1989/01/19 - 1989/01/19
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みどりのくつしたさん
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1月19日。
ホテル加宝では、宿泊費に朝食が含まれていた。
毎朝ロビーで、トーストを焼き、コーヒーを飲んでいる。
僕は、旅をしているとだいたい1日2食なので、無料の朝食は大事だった。
宿泊者の中には、朝食のトーストでサンドイッチを作って、1日過ごしている人もいたよ。
ホテル加宝に泊まっている人は、ロサンジェルスで働いている人と、旅行者に二分されていた。
ロサンジェルスで働いている人は、ホテルの朝食は取らない。
だから、毎朝ロビーで朝食をとるときに、旅行者とは、軽く世間話程度はしている。
このときまでにはもう20日近く泊まっていたから、ホテル加宝の旅行者とはほとんど顔見知りになっている。
ロビーでコーヒーを飲んでいると、カッコイイ男の子と話が始まった。
身長も1m80cm以上あるし、身体もがっしりしているし、顔もきりっと閉まった男前だ。
彼はカナダを1人で自動車旅行し、旅の終わりに車を売り飛ばして、カリフオルニアにやってきた。
昔TV局でADをやってたが、仕事がきつくて止めたとか。
大型のウエストポーチをいつもつけていた。
彼をカナダくんと呼ぶことにしよう。
翌朝10時頃、さて今日は何をしようかしらんと、1階のロビーに下りて行く。
ちょうどカナダくんが外に出て行くところだった。
どこへ行くのかと声をかけると、彼は「ユニバーサルスタジオへ」と言う。
僕は、それまでは「ユニバーサルスタジオ」なんて女子供の行くものと決めつけて、行くつもりは全くなかった。
もちろん「テーマパークへ1人で行ってもつまらない」と思ってたせいだけどね。
だが、何もすることがないのだから行ってもいいか?
毎日、ビデオを見て、本を読んで、夕方には英語教室へ行くのもだんだん飽きてきた。
カナダくんとは結構気が合ってたしね。
おじさんと格好いい若者が、2人でユニバーサルスタジオへ行くのもいいだろう。
4番街のホテル加宝から一番街へ歩き、さらに西へブロードウェイへ。
ブロードウェイからRTDバス(現在のMTAバス)424番に乗る。
424番はフリーウェイ101号フリーウェイを通るので、あっという間にユニバーサルシティにつく(現在では、ダウンタウンからメトロレッドラインですぐに到着します)。
バスを降りたのはフリーウエイの道路下だった。
他に誰も下りないが、ドライバーに聞いたので、降りた間場所に間違いはない。
地図を見るとちょっと歩きがあった。
高速の下を通って東へ歩くと、ユニバーサルスタジオへのトラム乗り場があるところへ来る。
空はとても素敵なカリフォルニアブルー。
本とTVばっかしの毎日とは今日はずいぶん違うぞ。
「男2人でユニバーサルスタジオに行ったなんて人には言わないどこうね」と僕。
「僕は構いませんよ。女と一緒だと面倒ですからね」と、カナダくん。
カナダくんは誰がどう見たって女にモテるので、男同士の方が気楽なのだろう。
僕は彼よりは一回り以上年上なのだが、女性の扱いにに関しては子供かな(涙)。
「ユニバーサルスタジオには日本人の女がどさっといるに決まってるさ。君が声をかけて、引っかけて、余ったのを一人僕に回してよ」
おいおいこれが40近くになったおっさんが20ちょっとの男の子に言うセリフかい。
ユニバーサルスタジオへは車で行くのが常識だ(ロサンジェルスはどこに行くにも車だからね)。
車のない日本人旅行者はオプショナルツアーで行く。
だが、これはただユニバーサルスタジオの入口まで運んで、その後ピックアップするだけ。
それで入場料の倍以上取るというぼったくりだ。
バスで来るのは僕たち長期旅行者がほとんどだろう。
この時期、日本人の個人旅行者が多かったので、同じような日本人に会うのではないか。
ユニバーサルスタジオへ続く坂道の下に来ると、がらんと広い道の向こう側を歩いている女の子がいる。
Tシャツやジーンズ、腰にセーターを巻つけているその体型とファッションから見て日本人だと判断する。
専用バスが止まっているのに気付かず、坂を上ろうとしている。
これで馬鹿な日本人だとはっきりした。
「オーイ、日本人!ユニバーサルスタジオはこのバスで行くんだよ!」と叫ぶ。
女の子は突然呼びかけられてびっくりしたようだったが、ぼくらを見て、小走りにこちらにやって来た。
一緒にバスに乗り込み、入場口へ向かう。
「一緒にうろうろしようよ!女の子一人だと危ないよ」と僕が説得して、3人で回ることにする。
カナダくんは「女なんかどうでもいい」といった顔つきだ。
僕は「男2人で来て、ユニバーサルスタジオの手前で女の子を一人捕まえたのはよかったー♪」と思っている。
この時はまだユニバーサルスタジオは改装前だった。
トラムツアーは入場ゲートを入った右横から出発していた。
さて、1989年1月19日のユニバーサルスタジオの入場料はいくらだったでしょう?
