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食事について語らなければならない。 <br /><br />  僕はどちらかといえば味音痴の部類に入る。東京での営業時代は接待で普段食べることのない高級料理とやらをたらふく食べさせてもらった。六本木で一人前四万円もする河豚に、京都で一見さんお断りの懐石料理、大阪で芸能人御用達の焼肉屋さんなど、贅沢三昧な食生活を経験できた(なぜ辞めてしまったんだろうか、いやーもったいない)。しかしそのどれもがそれほど美味いと感じることはなかった。確かに藤そばや吉野家の味よりはよいと感じるけれど、そこまでとは到底思えない。<br /><br /> <br /><br /> 食事というのはお腹が空けば、食べれればいい。味が濃いのだけは苦手だけれど、薄味であれば何でもよい。ずっと関西に住んでいたのであの薄口の味つけに舌が慣れてしまったのだろう。そして何よりもシンプルな料理法を好む。肉や魚は焼くだけ、野菜や果物は極力そのままで。マヨネーズやソース、ケチャップにドレッシングといった調味料は一切使わない。僕にとっては味よりも栄養バランスの方が大事で、過度の調味料は体にも悪いのでそれくらいが丁度よいのだ。<br /><br /> <br /><br /> このように食べるほうに拘りはないので、旅先でもそれほど困ることはない。問題は僕は料理をつくるのが超下手糞なので、外食の物価が高いところではとても困ってしまうことだ。そして、ここアルゼンチンはまさにそんな場所の一つなのだった。<br /><br /> <br /><br /> アルゼンチンは他の中南米にあるような安食堂といった類の店がほとんどない。外食しようとレストランに出ると日本の料金とほぼ同額か、それに近い値段を取られてしまう。その代わりスーパーはリーズナブルだ。ワインは100円も出せば買えるし、牛肉は日本の4分の1か5分の1程度の値段。となると、久しぶりに自炊するしかない。<br /><br /> <br /><br /> 僕は大学生時代に京都の居酒屋の厨房でずっと働いていた。居酒屋といってもチェーン店に毛が生えた程度だったが、ちゃんと焼き場、揚場、蒸し場、チーフ場と厨房だけは本格的に分けられていた。僕はオープンの立ち上げから勤務し、掛け持ちバイトもせず、かなり真面目に取り組んだにも関わらず、3年間働いて僕だけ揚場以上進むことができなかった。焼き場では、ボルト入りの焼きオニギリをお客に出してしまった(ジャーのネジがご飯のなかに入っていたのを気付かなかった)。冷凍物を揚げるだけという一番簡単な揚場ですら、鶏の空揚げにちぢれ毛が混ざっており大問題になった(当時は坊主だったのに何故?)。要するに僕は料理が、まったくもってデキナイということだ。努力ではどうしようもない生まれ持った料理センスがゼロなのだ。<br /><br /> <br /><br /> ある日に事件が起こった。「この日、シフトに入っていたの誰や!」と店長の叫ぶ声。何でも食中毒が起きたという手紙がお客から社長に届いてしまい、店長はものすごい剣幕で社長から怒られたという。真っ先に疑われたのは他でもない僕であり、シフト表を見るとやはり僕が入っていた。疑われた僕にも何となく心当りがあった。普段であれば揚場担当の僕が刺身を作ることはないのだが、その日に限ってチーフが休んだため代わりに作ってみたのだ。あのときのマグロは真っ黒だったが、他のマグロを解凍するのが面倒くさいので、えいやと出してしまった。たぶんアレに違いない。<br /><br /> <br /><br /> まもなく半年後にバイト先のお店は潰れてしまった。あまり儲かっていなかったようで僕の食中毒が直接の原因ではなかったと聞いている(というか罪の意識からそう願いたい)。その事件で料理下手な僕はさらに自信をなくしてしまった。<br /><br /> <br /><br /> それから卒業して社会人になり、6年間も一人暮らしをしていたのにほとんど料理らしきものをしなかった。いや、最初のうちはそれでも努力して少しはやってみた。簡単な料理本を買ったり、美味しんぼを読んだりしながら、たまの休みにオママゴト程度の料理を。それも長くは続かなかった。ある休みの日、パスタソースの缶詰を開けようとして、手が滑り、缶の蓋で指の骨に届くほどの深い傷を負ってしまったからだ(四針縫った)。会社の同僚には、「いやー、料理していて包丁で切ってしまって。」と説明していたが、本当は缶詰すらまともに開けられない男だった。もはや料理人失格(というか人間失格?)。それ以来、完全に自炊は封印した(というかパスタ茹でるのは自炊か?)。<br /><br /> <br /><br /> しかも、今度は手を切らないようにと、スーパーで購入した「牡蠣鍋セット」を茹でて家で食べたら、食中毒で当ってしまった。おかげで次の日の営業プレゼンは大失敗。恨みを込めてスーパー玉出(大阪にある有名激安スーパー)の社長に手紙を書いた。食中毒の苦しみはなった人にしかわからないだろう(因果応報とは正にこのことだ。あのとき食中毒になった人、読んでいたら本当にスイマセン。やっぱり僕の責任です)。<br /><br /> <br /><br /> それでなんの話だったけ?そうだ、それほど料理が下手なのに今回は自炊せねばならない。願わくば誰かと一緒に料理したいのだが、今日の宿泊先にそんな人は泊まっていない。<br /><br /> <br /><br /> とりあえずスーパーで牛肉とお米、それにレタスとトマトを購入してきた。米を炊き、肉を塩だけで焼く。そしてサラダはそのまま味付けなしで食べるだけ。僕の得意として、一番好きなシンプル料理法だ。<br /><br /> <br /><br /> まずは牛肉に塩を振り掛ける。あれ??塩の蓋が開かないぞ。元から出そう、として思いっきり大量に降り掛かる。何か焦げ臭いぞ。お米の鍋がヤベッチ!完全に焦げてしまっている。しかも水が足らなくてカチカチのお米。肉はミディアムレアのつもりがお米に気を取られているうちにコゲコゲ。こちらもフライパンが焦げ付いて大変なことに。ものすごいケムリが立ち込める。<br /><br /> <br /><br /> まぁ、僕の場合は味云々ではない。お腹が膨れればいいのさ。なんて思って食べてみると不味いのナンノ。普通に不味い。焼いただけなのに何で不味い。どして不味い。不味いから不味い。おぇ〜。半分以上残し、ゴミ箱行き。30分前はあんなに美味しそうな食材だったのに。<br /><br /> <br /><br /> さて、この焦げてしまったフライパンと鍋をどうしようか。先日の宿でも食器を割ってしまい、隠れて遠くへ捨ててきたばかりだ。これが見つかると宿から追い出されてしまう。しまった、あまりの焦げ臭さに宿の人間がなにごとかと集まり始めてしまった。えっ?流しが詰まっているって。それも僕のせいなのか。僕の食事は他人に迷惑かけるほど酷いものなのかぁー。<br /><br /> <br /><br /> <br /><br /> 食事についてはしばらくは語ること自体も封印せねばなるまい。<br /><br />

