私に与えられたテーマは、「日本の大都市における、地下鉄と郊外電車の相互乗り入れ」。<br />この問題について、外国に発表しようとする、まとまったレポートは、まだ存在していなかった。<br /><br />国内の力を借り、スライドや図面を作っての、半年がかりの準備が報われ、成功裏に終わった。<br />使った言葉はフランス語だったが、その方がイタリアでは通用すると考えたからだ。<br /><br />フランス語の講演は、ウィーンの基調講演でだいぶん慣れていて、2時間という長さも苦にならなかった。<br />ウィーンで新幹線を発表した時のような聴衆の興奮もなく、ロンドンにおける超熱心な質問攻めもなかったが、400人ほどと数えた参加者の目の光に、満足を覚えた。<br /><br />ロンドンでは、2時間と言う講演依頼に対し、質疑応答が2時間も続き、合計4時間かかったものだ。<br /><br />それから三十余年経過した今、都市圏鉄道における彼らの進歩はわが国を凌駕し、立場は逆転してしまっている。<br /><br />例えばパリのＲＥＲ（都市圏高速鉄道）は、従来型地下鉄と全く独立した都市貫通高速鉄道システムとして建設され、郊外対都心、郊外対郊外、あるいは都心部各地点間の到達時分を飛躍的に短縮している。<br />交通機関ごとの接続も、設備が良くなった。<br /><br />諸外国では、設備面だけではなく、旅客サービスソフト面での改善も著しい。<br />諸外国の都市圏を幾つかのゾーンに分け、ゾーン間ならばどんな経路をとっても（経営の異なる電車やバスを乗り継いでも）運賃が同じである「ゾーン運賃制度」は、利用者にとって誠に便利である。<br /><br />公共交通機関は環境破壊から地球を守り、市民生活にも不可欠との考えから、建設費だけでなく経営赤字まで税金で補填され、欧米各都市の鉄道はすっかり元気になっている。<br />

世界漫歩1383トリノ・交通博シンポジウム

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1970/08 - 1970/08

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#鉄道・バス

ソフィさん

私に与えられたテーマは、「日本の大都市における、地下鉄と郊外電車の相互乗り入れ」。
この問題について、外国に発表しようとする、まとまったレポートは、まだ存在していなかった。

国内の力を借り、スライドや図面を作っての、半年がかりの準備が報われ、成功裏に終わった。
使った言葉はフランス語だったが、その方がイタリアでは通用すると考えたからだ。

フランス語の講演は、ウィーンの基調講演でだいぶん慣れていて、2時間という長さも苦にならなかった。
ウィーンで新幹線を発表した時のような聴衆の興奮もなく、ロンドンにおける超熱心な質問攻めもなかったが、400人ほどと数えた参加者の目の光に、満足を覚えた。

ロンドンでは、2時間と言う講演依頼に対し、質疑応答が2時間も続き、合計4時間かかったものだ。

それから三十余年経過した今、都市圏鉄道における彼らの進歩はわが国を凌駕し、立場は逆転してしまっている。

例えばパリのＲＥＲ（都市圏高速鉄道）は、従来型地下鉄と全く独立した都市貫通高速鉄道システムとして建設され、郊外対都心、郊外対郊外、あるいは都心部各地点間の到達時分を飛躍的に短縮している。
交通機関ごとの接続も、設備が良くなった。

諸外国では、設備面だけではなく、旅客サービスソフト面での改善も著しい。
諸外国の都市圏を幾つかのゾーンに分け、ゾーン間ならばどんな経路をとっても（経営の異なる電車やバスを乗り継いでも）運賃が同じである「ゾーン運賃制度」は、利用者にとって誠に便利である。

公共交通機関は環境破壊から地球を守り、市民生活にも不可欠との考えから、建設費だけでなく経営赤字まで税金で補填され、欧米各都市の鉄道はすっかり元気になっている。