2007/07/26 - 2007/07/27
260位(同エリア338件中)
そよ風さん
尾瀬には雨がよく似合う。
湿原に降る雨は、時おり激しく、また静かな霧雨となって森を、緑の大地を潤します。激しい雨に煙る湿原を白い霧が覆ったかと思うと、瞬く間に霧は流れ、鮮やかな緑が現れる。淡い光は速い雲の流れによって瞬時に明暗をつくりだしては、湿原にやさしい色合いを奏でる。そう、雨雲の絶え間ないリズムによって、雨は強く弱く、踊るように降りながら湿原を駆け抜けていくのです。
福島県に位置する燧ヶ岳と新潟と群馬の県境にある至仏山、この二つの山の間に広がる本州最大の高層湿原が尾瀬で、その二つの山の端から端へとコースをとり、沼山峠から山の鼻まで横一直線に尾瀬を横切るかたちで歩いてみました。
標高2000mの山々に囲まれた尾瀬は、湿原や湖沼、森と変化に富んだ自然の宝庫で、その景色の美しさはもちろんのこと、誰でも容易く歩けるのが最大の魅力です。またそれゆえ多くの人が訪れることで、自然へのダメージも少なくないのですが、この美しい自然を目にして、それを維持していくことの大切さを知ることに繋がればと思います。
尾瀬の美しさは、日本のたおやかなる自然の美しさを代表するともいえて、麗しい緑の山々と森がつくりだす清らかな水を集めて広がる湿原は優しさに満ちていて、その風景から誰しも心のやわらかな部分に触れられる快さを感じるのではないでしょうか。
梅雨明けの遅れている関東地方の天候は安定することなく、夜行バスが群馬に入った頃に雨が降り出し、朝5時に沼山峠に着いた時は小雨でした。レインウェアを着込み、ザックカバーをかけ、雨の備えを万全にして出発します。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円 - 3万円
- 交通手段
- 観光バス
-
沼山峠から森の中に入ると、登山道は植生保護のため木道が敷かれています。
木道は歩きやすくていいのですが、雨に濡れた木道は滑りやすいので
歩幅を小さくとり、滑らないように注意して歩きます。
雨の森で、さかんにウグイスが鳴いています。
葉から落ちる雨の雫が、ポタン、ポタンと傘に落ちては軽やかなリズムを刻みます。
沼山峠から尾瀬に入るこのコースは、最短で湿原に出られるコースです。 -
シラビソの樹林の先が明るく開けてきました。大江湿原です。
森から湿原へ、森と原の境界は明暗を二分する地点で、森から原へ飛び出したときの開放感は何ともいえないものがあって、たとえ雨の日であっても、光の量が一気に増す瞬間に喜びを感じるのは私だけではないでしょう。 -
大江湿原はニッコウキスゲの大群落が見られる場所です。
水芭蕉で有名な尾瀬ですが、私は緑の草原に黄色いニッコウキスゲがゆれる尾瀬が好きで、来るたびこの季節を選んでしまいます。
いままさに尾瀬の主役はニッコウキスゲです。
その年によって花の多い少ないがあるそうですが、多いときでは大江湿原一面が花で埋まり、黄色い絨毯を敷きつめたようになります。
今年のニッコウキスゲは全体的に少なめ、湿原の場所によってはたくさん咲いているところもあります。 -
木道の脇で、湿原のはるか遠くで、緑の草の海と黄色い花のコントラストが夏らしい光景を見せてくれます。
晴れていれば、これに青い空が加わって、さらに夏らしさを盛り上げてくれるところですが、雨の日は、また違う夏の美しさがあるのを知りました。 -
一日中、降ったり止んだりの空模様でしたが、とても楽しく雨の湿原を歩くことができました。
傘をさして木道に屈んでは、花たちを写真に撮りました。
花びらについた水滴をキラキラと輝かせて、花たちも得意気です。 -
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大江湿原を過ぎると尾瀬沼です。
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このとき雨は本降りとなって激しさを増したので、小屋で休憩することにしました。
おいしい水がつくる薫り高いコーヒー、山で飲むコーヒーは味も格別です。
一息いれて小止みになった雨の中を歩き出します。
沼を左に眺めながら歩ける森のトレイル。
雨に煙る沼の向こうには、墨絵のような景色が広がっています。 -
沼のほとりには、尾瀬の景観にマッチした木造の長蔵小屋があります。
尾瀬に初めて山小屋をつくり、燧ヶ岳の登山道を開拓した平野長蔵氏から3代に渡って尾瀬の歴史に関わり
日本の自然保護運動のさきがけとなったいきさつもあり、それらは自然と人との関係においても興味深い事実があります。
時代は流れ、2003年、長蔵小屋が周辺に廃材などの廃棄物を不法投棄していたことが判明。その翌年には従業員2名に執行猶予付きの有罪判決がお下り、山小屋には罰金120万円が命じられたという事件が起こりました。
初代から引き継がれた自然を愛する精神は脆くも崩れ去ったということなのでしょうか、自然との共生、言うに易しく行うに難しを物語っているといえます。 -
長蔵小屋から尾瀬沼を挟んで反対側が沼尻平です。
小屋では昔、渡し舟を使って沼を横断していたそうですが、環境破壊につながるとの批判に舟を廃止しました。 -
晴れていれば沼のむこうに燧ケ岳が見えます。
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尾瀬沼からシラビソの森を2時間ほど行くと、いよいよ尾瀬ヶ原です。
5軒の小屋が並ぶ見晴らし十字路は、尾瀬の中心地にあたります。 -
ここから山の鼻まで6kmの距離で、広大な湿原は「はるかな尾瀬 遠い空」と歌われた歌詞のごとく、見渡すかぎりの広い原に木道が延々と続きます。
さえぎるもののない大きな空と緑の湿原にぽつんぽつんと点在する池塘の景色は、尾瀬のハイライトシーンです。
コース途中にはベンチが設置されているので、晴れた日なら、青空を見上げ、心地よい風に吹かれてのんびり過ごすのもいいでしょう。
標高1400mの湿原を渡る風は、爽やかそのもですから、、。 -
池塘に浮かぶヒツジグサ、花の直径5cmくらいの小さな睡蓮。
雨は池に輪を描いては消える、可憐なヒツジグサと雨のコラボレーション、時を忘れて見入ってしまいます。 -
-
このかわいい葉は何でしょう?
