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「リオの有名ビーチ『コパカバーナ』、『イパネマ』では、実はサーフィンできる波はほとんどないのよ。」まったく無知な僕に対し、インフォメーションのお姉さんは丁寧にわかりやすい英語で教えてくれた。<br /><br /> どおりで一昨日も昨日もサーファーの姿が見えなかったわけだ。じゃ、サーフィンするには何処へ行けばいいの?<br /><br /> 「大丈夫。『SURF・BUS』があるわ。」と自信たっぷり口調でお姉さんは答えた。<br /><br />何でもメトロ駅「ラルゴ・ド・マチャド」から南方面のサーフポイントを周る巡回バスがあるのだという。しかも、そのバスにはサーフボードが置ける専用の台があり、移動中は随時サーフビデオが流れているサーファーのための専用バスであるらしい。<br /><br /> おお、さすがサーフィン大国ブラジル。そしてその中心地リオ。こんな便利な移動手段があるなんて素晴らしいじゃない。でも、僕は板を持ってきていないけど大丈夫かな?<br /><br /> そこまではインフォのお姉さんもわからないらしく、とにかくサーフバスで直に聞いてほしいとのことだった(出発時刻は7時、10時、13時、16時の4便)。<br /><br /> あくる日の10時10分前に、僕は出発地である「ラルゴ・ド・マチャド」に来ていた。本当にそのバスが走っているのか不安だったけど、実際にそれはすぐにわかった。オレンジ色の車体には大きく「SURF・BUS」とかわいい書体で書いてある。<br /><br /> 勢いよく飛び乗ると、地元のおばさんらしき二人とサングラスかけたヒッピー風若者、寝ているガンジーのような爺さん、の四人しか乗客はいなかった。バス名のサーファーらしき人なんて全然見当たらない。<br /><br /> 出発時刻の10時を5分ほど超えた頃、ガンジー爺さんがおもむろに起き出し、エンジンを掛け始める。ヒッピー若者は、僕から運賃を徴収し出した。この二人はお客ではなかったのだ。お客は僕とおばさん二人のみ。ちょっと予想とは違ったけど何はともあれ「SURF・BUS」出発でございます(綾小路きみまろ風表現)。<br /><br /> このサーフバス、内装こそ大分年季が入っているものの、ちゃんとサーフボード専用台もあるし、サーフィン映像が流れるTVも完備されてあった(このときはケリー・スレーターのドキュメント映像が流れていた)。ヒッピー風若者(添乗員?)に、お奨めサーフポイントを聞いてみると、終点地である「プラインハ」というビーチへ行けと言われた。ここは他で波がないときでも、まずサーフィンができるからだという。この添乗員風ヒッピーの仕事はTVのスイッチを入れるのと、地元の人たちと駄弁ることしかしていない。これで労働賃金をいくら貰っているのだろうと不思議に思ってしまった。<br /> <br /> バスは南へ向かうに連れ、次々と客を拾っていった。そこでようやくサーフボードを抱えた地元サーファーたちを乗って来て、ようやく「SURF・BUS」っぽい雰囲気が出てくる。特にこのバスはバス停があるわけではない。ビーチ沿いを走っているので、気が付いた乗客は手を挙げ乗せてもらう。日本の千葉や湘南にもこんなバスがあれば便利なのになぁ。何よりサーフポイントの場所もわからない外国人サーファーにとってこれほど心強いものはない。しかもこのバスの運賃は3レアル(180円)。終点で僕が赴いた「プラインハ」まで所要1時間30分の距離だから、かなりのコストパフォーマンスだ。<br /><br /> いつの間にか、バスの中は10人弱のサーファーたちで溢れていた。みな目的地は僕と同じ「プラインハ」のようだ。他のポイントでは波があまりないみたい。<br /><br /> 「プラインハ」へは移動時間1時間30分きっかしの11時30分に到着した。どうやらガンジー爺さん運転手は時間をきっちり守る人のようだ。板が借りれるかどうか不安だったけど、現地に行くと、これまたヒッピー風のレゲトンっぽい若者がいて、適当な板を貸してくれた。<br /><br /> 「プラインハ」は「コパカバーナ」や「イパネマ」の混雑振りが嘘のように静かで綺麗なビーチだった。こじんまりとしているが、外国人観光客などおらず、隠れ家的穴場ビーチのようだった。サーフィンの方は、コンスタントに力強い波が押し寄せており、ポイントはかなりのサーファーで混雑していた。通常は腰程度のサイズだが、セットになると頭ぐらいまで大きくなる。ビーチブレイクでなかなかいい波だった。<br /><br /> しかし、僕はここで大きな波に巻き込まれて、自分の板で右脹脛をぶつけて怪我をしてしまう。肉離れのような激しい痛み。最初は大したことないと思っていたけど、徐々に腫れ始めて、普通に歩くことも困難なほどになってしまった。<br /><br /> 足を伸ばして筋肉を解していると、親切なサーファーが大丈夫かと声を掛けてくれた。流暢に英語を話すので、尋ねてみると、彼は須藤元気と同じジムに所属していて、なんと格闘技「プライド」参戦のため7回も来日したことがあるという(猪木ボンバイエにも出場経験あり)。その割には、ぼよんと太っていたので、トレーナーかなんかではないかと疑ってしまったが、助けてもらってあんまり詮索するのもアレなのでそれ以上突っ込まなかった。ただ、彼の腕回りは、丸太のような太さだったので、喧嘩したら見かけ以上に強いに違いないと感じた。<br /><br /> 彼のお陰もあって、右足を引きづりながら歩くことができるようになった。そうこうしている内に帰りのバスの時刻が迫っていた(帰りのバスも出発と同じく4便しかない。つまり1便逃すと3時間待ちなのだ)。<br /><br /> 痛い足を庇いながら、走り歩きで急いでバスの乗車地へ向かう。時間ギリギリ。少し遅れたものの、バスの待っている姿が見え安心する。汗だくで車内に入ると、行きとほぼ同じメンバーがだらんと疲れた感じで待っていた。運転手の爺さん。ヒッピー風若者、地元風のおばさん。いつもの固定メンバー。しかも急いだにも関わらず、20分以上も遅れて、帰りの便は出発した(ガンジー爺さんとヒッピー添乗員がバス内で飯を食っていたため。歯も車内で磨いていた。このバスの中で生活しているの?)。帰りも行きと同じように途中、何人かのサーファーを乗せていく。<br /><br /> 何はともあれ、この「SURF・BUS」。行程でたくさんのビーチの景色も楽しめるのと同時に、キャラクターの強い運転手と添乗員とも出会えるのでとってもオススメです。赤字運行っぽいのでいつ無くなるかわからないけど、サーファーのための専用バスとして、これからもずっとあり続けてほしいなぁ。願わくば、日本にそっくりそのままこのバスを輸入して欲しいっす。運転手と添乗員とおばちゃん付きで。あ、おばちゃんは別にいらんかったわ。<br /><br />

