2007/03 - 2007/03
43位(同エリア125件中)
オイラアさん
ここはスイス人にもあまり知られていない山なのだが、化石の産出地としては知る人ぞ知る存在なのだそうだ。
三畳紀中期の地層が剥き出しになっており、首長竜や魚、無脊椎動物を始めとする数多くの海洋生物の化石が見つかっている。そう、スイスアルプスは元々は海だったのだ。
化石群の保存状態の良さと種の多様性、さらに数百万年にわたる地層が保持されているため進化の研究場としても非常に適している。このような特徴からサン・ジョルジオ山は、ユネスコの世界遺産に登録されている。
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さて、この山へはメリデ(Meride)という小さな村からアタックするのがもっとも簡単らしい。バーゼルからゴッタルドを抜けルガーノのさらにその先、イタリアもすぐそこのメンデリジーオ(Mendrisio)でバスに乗り換える。
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メンデリジーオはイタリア語圏なので雰囲気もなんとなくイタリア。だからかどうかはわからないが、町中で窯焼きのおいしいピッツァリアを見つけた。
メンデリジーオからメリデまでは、バスで15分ほど。山の中腹にある小さい小さい村の郵便局前で下りた。 -
メリデは、車もすれ違えないような細い一本道の両脇に石造りの家が並んでいるだけの村だ。雑貨屋、カフェ、レストラン兼宿屋、郵便局、銀行、電気屋兼水道屋。生活に必要最低元な店がそれぞれ一軒ずつだけあるだけの小さな村。
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そんな村にある化石博物館は、サン・ジョルジオ山で発掘された化石のほんの一部を紹介している。
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入ってまず展示室のその小ささに驚くことになるが、展示されている物は一見の価値がある物ばかりだ。非常に保存状態がよいことと粒ぞろいの展示物に、再び驚いた。
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イクチオサウルスの化石があったり、いまの魚類に比べるとやはり洗練されていない魚類の化石があったり。小さいけどとても楽しめた。滞在インデックス(床面積÷滞在時間)ではかなり上位に入るミュージアムだったと思う。
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そしてこの日は、メリデ唯一の宿でお泊まり。明日はいよいよ山登り。
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宿でたっぷりの朝食を取った後、登山を開始。サン・ジョルジオ山は海抜約1000mだが、Merideの標高がすでに500mを越えているので、無理なく登れる。山頂まで1時間40分程度だ。
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途中まで石畳の道が続く。どうやら第一次大戦時にスイス軍が造ったらしい。石畳の間からはかわいらしい花も咲き、春の訪れを感じさせる。
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山頂まで行く途中、カシーナ(Cassina)と呼ばれる場所を過ぎた辺りで化石の発掘現場を通る。チューリヒ大学とミラノ大学が共同で研究を現在も続けている。
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最後の坂を登りきるとサン・ジョルジオ山の山頂につく。ルガーノ湖と共に遠くアルプスまで見渡せる眺めは最高の一言。
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とはいえ、もちろん、この眺めが評価されてサン・ジョルジオ山が世界遺産に登録されたわけではない。山中に眠っている貴重な化石群が評価されたのだ。
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実際、見た目だけでは評価されにくい場所も数多く世界遺産として登録されている。
スイス国内で言えば、ザンクトガレンの修道院やユングフラウなどは見るだけで膝を打つほどわかりやすいのに対して、ミュスタイアの修道院やこのサン・ジョルジオ山は実に地味だ。
だが、一歩踏み込んでみると、そこには他の登録地に負けない豊かな背景と世界で唯一という独自性が見えてくる。 -
山頂で一休みしたあと、セルピアノ(Serpiano)へ下る。眺めのいい場所でリゾートホテルもある。そこからはバスでメンデリジーオへ。小さな旅も終わりに近付いてきた。
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バーゼルへ戻る途中、ルガーノで途中下車し街を歩いた。
Merideと異なり、よく整備された都会の街並みが、また違った意味で心地よい。
たった二日の旅とはいえ、ドイツ語圏からイタリア語圏へ、都会から村へ、人里から山中へ分け入り、今から数億年前の三畳紀へと思いを馳せた。
スイスの豊かさのひとつは、そんな「移動」が、いともたやすく出来ることなのかもしれない。
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