2008/06/25 - 2008/06/25
12507位(同エリア13152件中)
ソフィさん
（Ｈ：ヒルティ Ｋ：私）
Ｋ「ヒルティさんこんにちは」
「30年も前からでしょうか。あなたのご本を読んでから、一度お会いしたいと憧れていました」
Ｈ「やぁ、こんにちは」
「遠くから来てくれて、ありがとう」
彼は想像していたとおり温かく穏やかな表情で、柔らかい両手で私の両手を抱え込むように握手してくれた。
彼の人柄は、初めての出会いから、長年の顔なじみのような親しさを感じさせる。
Ｈ「スイスはどうだい。気に入っているかね」
Ｋ「ここに来ると、何か落ち着きを感じます。国民がしっかりと支え合っている社会の安定感が、落ち着きの原因と考えますが・・・。その背景に、その風土を築き上げてきた分厚い歴史があるのでしょうねぇ」
Ｋ「ところで、お生まれになったのは1833年ですから、私の生まれた1930年の、ほぼ1世紀前ですね」
Ｈ「この一世紀の変化は激しかった。私の生まれたころは、ようやく蒸気機関車が走り始めたころだったね」
Ｈ「これまで早いと思っていた馬車の数倍速く、数倍の力がある蒸気機関車の出現にはぶったまげ、新しい世の中の到来を予感したものだった」
Ｋ「今に比べれば貧しくても人々の心は温かで、『古き良き時代』だったのではありませんか」
Ｈ「そうだねぇ。人間同士の信頼感がもっと強かったように思うね」
Ｈ「しかし交通や通信、情報技術の発展をみると、まるで別世界のようだね」
Ｋ「日常は便利になりましたが、人間の生きる悩みには本質的な変化はないのではありませんか」
Ｈ「いや、その所が問題だね。私の生まれたころは、国の危機はあっても『人類の危機』なんてことを考えなかったね」
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