2006/07/16 - 2006/07/17
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night-train298さん
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今日の日記の一番上に、こう書いてある。
『今日は、なかなか大変だったけれど、充実した一日だった。』
さて、どんな一日だったのか・・・・・・・。
7時に一人でアパートメントを出る。
しばらくすると、パスカルおじさんがやってきた。
おじさんが出る時も、カップルの二人はまだ寝ていたそうで、その後も彼らに会うことはもうなかった。
何度も、パスカルおじさんと、抜きつ抜かれつ歩いていると、水飲み場でまた出会った。
そして私が先に歩き出すと、矢印を見失ってしまい、元の道を辿る。そこでまた不安げなパスカルおじさんにばったり会って、二人で地元の人に道を聞く。
なんと、二人とも同じ間違いをし、道を曲がりそこねていたのだった。
再び、抜きつ抜かれつ歩きはじめた。
すると、マティウスが後ろから歩いてくるではないか。
道を間違えたと言う。
巡礼者の少ないこの道のことである。私たちは、どんな人に会ったか報告しあっていた。
マティウスは、ガリシア出身のカップルに出会ったと言う。
私はそれを聞いた時、ちょっと意外な気がした。巡礼仲間で、ガリシア出身者は少ない上、ガリシアから遠く離れたバスクで彼らが歩いているということ。
そこからまた、マティウスは先に歩き、消えていった。
再び、パスカルおじさんと抜きつ抜かれつ・・・・・・・・。
山の頂上は、キャンプ場になっていて、ベンチがあったのでひと休みすることにした。
パスカルおじさんもそこにいたが、私が靴を脱ぎ始め、長居するとわかったためか、先に行ってしまった。
するとそこへ、カップルの巡礼者が来た。
昨日のフランス人ではない。もっと若い二人で、巡礼者の印であるリュックを背負い、杖をついているではないか。
もしかしたら、マティウスが言っていたガジェーゴ(ガリシアの人)かもしれない。
私は仲間に出会ったごとくうれしくなって、少し小高い丘の上から
「オラ!」
と元気良く声をかけてみた。
しかし二人とも気がつかない。
しつこくさらに二度ほど、
「オラ!」 「オラ!」
しかし二人はまるで無視。
私は急に腹が立った。同じ巡礼者なのに無視をするなんて。
(しかし、その時リュックを置いて、靴を脱いでいた私は、ただの東洋から来た一人のキャンピング客にしか見えなかったと思うので、いたしかたない。)
彼らはそこで休まずに、先に行ってしまった。
しばらく歩いていくと、矢印の数がめっきり減って、ものすごく不安になってきた。
この道でいいのだろうか?
そんな頃、前方に道しるべのようなモノが見えてきた。その道しるべの文字は、私が歩いている方向からは見えなかった。
そばに行ってみると、先ほどのカップルが、まさに矢印の真下で並んで休んでいるではないか!
私は心が狭い。
今度は私から思いきり無視するぞ!
しかし、道しるべを見るには、彼らの目の前に立たなければならず、無視をするのはかなり不自然な行動なのだ。
また挨拶して無視されたら、もう立ち直れなくなっちゃう器の小さな私は、ここであえて、不自然な無視をすることにした。
それは、まるで喧嘩を売っているような格好となった。
私は標識の前に立ち、それを読み、その道が正しいことを確認し、すぐ目の前に居る彼らは見えないという風を装って、さっと行くべき道に戻った。
あ〜っ、ドキドキした!
(彼らは『???』だったに違いない。)
歩いていくと、そこは森の中だった。
誰もいないはずの森で、遠くから話し声が聞こえてきた。
あの二人かもしれない。
だんだん声が近付いてきた。
男女の声だ。間違いなく彼らだ。
このままじゃ、追い越される!
二人は足がえらく長いのだ。
私は、次の作戦を練った。
今度は、感じの良い後ろ姿(?)を演出し、向こうから挨拶しなければ・・・・・えぇーい、〜こっちも(再び)『無視』だ!
足音も話し声も、もうすぐそこまで来ている。
私は、内心乱れる思いを隠し、足取り確かに、自然なふるまいを心掛けた。
いよいよ二人が私を追い越す瞬間。
「オラ〜!」
二人とも、とびきり感じ良く声をかけてきた!
