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私が今まで旅をした国の中で、最も良い時代を旅できたな、と感じるのは間違いなくルーマニアだろう。恐らく90年代中から後半が最後の古き良きルーマニアが残っていた時代のような気がする。<br /><br /> 当時のルーマニアでは田舎に行けば、駅でボーッとしているだけで、「日本人か!?日本の話を聞かせてくれ」と自分の周りにあっという間に群衆の輪が広がり、宿がなければ「うちに泊まれ」と声をかけてくるひとも少なくなかった。通りを歩けば車が止まり、向かっている先まで送ってくれることもざらだった。困っている人がいたら助けずにはいられない国民性、底抜けに明るく、情熱的なラテン気質、ルーマニア人はとても親しみやすい。これほど人間味に溢れたルーマニア人が、誰がスパイなのか分からぬ秘密警察の監視網がはりめぐらされた、チャウシェスクの抑圧された社会で長年ここまで堪えてきたことが不思議で仕方ない。<br /><br /> 私がルーマニアを旅した時代、ルーマニア経済はスキー種目のダウンヒルで直滑降するかのように下降路線をまっしぐら、ルーマニア通貨のレイの対米ドル貨幣価値は、まるで壊れたタクシーメーターのように、日に日にみるみる下がっていった。国民は当然外貨に換金し、タンス預金した方が良いわけだが、ルーマニア政府は国民の年間外貨換金額を厳しく制限していた。その為闇両替が横行することとなった。<br /><br /> ルーマニアが居心地良く感じたのはルーマニア人の国民性もさることながら、物価も比較的安いことも理由の一つ。夜行列車で一晩くらいの移動だけならで一等客車でさえ日本円に換算し1000円もしない。国際路線でブカレストからベオグラードまで2等寝台車を利用しても5000円位だ。<br /><br /> 更に国内線の航空券は恐ろしく安かった。例えばクルージュからブカレストまで45分のフライトで航空券は僅か4000円もしなかった。尤も国内航空路線は曲者で、濃霧による欠航や遅延は日常茶飯事、余り期待を込めて利用できなかったが。その航空券には更に驚かされた。エルディ地方(トランシルバニア)に位置するクルージという町のTAROM(ルーマニア航空)事務所でチケットを購入したが、航空券は藁半紙に手書きで行き先と金額が記され、TAROMのスタンプが押される程度、私はこんな紙切れではたして搭乗できるのか、騙されているのではないかと疑ってしまう程だった。一方機内は客室からの操縦室の扉は開かれたまま。飲み物を口にしながらキャビンアテンダントとデレデレと話をしている鼻の下を伸ばした操縦士の姿が丸見え、CAとの会話に夢中になり過ぎて墜落なんかされた時にはたまったものじゃない。<br /><br />ではルーマニアの首都は一体どんなところなのか、まずルーマニア人達の印象を紹介したい。<br /><br />「え、何じゃって?ブカレストがどんな町かって?? ルーマニアで治安は最悪、人も最悪、好きな奴なんて誰もおらんわあんな町!アンタそんな町に行くん? ルーマニアには良い町が沢山あるというのに・・・相当アンタも変わっとるのー。ところで東京もそんな町なん?? そんな事よりこのラジオ直してや。あんた日本人じゃけーそのくらい直せるじゃろ!」<br /><br /> 技術大国の国民であれば誰でも技術があるだろうと言う、ルーマニア人の思い込みはさておき、もちろん人によって強弱はあるが、少なくとも知り合ったルーマニア人の殆どがブカレストをケチョンケチョンにけなし、全ての人達がブカレストに対してネガティブなイメージしか持っていなかった。ここまで国民に愛されない都も珍しい。町はかつてその美しさ故、「バルカンの小パリ」と讃えられたいたが、チャウシェスク時代に近代都市計画の元に歴史的建造物は破壊され、古えの面影を持たなくなった町は、国民から見放されてしまった町なのだろうか?<br /><br />ブカレストに知人が住んでいたが、この町では次の事には注意しろと言われた。<br />?駅で闇両替は絶対するな、構うな→警官とグルの可能性が高い<br />?警察のコントロールで、簡単にパスポートを手渡すな→偽警官の可能性あり<br />?市内の公共交通機関では絶対に鞄を死角の背後にするな→鞄をナイフで切られ中身を盗まれる<br />?警察と目を合わせるな→強請りタカリに遭うことがある<br /><br />そんな注意を聞いただけでも行く気の失せる人も多いかもしれないが、確かに上記4項目はブカレストでは注意が必要だ。特に地下鉄では油断できぬ雰囲気であった。美しい地方に比べると、魅力に乏しい町に感じた。人口200万人を超す大都会、96年にはマクドナルド1号店も開店し、喧騒とする町並みは農業国ルーマニアを感じさせない。<br /><br /><br /><br />

