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弥次喜多記 4<br /> <br /> いよいよ南への旅が始まる。<br />「カイロには2つ駅があり、これはギザ駅からの発車ですからくれぐれも間違わないように」とエイジェンシーのお姉さんがアラビア語でギザ駅と書いてくれた。ギザ駅列車到着はたぶん7時5分くらいになるだろうから、少なくとも6時45分には着いていて欲しいとも言われた。<br /><br /> 私も気が早いが、夫は更に気が早い。5時半でいいというのに、モーニングコールを5時に頼んだ。朝は車も空いているから、6時半にはギザ駅についてしまった。でも、もう人々でごった返している。例によって金属探知器を受けフォームに入る。ギザ駅はフォームが2つしかない小さな駅だ。どこを探してもアラビア語以外の表記はない。警備の人に聞いても英語が通じないからさっぱり分からない。<br /><br /> 南があっちだからたぶんこっちのフォームから出るんだろう。大体どれが駅員さんだか、それすらわからない。日の出前なので、すこぶる寒い。私はコートの裏ポケットに必ず手袋とマスクとレインハットがいれてある。「オーバーだよ」と言われてもマフラーをし、手袋をはめ、それでも寒いとぼやいている。<br /> <br /> 反対側のフォームに列車が入り、荷物がいっぱい下ろされる。ポーターがとんでいく。ぐるっと見渡しても通路らしきものは見あたらないし、路面から高いフォームに段差もスロープもない。どうして運ぶんだろうかと見ていると、線路に下りて荷物を持って往復している。こちら側のフォームにはキャリーを持ったポーターもいるのだが、請負らしく手伝いを断って一人で運んでいる。<br /> <br /> 10歳ぐらいの男の子が重そうに荷物を背負ってきた。のぞくと新聞がぎっしり。これは重い。男の子がポンと線路に下りると、近くにいた列車を待つ人が彼の荷物を渡してやった。向こう側でも手伝っている。自然に手を出していると言った感じ。まだここには助け合いの精神が生きているんだなぁ。夫が「子どもの権利条約」は必要だなぁとつぶやく。<br /> <br /> 7時過ぎ列車が来た。でもどう見ても長距離利用の列車ではない。と、商社マンらしき人が切符を見てくれ、これではない。たぶん7時半頃になると教えてくれた。ずいぶんアバウトだなぁ。<br /> 7時半近く列車が来た。「来たよ」と叫ぶとまわりの人たちが「ノー。ノー」と×印をする。こんな時間に観光客が立っているので、どこへ行くのかわかっているらしい。言葉は通じなくても、みな親切だ。<br /> <br /> 中国人か?と声をかけられた。日本人だと言うと、日本人が 列車で旅行なんてめずらしいと言う。でも、彼も列車が何時に来るかは知らなかった。待つこと1時間半、8時にルクソール行きの列車がやっとやって来た。もう一組、外国人旅行者が乗った。本当は何時発だったのだろう。<br /><br /> 座席はとても座り心地がいい。これなら長距離の旅も大丈夫そうだ。すぐに車掌さんが来て検札していった。ユニフォームがないので車掌さんの区別はつきにくい。<br /><br /> 飛行機ならカイロからルクソールまで1時間 だが、列車だと10時間かかる。10時間以上の列車の旅はマレーシアでしたことがあるから、そんなに大変だとは思わない。<br />10時間の運賃が一等で56ポンド、嘘みたいに安い。<br /><br /> ほどなく朝食の注文取りが来た。朝食を注文すると網棚からなにやらとりだしていると思ったら、ごそごそとテーブルをはめ込んだ。夫が汚いというので、ウェットティッシュで拭いてやる。彼は大きめのハンカチをテーブルクロス代わりに敷いている。かまわない私はそれを見て笑っている。<br /><br /> 運ばれてきた朝食はきれいなトレイに載せられ、まるで機内食のようにパンもチーズもみんなパックされている。おまけにウェットティッシュまでついている。ほら、心配することないじゃ〜。お茶も頼めば何回も持ってきてくれる。お茶代は2ポンド。<br /> 列車はナイル川に沿って走る。これは快適だ。<br /><br /> 「エジプトはナイルの賜」というヘロドトス(BC5世紀)の言葉があるが、まさにその通り。川沿いはエジプトの国土の97%が砂漠だという言葉が信じられないくらい緑豊か。車窓からは人々の暮らしもかいま見られる。農作業も家族そろっての手作業だ。トラクターの姿も見たが、圧倒的にロバや牛、馬が農作業を手伝っている。家畜の傍にはアマサギも多い。ツバメは川面すれすれに飛び、クイナやバンがゆったりと泳いでいる。青々としているのは麦、牧草。オレンジもたわわに実って、本当に豊かな風景だ。<br /><br /> そうこうするウチに、どこまでもサトウキビの畑が続く。刈り取ったサトウキビをロバが荷台一杯に山積みして歩いている。   <br /> ランチはチキンとグリンピースのピラフ。チキンそのものが美味しいから、骨までしゃぶった。ピラフはちょっと米の芯が残るところがあったが、日本人にはあう。<br />時間にゆとりがあれば、列車の旅はおすすめ。<br /><br /> ルクソールに近づくにつれ、畑は広いトマト畑になった。コンテナいっぱいにつみ取られた真っ赤なトマト。美味しそうだ。<br /> <br /> 日が西に傾くと、遠くの禿げ山に夕日があかあかと燃える。刻一刻と移りゆくその色彩の美しさ。今思うとあの禿げ山は王家の谷の辺りだったのだろう。<br /><br /> 暗くなった駅に待っていてくれたのはエイジェンシーのハマダさん。なじみやすい名だ。そういえば、ピラミッドの運転手はタナカさんだった。今日のホテルはナイル川沿いのイシス ホテル。客がいっぱい。日本人団体客もぞろぞろいる。部屋は通りに面している。この国の車はやたらとクラクションを鳴らすのでとてもうるさい。夫が部屋を代えてくれと言いに行くと、今日は満杯だから明日の朝にしてくれと言われた。<br /> <br /> このホテルには何軒ものレストランがある。「中華に行こうよ」というと「こんなところで中華に行かなくても」と夫は渋い顔。でも中華に行く。飲み物は?夫はステラビール、私はチャイニーズティを注文すると、チャイニーズティはないという。中華料理店のくせにチャイニーズティがないなんて、それならやめるとわがままな私は席を立つ。<br /><br /> 夫はイタリアンにしようという。ガイドブックに美味しいと紹介されているからと。ガイドブックなんて信用しない方がいいよ、と私。この辺、ギリシャもトルコも、イタリアの近所のくせに、パスタの茹で加減がアルデンテでない。イタリアだって茹でたパスタを使うところがかなりある。「日本のスパゲッティはアルデンテなのに、イタリアのスパゲッティはアルデンテでない。どうして?」と訊いたことがある。そうしたら、主人答えて曰く「お客様を待たせないためのサービスだ」と。<br /><br /> でもここならワインは飲める。ここのミネストローネは美味しかった。野菜が美味しいんだろう。パスタはやっぱりアルデンテではなかった。だから後はお茶だけ飲んで出てしまった。<br />

