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“ピラミッド”という言葉を聞いてどこの国を連想しますか? <br />ほとんどの人の頭の中には“エジプト”、そう、カイロ・ギザのピラミッドが思い浮かぶことだろう。 <br />わたし自身も例外ではなく、そのイメージに縛られていた。 <br />そう、この国を訪れるまでは……。 <br /><br /> マヤ文明の遺跡を訪ね歩くメキシコの旅は、ユカタン半島東端のカンクーンの街から始まった。 <br />アメリカからの観光客を大量に飲み込むリゾート・シティ、白い砂浜に身を委ねる観光客に見送られるように、西へ進路を取った。 <br />海辺を離れると、内陸部は木々がすべてを埋め尽し、道路以外のなにもかもを濃い緑で塗りつぶしている。 <br />時折、その緑を切り裂くように、巨大な石の建造物が頭をのぞかせ、車窓越しに異質な感じを投げかけてくる。 <br />緑のカーペットの奥にメキシコの秘密が覆い隠されている感じがした。 <br /><br /> 緑の森を抜けると待っていたのは巨大なカスティージョのピラミッドだった。 <br />チェチェン・イッツァーの遺跡の中心でもあるこの建造物は存在だけでも驚くに値したが、隠された秘密にさらにア然とさせられる。四方に築かれた急勾配の石段はそれぞれが91段を数え、4面のトータルと頭頂部の1段と合わせると365という数字を刻む。 <br />そして春分と秋分にあたる日には、このピラミッドはさらなる不思議な現象をみせる。 <br />この大きな四角錐が正確に太陽光線を二分し、美しくも奇妙な現象を生じさせるのである。 <br />その日、ククルカンの広場は世界中からの観光客が押し寄せ、人々のため息と驚嘆の声が広場を埋め尽くすそうだ。 <br /><br /> ここまで計算され、崇められた建造物の急斜面を這うように上ると、頭頂部から周辺の景色をうかがうことができる。 <br />足元に座する神殿、球戯場、貯水池、天文台などチェチェン・イッツァーの規模の大きさにため息をもらしながら、彼方に目をやると、濃緑のカーペットが途方もなく広がっていた。 <br />濃緑のところどころに石の建造物が顔を見せ、うかがうコチラを誘っているかのようにも思えた。 <br />次はどこに行こう? <br />緑のカーペットをめくる楽しみはまだ始まったばかりだ。 <br /><br /> 人々のアルバムに残るのは観光名所ばかりだが、記憶に残るものは、街角で聞いた音楽、ローカルフード、人々との触れ合い……旅先の意外な一瞬のほうが色濃く焼きついていたりする。 <br />“旅”とはそういう一瞬を拾い集めるためのものなのかもしれない。 <br /><br />「ヘタだなあ、なんだよその食いかたは……」 <br />タコスを頬張る背中越しにその笑い声は聞こえた。 <br />かじりかけのタコスとこぼれた中身を指差して、おなかの突き出た中年オヤジが言う。 <br />「欲張って中身を詰めすぎだよ」 <br />そう言うと笑いながら、店先から焼きあがったばかりのトルティーヤを持ってきた(トルティーヤ=コーンや小麦を薄くのばして焼いたもの。油で揚げてパリパリにしたものもあるが、メキシコではソフトが主流)。 <br />「いいか、タコスは片手で食うのがツウさ。両手で頬張っているようじゃ、カッコ悪くてしかたない」 <br />両手で格闘していた日本人を見てシビレがキレたのだろう。 <br />「いいか、みてろよ。コイツを手のヒラに乗せる。その上に、チリコーン(豆)、チーズ、肉、野菜、なにを入れてもいい」 <br />「とはいえ入れすぎるなよ」 <br />左手に乗ったトルティーヤはまるでお皿だ。 <br />「で、サルサかワカモーレ(アボガド)、サワークリーム、好きなものをつける。仕上げにリモーン(ライムのこと)をひと搾り」 <br />「包んでオシマイ。みろ、片手でできるだろう?」 <br />手際よいオヤジの作業工程を見守っていると、トルティーヤを突き出された。 <br /><br />「やってみな。ハポン」 <br />見様見真似でタコスを包み、片手で頬張ると、オヤジが笑った。 <br />「うまいもんだな、ハポネス。これであんたも立派なメキシコ人だ」 <br />市場の片隅の屋台で免許皆伝。 <br />「メキシコの食べ物はうまいかい? 日本の料理とどっちがうまい?」 <br />タコスの向こうでオヤジが楽しそうに笑った。