アルゼンチンで自炊しよう@プエルト・マドリン

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2007/03/17 - 2007/03/17

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フーテンの若さん

フーテンの若さんさん

食事について語らなければならない。

僕はどちらかといえば味音痴の部類に入る。東京での営業時代は接待で普段食べることのない高級料理とやらをたらふく食べさせてもらった。六本木で一人前四万円もする河豚に、京都で一見さんお断りの懐石料理、大阪で芸能人御用達の焼肉屋さんなど、贅沢三昧な食生活を経験できた(なぜ辞めてしまったんだろうか、いやーもったいない)。しかしそのどれもがそれほど美味いと感じることはなかった。確かに藤そばや吉野家の味よりはよいと感じるけれど、そこまでとは到底思えない。



 食事というのはお腹が空けば、食べれればいい。味が濃いのだけは苦手だけれど、薄味であれば何でもよい。ずっと関西に住んでいたのであの薄口の味つけに舌が慣れてしまったのだろう。そして何よりもシンプルな料理法を好む。肉や魚は焼くだけ、野菜や果物は極力そのままで。マヨネーズやソース、ケチャップにドレッシングといった調味料は一切使わない。僕にとっては味よりも栄養バランスの方が大事で、過度の調味料は体にも悪いのでそれくらいが丁度よいのだ。



 このように食べるほうに拘りはないので、旅先でもそれほど困ることはない。問題は僕は料理をつくるのが超下手糞なので、外食の物価が高いところではとても困ってしまうことだ。そして、ここアルゼンチンはまさにそんな場所の一つなのだった。



 アルゼンチンは他の中南米にあるような安食堂といった類の店がほとんどない。外食しようとレストランに出ると日本の料金とほぼ同額か、それに近い値段を取られてしまう。その代わりスーパーはリーズナブルだ。ワインは100円も出せば買えるし、牛肉は日本の4分の1か5分の1程度の値段。となると、久しぶりに自炊するしかない。