エジプト・弥次喜多道中記4

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1999/01 - 1999/01

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buchijoyce

buchijoyceさん

弥次喜多記 4
 
 いよいよ南への旅が始まる。
「カイロには2つ駅があり、これはギザ駅からの発車ですからくれぐれも間違わないように」とエイジェンシーのお姉さんがアラビア語でギザ駅と書いてくれた。ギザ駅列車到着はたぶん7時5分くらいになるだろうから、少なくとも6時45分には着いていて欲しいとも言われた。

 私も気が早いが、夫は更に気が早い。5時半でいいというのに、モーニングコールを5時に頼んだ。朝は車も空いているから、6時半にはギザ駅についてしまった。でも、もう人々でごった返している。例によって金属探知器を受けフォームに入る。ギザ駅はフォームが2つしかない小さな駅だ。どこを探してもアラビア語以外の表記はない。警備の人に聞いても英語が通じないからさっぱり分からない。

 南があっちだからたぶんこっちのフォームから出るんだろう。大体どれが駅員さんだか、それすらわからない。日の出前なので、すこぶる寒い。私はコートの裏ポケットに必ず手袋とマスクとレインハットがいれてある。「オーバーだよ」と言われてもマフラーをし、手袋をはめ、それでも寒いとぼやいている。
 
 反対側のフォームに列車が入り、荷物がいっぱい下ろされる。ポーターがとんでいく。ぐるっと見渡しても通路らしきものは見あたらないし、路面から高いフォームに段差もスロープもない。どうして運ぶんだろうかと見ていると、線路に下りて荷物を持って往復している。こちら側のフォームにはキャリーを持ったポーターもいるのだが、請負らしく手伝いを断って一人で運んでいる。
 
 10歳ぐらいの男の子が重そうに荷物を背負ってきた。のぞくと新聞がぎっしり。これは重い。男の子がポンと線路に下りると、近くにいた列車を待つ人が彼の荷物を渡してやった。向こう側でも手伝っている。自然に手を出していると言った感じ。まだここには助け合いの精神が生きているんだなぁ。夫が「子どもの権利条約」は必要だなぁとつぶやく。
 
