1996/10 - 1996/10
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みどりのくつしたさん
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ホテルチェルナにチェックインしたが、まだ部屋代の7万レイ(2千百円)は、払ってない。
ホテルのフロントでの両替レート(1ドル=3300レイ)が、ちょっと安いと思ったからだ。
フロントに、「お金を両替してくるから」と言って、目の前のブカレスト北駅へいく。
ヨーロッパ各国の首都の駅には、当然国際列車が到着する。
それならば、駅の中に両替所があるに決まってるからね。
行ってみると、駅の中にはもちろん両替所があった。
そこのドルレートは、両替所の前に書いてあって、「1ドル=3400レイ」だ。
これならばとにかくホテルよりはいいのだから、さしあたり両替してしまいたい。
だが窓口は閉まっていた。
なぜだろう、日曜日だからだろうか?
でも日曜日だって、国際列車は走ってるはずだが。
僕は両替所で「何で開いてないんだよー」という感じで窓口を見ている。
両替所の窓口をトントンと叩いてみる。
それが開いたので、「両替したい」という。
すると、両替所の中に居た人が答えてくれたよ。
「レイがない!」ってね。
おいおい、両替所に自国の通貨がないなんて、あるわけがないよ。
僕は思ったね。
この両替所はチャウセスクの社会主義体制が国民によって打倒された、あの革命以前からここに存在する。
公務員がやってるんだなって。
とにかく公務員は、世界中共通に、「できるだけ働かない」ことを目標にしている。
おそらくは、チャウセスクの社会主義時代は、日曜日には両替業務自体を休んでたんじゃないかな。
ところが革命がおきて、チャウセスク体制は崩壊した。
体制は崩壊しても、なんとかゴキブリのように生き残るのが公務員というものなんだよ。
だから昔のまま、社会主義時代のキモチで駅の両替業務をやっている。
ただ、資本主義になると、日曜日だからと、駅の両替を休むわけにはいかない。
そこで、「両替したいが通貨レイがない」という言い訳を作って、仕事をしないでいるんだ。
つまりただ、サボりたいってことね。
ほとんど99パーセント間違いのない推測が、僕の頭の中を瞬間によぎった。
でもだよ、両替できないのでは困るね。
このとき僕の手には、「Lonely Planet Eastern Europe 3rd edition(1995)」が握られていた。
25歳くらいの革ジャンを着た、かなり格好いいルーマニア人の若者が、声をかけてくる。
彼は「その本はいいねー。君は日本人だろう」と英語で話しかける。
全体的に余裕のある、冗談の通じそうな男だ。
「日本人ならば黄色のガイドブックをつかわないのか?」などと続ける。
ちょっと怪しげだが、英語はとてもきれいなので、もともと学問はありそうだ。
僕は、両替のことを聞くことにした。
すると「1ドルを3500レイで両替するところへ連れて行こうか」という。
ホテルでは3300レイだったし、駅の両替所では3400レイとある。
オラディアで見つけた両替所は3485レイだった。
だから、3500レイはあるだろう。
ただ、声をかけてきた若者を信用できるか、というとそれはまた別。
若者についていって、路地を入ったところで、ナイフを突きつけられたら、オワリだ。
だいたいが日曜の昼間に、駅に居ること自体が完全に怪しいんだから(笑)。
だから、「列車を調べているところだから」と断った。
両替にそんなに積極的ではない雰囲気を出す。
僕は気が弱いので、列車を調べると言った以上、調べ始める。
若者にいちゃもんつけられたら怖いからね。
時刻表をチェックする。
隣国ブルガリアの首都ソフィアへは、RAPIDがあり、朝7時50分と夕方の7時55分(19:55)がある。
それぞれ16時53分と朝の5時45分にソフィアに到着する。
昼の列車は9時間、夜の列車が10時間かかる。
イスタンブールへは昼の12時55分に出て、午前6時15分に到着。
これは、さすがに17時間かかる。
ついでにベオグラード行きを調べると、夜の9時15分(21:15)に出て、到着が午前9時23分。
これは、12時間だ。
ただしこれはもちろん、10年以上前の1996年秋の話です。
でもだいたいの乗車時間の見当をつけるには役に立つかもね。
僕はできるだけ身体に無理をかけたくない。
だから、昼間の列車に乗って、明るいうちにソフィアに到着できれば、それが一番いいわけだ。
それに、ルーマニアからブルガリアへの国境に、確か大きな橋(友好橋)があるはず。
ドナウ川に架かる橋を渡るならば、昼間でなければならない。
その点でも昼間の列車は都合がいい。
問題は到着時間だ。
午後5時にソフィアに到着して、それから宿を探すことになる。
これが問題だよね。
この旅はそんなに急いでいるわけではないから、ブルガリアの国境の町ルーセまで行って、そこで一泊することも可能だ。
一泊して、朝から移動して、昼ごろにソフィアに到着できれば、ホテルを見つけるのも楽だし。
でも、そんなことは今は考えないようにしよう。
駅で列車の時刻を調べたのは、若者への言い訳だったんだから(笑)。
僕は若者に手を振って挨拶して、地下鉄駅へ入った。
これから、ブカレスト一の名所「共和国宮殿(Palace of Republic)」へ行きます。
【旅行哲学】よい子は怪しい人についていかない。
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