2007/08/28 - 2007/08/28
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フーテンの若さんさん
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ブータンを旅行中、たくさんの日本人旅行者たちと出会った。4日目の滞在で、その数は既に延べ40人以上にものぼる。
ブータンの場合は観光ルートが限られており、決まったホテルやレストランにみな訪れることになるから余計なのだろう。そこでは、日本と間違えるくらい日本語が多く飛び交っていた。日本人客のほとんどはご年配の団体ツアー客。彼らは少しも英語を話そうという気がないから、ブータン人にも「もう一杯お茶ください」とか「砂糖ないかな」とそのまま話しかける。応対するブータン人も慣れたもので「はいどうぞ」、「ありがとございましゅた」と丁寧に答えてくれる。訪れる日本人の多さから、従業員も自然と日本語を覚えていくようだ。
ブータンを訪れる日本人旅行者は年間約1,500人。アメリカに次いで2番目に多い数字だという。なぜ、これほどまでにブータンを訪れる日本人は多いのか?
ホテルのテラスでプナカの景観を見て寛いでいると、日本語が聞こえてきた。
「そんで、あんたとこの息子さんは何してりゃーすの?」
思いっきり僕の地元の名古屋弁丸だし。声の向こうを見上げると、老人会のようなご年配のお達者集団がビールを囲んで大いに盛り上がっていた。懐かしく思ってちょっと声を掛けてしまったら、矢継ぎ早な質問攻めに遭う。
「一人でツアーしとるなんてええ身分やな。あんた、財閥かいな」
「そんで、あんたは日本で何してりゃーすの?」
「名古屋の何処かね?わたしりゃーは瀬戸からでよぉ」
「ほんで独身かね。新婚旅行にまたブータン来なかんがね」
ほんのちょっと立ち話のはずが、話が長いのなんのって。一つ答えると、芸能レポーターのようにすぐに次の質問を飛んでくる。
「ほんでまた、あんたは何でブータンに来たの?」
いや、昔の日本のような生活や人に会ってみたくて。僕がそう答えると、「そうか、そうか。やっぱり同じやな」と口を揃えて同意するご老人たち。
「今の日本の子供なんか目が腐っとるやろ。会う度に小遣いくれだの、何かくれだの。それに勉強もせんと、ゲームばかりしとるからいかん。その点、ブータンの子供の目はええ。彼らの目は濁っとーりゃーせん。綺麗で、まだ純真そのものだで」
「わしらもそういうのを見たくて、はるばるブータンまで来とるんよ」
「それに田んぼの風景はいいでよー。日本の田舎とそっくりで。心が和むでよ」
今度は彼らがブータンのよさを一方的に語る展開へと変わってしまった。日本人がブータンを訪れる理由。それは旧き良き日本に会いたいからであろう。
手付かずの自然。伝統と文化を今も大切に守る風土。生活に深く根付いている仏教。暖かい人間関係。素朴な暮らしぶり。車やコンビニなしには生きていけない社会にはないものが、まだブータンには残っている。日本人は、過去の日本を懐かしんでここを訪れるのだ。
と、話が一段落したと思いきや、
「プナカの次は、どこへいきりゃーすかのー?」
「ブータンの御飯はでりゃおいしいでよ。あんたは何が好きかね?」
「瀬戸の陶器は有名だで一度遊びに来なかんわ。あんた知っとる?」
・・・話はまだまだ終わりそうにない。
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この道を行けば どうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せば その一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ 行けばわかるさ
ガイドのテンジンは完全に道に迷ったようだった。チョルテンを目指し、出発してからもう2時間近くも山道を彷徨っている。偶然出会った村の少年に道を案内してもらったはいいが、今度はその少年が携帯電話を山中に落としてしまい、道を逆戻りし、大捜索が始まる始末。おいおい、そのチョルテンとやらには、一体いつ辿り着けるのだ?
そもそもこのガイドのテンジン。ガイドとしての質をたまに疑いたくなるほどのドジをやらかしてくれる。
パロでのタクツァン僧院に登ったときには、中に入るのに必要な許可証を車の中に忘れてきたし(山の中腹でそのことに気付く。ゲートで根気よく説明したら中に入れてもらえたけど)。ワンデュのチミ・ラカンに登ったとき、彼は行方不明になった。焦って探していたら、野糞をしていたし。寺院のなかで、神様の名前や仏教の細かいことについて質問しても、知識不足でさっぱり答えられない。おまけに日本語をかなり忘れていて、深い意思疎通はまったく難しいし。途中で風邪をひいて元気はなくなるしで。
仕事ははっきりいって大雑把。ガイドとしては失格かもしれない。しかし、人しての評価は満点以上。彼のいいところは、それら全てを補う「実直さ」があるのだ。僕がどんなに無茶な注文をしようと、彼はそれに答えようとひたすら努力する誠実な性格を持っている。
例えば、僕が民家を訪問したいと言い出せば、近所に家がなくとも必ず何処かアテを探し出してくれたし。夜、呑みに行きたいといえば、田舎でも店を見つけて案内してくれたし。子供の写真が撮りたいといえば、嫌がる子供もブータン語で説得させて、カメラに収めてくれる。 -
ブータンでは、彼のように一途な人間は特別な存在ではない。ひたむきで真面目な仕事振りは、ブータン人の共通するところで、少なくとも僕がこれまで接したブータン人全てからそう感じとることができた。そこがブータン人のいいところであろう。
今日もテンジンと一緒に、棚田の急な上りを駆け上がっていく。
この道の先がどうなっているのか、さっぱりわからない。でもテンジンとならば、行けばわかるさ。彼の一足、着いて行く僕の一足が、着実に道となっていく
・・・はずだよね、テンジン。
もうそろそろ着いてもいいんでない?
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