国民から愛されない都−ブカレスト

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1995/02 - 1996/07

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7

worldspan

worldspanさん

私が今まで旅をした国の中で、最も良い時代を旅できたな、と感じるのは間違いなくルーマニアだろう。恐らく90年代中から後半が最後の古き良きルーマニアが残っていた時代のような気がする。

 当時のルーマニアでは田舎に行けば、駅でボーッとしているだけで、「日本人か!?日本の話を聞かせてくれ」と自分の周りにあっという間に群衆の輪が広がり、宿がなければ「うちに泊まれ」と声をかけてくるひとも少なくなかった。通りを歩けば車が止まり、向かっている先まで送ってくれることもざらだった。困っている人がいたら助けずにはいられない国民性、底抜けに明るく、情熱的なラテン気質、ルーマニア人はとても親しみやすい。これほど人間味に溢れたルーマニア人が、誰がスパイなのか分からぬ秘密警察の監視網がはりめぐらされた、チャウシェスクの抑圧された社会で長年ここまで堪えてきたことが不思議で仕方ない。

 私がルーマニアを旅した時代、ルーマニア経済はスキー種目のダウンヒルで直滑降するかのように下降路線をまっしぐら、ルーマニア通貨のレイの対米ドル貨幣価値は、まるで壊れたタクシーメーターのように、日に日にみるみる下がっていった。国民は当然外貨に換金し、タンス預金した方が良いわけだが、ルーマニア政府は国民の年間外貨換金額を厳しく制限していた。その為闇両替が横行することとなった。

 ルーマニアが居心地良く感じたのはルーマニア人の国民性もさることながら、物価も比較的安いことも理由の一つ。夜行列車で一晩くらいの移動だけならで一等客車でさえ日本円に換算し1000円もしない。国際路線でブカレストからベオグラードまで2等寝台車を利用しても5000円位だ。

 更に国内線の航空券は恐ろしく安かった。例えばクルージュからブカレストまで45分のフライトで航空券は僅か4000円もしなかった。尤も国内航空路線は曲者で、濃霧による欠航や遅延は日常茶飯事、余り期待を込めて利用できなかったが。その航空券には更に驚かされた。エルディ地方(トランシルバニア)に位置するクルージという町のTAROM(ルーマニア航空)事務所でチケットを購入したが、航空券は藁半紙に手書きで行き先と金額が記され、TAROMのスタンプが押される程度、私はこんな紙切れではたして搭乗できるのか、騙されているのではないかと疑ってしまう程だった。一方機内は客室からの操縦室の扉は開かれたまま。飲み物を口にしながらキャビンアテンダントとデレデレと話をしている鼻の下を伸ばした操縦士の姿が丸見え、CAとの会話に夢中になり過ぎて墜落なんかされた時にはたまったものじゃない。

ではルーマニアの首都は一体どんなところなのか、まずルーマニア人達の印象を紹介したい。

「え、何じゃって?ブカレストがどんな町かって?? ルーマニアで治安は最悪、人も最悪、好きな奴なんて誰もおらんわあんな町!アンタそんな町に行くん? ルーマニアには良い町が沢山あるというのに・・・相当アンタも変わっとるのー。ところで東京もそんな町なん?? そんな事よりこのラジオ直してや。あんた日本人じゃけーそのくらい直せるじゃろ!」

