2007/08/28 - 2007/08/28
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フーテンの若さんさん
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都心に住むインテリ層や英語ガイドたちは、GNH(国民総幸福)の概念や思想をよく理解しているようだった。
尋ねてみると、早口な英語でペラペラ説明してくれる。彼らに「あなたは今、シアワセですか?」と尋ねると、一様にみなシアワセだと答えてくれた。但し、彼らの話はやや模範的で、観光客用のリップサービスであるようにも思える。僕が今回訪れたのはたった1週間であったし、彼らの本心まで探ることができなかったのは残念だった。
僕が納得しない表情のままでいると、察したのかこう注釈を付けた。「国が掲げているGNHという思想を、全てのブータン人が理解しているというわけではないんだ。田舎の人たちのほとんどは、GNHという言葉自体も知らないだろうし、考えたこともないだろう。それほど、都心と山間部に住む人たちの間では情報格差が激しいのだよ」。
ワンディ・ポダンのホテルで夕食を取った後、僕のガイドであるテンジンにも聞いてみた。
テンジン、GNHは知っている?
「・・・はい、知ってます」(かなり自信なさげだ)
じゃ、あなたは今、シアワセですか?
「・・・うーん、それはちょっとワカリマセン」(あれ?)
てっきり幸せだという答えを僕は期待していた。だって、テンジンはガイドの仕事もあって、奥さんと結婚して、子供も二人出来て、シアワセなんじゃないの?
「うーん、それはですね。ガイドの仕事も毎日あるわけじゃないですし。もっとたくさん仕事をして、もっとお金を稼ぎたいですね」
お金があればシアワセってこと?
「・・・うーん、それもワカリマセン。でももっと楽になりそうです」
じゃ、将来はたくさん稼いで、BOSS(社長)になりたいということ?
「ハハハ。そこまではナイです。ワタシには無理です、はい」
物質文明の波がブータンにも容赦なく押し寄せている。その波が素朴な人たちをゆっくりと変えようとしている。
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ほとんどの若者が最新の携帯電話を所持している。インターネットカフェでパソコンに向かっていたり、プレイステーションをする姿を目にした。ケーブルテレビでは、インドのドラマやアメリカの映画が(場所によってはNHKまで)洪水のようにガンガン流れている。インドから流入するドラッグやエイズは社会問題化しつつある。首都ティンプーでは一泊1000ドル以上もするリゾートホテルが建設中だ。
確実に近代化が進んでいるブータン。そのなかでチベット仏教の伝統を守りつつ、GNHという思想を柱とした国づくりは本当に実現できるのであろうか。
ガイドのテンジンも一昔前であれば、さらに上を目指そうなどとは思わなかったのではあるまいか。溢れ出る情報で彼は知ってしまったのだ。世の中には、更なる金持ちがいて、上の待遇があり、自分より豊かな生活があるということを。
“今よりもより良い生活をしたい。そのためにはお金が必要だ。だから、もっと仕事をしたい、出世したい、家族を楽にさせたい、いい生活をしたい"
高度成長期の日本はそう思って、モノばかりを追い求めていった。いつしかモノがチカラに変わっていき、それがスベテとなった。その結果、シアワセに成り切れなかった現代の日本がある。ブータンも日本と同じ道を結局、辿ってしまうのであろうか。
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テンジンに最後の質問を投げてみた。じゃあさ、日本人とブータン人、どっちがシアワセだと思う?
「・・・うーん、難しいですね。それもワカリマセンね」
モノが溢れている日本人と答えなかったのが一つの救いであった。
モノやオカネを求めて過ぎてはいけない。それに奪われて、豊かなココロを忘れてはならない。物質的な豊かさよりも、精神的豊かさを持つことのほうが遥かに大切である。目に見えないものの価値を大事にする。それこそがGNHの概念であるはずだ。
こういった変わりつつある人がいる中で、GNHがこれからどのように展開されていくのか。ブータンという国がどう変わるのか。非常に楽しみである。
数年後にまたブータンを訪れたとき、テンジンにまた同じ質問をしてみようと思う。旅行者の勝手なエゴなのかもしれないが、彼の澄んだ瞳の輝きがそれまで失われないことを期待していたい。
ブータン人はさ、みんな澄んだ目をしているよね?ずっとそのままでいて欲しいと僕は思うんだよね。とテンジンに言うと、
「はい、日本人はカラーのコンタクトしたりする人います。眼の色がちょっと違う人もいますからね」
ち、違う。そういう意味でないってば!まったくこの天然キャラもいつまでも変わらないでいて欲しいなあ。 -
月は世界中、何処から見ても同じに見えるはずだ。
ところが、月明かりに照らされた町の風景は、場所が変わるとこうも感じるものが違うのであろうか。
人のざわめき、車の騒音、ディスコのネオン。そんなものとはまったくの無縁の世界。ただひたすら静寂が町をゆるやかに包んでいる。
おそらく大昔から変わらないのであろうパロの町の風景。
完全な平和が地上にあるとすれば、それは今ここにある風景を指すに違いない。
ブータン最終日パロでの満月の夜、僕は幸せな気分に満たされたのであった。
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