2006/07/08 - 2006/07/09
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アルピニスとしさん
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『トンネルを抜けるとそこはアルピニスムだった。』
をやるのだ。それにしてもシャモニ、とりわけエギーユ・デュ・ミディ行のロープウェーでは驚くほど多くの日本人と遭遇した。日本人観光客が比較的多いフランスにしても、ここまでの遭遇率は滅多に無いと思えるほどだった。それにしても高年齢の方が多い。日本の経済は持ち直しているのだろう。そして、元気のいい高齢者の方が多いのだろう。この年齢まで旅行や山を見る楽しみを見出せるのだな。そんな風に考えてすごく嬉しい気分になった。ただ、一点だけ気にかかったのは女性が揃いも揃って白い手袋をしていること!集団でこれをされるとかなり不気味で、実際多くの欧米人から『何故日本人女性は白い手袋で旅をしているのか』との質問を投げかけられている。日本女性の皆さん、ならびに山用品メーカーの皆さん、この点何とかなりませんかね。察するに、50SPFの日焼け止めを手に塗ったところで手を洗ったらとれてしまうというところから始まってるんでしょうけど、ハッキリ言ってファッション的にもねえ…。せっかく、登山ウェアで決めておられるのにそこの一点で台無しになって残念だと思うのです。もっと、格好いい女性用のUVカット機能付登山用グローブってのがいろんな色であればいいんじゃないかな。真っ白じゃなくてベージュとかアイボリー、或いは藤色でもいいじゃないですか!メーカーさん、これは相当のビジネスチャンスですぜ。気合入れて考えましょうや!
さて、サングラスを掛けて、褐色になってしまっている僕を日本人と思われる方は少ないようで、ロープウェーの相乗りで、
「あの人のリュックから出てるホースはなんやろなあ。酸素やろか?」
等と聞こえてきたので、僕は茶目っけを出し、
「いや、酸素じゃないですよ。これは歩きながら水を飲めるようにするシステムなんです。」
ほうほう、ふむふむ。
「こっちの人は止まって水筒を開けて水を飲んだりすることをあまりしないんですよ。少しでも早く頂上まで行って早く戻ってくるためにこういうシステムにする人が多いんです。」
「なるほどなあ。」と納得していただいた。
「ほな、お兄さんは(この方々から見ると僕は若造なのである。)あの辺の山をのぼらはるんですか。」
はいはい。
「この、とげとげを付けはるんやね。」
はい、とげとげを付けますよ。
「俺ももうちょっと若かったら一回やってみたかったなあ。」
「何言うてんの、あんたみたいにドンくさいのはあんなとこ登るのたいへんやん。」
「…。」
僕は何故だかその『どんくさい』おじさんに並々ならぬに親近感を抱いた。
さて、トンネル到着。ここで観光客やハイカー、あるいはトレッカーとは一線を画するアルピニストになる。装備が整った順に出発。観光客とだべっていた僕は最後尾となった。今回のパーティーは、若人ギヨームとインストラクターのジャン・フランソワだ。今回もリードをやることになった。タイトロープでの同時登攀をメインに、状況に応じて肩がらみなどもいれる事になるのだろう。
分かっていたことだがいきなり30°くらいの雪稜を下っていく。前回は悪天候だったが今回は快晴だ。2km下までの滑落の危険性があるので緊張は要するが、天候のせいかすこぶる気持ちがいい。雪稜からは比較的短い時間で脱出。コスミック小屋を左に眺め、右に巻いていく。ミックスでのリードはアイゼンの脱着の見極め、複数パーティーの存在時に考えるべき迂回路の探索なども使命に入っている。また、タイトロープでのリードは慣れが必要だと思う。リードがこけるのは最悪の状況を迎えるのと同義語である。そして案の定、この人気ルートは混んでいた。ラペリングポイントについてから15分以上も待たされる。前列パーティーのリーダー、インストラクターのタデが少し離れたところでクライムダウンへと作戦を変更している。僕もその方法をとることにした。停滞していた理由は、どこかのパーティー(英語でのやり取りが聞こえた。)が複数の初心者を連れてきていて懸垂下降でせず、順々にトップロープ下ろしを行っていたことに起因するのだった。これってありなのかなあ。
体をこすりつけるようなトラバースやタイトロープを経て、一枚岩を眼前にする。多分ここがこのルートの核心だろう。フリークライマー上がりの意地でアイゼンを履いたままだが、フリーでやりたかった。アイゼンが不快な音を発てて軋む。右を巻いていこうと必死だが、僕はやっぱり馬鹿で、これは左巻きが正解らしい。ジャンフランソワにそれを指摘される。そのうえ、
「これはアルピニスムだ。後続者もいるのだから固定シュリンゲを掴め!」
と指摘される。全くその通りだ。つまらないこだわりを捨て、優先すべきはパーティーのスピーディーな登攀。テラスを上がってセカンド以降のTRを準備。この核心部以降、苦しみはなかった。勿論、念のためにフレンズでプロテクションをとったりすることは怠らなかったけれども。
4時間のリードを終え、充実の登攀だった。またもやエギーユ・デュ・ミディのロープウェー乗り場へ。ここでも、日本人と遭遇し、ここではいきなり日本語で質問攻めにあった。
「国際登山隊ですか?」
との質問にはからかわれてるのかなと思ったが、相手は真顔だった。外国人の集団と登っている=国際登山隊という連想になるのだろうか。ふと見ると先行して到着していたギィが韓国人女性のナンパに成功してた。さすが『ちょいワル』熟年アルピニスト。シブさで決めておられる。この2名のうち1名はパリでの留学経験があるらしく仏語が堪能だった。しかもこっちは可愛い。ギィが日本人の僕を紹介する。会話は弾んだ。何時も思うんだけど、個人レベルだと同じアジア人同士って大抵好感が持てるんだけど、国レベルになるとどうしてあんなにギクシャクするのだろう。
で、あっという間に下界へ。あー、もう研修は終わってしまったのね。
後は、打ち上げパーティーである。嵐を迎えたりして本当にあっという間の1週間だったなあとルックバック。打ち上げはやや豪勢にLE SANJONで本場のラクレット。
「よっしゃ、チーズにしゃべらせるか。」と皆が意気込む。酒もいい感じでリミッターカットだった。
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