Escape 116 免許皆伝inメキシコ

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2005/07/20 - 2005/07/21

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merlion

merlionさん

“ピラミッド”という言葉を聞いてどこの国を連想しますか?
ほとんどの人の頭の中には“エジプト”、そう、カイロ・ギザのピラミッドが思い浮かぶことだろう。
わたし自身も例外ではなく、そのイメージに縛られていた。
そう、この国を訪れるまでは……。

 マヤ文明の遺跡を訪ね歩くメキシコの旅は、ユカタン半島東端のカンクーンの街から始まった。
アメリカからの観光客を大量に飲み込むリゾート・シティ、白い砂浜に身を委ねる観光客に見送られるように、西へ進路を取った。
海辺を離れると、内陸部は木々がすべてを埋め尽し、道路以外のなにもかもを濃い緑で塗りつぶしている。
時折、その緑を切り裂くように、巨大な石の建造物が頭をのぞかせ、車窓越しに異質な感じを投げかけてくる。
緑のカーペットの奥にメキシコの秘密が覆い隠されている感じがした。

 緑の森を抜けると待っていたのは巨大なカスティージョのピラミッドだった。
チェチェン・イッツァーの遺跡の中心でもあるこの建造物は存在だけでも驚くに値したが、隠された秘密にさらにア然とさせられる。四方に築かれた急勾配の石段はそれぞれが91段を数え、4面のトータルと頭頂部の1段と合わせると365という数字を刻む。
そして春分と秋分にあたる日には、このピラミッドはさらなる不思議な現象をみせる。
この大きな四角錐が正確に太陽光線を二分し、美しくも奇妙な現象を生じさせるのである。
その日、ククルカンの広場は世界中からの観光客が押し寄せ、人々のため息と驚嘆の声が広場を埋め尽くすそうだ。

 ここまで計算され、崇められた建造物の急斜面を這うように上ると、頭頂部から周辺の景色をうかがうことができる。
足元に座する神殿、球戯場、貯水池、天文台などチェチェン・イッツァーの規模の大きさにため息をもらしながら、彼方に目をやると、濃緑のカーペットが途方もなく広がっていた。
濃緑のところどころに石の建造物が顔を見せ、うかがうコチラを誘っているかのようにも思えた。
次はどこに行こう?
緑のカーペットをめくる楽しみはまだ始まったばかりだ。

 人々のアルバムに残るのは観光名所ばかりだが、記憶に残るものは、街角で聞いた音楽、ローカルフード、人々との触れ合い……旅先の意外な一瞬のほうが色濃く焼きついていたりする。
“旅”とはそういう一瞬を拾い集めるためのものなのかもしれない。

「ヘタだなあ、なんだよその食いかたは……」
タコスを頬張る背中越しにその笑い声は聞こえた。
かじりかけのタコスとこぼれた中身を指差して、おなかの突き出た中年オヤジが言う。
「欲張って中身を詰めすぎだよ」
そう言うと笑いながら、店先から焼きあがったばかりのトルティーヤを持ってきた(トルティーヤ=コーンや小麦を薄くのばして焼いたもの。油で揚げてパリパリにしたものもあるが、メキシコではソフトが主流)。
「いいか、タコスは片手で食うのがツウさ。両手で頬張っているようじゃ、カッコ悪くてしかたない」
両手で格闘していた日本人を見てシビレがキレたのだろう。
「いいか、みてろよ。コイツを手のヒラに乗せる。その上に、チリコーン(豆)、チーズ、肉、野菜、なにを入れてもいい」
「とはいえ入れすぎるなよ」
左手に乗ったトルティーヤはまるでお皿だ。
「で、サルサかワカモーレ(アボガド)、サワークリーム、好きなものをつける。仕上げにリモーン(ライムのこと)をひと搾り」
「包んでオシマイ。みろ、片手でできるだろう?」
手際よいオヤジの作業工程を見守っていると、トルティーヤを突き出された。

「やってみな。ハポン」
見様見真似でタコスを包み、片手で頬張ると、オヤジが笑った。
「うまいもんだな、ハポネス。これであんたも立派なメキシコ人だ」
市場の片隅の屋台で免許皆伝。
「メキシコの食べ物はうまいかい? 日本の料理とどっちがうまい?」
タコスの向こうでオヤジが楽しそうに笑った。

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