 7時過ぎ列車が来た。でもどう見ても長距離利用の列車ではない。と、商社マンらしき人が切符を見てくれ、これではない。たぶん7時半頃になると教えてくれた。ずいぶんアバウトだなぁ。
 7時半近く列車が来た。「来たよ」と叫ぶとまわりの人たちが「ノー。ノー」と×印をする。こんな時間に観光客が立っているので、どこへ行くのかわかっているらしい。言葉は通じなくても、みな親切だ。
 
 中国人か?と声をかけられた。日本人だと言うと、日本人が 列車で旅行なんてめずらしいと言う。でも、彼も列車が何時に来るかは知らなかった。待つこと1時間半、8時にルクソール行きの列車がやっとやって来た。もう一組、外国人旅行者が乗った。本当は何時発だったのだろう。

 座席はとても座り心地がいい。これなら長距離の旅も大丈夫そうだ。すぐに車掌さんが来て検札していった。ユニフォームがないので車掌さんの区別はつきにくい。

 飛行機ならカイロからルクソールまで1時間 だが、列車だと10時間かかる。10時間以上の列車の旅はマレーシアでしたことがあるから、そんなに大変だとは思わない。
10時間の運賃が一等で56ポンド、嘘みたいに安い。

 ほどなく朝食の注文取りが来た。朝食を注文すると網棚からなにやらとりだしていると思ったら、ごそごそとテーブルをはめ込んだ。夫が汚いというので、ウェットティッシュで拭いてやる。彼は大きめのハンカチをテーブルクロス代わりに敷いている。かまわない私はそれを見て笑っている。

 運ばれてきた朝食はきれいなトレイに載せられ、まるで機内食のようにパンもチーズもみんなパックされている。おまけにウェットティッシュまでついている。ほら、心配することないじゃ〜。お茶も頼めば何回も持ってきてくれる。お茶代は2ポンド。
 列車はナイル川に沿って走る。これは快適だ。

 「エジプトはナイルの賜」というヘロドトス(BC5世紀)の言葉があるが、まさにその通り。川沿いはエジプトの国土の97%が砂漠だという言葉が信じられないくらい緑豊か。車窓からは人々の暮らしもかいま見られる。農作業も家族そろっての手作業だ。トラクターの姿も見たが、圧倒的にロバや牛、馬が農作業を手伝っている。家畜の傍にはアマサギも多い。ツバメは川面すれすれに飛び、クイナやバンがゆったりと泳いでいる。青々としているのは麦、牧草。オレンジもたわわに実って、本当に豊かな風景だ。

 そうこうするウチに、どこまでもサトウキビの畑が続く。刈り取ったサトウキビをロバが荷台一杯に山積みして歩いている。   
 ランチはチキンとグリンピースのピラフ。チキンそのものが美味しいから、骨までしゃぶった。ピラフはちょっと米の芯が残るところがあったが、日本人にはあう。
時間にゆとりがあれば、列車の旅はおすすめ。

 ルクソールに近づくにつれ、畑は広いトマト畑になった。コンテナいっぱいにつみ取られた真っ赤なトマト。美味しそうだ。
 
 日が西に傾くと、遠くの禿げ山に夕日があかあかと燃える。刻一刻と移りゆくその色彩の美しさ。今思うとあの禿げ山は王家の谷の辺りだったのだろう。

 暗くなった駅に待っていてくれたのはエイジェンシーのハマダさん。なじみやすい名だ。そういえば、ピラミッドの運転手はタナカさんだった。今日のホテルはナイル川沿いのイシス ホテル。客がいっぱい。日本人団体客もぞろぞろいる。部屋は通りに面している。この国の車はやたらとクラクションを鳴らすのでとてもうるさい。夫が部屋を代えてくれと言いに行くと、今日は満杯だから明日の朝にしてくれと言われた。
 
 このホテルには何軒ものレストランがある。「中華に行こうよ」というと「こんなところで中華に行かなくても」と夫は渋い顔。でも中華に行く。飲み物は?夫はステラビール、私はチャイニーズティを注文すると、チャイニーズティはないという。中華料理店のくせにチャイニーズティがないなんて、それならやめるとわがままな私は席を立つ。

 夫はイタリアンにしようという。ガイドブックに美味しいと紹介されているからと。ガイドブックなんて信用しない方がいいよ、と私。この辺、ギリシャもトルコも、イタリアの近所のくせに、パスタの茹で加減がアルデンテでない。イタリアだって茹でたパスタを使うところがかなりある。「日本のスパゲッティはアルデンテなのに、イタリアのスパゲッティはアルデンテでない。どうして?」と訊いたことがある。そうしたら、主人答えて曰く「お客様を待たせないためのサービスだ」と。

 でもここならワインは飲める。ここのミネストローネは美味しかった。野菜が美味しいんだろう。パスタはやっぱりアルデンテではなかった。だから後はお茶だけ飲んで出てしまった。

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