ズバリ18.95ドルでした。
1989年始めごろのレート(1ドル=135円)で考えると、2千5百円程度。
この文章を書いている現在(2008年)の一般入場料が64ドルだ。
現在のレートは「1ドル=105円」だから、6千7百円(涙)。
メチャ物価が上がってるよね。
7千円近くも払うならば、僕はよほどの覚悟をしないと、ユニバーサルスタジオにはいけないよ。
ただ、他でも書くと思うけれど、ユニバーサルスタジオはいろんな割引制度があるけどね。
まず行ったのが「ANIMAL ACTOR'S STAGE」だ。
これは動物がいろんな芸をするもの。
なごみ系の動物がいろいろいた。
ただ気になったことがあったんだよ。
それは、途中で司会者の女の子が出てきて、「どこから来ましたかー?」と声をかけたんだ。
「イギリスから来た人ー?」と声をかけると、「ハーイ!」とイギリス人が手を上げて声を上げる。
「フランス?」と聞くと、「ワーッ」と拍手があって、手を上げる。
「メキシコ?」でも同じだ。
それを繰り返していくから、もちろん日本人も呼ばれると思って、準備をしていた。
実際、日本人の家族連れとか、客席のあちこちに、結構日本人はいたからね。
ところが、「ジャパーン(日本)?」とは呼ばなかったんだ。
この時期は日本の経済が強くて、ロサンジェルスの高層ビルの7割は日本資本が買ったというくらいの時代だった。
だから、日本を考えないはずない。
つまり、わざと日本人に声をかけなかったんだよ。
僕はそのことがすんなりとわかった。
でも大人だから、「なぜ日本と呼ばないんだー!」などと場を荒らす気はなかったよ。
次に行ったのが、「THE STUNT SHOW」というなごみモノ。
西部の町を舞台にして、ガンマンのスタントを見せるというものだった。
次に「ユニバーサルスタジオ」のトラムツアーに参加した。
ユニバーサルスタジオは二つの部分に分かれている。
トラムツアーはユニバーサルスタジオの本質だ。
実際にユニバーサルスタジオの撮影所を見学していくんだからね。
もちろん、ただ撮影所の前を通っても面白くない。
そこで、トラムが通るところにはいろいろ仕掛けがしてあって、飽きさせない。
僕が好きなのは、「ジョーズがボートを引き込むところ」だけどね。
日本の「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」では、ここのところが、本家とはずいぶん違っているとか。
まあ、実際の映画スタジオのツアーを日本に持ってくることは出来ないしね。
日本の映画界にあるのは、修学旅行生向けの、せいぜい「東映太秦映画村」ていどのものだ。
実際に映画を撮影しているスタジオがあるということで、ユニバーサルスタジオは価値があるんだよ。
次に、「ADVENTURES OF CONAN」を見た。
さらに「STAR TREK ADVENTURE」を見た。
次がユニバーサルスタジオのプールつきの劇場でやっている「MIAMI VICE ACTION SPECUTACULAR」だった。
マイアミバイスは、ユニバーサルスタジオのメインアトラクションだった。
そのあと「WATER WORLD」に変わった。
でも名前は変わっても、水と花火を駆使したショーには違いない。
て、ずいぶん年月がたったので、そろそろ別のアトラクションに変わるかもしれない。
このあと、3人でユニバーサルスタジオの中を歩いていたら、歌手が4人で「Mr. Baseman」をキレイに歌っていたりして感動。
夕方になったので、ユニバーサルスタジオを出て、歩いて坂道を下り、バス停の所でタクシーを拾い、ハリウッドへ行った。
タクシーは6ドルでハリウッドのチャイニーズシアターへ行く。
ハリウッドブールバードで、軽く食事でもして帰りましょうという話になる。
ハリウッドブールバードの、安っぽい食堂「UNO」という店でピザを食べる。
3人で、大きなピザを一枚と、ビールのピッチャーを取って約17ドル。
城山君はジャズを聴きに行くと言って、1人でわかれる。
僕はジャズと聞いただけで頭が痛くなるので誘いを断る。
僕は夜にビールを飲むと、ただゆっくりと寝たくなる体質。
このときも、疲れたのでホテルへ帰りたいだけだ。