葉っぱの影はハート型、というのもかわいいですね。 -
湿原は多種多様な植物の宝庫です。
何時間でもうずくまっていたいくらい、興味の尽きない世界があります。 -
湿原では木道の取替え工事が行われていました。
足に優しい木の道は、コンクリートと違い朽ちるのも早いです。
環境との相性もよい木道は何年かごとにこうして新しくされ、尾瀬の自然が守られます。 -
沼尻川を越えると群馬県に入ります。
小さな森をぬけ、中田代から上田代へと湿原はつづきます。
一瞬、陽射しが差し込み青空が見えましたが、それもつかの間、傘の出番はなくなりません。 -
湿原をゆくカラフルなレインウェアが緑に映えます。
雨の日ならではの光景、グレーの空との対比も鮮やかなその後姿を写真に撮っていたら、グループの一人のかたが、
「派手やけどきれいでっしゃろ、後ろから見てる分にはいいけど、前に回ってみたらみんな年寄りだて、がっかりするようだけどな、、」
そういって笑いました。 -
60代以上のグループの皆さんですが、どなたもお元気、確かな足取りで歩いていきます。
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重そうな荷物を背負い、黙々と木道を行くボッカさん、
さあ、私も頑張らねばと歩を進めます。
登山口を出発してから、すでに9時間が経過、雨に湿った靴と背負った荷物に疲れを感じる頃です。 -
ガスがたちこめる前方に、至仏山がぼんやり見え隠れしてきました。
きょうの宿、山の鼻に到着です。
丸一日降り続いた雨、明日は天候の回復が期待できるでしょう。
よい天気を願いつつ早めの就寝、明日は至仏山へ登ります。
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この旅行記へのコメント (4)
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- 旅猫さん 2007/07/30 13:04:11
- 尾瀬か〜
- そよ風さん、こんにちは。
尾瀬、あいにくの天気だったようですが、湿原の景色はさすがに綺麗ですね。
木道や池塘があるだけでワクワクします。
湿原は大好きなので♪
尾瀬には、もう二十年近く前の秋に訪れたきりですが、今でも、あの素晴らしい風景は目に焼きついています。
立山の弥陀ヶ原も良かったなぁ。
久しぶりに行ってみたくなりました。
旅猫
- そよ風さん からの返信 2007/08/03 23:21:39
- RE: 尾瀬か〜
- 旅猫さん、こんばんは☆彡
雨の湿原、とてもよかったです!
今回ばかりは、まったく雨を苦にせず長い時間楽しく歩けました。
雨でなければ見ることのできない景色の数々、
それは湿原特有の水との相性のよさにあるのでしょうか、、
しっとりとして、何もかもが水をふくんで輝いている様子、
沼に降る雨は、浮世絵に描かれた雨の線のごとく、
地塘に落ちる雨粒は、ヒツジグサといっしょになって踊っているようですし、
白い霧が流れては消えて周囲の森を幻想的に見せてくれるなど、
雨ならではの景色の変化もまた美しいものでした。
山ですと、雨を楽しむ余裕どころではなくなりますが、
湿原に降る雨は、そのリズムといい、
より湿原らしさが感じられて、思いがけなく楽しい一日となりました。
これも、尾瀬だからかもしれませんね。
-
- はんなりさん 2007/07/30 10:11:12
- 懐かしい尾瀬
- そよ風さん おはようございます。
>日本のたおやかなる自然の美しさ
まさに〜
約40年ほど前の六月末になりますが長蔵小屋に泊まり
尾瀬を歩いた記憶がいまだに鮮明に蘇ってきます。
それほど尾瀬は魅力あるところです。
こうしてそよ風さんの旅記を拝見させて頂き
また今の年齢で歩いてみたいと思っていますが。。。
素敵な旅を有難うございます。
- そよ風さん からの返信 2007/08/03 23:05:16
- RE: 懐かしい尾瀬
- はんなりさん、こんばんは☆彡
>約40年ほど前の六月末になりますが長蔵小屋に泊まり
>尾瀬を歩いた記憶がいまだに鮮明に蘇ってきます。
わぁ、ずいぶん昔のことですね〜
私も、ほぼ20年ぶりの尾瀬でしたが、
山小屋がすっかりきれいになっているので驚きました。
でも、尾瀬の風景は昔と変わりなくほぼそのまま、
美しい自然がこれからも変わりなくと思います。
今回は至仏山にも登ってきたのですよ、
花が豊富と聞いていましたが、そのとおりで、
苦労して登ったかいがありました。
何度訪れても、尾瀬はいいところですね。
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