もちろん私も、とびきり感じ良く返事をする。
その瞬間、爽やかな風が通り抜けた。
笑顔が素敵な美男美女だった。
そのうち、パスカルおじさんが、前方からやってきた。
果物を買いたいし、別の道の方が良さそうなので戻るということだった。
私は地図にある巡礼路を、ひた歩いた。この道は、かなり苦労の道で、おまけに最後に開けにくい重い扉まであった。
やっとのことで、一般道に出て村に入ると、バルでさっきのカップルがいるのが見えたが、遠いし、本当に気が付かないだろうと思って、黙って通りすぎた。今度は悪気はない。
少し歩くと、パスカルおじさんが水を汲んでいるではないか。
一般道を歩いたおじさんの方が、楽に早く着いたというわけだった。
私は冷たい炭酸水が飲みたかったので、barに行くと言うと、おじさんは、この村の店全部が閉まっていると言う。
そんなことはないだろうと歩いていくと、やっぱりbarがあるではないか。
パスカルおじさんも一緒に来て、二人で大きなグラスにたっぷりニ杯づつ、よく冷えたアグア・コン・ガスを飲み干した。
ここでも以前に巡礼路を歩いた店主に声をかけられた。
テラスで飲んでいると、少し離れた道を横切る先ほどのカップルが見えた。
お互いに、にこやかに大きく手を振った。
もうすっかり仲間気分だった。
ここからは、パスカルおじさんと一緒に歩く。
何度も会っているし、昨日も一緒に食事をし、同じ宿に泊まっているのに、お互いの紹介を何もしていなかった。
パスカルおじさんは、世界中の会社のコンサルティングをしているそうで、三年に一度、三か月の休みを取るのだそうだ。そのかわり、他の年はほとんど休まない。
普段はパリに住んでいるが、実家はポワティエにあり、そこから歩き出したという。
ちなみに、前回の三年前の旅行はギリシャだったと言う。
今日の目的地、Debaに着くと、私はアルベルゲを探し、おじさんはホテルを探す。
ここでパスカルおじさんと別れて、おまわりさんに聞くと、まず地元のポリスで鍵をもらわなければならない。
そこまでの行き方がわからなくなって困っていると、親切なおばさんが一緒についてきてくれた。
そんな道を歩く途中でも、私のホタテ貝が付いたリュックを見て、また巡礼経験のある男性が声をかけてきた。
アルベルゲは、海岸のすぐ近くの公園に面した、最高のロケーションにあった。
とても小さな建物だった。
入り口から出てきたのは、マティウスであった。これから食事に行くらしい。
中に入ると、例のカップルが、シャワーを浴びた後で、洗濯をしている最中だった。
私が入っていくと、まず女性が話しかけてきた。
矢継ぎ早に興奮ぎみで質問をされていると、奥から男性が出てきて、
「まず、重たいリュックをおろさせてあげようよ。」と言ってくれた。
それほど、私の存在は、彼らにとって興味あるものであったらしい。
私も彼らに質問をした。
やはり聞いていた通りのガジェーゴであった。
名前をホアンとマルタと言い、ホアンは、4年前にこの道の全行程を歩いたと言う。
そこにちょうどあった、大きな地図を指差し、la Costaの道を指し示してくれた。そして、カンタブリアがいいと、おすすめの地域も教えてくれた。
やっぱり彼も la Costa (海沿い)の道かぁ〜。それがいいんだな・・・・。
シャワーに入って洗濯を済ませると、まだ部屋にいた二人は、食事に誘ってくれた。
はしゃぎながら、三人で町に繰り出した。
英語は二人とも何年も話していないと言うが、充分であったし、とても感じがよく、何日も一緒に旅した仲間のように、すっかり打ち解けて、私は二人が大好きになった。
(あれ?昼間は喧嘩を売るくらいの勢いだったのに!)
すでに昼食のメニューには間に合わず、
barでビールとタパスを何点かつまむことにした。
その選択はホアンに任せた。
美味しいタパスをつまみながら、二人の故郷であるガリシアの話になった。
二人はビーゴの大学で出会い、卒業後はマドリッドで働いているという。
マルタは、ラ・コルーニャの出身で、ホアンはビーゴの出身。
二人はそれぞれのお国自慢を始め、楽しい戦いになった。
ビーゴは、リアス式海岸で有名な場所で、小学校へは、毎日きれいな海を見ながら、船で通っていたという。
その話は、私の好奇心を駆り立てた。ホアンは20代だから、そんな昔のことではない。
今もその村の子供たちは、船で通学しているのだろうか。
そしてその海が遊び場で、日本に輸出するためのワカメを養殖していたそうだ。
なんて素敵な話なんだろう・・・・・・。
私の頭の中のスクリーンには、淡いブルーの水に、白い水底が透き通って見えるような浅瀬を、小舟でゆらゆら渡る小学生たちが見えた。
一方、ラ・コルーニャは、スペイン全土をはじめ、世界に展開するファッションブランドZARAの故郷でもある。
また、私も大好きなEstrella (日本語に訳すと「星」)という名のビールも有名だ。
マルタは、
「ZARAとEstrellaは私たちにとっては誇りなの」
と言う。
私がラ・コルーニャに行った時の印象は、マドリッドからもバルセロナからも、遠く離れた地なのに、人々がファッショナブルで、グッドルッキングだったという感想を述べると、彼女はとてもうれしそう。
するとホアンが口を出す。
