りこみ、カメラを置いた。
空気が冷たい。だが、風はない。音もない。時間が止まっているようだ。妻も李さんもとっくに降りていった。僕はひとりにんまり笑った。 -
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僕は思い出したように立ち上がり、歩き始めた。それでも、名残惜しくて、本当に名残惜しくて、何度も振り向いた。
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五彩池を後にし、どんどん降りていくと、下からドライバーさんが登ってきた。そして、次々と黄龍の管理人さんやら李さんやら妻やら。どうしたのかと思いきや、なかなか降りてこない僕のことを心配したらしい。てっきり高山病で倒れたに違いないと勘違いしたらしい。まあ、それくらい遅かったってことか。本当にごめんなさい。夢中になりすぎてました。
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黄龍は素晴らしいところだった。天気も最高だった。朝からずっと、本当に雲ひとつない天気だった。
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李さんに九寨溝と黄龍とどちらが良かったかと問われて、はたと悩んだ。九寨溝も黄龍も共に世界遺産に登録されている。しかし、こんなに近いところにあるのにそれぞれ別々に登録されているのだ。九寨溝の神秘性。黄龍の圧倒するような迫力と繊細な美。比較することに無理があるのかもしれない。
メインイベントは終わった。ここまで最高のコンディションが続き、怖いくらいだ。あとは明日無事に飛行機が飛んでくれることを祈るのみだ。 -
4000mの峠を再び越えて、ドライバーさんの地元の川主寺で車の修理をする。(急カーブの連続でブレーキが焼けた!?)
ホテルに帰り、夕食をとる。土曜日ということで客が多いことを期待したが、やはり少ないのか、バイキングにはならなかった。ちょっと残念。
部屋に戻り、ビールで乾杯。高山病の心配もなく、安心してワインも空けた。
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この旅行記へのコメント (2)
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- km45さん 2009/03/01 00:45:30
- 黄龍にも行かれてよかったですね
- はじめまして。
今年は暖かかったようで、写真を見ると、4000mの峠の雪がほとんどないですね。普通だと黄龍への道は通行不能なのですが、冬の黄龍が見られるなんて、うらやましいです。
さて、「黄龍の管理人だという。僕らに同行するという。絶対、僕らを見張るつもりなんだ」とお書きですが、この時期は客が少なく、しかも入口から奥の五彩地まで4km弱もありますから、監視というより、事故(高山病など)を配慮した同行と考えた方がよいですよ。とりわけ外国人ですから。
昨年1月に黄龍を訪れた方の場合、下りの途上で一人だけ蜷理、その後後から係員が急いで追いついてきて、安心した様子だったそうです。まずは事故もなく五彩地を見られたことはよかったです。
- 356さん からの返信 2009/03/01 08:02:47
- 神さまからのプレゼントでした。
km45さん、はじめまして。
この旅行記は昨年のお正月の記録です。
そう、この後、大寒波に見舞われ、あの地震が襲いかかるのです。
でも、みなさんの旅行記を拝見すると地震の後の九寨溝は何事もないようで、ホッとしています。
この旅行の期間中は晴天でした。
特に黄龍では朝から黄龍を去るまで、雲ひとつない天気でした。
将に神さまからのプレゼントでした。
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