SURF・BUS・A・GO・GO!@リオ・デ・ジャネイロ

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2007/04/26 - 2007/04/26

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フーテンの若さん

フーテンの若さんさん

「リオの有名ビーチ『コパカバーナ』、『イパネマ』では、実はサーフィンできる波はほとんどないのよ。」まったく無知な僕に対し、インフォメーションのお姉さんは丁寧にわかりやすい英語で教えてくれた。

 どおりで一昨日も昨日もサーファーの姿が見えなかったわけだ。じゃ、サーフィンするには何処へ行けばいいの?

 「大丈夫。『SURF・BUS』があるわ。」と自信たっぷり口調でお姉さんは答えた。

何でもメトロ駅「ラルゴ・ド・マチャド」から南方面のサーフポイントを周る巡回バスがあるのだという。しかも、そのバスにはサーフボードが置ける専用の台があり、移動中は随時サーフビデオが流れているサーファーのための専用バスであるらしい。

 おお、さすがサーフィン大国ブラジル。そしてその中心地リオ。こんな便利な移動手段があるなんて素晴らしいじゃない。でも、僕は板を持ってきていないけど大丈夫かな?

 そこまではインフォのお姉さんもわからないらしく、とにかくサーフバスで直に聞いてほしいとのことだった(出発時刻は7時、10時、13時、16時の4便)。

 あくる日の10時10分前に、僕は出発地である「ラルゴ・ド・マチャド」に来ていた。本当にそのバスが走っているのか不安だったけど、実際にそれはすぐにわかった。オレンジ色の車体には大きく「SURF・BUS」とかわいい書体で書いてある。

 勢いよく飛び乗ると、地元のおばさんらしき二人とサングラスかけたヒッピー風若者、寝ているガンジーのような爺さん、の四人しか乗客はいなかった。バス名のサーファーらしき人なんて全然見当たらない。

 出発時刻の10時を5分ほど超えた頃、ガンジー爺さんがおもむろに起き出し、エンジンを掛け始める。ヒッピー若者は、僕から運賃を徴収し出した。この二人はお客ではなかったのだ。お客は僕とおばさん二人のみ。ちょっと予想とは違ったけど何はともあれ「SURF・BUS」出発でございます(綾小路きみまろ風表現)。