「あそこの人間は気取っちゃって、かっこばかりつけているんだよ。ビーゴの人たちは、全く服装なんて気にしないんだ。」
するとマルタは、
「昔からね、『ビーゴで働き、サンティアゴで祈り、ラ・コルーニャで遊ぶ』と言うのよ。」
今度は二人揃って北部自慢が始まった。
南部と北部では、全く考え方が違うと言う。
同じスペイン人という括りでとらえて欲しくないようだ。
そして、この「北の道」こそが一番美しく、本当のサンティアゴへの道だと言う。
この道は、モーロ人たちも攻めてこなかった土地だからこそ、守られてきたのだと。
また、マルタは
「私はカソリックの家庭で育ったけれど、私はカソリックが嫌いなの。勉強してわかったから言うのだけど、この宗教は男尊女卑だわ。」
ビールもたっぷり飲んで、歩いた疲れも吹き飛んで、これからビーチに行こうということになった。
泳ぐのはホアンであり、マルタは
「ビーチで昼寝をするのにベストな時間だわ!」
すると横からホアンは
「マルタって困るんだよ。朝は遅く出発しようって言うし、歩き出しても、すぐに昼寝したいとか休みたいって言うんだ。」
三人で大笑いをしながらビーチに到着。
マルタは早速トップレスになっている。
私たちは貴重品を持ち歩いているので、代わりばんこに海に入った。
遠浅で気持ちがいい。
「この道では、こうして海に入るから、足にマメなんかできないんだよ。」
一度すでにこの道を歩いたホアンの言葉だった。
彼はさすがに泳ぎが得意なようで、一度海に出ると、なかなか帰ってこない。
私とマルタは、ゆっくり昼寝を楽しんだ。
二人より一足先にアルベルゲに戻り、シャワーをもう一度浴び、水着を干していると、そこへおじいさんがやってきた。
ここの管理人だということで、挨拶に来てくれたそうだ。
この近所に住んで、時々様子を見に、回ってくるらしい。
私はこの自由な雰囲気の小さなアルベルゲがとても気に入り、素敵な出会いのおかげで、この町の何もかもが好きになって、すっかりいい気分になっていたので、おじいさんに丁重にお礼を言った。
まだ充分明るく気持ちの良い午後だったので、目の前の公園でゆっくりと日記を書いていた。
そこへやってきたのはマティウスだった。
ベンチに座り、情報交換が始まる。
「ねぇねぇ、サン・セバスティアンで会ったラファは、どこへ行っちゃったんだろう?」
「さっき、ここのインフォメーションで聞いたんだけど、彼らしき人物が、一昨日ここに泊まったというんだよね。」
「え〜〜〜っ?!」
そこへマルタとホアンもやってきた。
二人は、お腹がすいたから、ガツンとしたものを食べに行こうよと言う。
さっき食べてから、まだ間もないのに。
私はそんなに食べられないよと言うと、好きなようにチョイスできるから一緒に行こうと言ってくれた。
ホアンが選んだレストランは、私も昼間に通りがかって、美味しそうだと踏んでいた店で、道路に並べられたテーブルで、楽しい食事が始まった。
今日は日曜日ということで、アラカルトの注文しかできなかった。
まだ食欲がなく、野菜がたくさん食べたかったのでミックスサラダ、、海のそばだから、魚介のスープ・・・・というへんてこな取り合わせを注文。
みんなで大きなジョッキのビールを注文し、マティウスも参加しておしゃべりが始まった。
ここではマティウスに遠慮して、英語は話さないようにしたら、当然私の出番も少なくなってしまったが、いつものように、冷静に話すマティウスの話を、マルタとホワンの二人は感心しながら聞き入っていた。
気が付くと、すでに11時。
そろそろアルベルゲに帰らなければいけない時間だ。
帰り道、Debaの列車駅の横を通りがかる。
休暇が少ないマルタとホアンの今回の「北の道」は、巡礼というよりはホリデーなのだ。
だから、二人は明日の朝、列車に乗ってビルバオまで行くという。
そして気に入ったところだけを歩いて二人の実家のあるガリシアまで帰るようだった。
進むスピードが違うから、もう会えないかもしれないねと、しょげる私に、二人は
「そんなのわからないよ。僕達は、気に入ったところがあれば連泊するし、それは誰にもわからないさ!」
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この旅行記へのコメント (2)
-
- 4nobuさん 2007/03/24 11:57:51
- いい旅ですね
会話の描写が素晴らしく最後まで一気に読みました。これからも続けて読ませていただきます。
苦しいけれど楽しい。正に旅の醍醐味ですね。私の好きな山登りと同じ。
- night-train298さん からの返信 2007/03/24 23:31:22
- 4nobuさん、ありがとうございます!
スペインの北の道の旅行記を、読んでいただいたのでしょうか。
ありがとうございます!!!
そうなんです、苦しいけど楽しい。何でこんなことをしているのかと思うこともあります。
きっと山登りも同じなんですね、
去年はこの道が約850km、他の道も少し歩き、これから徐々にアップしていきますので、ぜひ、また読んでくださいね。
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