 僕は大学生時代に京都の居酒屋の厨房でずっと働いていた。居酒屋といってもチェーン店に毛が生えた程度だったが、ちゃんと焼き場、揚場、蒸し場、チーフ場と厨房だけは本格的に分けられていた。僕はオープンの立ち上げから勤務し、掛け持ちバイトもせず、かなり真面目に取り組んだにも関わらず、3年間働いて僕だけ揚場以上進むことができなかった。焼き場では、ボルト入りの焼きオニギリをお客に出してしまった(ジャーのネジがご飯のなかに入っていたのを気付かなかった)。冷凍物を揚げるだけという一番簡単な揚場ですら、鶏の空揚げにちぢれ毛が混ざっており大問題になった(当時は坊主だったのに何故?)。要するに僕は料理が、まったくもってデキナイということだ。努力ではどうしようもない生まれ持った料理センスがゼロなのだ。



 ある日に事件が起こった。「この日、シフトに入っていたの誰や!」と店長の叫ぶ声。何でも食中毒が起きたという手紙がお客から社長に届いてしまい、店長はものすごい剣幕で社長から怒られたという。真っ先に疑われたのは他でもない僕であり、シフト表を見るとやはり僕が入っていた。疑われた僕にも何となく心当りがあった。普段であれば揚場担当の僕が刺身を作ることはないのだが、その日に限ってチーフが休んだため代わりに作ってみたのだ。あのときのマグロは真っ黒だったが、他のマグロを解凍するのが面倒くさいので、えいやと出してしまった。たぶんアレに違いない。



 まもなく半年後にバイト先のお店は潰れてしまった。あまり儲かっていなかったようで僕の食中毒が直接の原因ではなかったと聞いている(というか罪の意識からそう願いたい)。その事件で料理下手な僕はさらに自信をなくしてしまった。



 それから卒業して社会人になり、6年間も一人暮らしをしていたのにほとんど料理らしきものをしなかった。いや、最初のうちはそれでも努力して少しはやってみた。簡単な料理本を買ったり、美味しんぼを読んだりしながら、たまの休みにオママゴト程度の料理を。それも長くは続かなかった。ある休みの日、パスタソースの缶詰を開けようとして、手が滑り、缶の蓋で指の骨に届くほどの深い傷を負ってしまったからだ(四針縫った)。会社の同僚には、「いやー、料理していて包丁で切ってしまって。」と説明していたが、本当は缶詰すらまともに開けられない男だった。もはや料理人失格(というか人間失格?)。それ以来、完全に自炊は封印した(というかパスタ茹でるのは自炊か?)。



 しかも、今度は手を切らないようにと、スーパーで購入した「牡蠣鍋セット」を茹でて家で食べたら、食中毒で当ってしまった。おかげで次の日の営業プレゼンは大失敗。恨みを込めてスーパー玉出(大阪にある有名激安スーパー)の社長に手紙を書いた。食中毒の苦しみはなった人にしかわからないだろう(因果応報とは正にこのことだ。あのとき食中毒になった人、読んでいたら本当にスイマセン。やっぱり僕の責任です)。



 それでなんの話だったけ?そうだ、それほど料理が下手なのに今回は自炊せねばならない。願わくば誰かと一緒に料理したいのだが、今日の宿泊先にそんな人は泊まっていない。



 とりあえずスーパーで牛肉とお米、それにレタスとトマトを購入してきた。米を炊き、肉を塩だけで焼く。そしてサラダはそのまま味付けなしで食べるだけ。僕の得意として、一番好きなシンプル料理法だ。



 まずは牛肉に塩を振り掛ける。あれ??塩の蓋が開かないぞ。元から出そう、として思いっきり大量に降り掛かる。何か焦げ臭いぞ。お米の鍋がヤベッチ!完全に焦げてしまっている。しかも水が足らなくてカチカチのお米。肉はミディアムレアのつもりがお米に気を取られているうちにコゲコゲ。こちらもフライパンが焦げ付いて大変なことに。ものすごいケムリが立ち込める。



 まぁ、僕の場合は味云々ではない。お腹が膨れればいいのさ。なんて思って食べてみると不味いのナンノ。普通に不味い。焼いただけなのに何で不味い。どして不味い。不味いから不味い。おぇ〜。半分以上残し、ゴミ箱行き。30分前はあんなに美味しそうな食材だったのに。



 さて、この焦げてしまったフライパンと鍋をどうしようか。先日の宿でも食器を割ってしまい、隠れて遠くへ捨ててきたばかりだ。これが見つかると宿から追い出されてしまう。しまった、あまりの焦げ臭さに宿の人間がなにごとかと集まり始めてしまった。えっ?流しが詰まっているって。それも僕のせいなのか。僕の食事は他人に迷惑かけるほど酷いものなのかぁー。





 食事についてはしばらくは語ること自体も封印せねばなるまい。

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