いままでの人生で女性にモテモテのカナダくんは、「変なおじさんに女を譲ってやろう」と思ったんじゃないかな。
20年たって思い返すと、そういう彼のやさしい気持ちがわかるけどね。
ところがそのころの僕は、まだまだ40歳前の世間知らずで、人生がわかってなかった。
今となれば、カナダくんの「世界旅行者さん、この女、やっちゃっていいですから」という意図がわかるけどね。
カナダくんと分かれて、女の子と2人きりになっても、時間が持たない。
というのは、僕は特にこの女の子とエッチをしたいとは思わなかったし。
だって僕は、お酒を飲むと、ただ眠りたいだけなんだから。
適当に口実を作って、分かれようとする。
ところがこの女の子は、泊まっている所まで1人では帰れないと言い出した。
そう言われて放り出すわけには、いかないだろう。
泊まっているところは、ハリウッドからちょっと西へ歩いた所だという。
仕方ない、夜道を送っていくことにする。
彼女が泊まっていたのは(イギリスの田舎に良くあるみたいな)一般の民家が食事付きで部屋貸しをしているB&B(ベッドアンドブレックファースト)だ。
ボストンにいた時に英文のガイドブックで調べて予約したのだとか。
値段を聞くと我が「ホテル加宝」よりも、ずーっと高い。
キャンセルして「ホテル加宝」に来ればいいのに。
誘うが「予約してるから」と答える。
「もうすぐ。もうすぐ」と言われながら人通りのないハリウッドブールバードをフェアファックスアヴェニュー近くまで歩くことになった。
30分近く歩いたと思う。
確かにこんな人通りの少ない所を女一人で歩くのは危険だ。
でも男一人で帰るのも危険なことには変わりない。
女の子を送り届ける。
彼女はB&Bの鍵を持っているので、気が利いているならば、「私の部屋に泊まっていったら?」と言うべきだったろうね。
こっそり部屋に入れば、エッチなしに寝ることは出来ただろうし。
まあ僕は泊まらなかっただろうけどね。
その後、バス乗り場まで歩いて戻る。
身の危険を感じて冷や汗をびっしょりかきながら、
周辺に注意を払いつつ、出来るだけ道の中央よりに小走りに歩く。
RTDバスは24時間運行なので、バスに乗ればダウンタウンに帰ることは出来る。
バスが来ることを期待して所々のバスストップで休んだりする。
が、誰もいない所でバスを待つのは襲ってくれというようなものだ。
バス停でちょっと休んでは、思い直してさらに歩き、ハリウッドとハイランドの角までたどり着く。
ここはチャイニーズシアターの斜め前だし、深夜とはいっても人通りがある。
しかしこんな時間(もう0時を回っていた)にRTDバスを待っているのはほとんどいない。
僕のほかには肥った黒人のおばさんだけだ。
#1のバスがやってきたので乗り込む。
真っ暗な中を、見知らぬ町を縫ってどこまでもバスは走る。
40分たった。
周囲の景色に変化はなく、ただ普通の町並みが続く。
ひょっとしてバスを間違えたのではと不安になる。
その場合は道端で夜を明かすことにしよう、どうせ米軍のアーミージャケットを着ているのだしこのまま野宿したってLAで凍え死ぬことはない。
などと考え始めたころ、ダウンタウンの高層ビル群の明かりが、ドカーンと目に飛び込んで来た。
助かった!
バスはヒルストリートに入る。
これを4thまで下るとホームレスが道端で寝ている、とても怖い道に迷い込むことになってしまう。
1stで下りてロサンジェルスタイムズ社の前を東に歩きリトル東京に入る。
そこから4番街にある「ホテル加宝」まで一気に駆け抜ける。
ホテルへたどり着いた時は汗びっしょりだ。
ホテル加宝のキッチンの冷蔵庫で冷やしておいたビールを2本飲む。
まあ、今日はちょっと変わってたからいいんじゃないか。
ユニバーサルスタジオを見れたわけだしね。
でもとにかく疲れた。
その時、「なぜ僕が、あそこまで女の子の世話をしなければならなかったの?」とは思った。
ちょっと親切にしすぎたかもしれない。
これからはちょっと反省しましょう。
http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/carver1989/0119.htm
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