 このサーフバス、内装こそ大分年季が入っているものの、ちゃんとサーフボード専用台もあるし、サーフィン映像が流れるTVも完備されてあった(このときはケリー・スレーターのドキュメント映像が流れていた)。ヒッピー風若者(添乗員?)に、お奨めサーフポイントを聞いてみると、終点地である「プラインハ」というビーチへ行けと言われた。ここは他で波がないときでも、まずサーフィンができるからだという。この添乗員風ヒッピーの仕事はTVのスイッチを入れるのと、地元の人たちと駄弁ることしかしていない。これで労働賃金をいくら貰っているのだろうと不思議に思ってしまった。
 
 バスは南へ向かうに連れ、次々と客を拾っていった。そこでようやくサーフボードを抱えた地元サーファーたちを乗って来て、ようやく「SURF・BUS」っぽい雰囲気が出てくる。特にこのバスはバス停があるわけではない。ビーチ沿いを走っているので、気が付いた乗客は手を挙げ乗せてもらう。日本の千葉や湘南にもこんなバスがあれば便利なのになぁ。何よりサーフポイントの場所もわからない外国人サーファーにとってこれほど心強いものはない。しかもこのバスの運賃は3レアル(180円)。終点で僕が赴いた「プラインハ」まで所要1時間30分の距離だから、かなりのコストパフォーマンスだ。

 いつの間にか、バスの中は10人弱のサーファーたちで溢れていた。みな目的地は僕と同じ「プラインハ」のようだ。他のポイントでは波があまりないみたい。

 「プラインハ」へは移動時間1時間30分きっかしの11時30分に到着した。どうやらガンジー爺さん運転手は時間をきっちり守る人のようだ。板が借りれるかどうか不安だったけど、現地に行くと、これまたヒッピー風のレゲトンっぽい若者がいて、適当な板を貸してくれた。

 「プラインハ」は「コパカバーナ」や「イパネマ」の混雑振りが嘘のように静かで綺麗なビーチだった。こじんまりとしているが、外国人観光客などおらず、隠れ家的穴場ビーチのようだった。サーフィンの方は、コンスタントに力強い波が押し寄せており、ポイントはかなりのサーファーで混雑していた。通常は腰程度のサイズだが、セットになると頭ぐらいまで大きくなる。ビーチブレイクでなかなかいい波だった。

 しかし、僕はここで大きな波に巻き込まれて、自分の板で右脹脛をぶつけて怪我をしてしまう。肉離れのような激しい痛み。最初は大したことないと思っていたけど、徐々に腫れ始めて、普通に歩くことも困難なほどになってしまった。

 足を伸ばして筋肉を解していると、親切なサーファーが大丈夫かと声を掛けてくれた。流暢に英語を話すので、尋ねてみると、彼は須藤元気と同じジムに所属していて、なんと格闘技「プライド」参戦のため7回も来日したことがあるという(猪木ボンバイエにも出場経験あり)。その割には、ぼよんと太っていたので、トレーナーかなんかではないかと疑ってしまったが、助けてもらってあんまり詮索するのもアレなのでそれ以上突っ込まなかった。ただ、彼の腕回りは、丸太のような太さだったので、喧嘩したら見かけ以上に強いに違いないと感じた。

 彼のお陰もあって、右足を引きづりながら歩くことができるようになった。そうこうしている内に帰りのバスの時刻が迫っていた(帰りのバスも出発と同じく4便しかない。つまり1便逃すと3時間待ちなのだ)。

 痛い足を庇いながら、走り歩きで急いでバスの乗車地へ向かう。時間ギリギリ。少し遅れたものの、バスの待っている姿が見え安心する。汗だくで車内に入ると、行きとほぼ同じメンバーがだらんと疲れた感じで待っていた。運転手の爺さん。ヒッピー風若者、地元風のおばさん。いつもの固定メンバー。しかも急いだにも関わらず、20分以上も遅れて、帰りの便は出発した(ガンジー爺さんとヒッピー添乗員がバス内で飯を食っていたため。歯も車内で磨いていた。このバスの中で生活しているの?)。帰りも行きと同じように途中、何人かのサーファーを乗せていく。

 何はともあれ、この「SURF・BUS」。行程でたくさんのビーチの景色も楽しめるのと同時に、キャラクターの強い運転手と添乗員とも出会えるのでとってもオススメです。赤字運行っぽいのでいつ無くなるかわからないけど、サーファーのための専用バスとして、これからもずっとあり続けてほしいなぁ。願わくば、日本にそっくりそのままこのバスを輸入して欲しいっす。運転手と添乗員とおばちゃん付きで。あ、おばちゃんは別にいらんかったわ。

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