 技術大国の国民であれば誰でも技術があるだろうと言う、ルーマニア人の思い込みはさておき、もちろん人によって強弱はあるが、少なくとも知り合ったルーマニア人の殆どがブカレストをケチョンケチョンにけなし、全ての人達がブカレストに対してネガティブなイメージしか持っていなかった。ここまで国民に愛されない都も珍しい。町はかつてその美しさ故、「バルカンの小パリ」と讃えられたいたが、チャウシェスク時代に近代都市計画の元に歴史的建造物は破壊され、古えの面影を持たなくなった町は、国民から見放されてしまった町なのだろうか?

ブカレストに知人が住んでいたが、この町では次の事には注意しろと言われた。
?駅で闇両替は絶対するな、構うな→警官とグルの可能性が高い
?警察のコントロールで、簡単にパスポートを手渡すな→偽警官の可能性あり
?市内の公共交通機関では絶対に鞄を死角の背後にするな→鞄をナイフで切られ中身を盗まれる
?警察と目を合わせるな→強請りタカリに遭うことがある

そんな注意を聞いただけでも行く気の失せる人も多いかもしれないが、確かに上記4項目はブカレストでは注意が必要だ。特に地下鉄では油断できぬ雰囲気であった。美しい地方に比べると、魅力に乏しい町に感じた。人口200万人を超す大都会、96年にはマクドナルド1号店も開店し、喧騒とする町並みは農業国ルーマニアを感じさせない。



同行者
一人旅
交通手段
鉄道 高速・路線バス タクシー ヒッチハイク
航空会社
アエロフロート・ロシア航空

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  • チャウシェスクにより建設されましたが、主は建設半ばでクーデターで銃殺されました。当時のルーマニアは国の財政は破綻状態にあるにも拘らず、チャウシェスク自らの為に作ったこの宮殿は20世紀史上最大の宮殿といわれています。

    チャウシェスクにより建設されましたが、主は建設半ばでクーデターで銃殺されました。当時のルーマニアは国の財政は破綻状態にあるにも拘らず、チャウシェスク自らの為に作ったこの宮殿は20世紀史上最大の宮殿といわれています。

  • ブカレストの中心地のひとつロマーナ広場周辺。<br />

    ブカレストの中心地のひとつロマーナ広場周辺。

    ロマーナ広場 広場・公園

  • ルーマニア人の友人の父親が経営する会社の真下にあるマクドナルド一号店。地元では金持ちしか利用できません。<br />

    ルーマニア人の友人の父親が経営する会社の真下にあるマクドナルド一号店。地元では金持ちしか利用できません。

  • ブカレストは当時も治安が悪く、地方の人からも、ブカレストは避けたほうがいいと言われるほど、治安は余りよくありま<br />せんでした。

    ブカレストは当時も治安が悪く、地方の人からも、ブカレストは避けたほうがいいと言われるほど、治安は余りよくありま
    せんでした。

  • 町で写真を撮っていると、私を撮ってと自ら進み出てきました。撮ってあげると、「メルシー」と言って立ち去っていきました。一体何なんだ??

    町で写真を撮っていると、私を撮ってと自ら進み出てきました。撮ってあげると、「メルシー」と言って立ち去っていきました。一体何なんだ??

  • ブカレストの老舗のレストランです。薄暗く、100年以上の歴史を持つレストランとは思えぬほどでしたが、味は良かったです。コースで食べてもわずか1000円くらいでした。<br />

    ブカレストの老舗のレストランです。薄暗く、100年以上の歴史を持つレストランとは思えぬほどでしたが、味は良かったです。コースで食べてもわずか1000円くらいでした。

  • 名門の音楽堂

    名門の音楽堂

    アテネ音楽堂 劇場・ホール・ショー

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